今月の本誌 - ゆく春俳句会

森
論
林
に
浴
乙
駁
の
あ
り
夾
竹
桃
詩 集 手 に 森 林 浴 の 人 と な る
甲
国 境 青 田 を 分 か つ 大 河 か な
虫
を
抱
く
一
幹
や
渓
深
し
貝 拾 ふ 渚 や 虹 の 尾 に 触 れ て
玉
瀬 の 音 の 澄 む や 森 林 浴 の 径
埠 頭 ま で ア ガ パ ン サ ス の 道 し る べ
風 鈴 の 音 に 親 し め り 夕 ご こ ろ
内 山 眠 龍
1
草 笛 集
倉 林 潮
おくしず
奥静
山 田 瑛 子
薫風や聖一国師の碑文建つ 絵タイルを辿り港へ青葉風 遠祖より続きし茶園の畝美し き 青葉風
球場の歓声新樹の闇に消ゆ いくつもの堰は小滝の如流す は
夜 の 闇 震 は す や う に 雨 蛙
岩 永 紫好女
呱 呱 の 声 杜 の 都 の 五 月 晴 曽孫誕生 仙台にて
奥静はかく麗はしき濃き緑 茹でたての初筍や稚児の耳 禅 僧 の 墓 標 並 ぶ や 竹 落 葉
まつり
櫛比せる本屋消えゆく祭かな 井 村 美智子
箸 で 卓 叩 き つ 佃 祭 か な つつじ燃ゆバトンタッチで咲きにけり 京橋にやつちや場在りし祭かな 時の日
大根河岸跡たしかなる祭かな 伴奏に合はぬ行々子の高き声
生涯をこの地と決めて濃紫陽花 見降ろされ見上げて祇園祭かな 牡丹や別れは一人ひとり来る
時の日や己が人生かへりみる
4
草 笛 集
春眠
川 又 曙 光
予後の雨枕に代えて春眠す 春 眠 の 身 の 閂 を 外 し 眠 る
村 上 博 幸
紫陽花の首傾けて声交わす 小綬鶏の声彈き出すちょいと来い
蛇穴を出でて妖冶の舌を出す
熱風 (シロッコ)
緑愁
髙 橋 純 子
洗ひ髪乾くも待てぬ忍び逢ひ
緑愁や失恋の日の我が居る わがままを許されてゐる夏の風邪
新 美 久 子
温度計下がるを知らぬ夏日かな ピンポーン息整へて汗拭いて
夏帶
祝福のばらに秘めたるトゲ深し 心太こころの憂さを突き出 す
ドア押せばほどよき闇と涼しさと
昼食といへど生ハムメロンより 夏帶の薄きがほどの縁か な 熱風の街を横目に白ワイン 梅雨寒し診察を待つ固き椅子
いだ
風吹くや友より届く滝の音 サングラスかけて心の奥とざす えにし
三条の夕風となる浴衣かな 5
草 笛 集
道の駅
鈴 木 良 子
幸せとはこんなものかもさくらんぼ
二番草
植 村 文 彦
老鶯や手本のごとき効果音 鉛筆をつまむやうにと田を植ゑぬ
方丈の屋根も卯の花曇かな 今年竹はや結界に置かれあり
柳家小満ん師匠の俳句
ぶら下げて獲物のごとし二番草 大 津 浩
蓴菜の
心のうちへ
すべり込み
小満ん
手秤で選ぶトマトや道の駅 半 夏 生 表 札 の 無 き 門 構 へ
夏 埃 地 底 深 き に 大 江 戸 線
若葉風まだ髪結へぬ相撲取り
苔の花
掘出し物触れれば熱し夏の市
さつき展年季の入りは幹を見て 石段を踏みても不動青蜥蜴 野ざらしの石棺でかし苔の花
甲 子 園 揺 る 応 援 の 夏 帽 子
6
六月十八日(土)
リアル句会
四人で始まったリアル句会も、四回目にし
て九名と賑やかになってきました。メンバー
は音楽業界・メディア業界の現役、俳句初心
者が集まった会です。従って、自分らしさを
大切に、どうすれば理解されやすい句になる
かを中心に、意見を出し合って進めています。
あや子
美奈子
浩 武 知 子
泰 一
イリコ
純 子
博 幸
博幸報
於 TEORIYA
◆この一句(七月号より)
え
兼題「夏の季語より、服飾・住宅・食品を
感じさせるもの」
ば
日照雨来て日傘に雫足早く
地に落ちる浴衣の裾とめぐる月
相方の背丈に届かぬ黒日傘
涼風や濡れ縁猫の深眠る
老猫と簾の影と伸びにけり
母親とまろびて作る蚊帳の部屋
手花火や言ひ尽くされぬ物語
風三方富士借景の夏座敷
立ち際の本題となるアイスティー
そ
定年の手持ち無沙汰の大朝寝
川 崎 春 浪
永 く 勤 め て い た 役 所 も 終 え て、 久 々 の
大 朝 寝、 さ ぞ 楽 し い 夢 を 見 て い る 事 と 思
います。
どんな夢を見て笑っているのかと思っ
た だ け で も、 私 の 方 が 楽 し く な る 一 句 で
した。
選評と言うほどのものではありません
が、 楽 し く 拝 見 さ せ て 頂 き ま し た。 有 り
がとうございました。
松浦券月 選評
八月号担当 川崎春浪
7
春 雷 集
横須賀 渡 辺 伊世子
村中が紫陽花となる今日あした 海老名 和泉屋 石 海
青蛙豆腐のやうなのどで鳴く
青 垣 の 五 山 老 鶯 遊 ば せ り
群雲のまして白なる山法師
むら くも
紫陽花の色染まりゆく切り通し あぢさゐの紫紺やよべの雨の色 旭 川 髙 取 杜 月
一掃きの風にうかれし青田かな 競泳の終りてプール波治む 注文の数は挙手にてかき氷 地を割りて地震のゆるゝや夏の虫 大 汗 の 金 星 語 る 大 相 撲 紫陽花の縁どり太き田圃かな
紫陽花に佇つ気位の高き女 月光のあぢさゐ寺や波の音 前 橋 金 田 葉 子
広島忌オリヅル四羽加はりぬ 五軒目の泥運びをりつばくらめ 梅の実の青さ仄めく夜明かな
東 京 片 海 幹 子
遠花火背中に残し帰りけり 紫陽花の決して競はぬ色くらべ いつまでも今が一番沙羅の花 海原へ風を傾けサーフィン た め 池 の ゆ と り の 底 へ 蟇
横 浜 高 久 靖 人
ミニ紫陽花植ゑて景色の変りけり
麦秋や日没を駆るコンバイン 伊香保 石段を追ひこしてゆく黄瓜かご 老猫を見送るやまた子猫飼ふ
横 浜 雨 宮 英 夫
縞蛇の退散待ちて堆肥小屋 長靴を脱いで田に入る夏初め
産 後 鬱 娘 乗 り 越 え 花 菖 蒲
八重咲きの十薬群れて隠れ里
真 夏 日 の 早 訪 れ て 影 送 り
8
行進の一糸乱れぬ日焼かな ちちははに報告ひとつ盆の寺
横 浜 岩 澤 正 春
東 京 鈴 木 はな子
祭足袋セイヤセイヤと大地蹴る ががんぼの脚のもろさよ青畳 十薬を抜きし分だけ指匂ふ 花 苔 や 誰 も 参 ら ぬ 遊 女 塚
山深く来て巡り逢ふ余花一樹 万物に満つる清和の光かな 五 月 闇 書 斎 明 る き 司 祭 館 短 夜 の 早 大 通 り 雨 上 り 仮の家の隠れ家めきて風薫る
垣間みるどくだみ茂るハンセン園
東 京 亀 田 浩 代
父の日や義父にLL父にL ストローを曲げて泡立つソーダ水
ま
拭くだけの皿重なりて梅雨に入る
乳 母 車 若 葉 の 中 の 母 美 し 立葵刈られてコインパーキング 薔薇咲くや血の滴りて溜まるごと 掌中の青梅みたび握りしめ 横 浜 丸 山 千登喜
追山笠や怒濤の如く走り抜く
おい や
雨 音 に 祭 囃 子 の 紛 れ 込 み
はぐれても浮き立ち上る祭町 担ぎ手を募る紙貼る祭かな 香煙のなびく露店の串の鮎 夏帯や解きて溜め息ほぐしけり 夏帯の刺繍に風を織り込みて
札 幌 諸 中 一 光
く に
く に
面構へ異国には異国の 雲 の 峰 睡蓮の池にねぶたき胡弓の音
いつからかルーペ離せぬ夜半の夏
風寒むをまとうて札幌祭かな
老松の言の葉なれど端居かな
旭 川 福 士 あき子
鳥の声たまに牛啼く青田村 命名の金文字笑まふ新茶かな 東京へ戻る子と見る夏の月 9