基礎数学 (7/5) 略解, 補足等 今日の授業では合同式を学習しました. b − a が m で割り切れるとき, a ≡ b (mod m) と表しました. また, (a ÷ m の余り)=(b ÷ m の余り) が成り立つとき, また, そのと きに限り a ≡ b (mod m) が成り立つことを学習しました. また, 足し算 a + c, 引き算 a − c, 掛け算 a × c を法 m で計算するとき, a, c をそ れぞれ法 m で合同な数に置き換えていい, ということを学習しました. また, a ≡ b (mod m) のとき, an ≡ bn (mod m) が成り立つことを学びました. 以上を駆使すると, 大きな数を適当な数で割った余りや, an 型の数を適当な数で 割った余りが計算できます. それが今日のプリントの問題です. 問題 11.1 の解答. a ≡ b (mod m) が成り立つかを, b − a が m で割り切れるかに戻っ て確認する問題でした. • • • • • 17 − 5 = 12 は 4 で割り切れるので, (1) は正しい. 5 − 17 = −12 も 4 で割り切れるので, (2) も正しい. 32 − 21 = 11 は 6 で割り切れないので, (3) は誤り. 234 − 123 = 111 は 3 で割り切れる (111 = 3 × 37) ので, (4) は正しい. 11 − 11 = 0 は 763 で割り切れる (0 = 763 × 0) ので, (5) も正しい. というわけで, 合同式の中で正しいのは (1), (2), (4), (5) となります. 問題 11.2 の解答. まず, 定理 11.3 の証明を残した部分である (a ÷ m の余り) = (b ÷ m の余り) =⇒ a ≡ b (mod m) を証明してみましょう. 割り算の原理より, a = mq + r かつ 0 ≤ r < m 1 1 1 b = mq2 + r2 かつ 0 ≤ r2 < m を満たす整数 q1 , q2 , r1 , r2 が存在します. 今, 仮定から a ÷ m の余りと b ÷ m の余りは 等しいので, r1 = r2 が成り立ちます. よって, b − a = (mq2 + r2 ) − (mq1 + r1 ) = m(q2 − q1 ) となり, b − a は m で割り切れること, つまり, a ≡ b (mod m) が成り立つことが分 かりました. 次に定理 11.4 の (1) を示してみましょう. 合同式の定義に戻ってみると, a − a = 0 が m で割り切れることを示したいのです. 0 = m × 0 だから 0 は m × (整数) の形で書 け, 0 が m で割り切れることが分かります. よって, a ≡ a (mod m) が成り立ちます. 定理 11.4 の (2) は省略します. 言うべきことは, 「b − a が m で割り切れるならば, a − b も m で割り切れる」で, 「割り切れる」の定義に戻ればすぐに証明できます. 1 問題 11.3 の解答. 23 ≡ 7 (mod 8), 29 ≡ 5 (mod 8) に注意します. すると, 23 + 29 ≡ 7 + 5 = 12 ≡ 4 (mod 8) だから, 23 + 29 を 8 で割った余りは 4 となります. 同様にして, 23 × 29 ≡ 7 × 5 = 35 ≡ 3 (mod 8) だから, 23 × 29 を 8 で割った余りは 3 となります. 問題 11.3 の別解. 23 ≡ −1 (mod 8) に注目すると, より簡単に計算できます. 23 ≡ −1 (mod 8), 29 ≡ 5 (mod 8) だから, 23 + 29 ≡ −1 + 5 = 4 (mod 8) だから, 23 + 29 を 8 で割った余りは 4 となります. 同様に, 23 × 29 ≡ −1 × 5 = −5 ≡ 3 (mod 8) だから, 23 × 29 を 8 で割った余りは 3 となります. 問題 11.4 の解答. 12345 = 1 × 104 + 2 × 103 + 3 × 102 + 4 × 10 + 5 (1) に注意します. 今, 10 ≡ 1 (mod 9) だから, 102 ≡ 12 = 1 (mod 9). 同様に, 103 ≡ 1 (mod 9), 104 ≡ 1 (mod 9) が成り立ちます. これらを式 (1) に適用して, 12345 ≡ 1 × 1 + 2 × 1 + 3 × 1 + 4 × 1 + 5 = 15 ≡ 6 (mod 9). よって, 12345 を 9 で割った余りは 6 となります. 問題 11.5 の解答. 310 の下二桁と, 310 を 100 で割った余りは等しいことに注意しま す. 310 を 100 で割った余りを計算します. 310 = 35×2 = (35 )2 に注意し, まず 35 を法 100 で計算します: 35 = 243 ≡ 43 (mod 100) よって, 310 = (35 )2 = 43 × 43 = 1849 ≡ 49 (mod 100). つまり, 310 を 100 で割ったときの余りは 49 となることが分かります. つまり, 310 の 下二桁は 49 となります. 2 問題 11.6 の解答. 定理 11.5 の (1) のみ, 証明を与えておきます. 仮定 a ≡ b (mod m) から, b − a は m で割り切れます. よって, b − a = mk を満たす整数 k が存在しま す. 同様に, c ≡ d (mod m) が成り立つので, d − c は m で割り切れます. つまり, d − c = ml を満たす整数 l が存在します. よって, (b + d) − (a + c) = (b − a) + (d − c) = mk + ml = m(k + l). つまり, (b + d) − (a + c) は m で割り切れます. よって, a + c ≡ b + d (mod m) が成 り立ちます. 3
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