冬眠する哺乳類シリアンハムスターに学ぶ冬眠するための準備とは?

冬眠する哺乳類
シリアンハムスターに学ぶ
冬眠するための準備とは?
講師:山口 良文
東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室
さきがけ、科学技術振興機構
冬眠は、寒冷・飢餓などの過酷な環境を、代謝を極限まで抑制し低体温状態で乗り切る生命現象。
哺乳類は外界温度に依存せず体温を一定に維持する恒温性を獲得したが、その中にもクマやリスを
はじめ低体温状態で冬眠できる「冬眠動物」が存在する。
ヒトをはじめとする多くの哺乳類は低体温耐性がなく冬眠できないことを考えると
これら冬眠動物の備える冬眠能力は驚異的であるが、その実体は未だ殆ど不明である。
本講演では、最近明らかにした基礎体温値および体重セットポイントの変更、および肝臓や
白色脂肪組織における生理変化について紹介するとともに、その冬眠における意義について議論する。
日時:H28年3月23日(水)17:00~18:30
場所:医学部北棟5階 IGMセミナー室
山口 良文 (やまぐち よしふみ)
1975年、東京生まれ。1999年京都大学理学部卒業。
2005年京都大学大学院生命科学研究科博士後期課程修了、博士(生命科学)。
自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンター研究員を経て、東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室・助教、
2012年より科学技術振興機構さきがけ研究者(兼任)専門は発生生物学、細胞死の分子生物学、冬眠学。
2006年に一本の冬眠論文に出会ったことで冬眠研究に魅入られ、4年前から本格的に冬眠研究を開始した。
冬眠制御機構の解明は、知的好奇心を満たすだけでなく、野生動物が備える生存戦略の理解や、
虚血障害・脂質異常症・糖尿病・冬期うつ症等の病態理解や臓器保存・人工冬眠法の開発など医学的応用展開も期待され、
興味と実益を満たしうる生物学上の重要課題といえる。山口先生らは近年、冬眠する哺乳類であり実験的操作が比較的容易な
シリアンハムスターを用いて、冬の冬眠できる生体状態と、夏の冬眠できない生体状態との違いおよびその変換機構について
研究を行っている。これまでに、安定した冬眠誘導系の樹立により、シリアンハムスターが長期間の短日寒冷刺激に応答して
冬眠に先立ち示す生体リモデリングを複数明らかにしている
連絡先:遺伝子病制御研究所動物機能医科学研究室 三浦恭子
内線6053