今村 直樹 - 静岡大学

“日本近世の領主制と地域社会―明治維新史の視点から―”
准教授 今村 直樹(日本近世史・近代史)
1979年1月生まれ、2004年3月熊本大学大学院修士課程修了、2007年4月日本学術振興会特
別研究員DC2、2009年11月名古屋大学大学院博士課程修了、2011年4月熊本大学文学部附
属永青文庫研究センター特定事業研究員、2012年4月静岡大学人文社会科学部准教授
2016年より第3期若手重点研究者
研究概要
若手重点研究者
19世紀後半の日本社会が経験した明治維新とは、世界史的な観点でみたとき、領
主制・領主的土地所有の徹底的な廃絶や、地域社会における近代化事業の速やかな
完遂などの際立った特徴を有していました。それでは、明治維新という歴史的な転
換を可能にした日本近世社会の特質とはなにか。こうした問題関心のもと、以下の
二点について重点的に研究しています。
① 日本近世の領主制と地域社会
日本近世には、さまざまな規模の領主(幕府・大名・旗本など)が存在し、町
村からなる地域社会を統治しましたが、その両者の接点に位置したのが代官所や
村役人たちでした。彼らによる行政は、維新後の地域社会にも大きな影響を及ぼ
すほど重要であり、その制度的実態について、全国屈指の代官所文書・藩政文書
である江川家文書(江川文庫蔵)や細川家文書(永青文庫蔵)を中心に分析を進
めています。
② 日本近世の所得再分配構造
江戸時代、領主による重い年貢のため、百姓たちは一様に困窮したと理解され
がちですが、近年の研究では大きな見直しが進められています。私は、藩財政と
農業生産力の両者の動向を追うことで、領主―地域社会間での所得再分配がどの
ように行われ、また変遷したのかについて、分析を進めています。
重要文化財・江川家文書を有する
江川邸(伊豆の国市)
約4万点に及ぶ細川家文書(永青
文庫蔵、熊本大学附属図書館寄託)
メッセージ
私が主に分析の素材としているのは、江戸や明治時代に書かれた古文書です。独特の「くずし字」で書かれた
ものですが、読み解いていくと、想像もしなかった当時の政治・社会・文化などの実像がわかり、心を躍らされ
ることが多々あります。古文書の調査は、学生時代から現在に至るまで、私の大きな楽しみのひとつです。
しかし、我々が古文書に触れることができるのも、江戸時代から現在に至るまで、実に多くの人々が史料を
守ってきたからに他なりません。私が所属する社会学科歴史学コース日本史分野では、1988年度から静岡市と連
携して、市内に残された古文書群を調査・保存し、史料目録を作成する事業を継続的に行っています。こうした
史料保全活動を学生たちとともに発展させ、歴史資料の重要性の喚起とその活用をはかっていくことで、地域社
会に貢献していきたいと思っています。
【主な研究業績】
外部資金獲得状況:
科学研究費補助金若手研究(B)
「近世身分制の
解体と村・地域社会」
(研究代表者・2012-2014)、
科学研究費補助金若手研究(B)
「近世地域行政吏
の制度的研究」
(研究代表者・2015-)
、科学研究
費補助金基盤研究(A)
「永青文庫細川家資料の
総合的解析による大名家資料学の構築」(研究分
担者・2012-2014)
、科学研究費補助金基盤研究(B)
「近世初期永青文庫細川家文書の総合的解析によ
る藩政確立過程の研究」(研究分担者・2015-)、
科学研究費補助金基盤研究(C)
「東アジアの視
野からとらえた日本の茶と茶文化に関する学際的
研究」
(研究分担者・2015-)など。
18 Shizuoka University
委員等:
静岡市歴史文化施設検討委員会委員(2015-)、伊
豆の国市史跡等整備調査委員会専門委員(2013-)、
伊豆石丁場遺跡調査事業調査委員会委員(20122015)、久能山総合調査委員会委員(2012-2015)、
愛知県史編さん委員会調査執筆協力員(2012-)、
豊田市史編さん委員会調査執筆協力員(2008-)
など。
学会等:
日本史研究会、史学研究会、明治維新史学会、近
現代史研究会、静岡県地域史研究会、静岡県近代
史研究会など。
国内外の学会誌編集等:
近現代史研究会会誌『年報近現代史研究』編集
(2012-)
著書・論文:
1)『久能山誌』(共著)静岡市(2016)
2)『日本近世の領国地域社会』(共編著)吉川弘
文館(2015)
3)「農民一揆後の『付ケ火』と近代移行期の地
域秩序」(単著)『史林』97-6、73-105(2015)
4)『中近世の領主支配と民間社会』(共著)熊本
出版文化会館(2014)
5)「近世後期藩領国の行財政システムと地域社
会の『成立』」
(単著)
『歴史学研究』885、76-85
(2011)