別紙1 PGRAsiaプロジェクトの概要と今後の連携について

別紙1
PGRAsiaプロジェクトの概要と今後の連携について
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アジア植物遺伝資源プロジェクト(Plant Genetic Resources in Asia)の概要
農研機構遺伝資源センターでは、平成 26 年度から農林水産省委託プロジェクト研究「海
外植物遺伝資源の収集・提供強化(PGRAsia プロジェクト);平成 26 ~ 30 年度」を受託
し、現在、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー及びネパールの 5 カ国と二国間共
同研究協定を締結し、海外の新たな植物遺伝資源の導入やそれら遺伝特性の解明等に取り
組んでいます。
共同研究機関
ベトナム;農業科学アカデミー
ラオス;国立農林業研究所
カンボジア;農業開発研究所
ネパール;農業研究評議会
ミャンマー;農業研究局
【共同研究契約】
技術移転
病害虫抵抗性等の
特性評価
未探索遺伝資源の
収集
中間母本等の育種
素材の育成
農研機構(遺伝資源センター、野菜
花き研究部門、北農研、作物開発
センター)、JIRCAS、筑波大、弘前大、
龍谷大、岡山大、信州大、東京農
大、愛知県、茨城県、高知県、新潟
県、岡山県、宮崎県
win-winの関係
有用な海外遺伝資源や特
性情報を日本に導入
アクセス可能な遺伝資源
1万点以上増加
2
27年度までの主な研究成果
(1)海外植物遺伝資源の探索・導入
上記 5 カ国との二国間共同研究協定に基づき、平成 27 年度までに約 1,000 点の新規
海外植物遺伝資源を探索し、その一部を国内に導入しました。新たに導入された植物遺
伝資源は、現在、遺伝資源センター等に保存され、今後、PGRAsia プロジェクトに参
画している国内の大学や公設試験場等において遺伝特性の解明作業等を進めることとし
ます。また、有望なものは(一社)日本種苗協会会員の民間種苗会社の方々の御協力を
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得て、遺伝特性の更なる解析・確定や種子の増殖等を進め、国内における育種素材とし
て活用して参ります。
表1 海外植物遺伝資源の探索状況
対象国
探索した遺伝資源
収集点数
ベトナム
キュウリ、カボチャ、アマランサス等
約 160 点
ラオス
イネ、ナス、トウガラシ
約 1400 点
カンボジア
メロン、カボチャ、トウガラシ等
約 360 点
ミャンマー
カラシナ、ダイコン、トウガラシ等
約 120 点
ネパール
トウガラシ、アマランサス等
約 90 点
(バングラデシュ国で発生している
(カンボジアの多様なメロン)
いもち病菌株での検定事例)
図1
導入した植物遺伝資源の事例
(2)病害虫抵抗性等の遺伝特性の解明
種苗業界等からのニーズの強い野菜類については、上記遺伝資源の導入を待つことな
く、既に遺伝資源センター(ジーンバンク)が保有している海外産遺伝資源のうち、約
4,000 について病害虫抵抗性等の遺伝特性の解析作業を進めました。今後も民間種苗会
社の方々の御協力を得ながら本作業を加速化することにより、未だ解明されていない有
用な遺伝特性を持つ育種素材の発掘に努めて参ります。
①
病害虫抵抗性
27 年度までに、ナスの青枯病抵抗性など有望な植物遺伝資源(育種素材候補)が 100
点以上見出されています。このうち、キュウリの炭疽病抵抗性、ナス及びトウガラシ
のネコブセンチュウ抵抗性については、これまで抵抗性を有する育種素材が国内には
存在しないことから、今後の育種素材としての活用が期待されます。
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表2 特性評価で明らかになった病害虫抵抗性の種類
品目
抵抗性を示す病虫害名
キュウリ
褐斑病、炭疽病
メロン
うどんこ病
ナス
半枯病、半身萎凋病、青枯病、ネコブセンチュウ
トウガラシ
青枯病、疫病、ネコブセンチュウ
※波線はこれまで抵抗性を有する育種素材が国内には存在しないもの。
<参考>
キュウリ炭疽病:キュウリの夏秋栽培で問題となる糸状菌。
葉や茎、果実等に病斑(右写真)が生じ、生育
を阻害。
ナスのネコブセンチュウ病:土壌伝染性の害虫。高温条件下
で発生しやすく、線虫に侵された根はコブ状(右
写真)になり、生育が著しく抑制。
②
その他有用な特性形質
このほか、国産カボチャの端境期の解消に向け、長期貯蔵が可能なカボチャ素材、
辛みが少なく機能性成分(カプサンチン)に富んだトウガラシ素材等が見出されてい
ます。
(長期貯蔵が可能なカボチャ)
図2
3
(高カプサンチン含有トウガラシ)
有望な植物遺伝資源の事例
(一社)日本種苗協会との今後の連携
本年6月、農研機構遺伝資源センターと(一社)日本種苗協会との間で共同研究協定を
締結し、ジーンバンクに所蔵されている海外から導入した野菜等植物遺伝資源の遺伝特性
の評価や、育種素材としての種子の増殖、PGRAsia プロジェクトの下での海外遺伝資源
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の共同探索等について協力して取り組むことを確認しました。
本年度は、遺伝資源センターに所蔵されている海外植物遺伝資源(野菜類;上記2の
(2))について、(一社)日本種苗協会がとりまとめ窓口となり、関心のある民間種苗会
社の方々に遺伝特性の評価等に御協力いただき、得られた特性情報等をジーンバンクのデ
ータベースに公開し、今後の育種素材としての利用を推進することとします。また、
PGRAsia プロジェクトの下での海外共同探索が可能となるよう、相手国との協議を進め、
可能な国から共同探索に随行・協力いただくこととします。
遺伝資源センター
植物遺伝資源
うち野菜類
PGRAsiaプロジェクト
約22万点
約2万6千点
相手国ジーンバンク
所蔵遺伝資源
主な野菜の保存点数
ウリ科(キュウリ等)
約6800点
ナス科(ナス等)
約6900点
アブラナ科(キャベツ等)約3400点
ユリ科(ネギ等)
約800点
キク科(レタス等)
約400点
現地探索により獲得された
新規植物遺伝資源
(一社)日本種苗協会を窓口として
①遺伝特性評価
②種子の増殖
③現地探索調査
+
について民間種苗会社が協力
図3
遺伝資源センターと(一社)日本種苗協会との連携
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