米大統領選ウォッチ from New York

2016 年 7 月 27 日
市場営業統括部
米大統領選ウォッチ
from New York
チーフ・エコノミスト
山下えつ子
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No.2 【民主党全国大会】
民主党は 25 日~28 日の日程でフィラデルフィアにて全国大会を開催中である。26 日にヒラリー・
クリントン氏が正式指名された。これで共和党ドナルド・トランプ氏、民主党ヒラリー・クリントン
氏、がそれぞれ党の正式候補者として大統領選に臨む(共和党大会と同じく、最終日にクリントン氏
が指名を受諾して正式候補となる)。
先週の共和党大会では共和党の分裂ぶりが目を引いた。共和党の重鎮
たちが大会を欠席したうえ、スピーチに立ったテッド・クルーズ氏からは
結局、トランプ氏を支持する言葉はなく、大会の会場はブーイングの嵐、
テレビ番組のコメンテーターも「大会に出席しながら候補者に支持を表
明しないなど、こんな事は今まで見たことがない!」と驚いていた。
これに対して、民主党の党大会では対立候補だったバーニー・サンダース氏は自分を支持する党員
たちにもクリントン氏を支持するように呼びかけた。対立候補を支持することは感情的にも困難なこ
とだが、サンダース氏は民主党員としての義務を果たした。他にスピーチに立った人々も、ビル・ク
リントン元大統領は当然としても、ジミー・カーター元大統領が孫を代理出席させて自らもビデオで
クリントン氏支持を表明するなど、「共和党とは違い、民主党は結束している」と印象づける戦略
だった。
しかし、こうした努力にも関わらず、それでは民主党は全員がクリントン氏支持に回り、トラン
プ氏を圧倒しそうか、というと、そうとは限らない。民主党大会ではサンダース氏支持者は“Bernie”
というプラカードを持って会場に現れ、サンダース氏のスピーチに涙を流すという、やや異様な光景
だった。彼らはそのまま大会会場から退出し、抗議するなどの行動を取り、今後、サンダース氏支持
者がすべてクリントン氏支持に自動的に移行するとは思えない。
恐らく、かつてのような、共和党か民主党か、といった区分自体が崩れかかっている。今回の指名
では代議員 4051 のうち、クリントン氏が 2205、サンダース氏が 1846 を獲得。つまりサンダース氏
は 45.6%という高い獲得率だったが、民主党サンダース氏支持者の 1 割以上は共和党トランプ氏支
持へシフトすると言われている。若年層(ミレニアム世代)の支持をどのようにクリントン氏へ振
り向けることが出来るかがクリントン氏の勝敗を左右するポイントの一つとなる。共和党のように
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米大統領選ウォッチ 2016/7/27
分裂していないから勝てるとは言い切れないだろう。
26 日のビル・クリントン氏のスピーチはさすがに秀逸だった。ヒラリー・クリントン氏の公私に
亘る長い経歴を披露し、ヒラリー・クリントン氏の資質を讃えると同時に、各州、各層からの支持を
幅広く取り付けようとする内容で、ヒラリーは“Change Maker”であり、real one(本物)だ、と呼
びかけた。27 日にはオバマ大統領の演説、最終日の 28 日にはクリントン氏本人の指名受諾演説と、
それに先立つチェルシー・クリントン氏(クリントン氏の一人娘)のスピーチもある。トランプ氏の
子供達は立派なスピーチでトランプ氏の評判を上げた。チルドレン対決も面白そうである。
共和党の分裂がありながらも、党大会はトランプ氏に有
利に働いた。
今週の民主党大会ではトランプ氏に対する批判一色だ
った。日本では見られないような個人攻撃には驚くが、
民主党が特に前面に出したのが移民問題だった。トラン
Trump
Clinton
22-Jul
大会の結果も踏まえた世論調査は再び要チェックだが、
15-Jul
支持がクリントン氏支持を遂に上回った。今週の民主党
8-Jul
お陰か、トランプ氏への支持率は急上昇してトランプ氏
世論調査の推移
47.0
46.0
45.0
44.0
43.0
42.0
41.0
40.0
39.0
38.0
37.0
36.0
1-Jul
先週の共和党大会でのトランプ・チルドレンの活躍の
(資料)RealClear Politics
プ陣営はブルーカラーを擁護しているが、南部に国境を築くなど移民に対するスタンスは偏りがある。
クリントン氏はヒスパニック、アフリカ・アメリカンなどから支持を得ており、これが強みだが、大
統領選のキャンペーンでも票の獲得を狙い、移民問題が焦点の一つとして取り上げられそうだ。
2008 年にはオバマ氏が“Change”を掲げて初の非白人の大統領として当選した。この時、ヒラリ
ー・クリントン氏は民主党の候補指名を争って敗れたが、今回は初の女性正式候補となり、感慨を強
く覚える女性陣も多かった。現代における性差別といった話だけではない。黒人そして女性が参政権
を得るまでの道のりは米国の政治史の重大な一面であり、米国の歴史そのものを映していると言って
も過言ではないだろう。そうした背景のもと、女性大統領が誕生すれば、まさに“Make History”の
重みのある出来事となるに違いない。
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