2016 年度 位相空間論 補足プリント No. 2 Rn のコンパクトな部分集合 定理 1. 距離空間 (S, d) のコンパクトな部分集合 M は有界閉集合である. 証明. まず M が有界であることを証明する. x0 ∈ S を固定し, Ui = Bi (x0 ) ∪ ∪ (i = 1, 2, 3, . . .) とする. すると S = i Ui であり, したがって M ⊂ i Ui となる. すると M はコンパクトなので適当な有限個の i1 , . . . , in を取り出 して M ⊂ Ui1 ∪ · · · ∪ Uin と出来る. ところが Ui 達は x0 を中心とする半径 i の開球であったので i0 = max{i1 , . . . , in } とすると M ⊂ Bi0 (x0 ) となる. したがって M は有界. 次に M が閉集合であることを証明する. まずはじめに y ∈ S \ M を 取ってきて固定する. 次に x ∈ M に対して rx = 31 d(x, y) とする. すると ∪ rx > 0 であり, かつ Brx (x) ∩ Brx (y) = ∅ となる. また M ⊂ x∈M Brx (x) である. すると M はコンパクトなので有限個の x1 , . . . , xn を取り出して M ⊂ Brx1 (x1 ) ∪ · · · ∪ Brxn (xn ) と出来る. そこで r0 = min{rx1 , . . . , rxn } とすると r0 > 0 であり, さらに Bri (xi ) ∩ Br0 (y) = ∅ (i = 1, . . . , n) となる. よって M ∩ Br0 (y) = ∅, すなわち Br0 (y) ⊂ S \ M . これが各 y ∈ S \ M に ついて言えるので S \ M は開集合, すなわち M は閉集合. 注意. 一般の距離空間では逆は成り立たない. すなわち一般の距離空間で は有界閉集合であるからといってコンパクトとは限らない. 定理 2. n 次元ユークリッド空間 Rn 内の有界閉区間の直積 [a1 , b1 ] × · · · × [an , bn ] ⊂ Rn はコンパクトである. 証明. 煩雑さを避けるために n = 2 の場合を証明する. n が一般の場合も 同様である. 背理法で証明する. まず P1 = [a1 , b1 ] × [a2 , b2 ] ⊂ R2 として P1 はコン パクトでないと仮定する. すなわち P1 のある開被覆 {Uλ }λ∈Λ が存在して, そのうちのどんな有限個の Uλ 達の和も P1 を覆うことは出来ないとする. そこで P1 の向かい合う辺同士の中点を線分で結んで P1 を 4 つのマス目 2 1 2 1 ]×[a2 , a2 +b ])∪([a1 , a1 +b ]×[ a2 +b , b2 ])∪ に分割する. つまり P1 = ([a1 , a1 +b 2 2 2 2 a1 +b1 a2 +b2 a1 +b1 a2 +b2 ([ 2 , b1 ] × [a2 , 2 ]) ∪ ([ 2 , b1 ] × [ 2 , b2 ]) と 4 等分に分割する.(n 次元の場合は 2n 等分の分割になる.)するとこのマス目のうち少なくとも どれか一つはどんな有限個の Uλ 達の和でも覆うことは出来ない. なぜな らば, もしすべてのマス目がそれぞれ有限個の Uλ 達の和で覆えたとする と, それらをすべて合わせたものは有限個でありかつ P1 を覆って矛盾す るからである. そこで 4 分割のマス目でどんな有限個の Uλ 達の和にも含まれないよう なものを P2 とし, 以下同様に Pi の 4 分割のマス目でどんな有限個の Uλ 達の和にも含まれないようなものを Pi+1 とする. すると P1 ⊃ P2 ⊃ · · · ⊃ Pi ⊃ Pi+1 ⊃ · · · で Pi の各辺の長さも 0 に収束するので区間縮小法より Pi は P1 のある一点 x0 に収束する.(注意:ここで R2 の構造を使った. Rn の場合も同様である.) すると x0 ∈ P1 なので, ある λ0 ∈ Λ が存在して x0 ∈ Uλ0 となる. する と, ある正の数 ε > 0 が存在して Bε (x0 ) ⊂ Uλ0 となる. ところが Pi は x0 に収束するので, ある i0 が存在して i ≥ i0 ならば Pi ⊂ Bε (x0 ) となり, し たがって Pi ⊂ Uλ0 となる. しかしこれは Pi がどんな有限個の Uλ 達の和 にも含まれないことに矛盾する. したがって最初の仮定が間違いであり, P1 はコンパクト. 定理 3. n 次元ユークリッド空間 Rn の有界閉集合はコンパクトである. 注意. したがって定理 1 と合わせると, n 次元ユークリッド空間 Rn では部 分集合がコンパクトであることと有界閉集合であることは同値である. 定理 3 の証明. Rn の有界閉集合を M とし, {Uλ }λ∈Λ を M の任意の開被 覆とする. また U = Rn \ M とする. すると U は開集合であり, Rn = U ∪ ∪ λ∈Λ Uλ となる. 次に M が有界なので, 直方体 P1 = [a1 , b1 ] × · · · × [an , bn ] を十分大きく取り M ⊂ P1 となるようにする. するとまず P1 ⊂ U ∪ ∪ λ∈Λ Uλ であり, 定理 2 より P1 はコンパクトなので {Uλ }λ∈Λ から適当な 有限個の Uλ1 , . . . , Uλn を取り出して P1 ⊂ U ∪ Uλ1 ∪ · · · ∪ Uλn と出来る. ところが今 M ⊂ P1 であり, また U = Rn \ M なので M ⊂ Uλ1 ∪ · · · ∪ Uλn となる. したがって M はコンパクト.
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