D10長井講師回答

2016.07.19
長井正嗣
2016.06.15 講習会、質問に対する回答
質問-1 性能照査型設計法はどういうものか理解でき、参考になったが、詳しい
実用の仕方は難しかった。
回答:現在の「AASHTO LRFD」や「EC」が、これに対応すると考えてください。
全ての部分係数が確率論、信頼性ベースに基づき設定されているわけではない
のですが、これでもって、具体的な設計が可能で、性能照査型限界状態設計法
で設計していると言っていいと思います。
また、土木学会の鋼構造委員会「鋼・合成構造標準示方書」が対応しますが、
残念ながら、部分係数が推奨値のため(学会の他の委員会の標準示方書も同様か
と思います)、具体的な設計は困難となります。
性能照査設計は、自由な設計が可能となり、技術開発力が活かされるなど、
大いにもてはやされました。しかし、残念ながら、その性能を照査する側の体
制、チェック機能が整っていません。現状、現実的(実際的)な設計法として、
AASHTO LRFD, EC があげられます。なお、設計法は、思想や信頼性のレベルを
議論しており、経済性は関係ありません。信頼性のレベルを下げると、あるい
は設定した限界を超える確率を増やすと(各部分係数を勝手に小さく設定する
と)、より小型の断面設計が可能となります。納税者にどのように説明するので
しょうか。
質問-2 日本の未知係数の 1.75 はおおよそどのくらいの寿命年数を考えている
のか
回答:上記、1.75 は 1.70 かと思います。残念ながら私にもわかりません。逆に、
「はっきりしていただけると、と思っています」。現在、国は示方書を改定中と
聞いていますが、どのように扱われているのか不明です。一応、最近になって、
寿命 100 年を謳っているようですが??
なお、当日の説明の通り、ASHTO LRFD は、寿命 75 年、β=3.5(橋の上部工)
で部分係数設定(ただし、安全性能《強度限界》照査の場合のみ。使用性能おけ
る、信頼性理論ベースの部分係数の設定などは今後の課題と聞いています)。ISO
は、100 年寿命、β=3.8 かと思います。
質問-3 合成構造はメンテナンス面で不利となる気がするが、どうでしょうか。
回答:私個人の想定の範囲ですが、とくに不利となる(排除の理由)とは思えませ
ん。しかし、鋼とコンクリートの接合部に注意、ケアが必要かと思います。単
族材料の構造に比べて、そのように感じます。
余計ですが、鋼構造は見ることができます(もちろん、アクセス可能が前提で
す)。一方、ご存じの通り、コンクリートは内部が見えない問題があります。余
耐力、余寿命の推定に困難を伴います。しがって、維持管理マネージメントも
困難が予想されます。
質問-4 NBIS を行っているエンジニアの資格や立場はどのようなものか
回答:点検体制は「点検のプログラムマネージャー」
「チームリーダー(点検主任)」
「点検補助」から構成されるようで、プロマネ、チームリーダーには、その要
件*が定められており、連邦政府認定の研修修了が必要となる。 プロマネ、リ
ーダーはインハウスエンジニアと思われる。
上記の正確さには自信のない部分があり申し訳ない。
「PE(登録技術士)」
「10 年の橋梁点検の経験」
「FHWA
*たとえば、プロマネの場合、
公認の研修コースの修了」が要件となる。