第5章 新たに始まった取組み 新たに始まった取組み 新たに

第5章
新たに始まった取組み
第5章 新たに始まった取組み
新たな取組み
新たな取組 み 1
生活困窮者への支援体制の整備
近年、全国的に生活保護受給者や稼動年齢層受給者が増加しており、本市にお
いても生活保護受給者は増加傾向が続いています。
その背景には、就労できない人や就労していても十分な収入が得られない人、
また、ニートや引きこもり、人間関係の構築がうまくいかずに困窮状態に至りや
すい人の増加などがあり、経済社会の構造的な変化の中で、多くの人がこうした
生活困窮に至るリスクに直面しているといえます。
こうした中で、これまで十分ではなかった、生活保護受給に至る前の段階の生
活困窮者に対するセーフティネットを拡充するため、平成 27 年 4 月に生活困窮者
自立支援法が施行されました。
本市では、同法の趣旨に基づき、生活困窮者の自立支援について本計画に反映
するとともに、地域における生活困窮者の的確な把握から、個人の状態に応じた
包括的かつ継続的な相談支援、地域における自立・就労支援等の体制構築など、
個々の状態に寄り添った支援を行っていきます。
1 生活困窮者の早期把握
複合的な課題を抱える生活困窮者の相談を受け付ける相談窓口を設置するとと
もに、関係課・室からなる生活困窮者自立支援庁内連絡委員会を通じて、関係課で
情報を共有し、庁内連携を図ります。
また、市の広報紙、ホームページ、チラシ、ポスター等での周知のほか、自治(町
内)会、民生委員・児童委員、地域包括支援センター、NPO等の関係機関に情報
提供を依頼し、生活困窮者の早期把握に努めます。
2 生活困窮者自立支援法に基づく事業展開
生活困窮者自立支援法では、自立相談支援事業及び住居確保給付金の支給の 2 事
業は、福祉事務所を設置する自治体が必ず実施しなければならない事業(必須事業)
とされています。就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、子ど
もの学習支援事業等の事業は、地域の実情に応じて実施するかどうかを選択できる
事業(任意事業)とされています。
複合的な課題を抱える生活困窮者に対しては、個々の状況に応じて複数の支援を
包括的に行うことが必要であるため、本市では、必須事業と合わせて、必要性が高
いと認める任意事業についても実施します。
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第5章 新たに始まった取組み
(1)自立相談支援事業(必須事業)
事業の概要及び目的
生活困窮者自立支援法で定められた中核的な事業です。生活困窮者からの相談
を幅広く受け付け、生活困窮者の抱える課題を評価・分析し、ニーズを把握する
とともに、ニーズに応じた支援が計画的・継続的に行われるよう、支援計画(プ
ラン)を作成します。さらに、支援計画に基づく各支援が包括的に行われるよう、
関係機関と連絡調整等の業務を行います。
支援の内容は、経済的自立に向けた就労支援が中心となりますが、就労に向け
た支援を行う上で妨げとなる生活面や健康面での課題についても、本人に寄り添
いながら、一つ一つ解決に向けて取組んでいきます。
また、生活困窮者の多くは、背景に複合的な課題を抱えていることから、自立
相談支援事業では、できるだけ対象者を幅広くとらえ、関係機関との連携により、
生活困窮者が制度の狭間に陥らないようにすることが求められています。このた
め、自立相談支援事業では、利用にあたって資産や収入に関する具体的な要件は
設けられていません。
市の取組の方向
本市では自立相談支援機関として、市内の民間ビル内に相談窓口となる生活支
援センターを設置し、生活困窮者からの相談への対応を行います。
生活支援センターの運営は、プロポーザル方式により選定した業者に委託して
います。生活支援センターには主任相談支援員、相談支援員、就労支援員を配置
します。これらの支援員には、社会福祉士、介護福祉士、産業カウンセラー、ジ
ョブ・カード作成アドバイザーなどの有資格者を充てています。
生活支援センターでは、支援にあたっての関係機関との連絡調整や就労支援な
ども行っており、市は事業者と連携して、適切な支援の実施に努めます。
また、相談窓口まで相談に来ることが難しい方については、自立支援相談機関
と市役所窓口・地域組織等との連携による生活困窮者の把握と支援を行います。
市役所窓口や地域組織等で生活困窮者を把握した場合は、生活困窮者が生活支
援センターの相談窓口へつながるよう制度の周知・理解を図り、また、生活困窮
者についての情報提供を受けた場
合に、必要に応じて生活支援センタ
ーの相談支援員が訪問支援を行い
ます。
なお、市は、支援員による的確な
相談対応が図れるよう、国などが実
施する研修への参加を促進し、資質
の向上に努めます。
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第5章
新たに始まった取組み
(2)住居確保給付金の支給(必須事業)
事業の概要及び目的
離職により経済的に困窮し住居を失った、またはそのおそ
れが高い生活困窮者に対し、家賃相当額を一定期間支給しま
す。
住居確保給付金を受給するには、資産、収入や就職活動等、厚生労働省令で定
める要件を満たしていることが必要です。
市の取組の方向
生活支援センターの相談支援員が住居確保給付金の支給についての相談を受
け付け、対象者が要件を満たしている場合は、市が住宅の貸主等に住宅費を支払
います。
(3)就労準備支援事業(任意事業)
事業の概要及び目的
生活リズムが崩れていたり、社会との関わりに不安があ
ったり、就労意欲が低かったり等の理由で直ちに求職活動
を行うことが難しい生活困窮者に対して、一般就労に従事する準備としての基礎
能力の形成を、計画的かつ一貫して支援する事業です。生活習慣形成のための指
導・訓練(生活自立段階)、就労の前段階として必要な社会的能力の習得(社会
自立段階)、事業所での就労体験の場の提供や、一般雇用への就職活動に向けた
技法や知識の取得等の支援(就労自立段階)の 3 段階からなり、事業の形式は、
通所によるものや合宿によるもの等があります。
市の取組の方向
自立相談支援事業と同様に業者委託し、生活支援センターを主な拠点として
様々なプログラムにより支援を行います。
就労体験の場については、委託先の本業が人材派遣業であることから、取引の
ある事業所などへの紹介なども委託先事業者と検討していきます。
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(4)一時生活支援事業(任意事業)
事業の概要及び目的
住居を失っている生活困窮者に対して、一定期間、宿泊
場所と衣食を提供するとともに、自立に向けて必要に応じ
て、自立相談支援事業による支援を行います。路上等で生活しているホームレス
だけではなく、インターネットカフェ等で寝泊まりしている方も対象とします。
一時生活支援事業による支援を受けるには、厚生労働省令で定める資産、収入
要件等を満たしていることが必要です。
市の取組の方向
富士市に一時生活支援事業の拠点を持つNPO法人POPOLOに委託し、一
時生活支援事業を実施します。なお、同法人には県内の複数の市(平成 27 年度
は本市を含む 7 市)で費用を分担して委託しています。
(5)家計相談支援事業(任意事業)
事業の概要及び目的
多重債務や収入が不安定、
収入より生活費が多く支払いが滞
りがち等の理由で、家計収支に課題を抱える方に対して、家計
に関する課題を評価・分析し、本人や家族の状況に応じた家計再生計画を作成し、
自ら家計管理ができるよう支援します。必要に応じて、法テラス等の関係機関へ
の同行や貸付機関のあっせんを行います。
市の取組の方向
生活支援センターにおける相談状況や、他自治体の状況等を踏まえながら、事
業の展開方法について検討していきます。
(6)子どもの学習支援事業(任意事業)
事業の概要及び目的
Y
親から子への「貧困の連鎖」を防止する観
点から、生活困窮世帯の小・中学生等に対す
る学習支援や学習の重要性について、保護者の理解を促進するための支援などを
行い、高校進学率の向上を図ります。
市の取組の方向
生活保護世帯等の子どもを中心とした学習支援のあり方など、本市の状況に合
わせた事業の展開方法について検討していきます。
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第5章
新たに始まった取組み
3 生活困窮者自立支援事業の実施に向けた体制整備
生活困窮者自立支援法において規定されている生活困
窮者とは、
「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持
することができなくなるおそれのある者」と示されてい
ます。具体的には、失業者、多重債務者、ホームレス、
ニート、引きこもり、高校中退者、障がいが疑われる者、
矯正施設出所者など、様々な人たちが考えられます。
生活困窮者の自立支援においては、こうした複合的な課題を抱え、これまで「制
度の狭間」に置かれてきた人たちへの対応が重要となるため、市、関係する行政機
関や事業者との連携を図るとともに、市民や地域活動団体、ボランティア、NPO
団体等の協力を得ながら、生活困窮者自立支援事業の実施に向けた体制整備を図る
必要があります。
(1)庁内における体制
① 生活困窮者自立支援制度に関する連絡委員会の設置
関係する課・室からなる生活困窮者自立支援庁内連絡委員会を設置し、生活
困窮者自立支援制度の実施状況の情報共有を図るとともに、庁内連携の在り方
の確認、見直しについて協議するため、同委員会を定期的に開催します。
② 生活困窮者を把握するための庁内の周知徹底
各課の相談窓口での対応の中で、生活困窮者を早期に把握できるよう、関係
職員への説明会を実施するなど、制度の周知・理解を進め、庁内の連携体制及
び情報共有の充実を図ります。
また、生活困窮者自立支援庁内連絡委員会を通じて関係課へ協力を依頼し、
チラシ等を継続して配架していきます。
(2)生活困窮者支援のためのネットワークづくり
自立相談支援事業では、複合的な課題を抱える生活困窮者に対する包括的な支
援を行うため、福祉事務所、委託事業者、社会福祉協議会、ハローワーク、地域
組織等の関係機関との連携が重要となります。そのため、外部機関への個別訪問
による協力関係の構築に努めるとともに、情報共有や各取組みの調整により、効
果的な支援が行えるようネットワークづくりに努めます。
(3)住民への周知
生活困窮者の自立支援について住民の理解と協力が得られるよう、まずは自立
相談支援機関である生活支援センターの存在について周知徹底を図ります。周知
にあたっては、広報やホームページへの掲載やポスターの掲示、チラシの自治(町
内)会の回覧や協力いただける事業所への設置など、多様な手段を活用し、継続
的に行っていきます。
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第5章 新たに始まった取組み
新たな取組み
新たな取組 み 2
避難行動要支援者への支援体制の整備
これまで、本市では災害時に避難等の支援が必要な方については、災害時要援
護者名簿を作成し、支援体制の充実に取組んできましたが、国は、東日本大震災
の教訓を踏まえ、平成 25 年に災害対策基本法を改正し、災害時に実効性のある避
難支援がなされるよう、市町村に避難行動要支援者名簿の作成を義務付けるとと
もに、名簿作成に必要な個人情報の利用や、名簿情報の避難支援等関係者への外
部提供に関する取扱い等を法律上規定しました。
本市においても、改正災害対策基本法及び三島市地域防災計画に基づき避難行
動要支援者名簿の整備に努めるとともに、これまで取組んできた災害時要援護者
の避難支援の取組みを生かしながら、避難行動要支援者に対する支援体制を構築
します。
1 避難行動要支援者名簿の整備
(1)避難行動要支援者の把握
市は、災害時に高齢者や障がい者等の生命と身体を守り、被害を最小限に抑え
るため、関係課や関係機関で把握している要介護認定者や障がい者等(要配慮者)
の情報を集約し、災害時に自ら避難することが困難であって、避難の確保を図る
ため特に支援を要する方々(避難行動要支援者)の把握に努めます。
(2)避難行動要支援者名簿の作成・更新
市は、災害対策基本法及び三島市避難行動要支援者計画に基づき、以下の要件
に該当する方を対象に、避難行動要支援者名簿を作成するとともに、定期的に更
新を行うことで、情報を最新の状態に保つよう努めます。
【避難行動要支援者名簿の範囲】
避難行動要支援者名簿の対象者は、要配慮者のうち、在宅の者で自ら避難する
ことが困難で、かつ、家族による支援を受けることができず、避難所への避難等
の際に家族以外の第三者による支援を必要とする次の者を指します。
ア 要介護認定 3~5 の者
イ 身体障害者手帳 1~2 級の者
ウ 精神障害保健福祉手帳 1~2 級の者
エ 療育手帳A判定の者
オ 難病患者
カ ひとり暮らし高齢者(80 歳以上)又は高齢者(80 歳以上)のみの世帯
キ 上記以外で、自治会が支援の必要があると認めた者
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第5章
新たに始まった取組み
2 避難行動要支援者名簿を活用した支援体制づくり
(1)名簿の活用体制の構築
市は、災害時に避難行動要支援者名簿を有効に活用するため、関係機関及び地
域の避難支援等関係者(消防機関、警察署、民生委員・児童委員、三島市社会福
祉協議会、自主防災組織等)との間で、名簿の活用体制の構築を図ります。
(2)名簿情報の提供への同意の促進
市は、発災時に円滑迅速な避難支援に結びつけられるように、避難行動要支援
者に対して、名簿情報を提供することの趣旨や内容を説明するなど、平常時から
の名簿情報の提供に対して同意が得られるよう、積極的な周知を図ります。
(3)名簿の適正管理
市は、避難行動要支援者の個人情報を保護し、また、名簿を提供する避難支援
等関係者に対しても、名簿の適正管理を依頼します。
(4)個別支援計画の策定
市は、自主防災組織に対して、民生委員・児童委員の協力のもと、実効性があ
る避難支援が行われるよう、名簿に記載されている情報に加え、次の情報等を記
載した個別支援計画の作成を依頼します。
ア 本人状況・家族構成等
イ 緊急時の家族等の連絡先
ウ 避難支援者
エ 避難支援方法及び避難場所 等
(5)三島市自治会連合会及び民生委員・児童委員協議会による合同役員会議の実施
市は、避難支援の実施主体である三島市自治会連合会と、避難行動要支援者の
調査を実施する民生委員・児童委員協議会による合同役員会議を開催し、取組み
内容の協議、検討等を行い、地域に根差した取組みとなるよう、連携強化に努め
ます。
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