経済学による現実の分析例: リニエンシー制度 • いま、談合した2社を考える。 • 競争を制限して価格をつり上げる談合やカルテ ルは、独占禁止法で違法とされ、摘発されると課 徴金が課せられる。 • リニエンシー制度とは、課徴金減免制度で摘発さ れる前に告白すれば、課徴金が軽くなるという制 度である。 • 具体的には、最初に申告した1社は全額、2番目 は50%、3番目は30%課徴金が免除される。 (以下は、神取道宏『ミクロ経済学の力』日本評論 社を参考にした。) • 両者が申告しなくても談合が発覚する確率を 10%とする。談合が発覚したときの課徴金を100 億円とする。 • お互いが黙秘していても、10%の確率で談合が 摘発され、100億円の課徴金が課せられる。この とき、損失の期待値は100億円×10%=10億円。 • 1社だけ申告すれば、課徴金による損失はゼロ。 • このとき、もう1社は確率1で100億円の課徴金を 課せられる。 31 32 表6.8A リニエンシー制度でのゲーム 企業2の戦略 • 両者が申告したとき、申告順位は半々の確率で1 位、2位となる。 • 1位のときは課徴金はゼロ、2位のときは課徴金 50億円。 企業 • したがって、課徴金による損失の期待値は、 0×50%+50×50%=25億円。 • 以上から、談合した2社の利得は表6.8Aのように なる。 • その結果、2社とも申告することになる。 申告せず (黙秘) の戦略 1 33 申告 (自白) 企業1の 企業2の 企業1の 企業2の 課徴金 課徴金 課徴金 課徴金 申告せず (黙秘) ‐10 ‐10 ‐100 0 申告 (自白) 0 ‐100 ‐25 ‐25 34 図表6.9A リニエンシー制度の効果 年度 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 カルテル・談 リニエンシー リニエンシー 課徴金減免事 合摘発数 申告数 適用数 業者数 17 9 20 10 22 10 17 26 79 74 85 85 131 143 0 6 16 8 21 7 9 0 16 37 21 50 10 27 • 摘発数とリニエンシー適用数をみると、かなり利用され ていることがわかる。申告数も増えてきている。 35 1
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