CSR 中期計画における重点課題 ニコングループでは、CSR 活動における重点課題を抽出し、CSR 中期計画を策定して取り組みを進めています。 ■重点課題の見直し CSR 中期計画の策定 ニコングループでは、ステークホルダーからの期待や社会の動 ニコングループでは、CSR 活動の重点課題を抽出し、重要性マッ 向をもとに、社会の持続可能な発展のために重点的に取り組む プを作成するとともに、それらを特に重要性の高いテーマに集約し、 べき課題を抽出しています。 「CSR 中期計画グループ共通重点課題」としています。また、それ 近年、ニコングループの事業環境は大きく変化しています。メ ぞれの重点課題については、担当部門が 3 カ年計画および年度 ディカル分野への進出を開始し、また、M&A により社員や製造 目標を策定しています。各目標に対する進捗状況については、半 拠点などが増加しています。社会環境においても、情報技術の 期ごとに CSR 委員会をはじめ経営層が関与するそれぞれの上位 発展などにより社会の透明性が増し、紛争鉱物や現代奴隷をは 会議体へ報告し、評価することで、活動を推進しています。 じめとするサプライチェーンの人権問題など、新たな社会課題 が出てきています。このような状況を鑑み、2016 年 3 月期は、 これまでの重点課題を見直す活動を進めました。 重点課題の見直しプロセス 19 第一ステップ:情報収集 結論 ニコングループでは、まず、CSR 委員会の事務局である CSR ニコングループにおいては、国際社会で主要とされている課題 推進部が、半導体装置、FPD 装置、映像、産業機器、マイクロ については、ほぼすべてが事業と関係しており、取り組みが求 スコープ・ソリューション、メディカル、新事業など、主要 11 められていることが判明しました。また、ニコングループ内に 事業に関して聞き取り調査を実施し、バリューチェーンと CSR おける緊急性の高い問題として、社員の意識の上で、CSR と事 の関係性を洗い出しました。また、部内勉強会を開催して 業が乖離しているということが明らかとなりました。 ※1 ISO26000 の各主題を詳細に読み込んだほか、GRI ガイドラ このような結果から、ニコングループでは、中期経営戦略と インの重要性の原則や SRI に関する外部評価機関から求めら CSR 活動とを連動させることの重要性を改めて認識するとと れている課題、CSR 先進企業が挙げる課題なども読み込み、国 もに、現在は中期経営計画(2015-2017)の途中であることか 際社会における社会課題を拾い上げました。さらに、主要 NGO ら、重点課題は 2018 年に見直すこととしました。 が関心をもっている課題について、整理しました。 ※1 GRI (Global Reporting Initiative) ※2 オランダに本部を置き、組織の持続可能性報告に関する、国際的なガイドラインの 第二ステップ:仮説構築 作成と普及を目的として 1997 年に設立された国際機関。UNEP(国連環境計画)の CSR 推進部では、第一ステップで抽出した社会課題とニコンの 公認協力機関でもあり、世界各国の企業や非営利団体が参加している。 事業特性を照らし合わせるとともに、CSR 活動の主要関係部門 ※2 SRI (Socially Responsible Investment:社会的責任投資) と議論を交わし、重点課題の候補を洗い出しました。また、こ 株式投資などにおいて企業の業績、収益性、成長性などといった、財務数値をとら の作業と並行し、異なる国・地域、事業部門、および多様な職 える従来の基準に加えて、社会性、倫理性、環境などの CSR の側面も評価基準と 種のニコングループ社員 82 名から、CSR に関する意見を収集 し、投資を行うこと。 しました。 さらに、2015 年 10 月に開催した CSR グローバル会議におい 社員の意見収集を通じて分かった問題点と対策案 て、海外各地域の持株会社の CSR 部門と、これら社員の意見 問題点 を踏まえて重点課題の候補について議論を交わしました。 ・CSR 活動と中期経営計画と このほか、役員会議に株式会社イースクエア共同創業者のピー の連動が見えにくく、進捗や ター D. ピーダーセン氏を招き、CSR の最新トレンドに関する 達成感が確認しにくい 講演会を行うとともに、意見交換を行いました。 対策案 中期経営計画と CSR 活 動とを明確に連動させる ・ルールや規定が多数乱立して 乱立する方針などを整理 分かりにくく、CSR 活動に する ついて疲弊感がある ・リスク管理活動のみが CSR SDGs に関する教育・啓 と誤解している ・意識が内向き(社内の課題の みに目が向いている) 発を通じて社外の課題に 目を向け、ニコンの資源 を活用する企業風土を醸 成していく ピーター D. ピーダ―セン氏 20 ■重要性マップと CSR 中期計画グループ共通重点課題 ニコングループでは、2016 年 3 月期は重点課題の全面改定を 行わないことを決定しましたが、重点課題見直しの過程で明ら かとなった問題点を踏まえ、既存の重要性マップと重点課題を 一部変更しました。具体的には、重要性マップの「社員の人権・ 労働」を、ほかのステークホルダーを含むものとして「人権・ 労働」に変更しました。また、かねてより重要性マップで重要 度が高いと位置づけていた「製品の品質・安全」と「情報セキュ リティ」を、CSR 中期計画グループ共通重点課題に加えました。 ニコングループのCSR重要性マップ 21 Column 世界各地の社員からのヒアリングを実施 ニコングループでは、重点課題の抽出や中期計画の策定において、ステー クホルダーの意見を活かしています。2016 年 3 月期、ステークホルダーの 一員である世界各地のニコングループ社員 82 名に対し、サステナビリティ に関する統一の質問を投げかけ、意見を集めました。具体的には、国内にお いて、CSR 連絡員※1 と各部門から選ばれた社員に対しワールドカフェ※2 方 式のワークショップを行いました。また、海外では、各地域で CSR の統括 推進を行っている持株会社が CSR コーディネータ※3 などに対してアン ケート調査やワークショップなどを行い、意見を収集しました。この結果、 ニコンが果たすべき CSR としては、環境関連のキーワードをあげる社員が ワールドカフェの様子 多く、また、高品質・高技術な製品の提供や、新しい価値・革新的な製品の 提供により社会に貢献することが重要と考えていること、社会貢献、中で も地域コミュニティへの貢献にも関心が高いことが分かりました。 社員の主な意見:ニコンが求められている CSR とは?(複数回答含む) 欧州 CSR コーディネータ連絡会での ディスカッションの様子 ※1 CSR 連絡員 ニコンの CSR に関連するコーポレート部門および事業部門ごとの CSR 推進窓口。 ※2 ワールドカフェ(World Cafe) 「人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことのできる『カフェ』のような空間でこ そ創発される」という考えに基づいた対話の手法。 ※3 CSR コーディネータ 海外グループ会社各社で任命された CSR 推進担当者。 22
© Copyright 2024 ExpyDoc