2016 年7月5日現在 『みんなが欲しかった! 介護福祉士の教科書』 最新情報レジュメ 2016(平成 28)年7月1日、社会福祉振興・試験センターより、介護福祉士国家試験の新しい出 題基準が発表されました(出題基準の詳細は、同センターのホームページをご参照ください → http://www.sssc.or.jp/kaigo/kijun/index.html)。 新しい出題基準に基づき筆記試験の試験内容に変更がございますので、最新情報を下記のとおり取 りまとめました。ご参照いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 TAC出版 筆記試験の試験内容の変更点 ◎出題数と試験時間◎ 従来の3領域「人間と社会」 「介護」 「こころとからだのしくみ」と「総合問題」に加え、 「医療的 ケア」が新領域として追加されます。「医療的ケア」からは5問が出題される予定で、総出題数は 125 問になります。 この変更にともない、試験時間は午前(110 分)、午後(110 分)の合計 220 分に拡大されます(『教 科書』ⅹ~ⅹⅰページ)。 区分 領域 区分 領域 人間と社会 人間と社会 午前 (16 問) 午前 (16 問) (110 分) 介護 (110 分) 介護 (52 問) 午後 (40 問) (100 分) 総合問題(12 問) 合計 ⇒ こころとからだのしくみ (52 問) こころとからだのしくみ 変 更 (40 問) 午後 医療的ケア (110 分) 120 問 (5問) 総合問題(12 問) 合計 125 問 ◎配点と合格基準◎ 配点は1問1点の 125 点満点です。次にあげるアとイの2つの条件を満たすことが、合格の条件 となります。 ア:問題の総得点 125 点の 60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者 イ:「医療的ケア」を含む試験科目 11 科目群すべてにおいて得点があった者 新領域「医療的ケア」のポイント 新しい出題基準では、 「医療的ケア」の大項目として[医療的ケア実施の基礎]、 [喀痰吸引(基礎 的知識・実施手順)]、[経管栄養(基礎的知識・実施手順)]の3つが示されています。これらの大 項目に含まれる中項目・小項目の内容を踏まえ、特に出題が見込まれるテーマについて取り上げま す。 1 「医療的ケア実施の基礎」 ○ ◆「医療的ケア」とは 「医療的ケア」とは、本来であれば医師のみに認められた「医行為」の一部であり、2011(平成 23)年の「社会福祉士及び介護福祉士法」等の改正により介護福祉士の業務として認められた、経 か く た ん きゅういん 管栄養を含む喀痰 吸 引 等の行為を指します。 コウクウ ⇒法改正の内容については、『教科書』p.110・111 を参照 イントウ 口 腔 内の喀痰吸引(咽 頭 の手前までを限度とする) 喀痰吸引 ビ クウ 鼻 腔 内の喀痰吸引(咽頭の手前までを限度とする) 気管カニューレ内部の喀痰吸引 イ ロウ 経管栄養 チョウロウ 胃 瘻 または 腸 瘻 による経管栄養(状態に問題がないことの確認を、医師または看護職員が行う) 経鼻経管栄養(栄養チューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認を、医師または看護職員が行う) ◆リスクマネジメントの重要性を把握する 医療的ケアの実施にあたっては、事故の防止と、事故が起こったときに迅速に対応するためのリ スクマネジメント(危機管理)の視点が重要になります。 ⇒詳細は『教科書』p.165・166 を参照 ◆救急蘇生法の基本を押さえる 医療的ケア実施中の急変に備え、救急蘇生法の内容をマスターしておくことが大切です。 ●利用者が異物をのどに詰まらせた場合 ご えん チョークサイン(窒息したときに自分ののどをつかむ動作)などがみられた場合、誤嚥を引き はい ぶ こう だ ほう 起こしていることが疑われます。異物を除去するために、背部叩打法や腹部突き上げ法(ハイム リック法)などの応急処置を行います。 ⇒詳細は『教科書』p.233 を参照 ●利用者が心停止状態に陥った場合 次のような適切な手順で、一次救命処置を実施する必要があります。 ①安全の確認と反応の確認 → ②反応がなければ 119 番通報と AED 手配 → ③呼吸の確認 → ④呼吸がある場合は気道確保を行い、救急隊を待つ/呼吸がない場合は胸骨圧迫 30 回 と人工呼吸2回の組み合わせを実施 → ⑤AED の装着 → ⑥心電図の解析結果に基づき、必 要があれば電気ショックを1回行う → ⑦救急隊に引き継ぐまで、胸骨圧迫と人工呼吸を 繰り返す ◆感染予防と健康状態の把握に努める 医療的ケアの実 施においては、感染対策を万全な状態に整えておくことも求められます。感染予防 しゅくしゅ の3原則(①感染源の排除/②感染経路の遮断/③宿 主 の抵抗力の向上)、介護職自身の感染予防 (手洗い・消毒・健康管理)の方法、主な感染症の予防法を理解しておきます。 ⇒詳細は『教科書』p.168~172 を参照 また、利用者の状態に異変がみられた場合に、すぐに気づくことができるよう、体温・脈拍・呼 吸・血圧といったバイタルサインを通じて、健康状態を把握しておくことも大切です。 ⇒詳細は『教科書』p.423 を参照 2 「喀痰吸引(基礎的知識・実施手順)」 ○ 喀痰吸引とは、吸引器や吸引チューブなどの器具を使用して、気道内にたまった痰を除去する行 せき 為です。咳が上手にできなくなるなど、自力で痰を排出することが難しくなった利用者を対象とし て実施されます。 ◆喀痰吸引の範囲 先に取り上げたように、①口腔内の喀痰吸引、②鼻腔内の喀痰吸引、③気管カニューレ内部の喀 痰吸引という3種類があります。③の気管カニューレとは、長期間にわたる人工呼吸器の使用が必 要となった場合に、気管切開を行ったうえで挿入する器具のことで、カニューレを通じて酸素が供 給されます。こうした治療法を侵襲的人工呼吸療法と呼び、口や鼻をおおうマスクを使用した治療 法を非侵襲的人工呼吸療法と呼びます。 ◆喀痰吸引 実施上の注意点 ●喀痰吸引を実施する前に、必ず医師の指示書、看護職からの指示や引き継ぎ事項を確認します。 実施にあたっては、利用者に適した吸引圧、吸引時間、挿入できるチューブの深さを守るよう にします。 ●チューブを挿入するとき、喀痰吸引の種類によって次の点に注意をします。 ▶口腔内と鼻腔内の喀痰吸引:吸引圧をかけず、静かにチューブを挿入する ▶気管カニューレ内部の喀痰吸引:少し圧をかけた状態でチューブを挿入する ●気管カニューレ内部の喀痰吸引では、清潔な状態を保つために、原則として吸引チューブは1 回ごとに使い捨てとします。 やむを得ず吸引チューブを再利用する場合は、次のどちらかの方法で保管します。 ▶乾燥法:ふた付きの乾燥容器で保管する方法 ▶浸漬法:消毒液に浸して保管する方法 しん し また、保管する前に、吸引後のチューブの内側を洗浄するときは、次のように洗浄水を使い分 けます。 ▶気管カニューレ内部の喀痰吸引:清潔を保つため、滅菌精製水を使用する ▶口腔内と鼻腔内の喀痰吸引:口腔内・鼻腔内には常在菌が存在するため、水道水でよい ●喀痰吸引の実施中や実施後には、利用者の状態に変化がないかどうかを、しっかりと確認しま す。 例えば、利用者が低酸素状態に陥っていないかを確認するためには、パルスオキシメーターを 使用します。同機器によって動脈血酸素飽和度が 90%未満になる場合は、呼吸不全のおそれが あるので注意が必要です。 ●実施後の片づけで、吸引瓶内の排液は、容量の 70~80%程度に達する前に廃棄するようにしま す。 3 「経管栄養(基礎的知識・実施手順)」 ○ 経管栄養とは、口からの栄養摂取が難しい状態にある人のために、チューブを挿入して栄養剤を えん げ 注入する行為です。食べ物が上手に飲み込めなくなる嚥下 障害の利用者などを対象として実施され ます。 ◆経管栄養の範囲 先に取り上げたように、①胃瘻による経管栄養、②腸瘻による経管栄養、③経鼻経管栄養の3種 類があります。このうち胃瘻による経管栄養は、バルーンもしくはバンパー、ボタンもしくはチュ ーブの組み合わせによって、さらに4種類に分類されます。 ◆経管栄養 ⇒詳細は『教科書』p.457 を参照 実施上の注意 ●経管栄養を実施する前に、必ず医師の指示書、看護職からの指示や引き継ぎ事項を確認します。 実施にあたっては、利用者の氏名(本人確認)、栄養剤の種類や注入量、温度、注入開始時間、 注入時間を確かめることを忘れないようにします。 ●栄養剤の逆流を防止するため、利用者の体位を 30~45 度程度の半座位にします。 ●経管栄養で使用される栄養剤には、液体状の栄養剤や、ゼリー状の半固形化栄養剤などがあり ます。 ねんちゅうせい 半固形化栄養剤は、粘稠性 が高い(粘り気がある)ので、胃の内容物の逆流による誤嚥や肺 炎を予防する効果がある。また、注入時間が短くなるため、同一姿勢をとり続けることで じょくそ う 生じる 褥 瘡などのリスクを軽減することもできる。 なお、栄養剤は、一般的に常温程度の温かさで使用するようにします。 ●栄養剤を入れる容器は、イルリガートル(イリゲーター)と呼ばれます。注入部位から 50 ㎝程 度上の高さから栄養剤を滴下できるように、点滴スタンドの高さを調整します。 栄養剤の準備は、次の手順で行います。 イルリガートルに栄養点滴チューブをつなぐとき、チューブのクレンメ(滴下量・滴下速 度を調節するための器具)が閉じられていることを確認する → イルリガートルに栄養剤 を入れ、チューブの途中にある点滴筒に半分ほど栄養剤が満たされたら、クレンメを開く → チューブの先端にまで栄養剤を満たし、クレンメを閉じる。 上記の手順が完了したら、栄養点滴チューブと、利用者側の栄養チューブを接続します。そし て、クレンメをゆっくりと開いて注入を開始し、医師の指示どおりの滴下数を保てるように調 節をします。 ●注入の終了後、クレンメを閉めてから、栄養点滴チューブと栄養チューブの接続を外します。 さ ゆ 栄養チューブ内には、腐敗防止のため 30~50ml 程度の白湯 を注入して洗浄します。 利用者には、栄養剤の逆流を防ぐため、30~1時間程度、半座位の姿勢を保ってもらいます。 (以上)
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