誌上講演会 2 アジア・アメリカで 人気の高い日本食 10 寺田 日本産水産物の各国市場での販 売あるいは販路拡大のためのアプロー 現地に足を運び、 製品を知ってもらう 前田 日本でフランス料理を家庭の中 でつくるかといえば、必ずしもそうで はないと思います。それと同じで、海 外でも日本食はレストランで食べるの が当たり前です。そこで、業務用の商 品を開発すること、さらに「日本品質 で世界規格」ということを考えなけれ ば な ら な い の で は な い か と 思 い ま す。 例えば、珍味はわざわざプラスチック の容器に入っていなくても問題ありま せん。 また、日本レストランが競合してお り、独自性を出したいと思うシェフが、 ひと手間加えて出せるようなものも非 常に重宝されていますので、加工する 前のすり身を輸出するということも可 能性としてはあると思います。 高木 シンガポールは自由貿易国です から、輸入関税がかかりません。東南 アジアにおけるノルウェーサーモンの 市場は1000億円規模で、それを 時間かけてノルウェーから空輸してい ますが、日本から空輸すれば7時間で す。アジアの国々の中で冷たい海の魚 がとれる国といえば、圧倒的に日本が 中心ですから、それをウリにしない手 はないでしょう。まず現地に行ってア イデアを出し、大きなロスが出ない程 度に冒険をしてほしいと思います。 ているので、皆さん日本から来た魚を 喜んで食べてらっしゃいます。 また、あえて日本語で表記すること で価値を高めています。中国系の方は 「 金 」 の 文 字 に 弱 い の で、 「金華さば」 などは面白いかもしれません。 前田 マレーシアでは、日本食の店が ここ5年ほどで800軒くらいに増え ています。魚は生食用が好まれ、油の 強い魚や赤い魚が人気で、トロやウニ、 アカムツなどがよく食べられています。 マレーシアは経済成長率が約5%、所 得も年平均 %以上の上昇をみせてい ますので、これからチャンスのある市 場だと思います。 小林 ハノイで日本食レストランを3 軒経営しております小林です。ベトナ ムはハノイとホーチミン、この二都市 が中心になっていますが、ホーチミン の方が経済的にも商業的にも進んでい ます。 外国料理の中で最も人気があるのは 日本食で、店の数もホーチミンで二百 数十軒、ハノイは百数十軒ほどになっ ています。 ベトナムはこれから先もどんどん豊 かになり、それによって人々の食べ物 の好みも変わっていくと思います。「日 本」は憧れのブランドですから、ベト ナムは日本の食品が受け入れられやす い国であると言えると思います。 チ方法をどのようにお考えですか。 前田 日本でとれる魚やその加工品を 知ってもらうことが大事ですから、ま ず海外でプロモーションを行うことで す。そして、 次に必要なのは「やる気」 で す。 「 や る 気 」 が あ っ て こ そ、 徐 々 に付き合う人が増えて、仕事に結びつ くような関係が構築でき、輸出の道筋 が見えてくることも多いのです。 高木 シンガポールは会社さえあれば 誰でも輸入ライセンスが取得できます ので、大手レストランのほとんどが輸 入問屋を通さず、自分たちで輸入して います。ですから、影響力のあるレス トランに直接働きかけるのが良いかも しれません。そういうところは日本に 代行会社を持っていますから心配はい らないと思います。 小林 まず地元の人に味を認知しても らうということは地道にやるしかない と思います。また、ベトナムは基本的 にお米の国ですので現地のものを食べ ることで商品開発のヒントにつながる かもしれません。ベトナムには自由に 輸出ができないので現地のサプライ ヤーと組んでも結構ですし、ジェトロ に相談するのも良いと思います。 百瀬 大切なのは皆さんの製品に対す る思いを販売者に伝えることです。そ して現地に足を運んで文化をよく見る こと。そのためなら商品に飛行機代を 上乗せしても構わないと思います。 寺田 輸出に関し、ジェトロがお手伝 いしますので、 ぜひ、 お声がけください。 本日は、ありがとうございました。 寺田 では、東北の水産品を各国に売 り込むには、何が必要なのでしょうか。 百瀬 まず、スーパーなどに陳列して 売りたいのか、レストランなどに業務 用として販売したいのか、ターゲット を明確にすることです。レストランで は 加 工 度 の 低 い も の が 喜 ば れ、 ス ー パーなどではオーブンを使って調理で きるように加工されたものの方が売れ ているようです。このときのキーワー ド は、 オ ー ガ ニ ッ ク( 有 機 ) 、サステ ナ ブ ル( 持 続 可 能 な ) 、トレーサビリ テ ィ ー( 追 跡 可 能 性 ) 、 グ ル テ ン( 小 麦粉等)フリーです。このうち一つで もかなえていれば、富裕層が喜んで食 いついてくれるはずです。 小林 ベトナム市場というのは歴史が 浅いので、これから何が売れるのか不 確定要素が多い国です。いまベトナム でよく食べられているのは生食用だと ノルウェーサーモンです。日本にもお いしいサーモンがありますので競争で きるのではないかと思います。ベトナ ムは中国や香港と味覚が似ているので、 両地で流行したものはベトナムでも流 行する傾向があります。これをヒント に何が売れるのかリサーチすることが 第一歩ではないでしょうか。 「日本クオリティー」が 差別化のカギ アジア・アメリカ市場の現状と輸出ビジネス成功のヒント こ れ は、 東 北 六 県 商 工 会 議 所 連 合 会(当所事務局)などで構成する復興 水産加工業販路回復促進センターが 主 催 し、 6 月 8 日 に 行 わ れ た「 東 北 復 興 水 産 加 工 品 展 示 商 談 会 2 0 1 6」 でのパネルディスカッションを要約 したものです。 国・地域の食文化を 知ることが輸出の第一歩 前 田 マ レ ー シ ア で は「 日 本 ク オ リ ティー」を大切にすることが他の商品 との差別化になります。ですから、海 外産の魚であっても、日本で加工した ものを輸出するというやり方もあると 思います。また、マレーシアでは、日 本のギンザケは生食できないという認 識を持たれていますので、「日本のサー モンも生で食べられます」ということ をしっかり伝えていくことも必要だと 思いま す 。 高木 市場へは小売店から入る方法も ありますが、成功するのは、まずレス トランの食材として扱ってもらい、現 地の人に味を覚えてもらって、浸透し たころに小売店に持っていくというや り方です。現地に行き、影響力の大き い店舗と共同でプロモーションを行い、 お客さまに商品を食べていただく。そ こでお客さまのニーズを吸い上げて商 品 開 発 に 生 か す の で す。 現 地 の ス ー パーでも売れるようになるとボリュー ムが大きくなりますので、これが成功 する秘訣ではないかと思います。 寺田 まず、それぞれの国や地域での 日本産水産物の流通状況を教えていた だけま す か 。 百瀬 アメリカで卸商社を営んでおり ます百瀬です。アメリカでは 年代か ら続く日本食ブームが定着し、現在は 成熟した市場への転換期を迎えていま す。最近は、私たちが「ホワイトテー ブル」と呼ぶフレンチやイタリアンの 店で、日本の魚の需要が伸びています。 メニューには、ホタテが「HOTAT E 」 と ロ ー マ 字 で 書 か れ て い る ほ ど、 アメリカの料理人の間でも「日本のも のは生で使っても安全・安心」という 認識が定着しています。 高木 シンガポールで日本食のファミ リーレストランを経営しています。シ ンガポールにある1100軒ほどの日 本食店の半数で刺し身が提供されてい ますが、その半分がサーモンです。貝 や 白 身 魚、 マ グ ロ も 人 気 が あ り ま す。 以前は冷凍マグロを使っていましたが、 シンガポールの人は冷凍の魚を刺し身 で食べることに抵抗があるので、鮮魚 専門の輸入業者さんは週4回から5回、 魚を空輸しています。空輸すると魚の 値段は高くなりますが、それでも刺し 身は高いという概念が既にできあがっ 90 寺田 では「輸出しよう」と決断した ときは、どんなことに気をつければ良 いので し ょ う か 。 小 林 ベ ト ナ ム は 流 通 が 未 整 備 で す。 電力事情が良くなってきたのがここ1、 2年なので、その特殊な事情を理解し なければいけないと思います。 14 2016年8月号 飛翔 2016年8月号 飛翔 15 20 た か ぎ たかゆき 前田 崇 氏 小林 宏治郎氏 ま え だ たかし こばやし こ う じ ろ う 寺田 佳宏氏 ◉パネリスト ◉モデレーター て ら だ よしひろ 百瀬 慶広氏 も も せ よしひろ Managing Director Senior Manager/Sales Department Head Creative Food Concept Pte Ltd JMG TRADING SDN BHD. 高木 崇行氏 Uogashi Global Innovation, LLC (米国・卸商社) CEO (シンガポール・日本食レストラン経営) (マレーシア・日本食品輸入業) Le Minh Co., LTD (ベトナム・日本食レストラン経営) Manager 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 仙台貿易情報センター所長
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