特集 糖尿病性腎症の克服を目指して∼ up to date ∼ 糖尿病性腎症の 最近の経過と病期分類 荒木 信一 滋賀医科大学糖尿病・腎臓・神経内科 KEY WORDS ●糖尿病性腎症病期分類 ●微量アルブミン尿 ●寛解 ●eGFR は じ め に 期腎症と診断している。その後,アル ブミン尿が徐々に増加し,持続的に尿 糖尿病性腎症は,糖尿病に特異的な 蛋白が陽性(顕性蛋白尿)となる。一部 細小血管合併症の1つであり,慢性腎 の症例では,ネフローゼレベルの高度 臓病(chronic kidney disease;CKD) な蛋白尿を呈する場合もある。その後, の主たる原因疾患である。また,腎症 比較的急速に腎機能が低下し,末期腎 の発症・進行に伴い,糖尿病患者の生 不全へ至る経過をとる。このような段 命予後が悪化し,心血管疾患の発症リ 階的な腎症の臨床経過は,主として1 スクが高くなることより,腎症の発症・ 型糖尿病患者の自然史における腎症の 進展を阻止することが,予後改善を目 臨床経過に基づいている。2型糖尿病 指した糖尿病治療の目標であるともい 患者では,糖尿病の発症時期が明確で える。そのため,適切な糖尿病の治療 はないため,糖尿病と診断された時点 戦略を構築すべく,腎症の臨床経過とそ で,すでに腎症を合併している場合も の特徴を理解する必要がある。 あるが,2型糖尿病患者においても, 典型的には同様の臨床経過をとる。 Ⅰ.腎症の自然経過 典型的な腎症の臨床経過では,そ Clinical course and classification of diabetic nephropathy. Shin-ichi Araki[講師(学内)] Ⅱ.腎症の病期分類 の 早 期 変 化 と し て, 糸 球 体 濾 過 量 腎症の 「確定診断」には,腎組織によ (glomerular filtration rate;GFR)の る病理診断が一助となる。しかしなが 増加(hyperfiltration)と尿中アルブミ ら,腎症の 「確定診断」のために,すべ ン排泄量の増加が認められる。現在, ての糖尿病患者に対して腎生検を行う この微量アルブミン尿の出現により早 ことは現実的ではなく,病理診断は腎 Pharma Medica SAMPLE Vol.34 No.6 2016 9 Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.
© Copyright 2024 ExpyDoc