第三者意見 す。商船三井グループでは、 これまでもフィリピンに訓練セン 株式会社日本総合研究所 理事 足達 英一郎 経歴: 経 営 戦 略 研 究 部 、技 術 研 究 部を 経て、現職。 主に企業の社会的責任の観点から の産業調査、企業評価を手がける。 ターを設置し船員の訓練に力を入れてこられました。海運会 社では、優れた人材が活き活きと活躍できる職場が、安全 運航と環境保全の優位性の礎にあるはずだと考えられま す。2018年6月の開校を目指す同校の存在が、商船三井 グループの確固たるインフラとして機能することを期待い たします。 第四は、商船三井人事部のダイバーシティー推進担当の 新設です。現在は、主として女性活躍推進の取り組みを進め 商船三井グループの安全・環境・社会報告書への第三 ておられるとのことですが、海外に36カ国・地域に主要拠点 者意見の寄稿も、今回で4回目となりました。本号を通読 を擁するという現状に照らして、グローバル人事制度の して、2015年度においても、社会的責任を積極的に果 確立が多国籍で多様な人材が自らの能力を最大限発揮で そうとする商船三井グループのいくつかの新しい挑戦に きる環境整備のゴールになるでしょう。 また、 そのことが世界 注目しました。 最大級の総合海運会社の競争力に直結すると確信します。 第一は、 IT戦略委員会と技術革新・環境対策委員会の 是非、長期的スパンで施策を牽引いただきたいと考えます。 設置です。海運会社の重要課題として、安全運航と環境 この1年の出来事を振り返ると、第21回国際気候変動枠 保全が特定されることは自然の流れであり、 さらに両者が 組み条約締約国会議(COP21)が採択した 「パリ協定」 で、 密接に結びついていることが特徴です。今回、ICT(IoT / 改めて地球温暖化防止に向けた国際的合意が成立しまし ビッグデータ)の活用で、さらなる安全運航・環境保全に た。商船三井グループの単位輸送量トンマイル(外航船舶) 挑戦する姿勢を明確にされたことを評価したいと考えます。 当たりCO 2排出量は、着実に低減傾向にありますが、国際 第二は、新たな 「賄賂等防止規定」 の制定です。海外の 海事機関(IMO)で検討されている各種条約や規則の方向 海運会社では、 これまでにも主として発展途上国で荷役や 性を鑑みると、将来的に事業活動が制限されたり、多額の 通関に伴うファシリティ・ペイメントの支払いが問題化する 追加的費用を負担しなければならない可能性が皆無とは 傾向がありました。また、 アフリカなどでは現地企業の違法 言い切れません。環境規制を先取りする取り組みに、なお 取引に海運会社が関与しているとの批判も存在していま 一層、注力していただきたいと思います。 す。商船三井では2015年度に、役職員向けに内外の法規 さらに、国連が採択した 「我々の世界を変革する:持続可 制の概要と留意点について講習会を実施されたとのこと 能な開発のための2030アジェンダ」 のなかで掲げられた ですが、今後もこうした取り組みを海外拠点やグループ会社 17の目標と169のターゲットからなる 「持続可能な開発目 にも拡大され、Business Ethicsの確立に一層、注力して 標 (SDGs) 」 は、国、企業、市民団体などのあらゆる主体が、 いただくことを期待いたします。 今後取り組むべき社会課題の存在を明確に示しています。 第 三 は 、フィリピ ンにお ける自 営 の 商 船 大 学 M O L Magsaysay Maritime Academy Inc.の設置許可取得で 商船三井グループが、SDGsの達成に本業でどう貢献でき るかも、今後、社内で議論いただきたいと願います。 ご意見をいただいて 当社グループの社会的責任の履行に向けた新たな取り組みに対して評価いただきありがとうございます。今回評価 いただいた4つの取り組みは、当社グループが掲げる企業理念の実現、並びに総合海運会社としての社会的責任の履行 と競争力強化に不可分な取り組みであり、 こうした挑戦無くして我々の持続的成長は無いとの強い意志のもと、施策を 着実に実行してまいります。また、ご指摘いただいたSDGsの達成に向けた当社グループの取り組みについては、当社 グループが果たすべき課題につき、社内での議論を進めてまいります。 引き続き、透明性の高い経営を推進するとともに、CSR委員会の活動を通じて商船三井グループ全体のCSR意識を 45 高め、積極的に社会に貢献する企業としてステークホルダーの皆さまからさらなる信頼を得られるよう、弛まぬ努力を CSR委員長 副社長執行役員 続けてまいります。 永田 健一 商船三井グループ 安全・環境・社会報告書 2016
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