検索 : ひょっとこ被っ た青年、とは?? ひょっとさい ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ 検索結果 ︻ひょっとこ︼ 口をすぼめて曲げたような表情の男性、あるいはその面のこと。 65:ヒーロー志望の名無しさん またひょっとこ今朝もニュースに出てたなー。 ︻ひょっとこ青年について話そうぜ No.15︼ 70:ひょっとこのプロフほしいビターンッ︵ 、3︳ヽ︶︳ 75:﹀﹀70 任せろ、 今解ってる情報は⋮⋮⋮⋮⋮⋮ ' これはある日突然世間に名を轟かせたひょっとこを被った青年が非日常に︵自ら︶巻 き込まれていく話である。 │││││││││││││││ プロローグ ││││││││││ 入試に特攻しよう③ ││││││ 入試に特攻しよう② ││││││ 入試に特攻しよう① ││││││ 目 次 宇原 理 オリジン① │││││ 1 無題① ││││││││││││ 宇原 理 オリジン② │││││ 4 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ │││││││││││││││ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ │││││││││││││││ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ │││││││││││││││ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② │││││││││││││││ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 8 13 23 35 54 144 118 101 78 68 緩んだ顔のまま天気と交通情報、そして毎日の日課とするヒーローの活躍を確認すべ 口の中で蕩ける黄身に頬が緩まずにはいられない。 きにかぶりつく。 洗濯物を干す母に朝の挨拶をして、感謝の気持ちを持ちつつ、ご飯をよそって目玉焼 リビングにつけば食卓には忙しい母が準備してくれた朝食があった。 洗面所で顔を洗い、本格的に脳が目覚めていく。 をして部屋を後にした。 がさごそとリュックの中身に今日の授業の準備が出来ている事を確認し、大きな欠伸 ああ、朝か。と、寝ぼけた思考のまま中学の制服に着替える。 外からは輝く日差しと雀の声。 もそもそとベッドから降りて、オールマイトグッズで溢れた部屋をぐるりと見る。 目覚ましの音が響いた。 プロローグ プロローグ 1 くテレビをつけた。 ︻ひょっとこ青年現る ﹁むぐっ ﹂ ︼ ニュースはでかでかとその青年について昨日の事件含めて話していた。 まず目に入ったのはそんなサブタイトル。 !? そう叫びたいくらいに興奮する。 !! るのはただ顔を隠すだけ 個性 !!? 、ひょっとこの面をしてい ! もっと何か意味があるんじゃないか !!?? 使用許可証とか貰ってる特別な新人ヒーローだったりして ていないのが悔しいけど確か学生服みたいな感じだった、ってことは学生なのか どんなヒーローだろう。どんな個性を持っているんだろう、服装をちゃんと確認出来 グッドタイミングすぎる ロー関連のサイトを探り回って何にも情報の情の字も出ず、悲しみにくれていた。 昨晩中、登校時に起きた事件に活躍したヒーローの名を知りたくて知りたくてヒー 驚きで噎せるところだった。 !!? 付いた。 朝食を急いでかき込み、バタバタと片付け、歯を磨きながらそのニュース画面に噛み ?? 2 ﹃いやぁー⋮⋮昨日のあの事件、凄かったですね ましたね ﹄ ﹄ ﹃そうですねぇ⋮⋮巨大化した敵を意図も簡単に出頭させる。素晴らしいヒーローが居 ! ねー﹄ ! ﹁出久ー 学校出る時間大丈夫なのー 遅刻する やばいやばい ﹂ ﹂ ﹂ ﹁気をつけて行くのよー !!!! ﹂ ?? と急いで残りの準備をして玄関に走る。 赤い靴を履き、黄色のリュックを背負って家を出たのだった。 ! !!!! 後ろにある時間を見ればもう家を出る時間。 ﹁えっ、嘘、うあああああ !!!! !!!!?? いた。 何人かの活躍したヒーローが流れていき、今か今かと待ちわびていた時、母の声が届 はははは と笑いが響き、その特集へと進んでいく。 ﹃ひょっとこを被った謎のヒーロー。その存在に、我々、特集まで作っちゃいましたし ! ?? ﹁いってきまーーーす プロローグ 3 宇原 理 オリジン① ﹁えー、お前らも3年になり、将来のことを考える時期だ﹂ 無事に遅刻せず学校に間に合った。 今は6時間目の総合。先生の話を聞きつつ、今日の事件と今朝のニュースについて ノートにまとめていた。 、大体ヒーロー科志望だよねぇ ﹂ 今日起こった事件は登校中、ひったくりで追い詰められた敵を新人ヒーロー、Mt. レディにより捕まえられた。 みんな !! 黙々と書いている中、先生はプリントを握りしめ、大きく上にばらまいた。 ﹁今から進路希望の紙を配るが⋮⋮ ! ﹁はーーーい ﹂ それは僕が齢4歳にして知った社会の現実だ。 ⋮⋮人は生まれながらして平等ではない。 そう元気よく答えた。 !!!! ない宇原くん含めて3人以外は。 そんな先生の愉快な言葉に、皆、いや、正しくはかっちゃん、僕、そしてここには居 ! 4 皆良い個性だ。でも校内では個性発動は原則禁止な 周りのクラスメイトは個性を持つ。けど、僕には⋮⋮ ﹁うんうん ﹂ ! ﹂ ! !!! 9。流石雄英、倍率も恐ろしく高い。 ﹂ あのオールマイトをも超えて、俺は 必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだァ !! うう、先生言わないで、絶対に言わないで、言ったら終わりだ、心の中で何度も祈っ ⋮⋮怒られるどころじゃない、よなぁ⋮⋮ ガンッと机の上に乗り高らかに笑うかっちゃん。僕も、雄英に受ける、なんて言えば トップヒーローとなりィ !!!! ルマイトやNo.2エンデヴァー等、有名なヒーロー達の出身校。今年は確か偏差値7 あ あ や っ ぱ り。か っ ち ゃ ん も だ。国 立 雄 英 高 校。あ の N o.1 ト ッ プ ヒ ー ロ ー オ ー ﹁あー⋮⋮確か⋮⋮⋮⋮爆豪は雄英高だったな 周りから激しく反感を買うが、買っても、誰も強くは言えなかった。 彼の名は爆豪勝己。かっちゃんは僕の幼馴染みであり、強い個性、爆破を持つ。 皮肉や嘲笑を含めた笑みで、彼は言った。 ﹁一緒くたにすんなよ。俺はこんな没個性共と仲良く底辺になんざ行かねぇよ﹂ 先生はとても嬉しそうに話をする。けど僕の幼馴染は黙っては居なかった。 ﹁先生ェ﹂ !! ﹁模試じゃA判定、このウチじゃ唯一の雄英圏内 宇原 理 オリジン① 5 ては見たけど、神様は僕を見放したようだ。 ﹂ 多分、驚いてるのかな。ああ、この重たい空気が僕にのしかかってくる。 終わった。これは終わった。 少し視線を上げれば驚くくらい真っ白なかっちゃん。 ﹁そういや、緑谷も雄英志望だったな ? 緑谷が ﹂ ﹁勉強だけじゃ受かる訳ないだろ ﹂ !!? ﹂ 数秒すれば大きな笑い声が響いた。笑う笑う。楽しそうに僕を、笑うんだ。 ﹂ !! ﹁ぶははは 絶対無理だろ !!?? ﹁個性無いのにどうやって受けるんだよ ﹁無理無理 !! !!!! が足にあった。それが無個性の象徴。 ﹂、ッッッ ﹂ !!!! ﹂ と机が爆発した。突然の爆風に床に吹っ飛んだけど犯人はかっちゃん ﹁没個性どころか無個性のテメェがなんで俺と同じ土俵に立てるんだァ だ。⋮⋮校内じゃ原則、個性使用は禁止じゃなかったの。 !! なくて、﹂ ﹁あっえっ、あ、ち、ちが、違うんだよかっちゃん、別に君に張り合うとかそんなんじゃ !!?? BOOOM ﹁そっ、そんな規定はもうないよ、た、ただ、前例がないだ﹁デクゥ !!!! ⋮⋮そうだ。僕は無個性。4歳になっても個性が出ず、病院に行けば必要の無い関節 !!?? 6 彼は終止符を打ったのだった。 僕を責め続けるクラスメイトに、 ﹁例え前例が無くてもやってみないとわからないからやるんだろ 宇原 理 オリジン① 7 ﹂ ? 宇原 理 オリジン② 鶴の一声とはこれのことを言うのだろうか。 カッチーンと凍った様に教室の扉近くにいる彼を見て誰も動かなかった。 そりゃそうだよ。定期テストくらいしかこのクラスに顔出さないんだもの。 お、おお ﹂ 驚かない方がおかしい。 ﹁う、宇原 ?? して宇原くんが⋮⋮ いつ模試に受けたんだろ 塾かな⋮⋮ いいのか 結 でも学校に届いたんだから⋮⋮校内で受け ? 返って来たぞ、今﹁結果そこで読み上げてください﹂⋮おお ﹂ ? たってこと ﹁あ、ああ 果悪くても知らないぞー ? ? ? ! ? ?? 田村ちゃん⋮⋮といえばウチの学生であれば誰もが知ってる進路担当の教員。どう ﹁ども。先生、模試の結果返ってきたって田村ちゃんから聞いたんですけど﹂ んに声をかけた。 先生も特に1番びっくりしているみたいで、しどろもどろに先生は入ってきた宇原く ?? 8 宇原くんに言われ、したり顔で結果を見ていく先生。 みんなよく解ってないって顔をしてたけど、結果を言う、との言葉に滅多に顔を出さ ない奴だ、底辺の高校に行くに決まってる、そんな顔に変わりにやにやと宇原くんを見 つめていた。 にしても勇気あるなぁ、みんなの前で模試の結果を言うって⋮⋮悪かったりしたらど うするんだろ いや、悪い訳ではないから読ませようとしてるのかな となると凄い自信の持ち主⋮⋮ ﹁沢条⋮⋮ あ、え、けっ、けけけ結果、95% ﹂ !!?? ブツブツと僕がまた自分の世界に入っていく中、先生が震えた声で言った。 ?? ? ?? ﹂ ちゃんでさえも、 ﹁さ、沢条って、国立白沢一条高校でしょ ﹂ ﹂ 飄々とした顔で、んー次どこにしようかな、と言う彼にクラスメイト全員、あのかっ ﹁A判か。意外といけた。普通科いいな。レッツ平凡だな﹂ !!?? そう叫んでしまったんだ。 !!?? ﹁毎年雄英を凌ぎ、偏差値トップをとっている名門校じゃねぇか⋮⋮ !! !? ﹁はぁ 宇原 理 オリジン② 9 ﹁そんな名門校に、A判定 嘘だろ !!? ﹂ !!? てその学力を身につけたのだろうか 学校にまともに来てない癖に ?? した。 ﹁そういや先生。雄英行くやつ、このクラスに居ます たい目でみるだろうなぁ ﹂ 味方が居ないと解りつつも胸の奥が痛いな﹁なぁ﹂ へぁ ?? ﹂ たぶん、宇原くんも僕が無個性だということは知っている。となると、きっと僕を冷 自身も、俯いてしまった。 思考がちょっと他の事に向きつつもなんともいえない複雑な顔をした先生を見て、僕 み付かなかったなぁ。 僕はついでか。そうツッコミそうなのを抑える。そういやかっちゃん、宇原くんに噛 ! ?? ﹁へっ、あ、そうだよく聞け宇原、ウチのクラスからは爆豪が行くんだ あと緑谷な﹂ クラスざわつく中、宇原くんはうーんと何かを思い出そうと唸った後にあっと声を出 ?? それを、置いて次何処にいこうかという。可笑しいどころじゃない。ってかどうやっ れば行きたいと思ってしまう。 輝く将来と約束される沢条。その高校にはヒーローになれなくても学力が届いてい ﹁将来は確実言っていいほど困らないのに、な、なのに、次、どこにする、だって ?? 10 ﹂ ﹁へぁ ? ﹂ ?? 解ったのかな ﹂ ﹂ ﹁声出てるから。落ち着けよ緑谷﹂ ﹁へぁっ ってじゃない、そうじゃない お、お気に召して良かったです。 ﹁またへぁっ。いいな。へぁっへぁっ。可愛い動物の鳴き声みたいだな ? ﹂ ﹁んー。緑谷が行くなら俺も行こうかなぁ。普通科だけど。面白そうだし﹂ さっきの僕の真似をする宇原くん。どうしてこうなった。 脳がキャパオーバーを起こしてシュウウゥウ⋮⋮と煙を出す僕の手を取って起こし、 !!!!!! ! ? ひゃい、いきまふ、雄英、ヒーロー科の、ってどうして宇原くん、僕の言いたいこと くんだろ ﹁どうしてってそりゃ緑谷が座ってたから起こそうと思ったのと、あと緑谷、お前雄英い うし、 ななななななななんで僕の前に宇原く、あれっさっき扉の前にいたんじゃ、あえ、ど ﹁えっあっ、え !!!!?? って面白いな。俺も使おうかな﹂ ﹁へぁ ? 宇原 理 オリジン② 11 あ、かっちゃんが止まった。まだ思考動いてたと思われるかっちゃんが止まった。目 が。目が。怖いよかっちゃん。かっぴらいてるよ。 面白そうだから えっと、これは宇原くんにまでいじめられるフラグかな ?? 宇原くんの追撃。みみっちぃかっちゃんに大ダメージを与えた 相手のかっちゃんは⋮⋮ ﹂ ?? 知ってた !! ﹁ンだとテメェ でしょうね !!!! 平凡を自ら壊しにいって何言ってんだコイツ ﹁わぁ、こわい。俺平凡に暮らしたいんだけど﹂ 大激怒 !!!!!! ﹁また僕口に出てた ﹂ ﹂ !! ﹁すげぇな、面白いな もう嫌ですこの子 ! ?? でも僕もそうだよ。ちょっとよくわからない。ぼ、僕が行くから、宇原くんが来るの え ?? ﹁いや、そんなクズみたいなことしないぞ。餓鬼じゃあるまいし﹂ ?? ﹁そりゃ普通科行って普通に学んで普通に平々凡々と生きる﹂ !!!! !!!! ! 12 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 宇原くんショックより時間が経ち、今は放課後。 今朝の事がまとめサイト以外にニュースサイトトップにもあがり、これは更に詳しく まとめることが出来そうだ、そう僕は確信した。 確信した僕はノートを握っていた。まとめるために、リュックに戻そうとしていた。 坊っていうのはそりゃ認めるってか認めたくないけど認めざる負えない訳で。 懲 り な い な ぁ。そ う 思 う の は 何 度 目 か。幾 ら 僕 が 無 個 性 で 何 に も で き な い 木 偶 の 僕の大切なノートをスッと奪い、いじめっ子の顔で僕を見下ろすかっちゃん。 悪魔の囁きってこれのことだろ。デジャヴかなこれ。 ﹁話は済んでねぇぞデク﹂ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 13 だとしても放ってくれればどれだけ救われるか。みみっちぃ、とだけは心の中に仕 舞っておこう。 ﹁勝己ー、何それ﹂ マ ジ か ぁ ﹂と ケ ラ ケ ラ 笑 い、も う 1 人 は かっちゃんの後から2人のかっちゃんの友人が興味津々に僕のノートを眺める。 返してよ ﹂ ﹂と苦笑いをしている。 1 人 は﹁将 来 の 為 の ヒ ー ロ ー 分 析 ぃ ﹁くぅーっ⋮緑谷⋮⋮ ﹁い、良いじゃないか ?? ! させた。 けど僕の思いは虚しく届かず。かっちゃんは、ムッスリとした顔で僕のノートを爆破 膨れる様々な思いとは裏腹に震えた声でかっちゃんに懇願する。我ながら情けない。 そうだよ。良いじゃないか。僕の夢なんだ。ヒーローになるんだ。だから返してよ。 !! ! !! 14 ﹁ああああああ 放り投げた。 ﹂ 投げた筈だった。 ﹁っつーーー⋮⋮、誰だよノート投げたの。俺の額にクリーンヒットしたぞ あ゛っ、鯉くんそれ食べちゃ駄目だって ?? 掴み損ね 僕の気持ちを知らないかっちゃんは爆破したノートをそのままポイッと後ろの窓に 酷い。あんまりじゃないか。かっちゃんに何もしてないじゃないか。 ぷすぷすと煙を上げ、所々焼け焦げた僕のノート。 まさかとは思ってたけど本当にやってくれた。 !!?? て落ちちゃったし⋮⋮どこいった ﹂ !! ! ﹁いてっ﹂ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 15 ⋮⋮おお ナイス うわぁ⋮⋮とノートが落ちた先を見つめ、ノートが生臭そうだなぁ⋮⋮と呟き苦笑し た宇原くん。 い つ か ら そ こ に い た 僕も丁度思ってたところだったんだ ﹁テメェ、いつからそこにいた﹂ ナイスだかっちゃん⋮⋮ って叫んだ所から 後頭部をさすって此方に振り返る宇原くん。苦笑してる。 ﹂ 素っ頓狂な顔だな ! とにししと笑ってスマホを取り出し、僕達を撮っていく。 ﹁いつからって⋮⋮緑谷があーーー 面白い顔してんぞー ?? !! ?? !! 楽しそうで何よりです。あれ、これ2回目だ。 ! ! !! 16 ﹁⋮⋮はぁ する。 ﹂ ﹂ 緑谷が叫んだ時って、えっ、お前何処から来て⋮⋮ って答えたらいいか ﹂ !!? ﹁いやいやいやいや 俺は窓から ?? ! 2階だよ、登れるような足場もない。それをどうやって⋮⋮ ダイレクトに教室。楽チ ! ろ ﹂ 楽しいから暫くあれで登校するわ ? そっからぴょーんと ン楽チン。緑谷もするか !! ?? ﹁うはは、緑谷また口に出してるぞー。んっとな、窓からちょっと離れた所に木があるだ ?? いやどういう通学の仕方だよ。窓からって登って来たって言うのか。まって、ここは ?? !! かっちゃんの友人1人目が大きく叫び、友人2人目も有り得ないという顔をして質問 !!?? ﹁貴方の通学は何処から ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 17 ﹁出来るかこの野郎﹂ ﹁うお、緑谷のタメ口再び やったぜ ﹂ ! 不回避じゃないか そんな無茶なことして僕の全身打撲か一部骨折 !? あ、そっか。そうだよな。ごめん緑谷。米俵みたく担いで教室に届けるから許 ナチュラルに僕を怪我させようとする所、嫌いじゃないよ して﹂ ﹁怪我 ?? ﹁俺を無視するなんざいい度胸じゃねぇか能天気野郎﹂ い、限りがない︶ドスの効いた声が響く。 気づけば僕の隣にいる宇原くんに︵いつ移動したんだとは思うけどもうツッコまな 僕の扱いは米俵だった。そしてまた口に出してた。あれれ。 !! !! 僕が無個性なの知ってるんだよね 某人気アニメ宜しくゲットだぜみたいな言い方をする宇原くん。待ってよ宇原くん。 ! 18 BBBB 僕もそれ解るよ と連続して両手から爆破させるかっちゃん。成程、無視されるのは寂しい んだねかっちゃん 善悪が月とすっぽん並みに離れてるのに髪は柔らかい 新発見だ ﹂ !! ! あ、居たんだごめん。で、なんだっけ爆発頭の餓鬼大将くん、じゃなかった爆豪勝 己くん。おお !! ﹁え !! !! とぽふぽふとかっちゃんの頭を撫でてる宇 だ爆発頭の餓鬼大将って。あっ、まんまだ、そのまんまだ、って納得しちゃったよ僕 更にはその髪気になってたんだよなぁ ! おーい、爆豪勝己くーん ﹂ る、切れちゃうよ。抑えてかっちゃん。 それに対して怒りがもう有頂天どころじゃないかっちゃん。すっごい血管が浮いて 原くん。 !!!! 能天気は否定しないのか。というか宇原くんのネーミングセンスを問いたい。なん !! ?? ?? ?? ﹁ん ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 19 もうやめて宇原くん、かっちゃんの友人2人も僕も顔が真っ青だから。気づいて。お 願い致します宇原くん。 ⋮⋮あ、かっちゃんが諦めた目をしてる。あのかっちゃんが。お疲れ様だよかっちゃ ん。 ドンッと宇原くんを押しのけて、対象を僕に変更したかっちゃんはッハと嘲笑う。そ してかっちゃんはかっちゃんの人生計画を話していく。 ﹁一線級のトップヒーローは大体学生時から逸話を残してる﹂ ﹁逸話っていうけど原則ヒーロー以外は個性使用禁止なのに使ってるからみんな不良 だけどな﹂ さ。まぁ完璧主義な訳よ﹂ ﹁⋮⋮ 俺 は こ の 平 凡 な 私 立 中 学 か ら 初 め て 唯 一 の 雄 英 進 学 者 っ て い う 泊 を つ け て ぇ の 20 雄英受けるなナードくん﹂ ﹁みみっちい完璧主義だなそれ﹂ ﹁⋮⋮⋮っつぅー理由で一応よ い。 でも宇原くんは通常運転だった。 ﹂ !! ジョックを負かすわ !! か っ ち ゃ ん の 威 圧 感 は 凄 ま じ い も の だ。苦 し い。苦 し い な ぁ。息 が し に く い。苦 し んでくるし若干焦げ臭いし、痛い。痛いよかっちゃん。 にっこりにっこり。かっちゃんとしては珍しい満面の笑み。ギリギリと肩を握り掴 ? おっけ、ナードくん頑張っちゃう ?? ﹁え、なら俺もナード ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ① 21 お 前 は ち ょ っ と 黙 っ て く れ。 さっきから火に油どころか、ガソリン注ぎまくって大炎上してるんだよ宇原くん !!!!!! あっあっ、かっちゃんが、もう放送禁止状態の顔だ、かっちゃん、抑えて、頑張るん だかっちゃん !!!! 拝啓、母さん。 かっちゃんが息してません。僕はどうしたらいいですか ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 22 ■□■ その姿にはちょっとだけかっちゃんも怯んでたんだ。 彼は愉快そうに笑った。 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② 23 ﹁そんなにヒーローに就きてぇんなら効率の良い方法があるぜ ﹂ ﹁屋上からのワンチャンダイブ ﹁⋮⋮⋮⋮ッ ﹂ 言うな。言うな。それを言ったら駄目なんだ ﹁来世は個性が宿ると信じて、﹂ ﹂ 宇原くんに珍しくいじられつつも、教室を出ようとするかっちゃんが言ったんだ。 ? ケラケラとかっちゃんの友人は笑う。言い返そうとしても、かっちゃんは睨んでく 僕は悔しかった。だから俯いた。悔しくて悔しくて、泣きそうだった。 言っていいこと悪いこと。幼稚園、小学生で習ったはずだ。 どんなに優等生だとしてもそれはタブーとなる。 !!!! !!! 24 る。 ﹂ ?? そんな中、彼、宇原くんは言った。 ダイブにチャンスあるのか ?? ﹂ ﹁なぁなぁ、ワンチャンダイブってなんだ ﹁はぁ ⋮⋮ しだよ ﹁ハッ ﹂ ﹂ よしよし。バク ちげぇよ。ワンチャンダイブってのは﹁もしさ、も なぁんだ 屋上から、飛び降りろって、言ってるんならさ﹂あ゛ バンジージャンプだってよ そっか ! ?? ?? !! ﹁その場を見る責任を持つって言ってるんだよな ゴーくん ! ! ?? !! ⋮⋮ 違 う よ 宇 原 く ん。そ ん な 優 し い 話 じ ゃ な い よ。か っ ち ゃ ん 達 が 言 っ て る の は ?? ?? ﹁ワンチャンダイブ⋮⋮ワンチャンダイブ⋮⋮あっ、バンジージャンプってことか ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② 25 26 楽しい楽しい喜劇だ ⋮⋮⋮⋮⋮⋮。 待って ﹂ ふわりとした風。下を見れば遠くに地面がある。 目の前に広がるのは綺麗な青空。今日も晴天だ。 きっとこれは、夢なんだろうか。 !! これって ﹁へぁ ﹂ ﹂ ワンチャン たーまやああぁあああああああああああ ﹂ う という 死んじゃう ダイブ !!!!!! 名の大ジャンプ ちが、はなっ、花火じゃ、ヒィッ、おちっ、落ちる !!!?? ﹁花火じゃない わああああああああああああああああああああああ ドンッ !! !!!! !!!! !!!! !!!! !!!! !!!! !!!!???? ﹁3階窓からーーーーーーー俺と緑谷がぁーーーーーー ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② 27 28 机や椅子をなぎ倒し、急いで窓に向かった。 嫌な音と共に僕の目の前は真っ暗になったのだった。 ■□■ ガタンっ !!! まさか。 本当にやるとは思いもしなかったのだから ﹁あっ、ああああアイツいまとん、飛んでっ、﹂ ﹂ !!?? が、染まって、無事じゃない、無事じゃないことは解って、﹁⋮⋮ーい ﹂る ?? 窓の先が見れない。見る、勇気がない。デクが、能天気野郎が、いる、したに、身体 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ ぎゃあぎゃあとモブ共が五月蝿い。黙れ。黙れよ、俺じゃない、俺じゃないんだ。 ﹁おっ、俺見てないぞ、見てないからな ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② 29 !! ﹁⋮⋮⋮⋮ ﹂ 目の前が黒く染まる前に、声が聞こえた気がした。 ﹂ うひゃー 声って事は、⋮⋮ 気の所為だろう。ああ、でもどうしよう。この後、どうすれば、いいのだろう、 ﹁おーいってば ジンジンするー 今度は鮮明に聞こえた。アイツだ。能天気野郎の、声、声 窓から下を見た。 足がー !! !! ﹂ !!!! !! ?? ﹁よっ。バクゴーくん、ちょいっと助けてー ! ?? !! 30 ﹂ 生きてた。居た。ピンピンしてる。地面にぺたりと座り込んでる。 うるせえ、助けにいこうとか、思って、ねぇから、 うるせえ。声、震えてねぇから。 !!!! うるせえ、脚が、勝手に動いてるとか、知らねぇ、から ■□■ !!!! ﹁⋮⋮あんっのクズ、野郎 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② 31 32 なら大成功 ⋮⋮⋮⋮テメェ 驚いたか こしてくれよー よしよし、ごめんな、怖かったよな って言いたいんだけどさ。いてて、バクゴーくん、優しく起 おお。効果は抜群だ うるせえ お いだぁっ でもなー、俺はそう簡単には死ねないし、バクゴーくんが同じこと言 褒めろ !!?? ! !! そりゃ怖いさ 身体張ったぞ !! !! 撫でんな。⋮⋮⋮⋮⋮⋮怖く、ねぇのかよ !! !! ?? !!!! えないようにする為にと思ってな !! ?? ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ② 33 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮ 怪我人なんだけど バクゴーくん ぎゃぁああああ いたっ、ゲン !! 頭 !! あだっ、いでっ、ちょ、俺怪我人 コツぐりぐりすんのやめ、あだだだだだ きゅぅうう⋮⋮⋮⋮ ほら !! !! !! !! !! バクゴーくん、お手伝い !! あっ、そうだ緑谷 ⋮⋮⋮⋮うるせえ !! 34 ! バクゴーくん後で飲み物奢れ 仕方が無いなぁ、そんなに怖かったならこの宇原くんが一緒に帰ってあげよう ⋮⋮⋮⋮ん。 ひゃほう !! よし、承ったぞー 緑谷起こして帰るかー よ なんで俺g⋮チッ⋮⋮ なにがいいかなー !! !! ! わーいわーい飲み物ー !! !! ﹁んあ ?? すれば、なんだあれ。商店街入口が人混みで溢れに溢れている。 途中、爆発音が聞こえ、案外現場が近かった為ふらりと寄ってみた。 を歩いていた。 あれから宇原は爆豪に飲み物を奢って貰い、別れた後、家には帰らずぶらぶらと街中 ﹂ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 35 つまり逃したって訳か。 つかあれ人間の形してないな。 少し近くに寄れば、敵が出ただの、ヒーローが捕まえた奴だのなんだのと聞こえる。 なんだ うげぇ、なんかドロドロしてる。流動性の個性か ぼんやりと敵が居るで在ろうところを眺める。 ﹁これまたどんちゃん騒ぎだなぁ﹂ ?? ていった。 変な敵も居るもんだなぁ⋮⋮と、関心しつつ今日の夕飯の献立何かなと思考を逸らし ?? 36 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 37 が、1 人 の 学 生 に 目 が い っ た。あ れ っ て 緑 谷 だ よ な。何 し て ん だ ノートにヒーローの事まとめてたからそれに付け加えるのか。 ははーん。後ろから驚かせてやろう。 思い立ったが吉日。宇原はすぐ様実行に起こした。 あ れ か、な ん か ?? 38 敵は焦っていた。 自身が捕まらないように、逃げれるように、それには隠れる為の器が必要だった。 No.1トップヒーローにより捕まえられ、その後ペットボトルの中で目覚めた。 あの野郎、そうだ、あの野郎がいなければ⋮⋮ 憎悪は膨れ上がって行き、身を震わ せていた。 しかしこのまま閉じ込められていては何も出来ない。どうにか脱出出来ないかと思 !!! 考を回していた時だった。 !!!! 大きな衝撃。景色が突然変わり、柱に当たって、蹴られたのかと理解するまでそう時 間は掛からなかった。それに奇跡だ。蹴られた衝撃で蓋が空いた。出れる、出れるぞ 喜びに浸りつつ、ドロドロと出ていけば、 なんと運の良い事か。 ﹂ !!!! 目の前にいた学生に勢いよく覆いかぶさった。 ﹁良い個性の、隠れ蓑ォ⋮⋮ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 39 ﹁うあああああああ ﹂ !!!!! 40 ﹂ !!!!!! ﹁なんて卑劣な⋮⋮ ﹂ だが、敵には攻撃が効かず、投げ飛ばされる。 ヒーローのデステゴロは前に出た。雄叫びをあげ、囚われた学生を救おうとした。 !!!! 商店街通路真ん中で、敵が暴れまわり、よく見れば学生を人質として取っていた。 要請され駆けつけたヒーロー達は絶句した。 まさに阿鼻叫喚。建物は崩れ、ガラスが勢いよく割れる。 ﹁敵だあぁああああ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 41 42 悔しいが他のヒーローに譲 仲間のヒーローは打ち付けられたデステゴロを見て、これは部が悪過ぎるどころじゃ ない、そう確信した。 Mt.レディが言う、二車線以上じゃない通れない シンリンカムイが言う、火は苦手とする、我では無理だ る !! !! 今どうなってやがる !!!!?? バックドラフトが言う、こっちは消化で手一杯だ !!! !! ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 43 周りは炎に包まれ、良い個性の子が逃れようと暴れ回っている。悪い事が重なりに重 なって最早地雷原だ。 もう少し耐えてくれ 無理だ、この場にいるヒーローじゃ立ち向かえない。場にあった個性のヒーローが来 るのを待つしかない。悪い、学生の子⋮⋮ !!!! 後ろから1人の少年と遅れてもう1人の少年が走って出てきたのだ。 目を見開いた。 その場のヒーローがそう願っていた矢先の事だった。 !! ﹂ 待て待て緑谷ー 俺もいくー ﹂ !! ﹁うああああああ ﹁おおおーーーー 戻れ ﹂ !!!! その出来事に驚き、反応を少し遅れたヒーロー達は叫んだ 1人は叫び、1人は楽しそうに走っていく。 ! !!!! !! 待て少年達 !!!! ﹁待て !!!! 44 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 45 リュックを大きく振りかぶって敵に投げた。 気づけば脚が勝手に動いてた。 僕のせいだ。解ってる。でも、何も出来ないくせに、なんで飛び出たんだ。 でも、かっちゃん。かっちゃん。かっちゃんが、いる。 ﹁デ、ク⋮⋮テメェ、なんで⋮⋮ ﹂ か、身体が勝手に⋮⋮ ﹂ !! ﹁わ、わかんない⋮⋮ ﹁君が、助けを求める、顔を、してた⋮⋮ そう僕が言ったと同時に、 ﹂ !!!! そうだ。飛び出た理由は解らない、でも、でも、 !! !! 46 ﹂ !!!!!! 後ろから付いてきていた宇原くんが敵に突撃していた。 ﹁ソォイ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 47 私は驚きを隠せなかった。 ヒーローになれるか、彼は私に聞き、私は彼に ﹁うっ、宇原くん ﹂ !!!!!!???? 目の前に広がる光景は何なんだ。 そう促して置きながら。 ﹁それ相応の覚悟を必要とし、そして現実を見なければならない﹂ 48 バクゴーくんを開放しやがれ人間じゃない何か ﹂ ﹂ ﹂ 吐けやオラァ 俺を人質にしろ オラァ !! なっ、何言ってるの宇原くん ﹁やいやい ﹁はぁ だってよ、すっげぇ苦しそうじゃん ﹂ !! ﹁ちがっ、ちょ、ああああああもう !! !!!! と雄叫びを上げてヘドロを掻きまくる宇原くんとい !!!! !!!! !!!! うおらああああああああああ !!!! !!!!!! !!?? !!?? ﹁えっ、違うのか ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 49 50 う少年。 そしてその宇原少年と共にヘドロを掻きつつ、宇原少年を注意する確か、緑谷少年。 2人の少年が、勇気を出し、闘う姿が広がっている ズルリ。ドシャッ。 !!!! やったぜバクゴーくん ゲットだぜ ﹂ ﹂ !!!! ﹁おっ ﹁ゲホッ、ゲホッ、﹂ なんということだ。 少年達が人質を救出した !! ヒーロー達はすぐ様人質に取られていた学生を回収に向かう。 !!!! !!!! !! ﹁かっ、かっちゃ、かっちゃん ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 51 52 あとは場に合うヒーローが来れば解決する と叫んでいた少年は、 しかし悲劇は終わっては居なかった。 ひゃほう ヒーロー達は希望に満ち溢れた。 !! 人質とされていた学生と、緑のちぢれ髪の少年を担いでこっちに投げ飛ばしてきた。 !! ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ③ 53 そして、 そのまま、ヘドロに飲み込まれてしまったのだ。 さて、どうしたものか。 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 54 敵がこちらに襲いかかる、解っていたからこそ緑谷とバクゴーくんをヒーローがいる 方へぶん投げた。 ぶわっと目の前が暗くなる。 ククッ⋮⋮ 少しだけ視野が明るくなったと思えば、身体がヘドロに覆われて始めていた。 お友達を助けておきながら無様に捕まるか !!!! ﹁ヒヒッ、馬鹿だな君はァ ﹂ !!!! !! 大丈夫、苦しいのは45秒の間だけ⋮⋮大丈夫、ゆっくりと俺に身を委ねるんだ⋮⋮ ﹁ぐえー﹂ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 55 56 ﹁おいおい⋮⋮今君、俺に襲われてるんだぜ いや、余裕とかこれっぽっちも無いぞ。 ド畜生 棒読みとは随分余裕だなァ ヘドロが口に入ると思うと俺のプライドが許さないんだからな ﹂ ?? !! あー、でもこれ隙間から入ってくるか けど。 まずは空気の確保だ。一応、5分は息なしで耐えきれれる。無駄に動かなければ、だ ひぃー⋮⋮襲われる前に瞬時に口と鼻を両手で覆っておいて良かったぞホント。 !!!! ?? うか試みる。 ドロドロと腕や脚が覆われてはいるが、グッと脚先に力を入れて前に進むめれるかど ?? ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 57 が、やはり難しい。進む先がどんどんヘドロで溢れてる。キショい。 んあー無理かー。にしても臭いとかしないのが不幸中の幸いだな。臭いとかしてた ら俺絶対マッハで逃げるわ。 ふとヘドロの隙間からぶん投げた2人とヒーロー達、そして一般人が見えた。 なんかすげー、この世の絶望を見ているって顔だなぁ 別にただ俺じゃ無くなるだけであって。 誰か褒めてくれよ俺を いや、そう簡単には渡さないけどさ。渡せれないんだけどさ ジタバタと踠きつつも必死に口を保護してるんだぞ 手で覆ってるから話すのも一苦労なんだぞこっちは。 このヘドロ野郎。迷惑過ぎてムカついて来たぞ。 ﹁ゲホッ。煙たいし熱いし、なー、離せよこれー﹂ ﹂ !!!! ! てか多分これってもうちょっと抵抗しないといけないんだろう。 !! ﹁何言ってやがる⋮⋮君は俺のヒーローになるんだからよォ !! 58 ハラとか悲しいなアンタ﹂ 立場わかってるんだろうな ﹂ ちょっ、振り回すな俺を振り回すんじゃない ヘドロ お前の ﹁いや、お前がママになるんだよみたいなこと言うなよ。つかセクハラ。男の俺にセク ﹁言わせておけばクソガキ おこなの !!?? やめっあ゛っぢぃ !! 炎にかすっちゃう !!!! おこなの 炎 !! ???? !! 顔面にゲロってやるぞおい うおおおおおお !! !! !! !!!! ?? ﹁きゃー、助けてー、うおっ﹂ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 59 駄目だ、ぐるぐる目が回ってきた。 こんな激しい乗り物は初めてだぞ誰得のアトラクションだよ。 ﹂ 吐きそう、無理、勘弁してく、 ﹁宇原くん れ ? !!!! 60 ﹂ !!!! よ ﹂ !!!!!! ?????? ﹁能天気野郎 ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ ﹁今助けるぞ宇原少年 61 62 あ゛ん トが居るんだ ん ? ???? どうして少し離れたところにバクゴーくんと緑谷がいて、目の前にあのオールマイ OK。俺は今すぐにでも現実逃避したい。 突然の3つの言葉に確実にゲロりそうな気分を持ち上げる羽目になった。 ?????? つかオールマイトはまだいいよ。ヒーローだし。トップだし。それはまだ百歩譲っ て良しとしよう。 持って ﹂ ﹂ 問題は後ろに居る馬鹿野郎共だ。そう、お前らだ。 ﹁勝手に乗っとられたらタダじゃおかねぇぞテメェ !!!! バクゴーくんに怒られた !!!! 救われた後にバクゴーくんに殴られ 俺の身体を張ったあの行動︵9割が遊び︶を無に帰すつもりです !!?? あ、有難う緑谷、ゲロりそうだったけど立直したよ !!!! !! ただ今被害者キャンペーン実施中なんだけど !!? るフラグ乱立とか堪ったもんじゃない それになんで来た !!!!?? !! ﹁うっ、宇原くん、気を確かに ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 63 かねぇ 頭がこんがらがりつつある中 ﹂ 流石トップ。素敵だぞーかっちょいー スッとオールマイトが攻撃を構える。 かっちょいい 命懸け 痺れる憧れるぅー !! ッハ !! 何時だって !!!! ﹁ヒーローは 俺もそう思うぞオールマイト !! !! !! !!???? !! おお。そうだな。ヒーローは命懸けだな !! !! 64 嫌な予感しかしないんだ !! けどどうしてかなオールマイト ﹂ !!!! !! ﹁DETROIT SMASH ﹂ 彼の必殺技を叫び、大きく振り上げた。 !!!!!!!! そう雄叫びを上げるヘドロ敵に、力を込めるように体制を低くして、 ﹁オォオオルマイトォオオオオ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 65 66 ﹁あっ﹂ 宇原くん解ったよ、これモロに食らうやつだ。 気絶待った無しかな オールマイトの攻撃は轟音と共に暴風が吹き荒れ、ヘドロを吹き飛ばしていった。 !!!! ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ④ 67 軽くチートじゃねぇか。頭の片隅にぼんやりと考えながら、俺は宙に舞い上がりまし た。なんの感想文だよ。 流石に彼処まで視界が蒼に染められたの初めてだわぁ⋮⋮⋮⋮ 空が青いぜ⋮⋮ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ 声が聞こえる。1つ、じゃない、幾つも聞こえる。 懇願するような声とか、怒りの声とか⋮⋮ ﹂ 五月蝿いという気持ちも込めて唸りつつ、瞼を起こしてみた。 ﹁⋮⋮、 ?? 68 えっ、何事 目に飛び込んできたのはボロボロのTシャツに逞しい肩甲骨。 何事 ?? 、まあいいや、とりあえず降ろして貰って、運んでくれた方にお礼を伝えないとな。 あれ。なんで俺、担がれて⋮⋮ ?? ゆらゆらと体が勝手に揺れる⋮⋮誰かにかつがれているとみた。 目線を上げれば焼け焦げた建物。ぶら下がった腕は少し湿っている。 ?? 、宇原少年 ﹂ !!!! 降ろして、と声を出そうとしてみれば唸ったような声へと変えられた。 これ大切。 ?? !! ﹁ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ 69 はい先生。ドアップのオールマイトの顔が出迎えてくれるって誰が想像できるんで すか。 心当たりが⋮⋮⋮⋮⋮⋮無くも無かった。 がっと脇の下に手を入れられ上に掲げられる。ちょっと眉が下がって、如何にも心配 してますって顔。俺何かしましたっけ ?? んんんん 申し訳ない ﹂ ﹂ 私が勢いよく殴ってしまったばかりに、君が宙に飛んでい 顔に出ていたのだろう俺に優しいトップヒーローは何があったのか詳しく教えてく れた。 てね⋮⋮ ﹁君は気を失っていたんだ ﹁へー⋮⋮﹂ !! ﹁全くという程興味無さそうだね !!!! !!?? !! !! 70 そんなわけ無いですよオールマイト。これでも驚いてます。んん、そっか。吹っ飛ば されたのか。なら仕方が無いのだろう。いや、それよりも。 ミはインタビューだろうし。 どうせヒーローからは怒られる可能性が高い。警察は事情聴取だろう。んでマスコ それと同時にわっとヒーローや警察、そしてマスコミが駆け寄ってきた。 わたしながら、怪我が無いことを確認して、商店街入り口で降ろしてくれた。 俺の言葉にオールマイトは﹁あ、ああ、ええと、ちょっと待ってくれるかい﹂とわた ﹁さっさと降ろしてください﹂ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ 71 ﹁宇原少年 どうしたんだい ﹂ ? ﹂ こんな面倒くさいことがあると解っているならやることはただ一つ。 オールマイト。大変嬉しいですが今は感極まってる場合じゃない。 げんなりとしている俺に気付き、心配そうに見てくる ?? ﹁失礼します ﹁えっ﹂ !!!! 72 そう。やることは。 瞬時に構えてクラウチングスタート。全力猛ダッシュ。 ﹂ ﹂ そして。 !! ﹁っぎゃあ !!!! ﹁ソォイ ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ 73 74 遠くに居た緑谷に飛び蹴りすることだ。 と。 僕達が無事に救出された後、僕はヒーローに物凄く怒られていた。 君が危険を負う必要は無かったんだ ! 無茶にも程がある !! すると突然背後から大きな衝撃が襲ってきた。 耐えきれず顔面から地面とこんにちは。 ヒーロー達の驚く声が聞こえ、僕の安否を心配していた。 何たって勢いよく地面に顔面をぶつけたのだ。困惑するのも無理はない。 痛みに耐えつつ、後ろを振り向けば少しだけ息の上がった宇原くんがいた。 ﹂ !!!! 無事だったんだね !! ﹁おー。無事帰還したと言いたいけどオールマイトにサルベージされた様なもんだな﹂ ﹁あっ、えっ、宇原くん ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ 75 76 悔しいぞと言って苦笑する宇原くん。良かった。ぶじだったんだ。本当に良かった。 グッと涙が出そうなのを堪えて、彼のお腹を殴る。 ぽすっと気の抜けたパンチ。 それを受けた彼は、少し目を見開いた後、悪戯っ子の笑みを浮かべて僕の肩を叩いた。 と逃げていったが、 その後、僕を注意していたヒーローは宇原くんに興味を持ったらしく、宇原くんは質 問攻めにあい、 帰らせろ アットを食らっていた。 逃げた先に目を釣り上げたかっちゃんがいて、そのまま勢いよく、かっちゃんにラリ !!! ヘドロを殴ると言ったな、あれは嘘だ⑤ 77 宇原くんからカエルが潰れたような声を聞くとは思っても居なかったや。 彼の様子、会話を記録していく。 彼の個性の及び、発動条件、を調査。 実験対象者:被検体Eー06 記録者: 向田 xxxx.03.21 無題① 78 無題① 79 対象者の彼は被検体Eー06として登録されている。 Eに分類される彼等は、未知の個性を持っている。診断結果に出ない個性。結果が出 ない事=Error。その頭文字を取ってE。 今迄に誰も見たことの無い個性の集まり。 1人一つでは無く、1度に幾つもの個性が発見された子達も含まれている。 彼はその6番目に発見され、保護された。 未知の存在。大切に大切に保護されている。 彼等︵被検体︶は孤児院から連れて来る。 彼等がこの様に番号として名付けられ、個性の詳細、個性に関しての実験をする為に 保護される。 親から棄てられた孤児は、実験体として好物件である。 80 私達研究員は彼等の個人情報を一切知らされていない。 そのため、名前がわからな い以上、番号で呼ぶことしか出来ない。まるで道具のようだ。いいや、違う彼等もまた、 私達と同じ人間なのだ。 彼から名前を教えて貰うまでの間、エマと名付けることにした。 白で統一された殺風景な部屋。あるとすれば柵の着いた窓とその傍に横向きに置か れた木製の大人サイズの椅子。 もう一つ、変わったところを上げるならその椅子に白髪の小さな子供が座っていた。 柵越しの開いた窓からやわらかな風が部屋の中を駆ける。 子供特有の柔らかい髪はふわふわと揺れた。 ﹂ 今からぽつりとただただ座っている小さな子供に、質問をする。 ? 彼は1度だけ、吸い込まれそうな程の黒い瞳で私を見た後、何も答えず、瞳を窓の外 ﹁おはよう、エマ。気分はどうかな 無題① 81 82 へと戻してしまった。 エマを担当するのは私で118人目。 どの研究員も、一定の行動をした後、発狂し錯乱状態となっている。 何人かの元担当者の精神が回復した為、事情聴取をしてみたが、口を揃えて﹁黒の箱 を触っただけ﹂と言った。 黒の箱、とは何のことなのか。触っただけで精神に来す物なのか。 もう一度、彼にコンタクトを取ってみる。 足を揺らし始めた。 何も反応無し、やはりコンタクトは難しい。変わらず窓の外を眺め続け、ぶらぶらと ﹁エマ、幾つか教えて欲しいことがあるんだ。ああ、その前に自己紹介をしよう﹂ 無題① 83 84 初めて彼が私に声をかけてくれたのは、5月の桜が散り始めていた日だった。 鍵が幾つも掛けられた白い扉。この先に彼がいる。 今日もコンタクトを取ってみる。あれから約2ヶ月。少しは反応を貰えるだろうか。 そう不安に成りつつも重い扉を開いた。 無題① 85 中に入れば、床に桜の花弁が散らばっている。どうやって入ってきたのだろうか。桜 の木からここは遠く離れているというのに。 散らばった花弁の中に開いた窓を背景にして彼は立っていた。私を見つめて立って いたのだ。 あの時は時間が止まったような気がした。 それほど、私に対して反応を示した彼の瞳は美しかった。 86 吸い込まれそうな程の生気の無い黒色は鮮やかな翡翠色に変わり、じっくりと私を見 つめていた。 何か、何か話さなければ。 近付こう、そう決心した時、彼の口がゆっくりと開かれた。 ﹁⋮⋮⋮⋮エミナ・ヴァレンス﹂ ヒュッと、喉から聞こえた。 無題① 87 1度もその名を口にして無いのに。 ﹁⋮⋮ちがう、そう、そうだよ、お姉さんは、こうだゆか。アメリカから来て、とくべ つかにはいぞくされ、しぶしぶ、したがった﹂ ﹁そして不幸なことに、ボクを担当することになった。かわいそうに。いままでの人 みたく、せいしんかと友達になるとおそれている﹂ はじめはおぼつかない口調だったが、 次第と青年と話しているような口調に変わり、淡々と抑揚のない声で私の心情を明ら かにしていく。 彼の感情が見られない。顔にも声にも出ていない。 今、振り返ってみれば、私は彼に恐怖を抱いているらしい。 扉が開かない限りここからは出られない。 質問、あるんでしょ ﹂ それに研究員の私達の経歴も教えられていない筈。 ﹁⋮⋮黙ったままで良いの ? まずは、自己紹介。 突き動かされるように、ようやく開いた口を動かし質問をする。 硬直していた身体が緩んだ。 ? 88 ﹁はじめ、まして、エマ﹂ ﹁うん。はじめまして。エマってボクのこと ﹂ ? ﹂ ﹁え、ええ。被検体だなんて、貴方は道具ではないから﹂ ﹁へー。エマの名の由来は ?? 無題① 89 といったところ。 現時点で開示されている情報は彼の年齢、彼の学習能力、身体能力、仮定される個性 エニグマとはドイツ語で謎という意味を指す。 ﹁謎かぁ。まんまのボクだね。うん、気に入った﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮エニグマ﹂ 90 無題① 91 エマの年齢は3歳。小さな少年だ。 その小さな身体に反して、身体能力はそれ相応だが、膨大な学習能力値を持つ。 1度教えた事は忘れない。 どんなに些細な事でもだ。更には吸収した知識から応用へとどんどん展開出来ると のこと。 様々な学習を強制させた上は、エマの力に感嘆を漏らしていた。 だからこそ、私は彼への担当を引き受けたのだ。 誰かが言った言葉を思い出す。謎は謎を知っている、と。 なら、ならば、謎となる彼なら知っているのかもしれない。 木製の椅子に座り足をぶらぶらと揺らすエマを見る。 こんな小さな少年から知り得れるというのか。 淡い希望を持って、質問を問いかける。 ﹁⋮⋮エマ、2つ教えて欲しいことがあるんだ﹂ 92 ﹁2つか。うん。いいよ﹂ ﹂ 二つ目、貴方にとって個性と ?? は ﹁⋮⋮一つ目。貴方が出したとされる黒い箱って何かな ?? 可笑しい。そう言ってのける彼は、何処か可笑しいのだ。 て個性が権力である。 精神を来すものが贈り物と言うのか。それを、贈り物と言えるのか。そんな彼にとっ けだよ﹂ ﹁黒い箱はおくりもののこと。個性、んー。ボクにとっては権力そのものかな。それだ 無題① 93 権力 でなければーーー⋮⋮ それは一体何 ﹁⋮そうだね、ごめんなさい﹂ ﹂ 知識への欲求は良いと思うけど、約束は守ろうね。お姉さん、そう彼は続けて言った。 ? ﹁ええと、贈り物 ?? ﹁お姉さん、2つ、答えたよ﹂ ? 94 無題① 95 ﹁んーん。いいよ。お姉さんは今迄とは違うから。ああ、そうだ、一つ、記念にボクか らのプレゼント﹂ とん、と床に足を付け、ぺた、ぺた、ぺたり。 すっと私の手を取り、手のひらにペンダントを乗せた。 不思議なくらい、見とれてしまうペンダント。 ﹁お姉さんは危なっかしいから、首にでも掛けといてよ﹂ 96 これから先、頑張ってね と彼は口角を上げた。 何を、と聞きたい所だが今度で良いだろう。漸く、彼との新たな一歩を踏み出せたの だから。 数を指定すると彼はそれに従ってしまう。次から余り言うのは良くないのかもしれ ない。気をつけよう。 これで今日の記録を終了とする。 無題① 97 次、彼ともう少し話せれると良いが⋮⋮。 ガチャンと鍵が掛かった。 118人目の研究員が出ていった証拠。 長い付き合いになるのかなぁと床の花弁を眺める。 ああそうだ。自己紹介しないとね。 ぽすんと木製の椅子に座り、ぶらぶら足を揺らす。 から、それでも良いよ﹂ ﹁⋮⋮やあ。お姉さん、お兄さん。ボクはまことって言うんだ。エマって名前も貰った 98 宛ら可愛らしい少年の姿だ。 ﹁ボクはね﹂ その個性の副産物により出来たこの瞳。 外に出れば確実に狙われるであろうこの個性。 ﹁この個性が大嫌いなんだ﹂ 無題① 99 でも、一度約束した事は守らないといけない、そう教わってしまったから。 黒く濁った瞳を閉じて、そう言った。 首から、絶対に、外さないでね。 ﹁あのお姉さんを護らないといけないんだ﹂ 100 入試に特攻しよう① パタパタと玄関まで母親が走ってくる。 同じ藍色の長髪を揺らして、自分の息子の背を叩いた。 背中を叩かれ痛みでちょっと顔を歪ませる息子の顔を見てにっぱりと笑う。 ﹂ ! ﹁はいはい、母さんなんすか﹂ ﹁理 入試に特攻しよう① 101 ﹂ 緑谷くんって子、受かると良いね ﹁ふふ。沢山友達の応援するのよ ﹁へーい﹂ ﹁はい。鞄。良い時間ね ﹂ と拗ねる母親に ロー科を受けなかったのよー ?? た。 ⋮⋮もう。どうしてヒー 平々凡々が良かったんだよ母さん、とちょっと前の事を思い出しつつ息子は苦笑し 理なら行けるじゃない ! ! !! !! 102 入試に特攻しよう① 103 彼が受けたのは雄英高校普通科の推薦。 そこそこ︵どころじゃない︶成績が良かったことや あの日を境に模試の選択校を変更し受けてみたところ、 合格は確実だという結果が出た。 雄英の事を一切調べていなかった為、ネットや田村ちゃんで調べてみたところ、普通 104 科でも推薦と一般があった。 てっきりヒーロー科とかそっちの特別な科しか無いと思ってたからこそ、楽出来る わーと喜んだ。 良くやった ﹂と五月蝿 それなら先に推薦を、落ちたら一般で行けば良いやと能天気に推薦を出した所、合格。 一般を受ける必要性が無くなってしまったのだ。 受かった事を担任に言えば、 ﹁ヒーロー科じゃないが普通科 !! で。 田村ちゃんにも報告すれば、たわわな胸を揺らして大喜び。本日も胸がよくお育ち いほど騒ぐもんだから無視して進路担当の田村ちゃんに報告しに行った。 !! ﹁やったやった やったじゃない宇原くんっ もう宇原くんったら ﹂ ! 君 の 実 力 よ ﹂と バ シ バ シ 背 中 を 叩 か れ 片 手 を !! ﹁や だ ぁ !! !! という訳で、今日は何故外に出るかと言うと。 ぎゅっと両手で握り締められ困惑しつつも、一礼してから職員室を後にした。 !! ﹁有難うございます。田村ちゃんのお陰です﹂ 入試に特攻しよう① 105 106 今日は雄英の一般入試の日である。 どの科でも一斉にやるというところに雄英の施設の広さや完璧な準備に感嘆が漏れ る。 流石雄英。流石有名ヒーローを生み出す場所。そんなところでヒーローになる準備 が出来る。ははー、そりゃ倍率がぶっ飛んでるわ。 とんとんとローファーを確り履けた事を確認して、 と元気よく見送ってくれた。 鞄を背負い、行ってきます、と母に言えば、 いってらっしゃーい い。 特別に試験を見れるという事だから、折角だし緑谷の活躍する姿をこの目で納めた !! 入試に特攻しよう① 107 え バクゴーくんはって アイツなら行けるだろうし応援とか嫌がりそう。という ?? しかし、どうやらバスは何時もの通りには止まってくれそうにない。 るのを待つ。 バスの行き先のテロップが出た。ピンポーンと降りますというボタンを押して止ま ︽次は、雄英高校、雄英高校、です︾ 緑谷はほら、ドジっ子だから。不安で仕方が無いんだよね⋮⋮ か嫌がられた。 ?? 止まれぇ バス止めろっていってんだよ ﹂ !!!! ﹁オラぁ !!!! します。 それでは俺、宇原理は今から、あの有名なリフォームBGMと共にこの現状をお送り !! 108 一旦普通の良くあるバスの車内。窓からは風景が流れていく。 それを匠は目紛しい車内へと変えてくれました⋮⋮ ! 入試に特攻しよう① 109 110 何ということでしょう。平凡な日々にバスリフォーム︵ジャック︶を起こしたのです ⋮⋮ きます。 外への警戒心を怠えず、自慢の個性で作り上げたナイフをどんどん座席へと刺してい ! 入試に特攻しよう① 111 これが匠の技の一つである、﹁脅し﹂。 それにより、乗客は震え上がり、ぎゅうぎゅうと一つに集まって行くではありません か 初心を忘れない、という素晴らしい匠の心構え。 お手製のナイフを運転手に見せ、乗客を真ん中に集めさせる、この典型的な行動。 ! 112 我々乗客を魅せて︵震わせて︶行きます。 さて、この匠、匠へとなってから約10分。新人匠となります。 新人匠によるバス車内のリフォーム。 どのようにしてヒーロー、乗客、警察に魅せていくのか、匠の技が輝きます。 っ て こ う し ち ゃ 居 ら れ な い。折 角 緑 谷 の 活 躍 す る 姿 見 ら れ る と い う の に こ の ま ま じゃ間に合わない。 入試に特攻しよう① 113 周囲をみれば雄英高校を受ける学生もチラホラいる。 おいおい。だったら個性発動してでも匠を捕らえろよ⋮⋮ヒーロー志望とかじゃな いのか。 はて。⋮⋮輝く。そういや輝くと言えば。 あの曲を連想されるよな。そうそう、あの有名バンド。昔のバンドなのに今でも有名 なんだ。俺もお気に入りでさ。CDちゃんと買ったんだぜ。見つけるの大変だったん だ。 114 なんだっけ。サビの部分。そうそう、あれだ。 夢ーじゃないーあれもこれもー→ その手ーでドアをー開けましょーうー← 祝福がー欲しいのならー→ 悲しみを知りー 独ーりーでー泣ーきーましょー← そしてー輝ーくー ﹁ウルトラソォイ ﹁ブァーイ ﹂ ﹂ !!!! 俺はしがないサラリーマン⋮⋮ !! !!!!?? あ、ありのまま 今、起こった事を話すぜ⋮⋮ !! 入試に特攻しよう① 115 116 俺の隣にいた少年が突然に歌い始めたんだ。 夢じゃないあれもこれも、の時にゆっくりと立ち上がり、 その手でドアを開けましょう、で準備体操を始めた⋮⋮ そして、祝福が欲しいのなら、でゆっくりとしゃがみこみ、 悲しみを知りで、陸上で見かけるクラウチングスタートの体勢へと変えたんだ⋮⋮ 最後に、独りで泣きましょう、で腰をあげ、 そして、輝く、で敵へと走り出し、 !! !! 入試に特攻しよう① 117 掛け声と共に華麗な飛び蹴りを決め、敵が吹っ飛んでいった⋮⋮ !!!! な、何を言ってるのかわからねーと思うが、お、俺も何が起きてるのかわからなかっ た⋮⋮ 頭が可笑しくなりそうだ⋮⋮ な、なんなんだあの少年は⋮⋮ !! 飛び蹴りをした宇原はただ淡々と以下の行動をした。 た。 この場に居た全員が息を呑んで、すっきりとした顔でバスを降りていく宇原を見つめ 入試に特攻しよう② 118 入試に特攻しよう② 119 吹き飛ばした敵の腕を掴み思いっきり壁に叩きつけ、叩きつけられた衝撃により少し 浮いた敵の腹に勢いよく回し蹴りをした。 人を蹴ったとは思えないような鈍い音が聞こえ、敵はロングシートを通過し最後部の 壁面に座席へと激突した。 ﹁ぐ、ぎ⋮⋮﹂ 120 ずるずると敵が滑っていく。 回し蹴りをした少年はピクリとも動きはしない敵へと近寄り、ぺちぺちと頬を叩い て、敵が気絶したということを証明した。 一瞬の出来事であったが為に、これは夢なんじゃないか、と乗客全員はそう考えた。 ﹁全く。緑谷の応援に間に合わなかったらどうしてくれる﹂ 入試に特攻しよう② 121 諸行無常。あまりにも呆気なかった。 この少年は友人の応援をしたいが為に、 恐怖なんぞ微塵たりとも感じず、さっさと終われと言わんばかりの顔で、あの行動を 起こしたのだ。 122 つか、敵、敵は、い、生きてるよな え、えええと、助かったってことで良いの そう、じゃね 生きてるだろ、た、多分 で、でもよあれ⋮⋮骨逝ってる、だろ こそこそと乗客同士が話しあい、その結果ーーーーー⋮⋮ ?? ?? つまりはこんな友人を持つ緑谷って子も馬鹿強いのでは⋮⋮ ?? ?? ? ?? 入試に特攻しよう② 123 というこの場に居ないもう一人少まで飛び火が行ったという事だ。 ︽お待たせ致しました、次は雄英高校に到着します。お降りになるお客様は、停車する 迄車内を歩きませんようお願い致します。また、停車した際は足元にご注意してお降り 下さい。︾ 124 止まらず走行し続けたバスは無事に定刻通りに間に合った。 ピンポーンと鳴ったテロップに少年は﹁おっ﹂と嬉しそうな顔をして、車内の窓から 外を覗く。 入試に特攻しよう② 125 そうか、彼は、 雄英高校のヒーロー科の生徒だったのか。 私服姿であったこともあり、すっかりヒーロー科の生徒だと誤解を招き、この先にあ る出来事に宇原は気付いていない。 126 何事も無く、バスを降りれば受験生と警察、ヒーローでわんさか溢れていた。 ほー。あの運転手、ちゃんと仕事したんだな。流石。と片隅で考えつつするりと人混 みを抜けていく。 するすると雄英高校の正門をくぐり、 入試に特攻しよう② 127 ︽ ヒーロー科実技試験説明会場 ︾と書いてある場所へとパンフをガン見しつつ歩 いていく。 くっそう。広すぎる。どこだよ会場。緑谷の活躍をこの目で納めるんだ、迷ってらん ねぇ⋮⋮ ⋮⋮⋮⋮うひょーーー⋮⋮ ﹂ ! ﹁ここ、か ?? 数分歩き回って案内通りに進んでいけば大きな扉が見えてきた。 ! 128 すっげーーーーーでけぇ この中で今試験説明中 ほうほう⋮⋮⋮⋮ いえあー うん すっごい気になる。 え、えびばでぃせい 誰の声だ ?? ん ﹂ ?? んだこれ えっ、なんの説明 扉の中からなんかやたらとでかい声がする。 ?? でかすぎんだろ っ ﹁っはー⋮⋮すげぇ。なんだこりゃ⋮⋮説明会場だけでこんな広さかよ⋮⋮えっと !!?? でけぇ !!!! で け ぇ はーーーー !! !!!!! 目の前には大きな扉で、どーんと音が聞こえそうな位の重圧感。でけぇ⋮⋮ !! ?? ?? ?? ?? ?? !!!! ?? 誰だ ?? マイクか 大勢に対し くっそー会いたい 会いたい マイクだから⋮⋮あっ、プレゼン ヒーローが説明してるだろう。誰だ ?? 多分あれだろヒーローなんだろ て声を出すだろうから⋮⋮音⋮⋮マイク トか ?? いいなープレゼントマイクかぁ ?? ?? なんで声が聞こえ⋮⋮⋮⋮わー⋮⋮﹂ !! ﹁ん ?? !! ﹁おい﹂ すげー !! ﹂ !! !!!!!! ﹁っはっはー ぞ !! ﹁おい、そこの騒いでる君﹂ 入試に特攻しよう② 129 声が聞こえたから左右を見ても誰もいない、前は扉。 後ろを振り向けば⋮⋮⋮⋮ !! 死んでる !! どう見ても不審者ー⋮⋮どう見ても不審者だろ⋮⋮ っぽいの巻いてて、髪が長い。つか顔 ?? ?? 全身真っ黒でなんか、マフラー えっ、大丈夫なのかこの人⋮⋮ ﹁大丈夫だ﹂ 130 ﹁おっす、口に出てましたか﹂ ﹂ なんてことだ、お口ミッフィーしないといけないじゃないか。緑谷になっちゃう。 ﹁出てたよー。ところで君、此処で何してるの 不審者︵仮︶のマフラーの所にすっぽりと服をきた白いネズミがハマってる。 ?? ヒーロー科の実技試験を見れるって書いてあったんで来まし !! そうだ !! ああ ?? ⋮⋮⋮⋮なんかいる﹂ ﹁え 入試に特攻しよう② 131 132 くりくりとした丸い瞳でじーっと俺を見てる、すっごい見てる。 ﹂ このネズミ、校長だったよ マジかよ あーっ 世界は広いな ﹁そう、ネズミのようなネズミじゃないネズミ、そう それが僕、根津校長さ はっはっは ﹁⋮⋮Oh﹂ こ、校長だったーーー !!!! 成程、見た目で判断 !!!! !! !!!! と、なると⋮⋮この不審者︵仮︶も⋮⋮先生かなんかって事か しちゃいけないってこの事を言うんだなぁ⋮⋮ !!!! ?? !! !!!! ﹁で、見れるのはここじゃないよー えっどんだけ広いんだよここ。 あっちだよー﹂ バスに乗らないと行けないのか ぴっとちっさい手でバスを指さす。 バス ?? ?? ?? ﹂ く話さないし。ちょ、目が怖い、この校長、目がすっごい怖い、狂気が滲み出そう。 じーーーーーとまた見つめられる。なんだろうこれ、先生であろう不審者︵仮︶は全 うぼあーーーと変な声を出す俺に対して、根津校長先生は話を変える。 ?? ﹁ところでさ 入試に特攻しよう② 133 ﹁あっはい、何でしょうか﹂ っと危ない。思考吹っ飛んでた。おっす、ちゃんと聞きます。 ﹂ 狂気じみてそうな瞳をしっかりと見て話を聞く体勢へと入る。 ﹁君って何処科 ?? ﹁⋮⋮普通科 ﹂ ﹁あっ、普通科です﹂ ?? 134 ﹂ ?? あれ。ねぇ相澤くん。普通科だって。なんで 普通科ですね。何ででしょう ? ?? 怪訝な顔をした根津校長は不審者︵仮︶と話をする。 ﹁普通科ですよ 入試に特攻しよう② 135 2人 えっダメなの 、人と数えていいのかわからないけど同時に顔を上げるもんだから、流石に俺 でもビビる。 ﹂ ?? ﹂ ﹁推薦⋮⋮推薦⋮⋮、推薦 ﹁うす。推薦で﹂ ﹁推薦の、普通科 ?? ?? なんでって聞かれても、えっ、なに、普通科ダメなの ﹁ね、本当に普通科 ﹂ って、その不審者︵仮︶は相澤先生って言うのか。覚えとこ。 ?? ?? ﹁え。ふ、普通科です。推薦で受かりました﹂ ?? 136 ﹁普通科っす﹂ 何度も普通科なのかと聞かれ、普通科と返すこの会話。 また2人はこそこそとまた話し合う。 なんだ、なんなんだ、なんか悪いのか ねぇねぇ相澤くん、なんで彼、普通科なのさ ⋮⋮可笑しいですね、書類の通りであるあの個性であるならヒーロー科でないと非合 ?? ?? うーん⋮⋮あっ、いい事思いついたよ相澤くん、こん 理的です。それに先程のバスジャックでの身体能力もずば抜けています。 だよね。あれれ。手違いかな ?? 入試に特攻しよう② 137 なのどうかな⋮⋮ 彼もそっちに移動してくれるよね ﹂ よーし !! ⋮⋮⋮⋮⋮⋮良いですね、そうなるとすれば⋮⋮ ?? なっ、何でしょうか !! ね ﹁おっ、おお ?? ﹁ということで﹂ ! ぐるんっとこっちに向き直すのやめてくれませんかね、すんごい怖い。 ? 138 キラキラとした瞳で俺を見つめる根津校長。 ぴょーんと相澤先生から俺に乗り移って、俺の両手の上で、言った。 ﹂ ! ﹁今からさ、ヒーロー科実技試験受けてきてよ 入試に特攻しよう② 139 ﹁⋮⋮⋮ん ﹂ やっておいで ﹂ ! ほら、動きやすい服貸して上げるからさ ! ﹁拒否権は無しだよ !! ﹁相澤くーん、よろしくー ﹂ ﹁えっ、ちょ、待ってください、まっ﹂ ! ?? 140 その言葉と同時に相澤先生はマフラーらしきもので瞬時に俺を縛る。 誘拐だ おい ﹂ !!!! 先 !! これ誘拐 !! ﹁何故縛られた。何故笑顔だ。ちょ、引っ張るな、おい。引っ張るんじゃない。先生 生だろアンタら !!!! ってそうじゃない。そうじゃない た。動きにくいなこれ。 俺の声も虚しく、ずるずると引きづられる。ミノムシの体験出来るとは思ってなかっ !!! !!!! 入試に特攻しよう② 141 142 着替えたら会場に急ぐよー あの、待って。待ってよ。俺、普通科、普通科受かった、待って よーし !! えっ、えっ、えっ、まっ、ぎゃああああああああああ !!!!!! !! 入試に特攻しよう② 143 どうして実技試験受けなきゃならないんだよ !!!! 現実逃避をしつつも数十分前の根津校長の説明を思い出していた。 なんで素直に試験受けてるんだ俺⋮⋮ 目の前には大きなロボット。 入試に特攻しよう③ 144 ! 今からルールを説明するからその耳かっぽじって 無理矢理着替えさせられ、根津校長はキラキラした瞳でこの場所を説明してくれた。 ! ﹂ ﹁こ こ は 市 街 地 D だ よ ー よーーーーーく聞いてね ﹁う、うす﹂ 入試に特攻しよう③ 145 拒否権マジで無いのか、と言いそうになったのは黙っておこう。隣の相澤先生がすご く怖いから。 きる試験だよー。沢山稼がないとー試験は落ちるって訳だね ﹂ イントが割り振られているから、そのロボットを倒した分だけ、そのポイントを獲得で ﹁ヒーロー科実技試験は簡単に言っちゃえば、超大型、大型、中型、小型のロボットにポ 146 ! 超大 とぴょんぴょん跳ねる根津校長。ネズミ可愛いぞ⋮⋮ ﹁ポイント制っすか⋮⋮その、割り振られているポイントって幾つっすか﹂ いい事聞いたね宇原くん なんとなんと 手を使いつつ説明する根津校長にほっこりしたのは言うまでもない。 ﹂ ?? 型にはだね⋮⋮ !! ! ! ﹁大型は3p、中型は2p、小型は1pとして割り振られていてね 入試に特攻しよう③ 147 ぐっと溜めてきてる根津校長に不安を覚える。 ﹂ ってこ ?? な、なんだ サイズが大きいからやっぱポイントは大きく振られているのか とは真っ先に倒さないといけないのか⋮⋮ 根津校長は手をぎゅっと握りしめて俺に向かって突き出した。 ?? ?? そして今迄みた瞳よりも倍にして輝かせて言うのだ。 ﹁0pだよ !!!! 148 ﹁なんでだよ ﹂ !!?? ﹁えっ、なんでって⋮⋮そういう仕様だから⋮⋮﹂ なんで0 超大型の癖に !!?? ﹂ !!?? ﹁可笑しいじゃないですか、普通、超大型ならポイント増やすとかするじゃないですか、 入試に特攻しよう③ 149 死にはしないよ あは !! 大丈夫 !! 自由な高校だから !! ﹂ と笑う根津校長に俺は頭を抱えた。 雄 英 は 普 通 じ ゃ な い か ら ね はー ﹁お、そろそろ試験が始まるよ ! ﹁⋮⋮逃げるとかありっすか﹂ !! !! 150 ﹁無しに決まってんだろ﹂ 多分 !!!! !!!!!! 普通科推薦取ったのに。俺の個性がどうのこうのって根津校長に言われたけども うるさいやい。俺の個性はふっつーーーーの個性だぞ !! そんなこんなで悲しきことに、ヒーロー科実技試験に受けることになった宇原です。 ﹁うっす⋮⋮﹂ 入試に特攻しよう③ 151 う う ⋮⋮ そ ん な 理 由 で。受 け る 羽 目 に。な ん で だ よ。意 味 わ か ん な い ⋮⋮ マ リ カ し よ⋮⋮ そんな悲しみに暮れている俺に容赦なくロボットは来るってもんで。 可愛くもなんともねぇよ。壁と壁の間からひょっこり顔出すとかよ。 てて壊れた。 そう言いながら、宇原は襲いかかるロボットを軽く蹴れば、ロボットは大きな音を立 ﹁個性使えって言われてもさぁーー⋮⋮久しぶり過ぎて解らないんだよなぁ⋮⋮﹂ 152 入試に特攻しよう③ 153 幼少期のある日、自分が壁を右手でぺたりと触れば諸刃の如くボロボロと崩れた。 そして目の前には真っ黒な手の平サイズの四角の物体が浮いている。 それに驚いた宇原は、母親に報告しにいった。 154 今でも覚えてる。 母親の前で個性を使って見せればみるみると顔を青く染めて、自分の両手をぎゅっと と不思議に思っていたが、自分の母が目の前で泣く、 握りしめて、俯きながら悲願するように言うのだ。 ︳︳︳︳この子を護って、と。 一体誰にお願いしてるんだろ ということには軽くカルチャーショックをうけていた。 ?? 入試に特攻しよう③ 155 その後、母は自分の個性を普通だと言ってくれた。良くある個性だと言ってくれた。 きっとそうなのだろう。 でも、良くわからないけど、これは見せたら駄目なんだ。その答えを宇原は幼少期に 出したのだ。 あの約束を、破らないといけないのか。 いいや、守るべきなんだ。隠さないといけないんだ。 しかし、あの校長は個性を使えと。 自問自答を繰り返し、小型、中型、大型と順に蹴って殴ってとぶち壊してポイントを 稼いでいく。 ﹁⋮⋮⋮⋮﹂ 156 入試に特攻しよう③ 157 ただただロボットをぶち壊す。壊して壊して、ポイントを稼ぐ。 もうそれ以上は駄目だよ。 そう答えが出た時には。 158 周囲は無惨に破壊されたロボットが積み上がっていた。
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