東部地域における次世代もモデルとなる茶業経営体の育成(PDF:346KB)

東部地域における次世代のモデルとなる茶業経営体の育成
東部農林事務所
活動期間:平成26~27年
【取組の背景】
1.東部地域では、沼津市愛鷹山麓を中心に茶が栽培され、国内向けの煎茶の茶産地を形成している。
2.国内の緑茶消費の低下により価格が下落し、特に、出荷時期が遅い東部地域は、相場の影響を受け、
茶業経営が疲弊している。
3.一方、世界における緑茶や、アイスクリームやクッキーなどに使われる抹茶や粉末茶の需要が高まって
おり、煎茶より高い価格で取引されている。
【課題・目標】
1.国内向け煎茶に特化した茶業振興計画を見直し、産地の方向性を明確化する。(推進方向1)
2.輸出茶生産に転換することによる経営安定と、輸出茶の生産拡大を図る。(推進方向2)
3.高価格で取引されている、抹茶、粉末茶の原料生産への経営転換を図る。(推進方向3)
普及指導員の活動
○推進方向1 「 国内向け煎茶生産に特化した茶業振興計画の見直し 」
1.沼津市や南駿農協、農林事務所の関係機関が毎月集まり、国内向け
煎茶生産に特化した茶業振興計画の見直しに係る活動の進捗管理を
行った。
2.沼津市内の生産者と関係機関を集めた研修会を3回開催し、茶を取り
巻く現状や地域の課題などの共有を図った。(図1)
3.生産者と関係機関が一緒になり、SWOT分析を行うことにより、東部地
域に特有な課題を認識し、産地の方向性を話しあった。(図2)
4.これらをもとに、市、農協とともに振興策を検討した。
主な内容について、推進方向2、3の活動を開始した。
図1 研修会の開催
○推進方向2 「 輸出茶の生産支援と生産拡大のための耕作
放棄茶園の活用 」
1.平成26年に設立された茶輸出業者による輸出説明会を開催し、生産者と
図2 SWOT分析による整理
輸出業者の連携を促進した。
2.輸出茶を効率よく生産するため、生産者を集め、生産体制の構築を図る
検討会を2回開催した。
3.農薬を散布していない耕作放棄園の利点を活用し、輸出相手国の残留
農薬基準に適合した茶を生産するために、制度を活用した耕作放棄園
の再整備を促進する研修会を開催した。
4.生産者と関係者による耕作放棄茶園の巡回調査を2回行った。
5.農薬の飛散の可能性が低い林などに囲まれたエリア内の茶園を集積し、
機械化し効率的に生産できるようにするために、生産者の協力のもとに、
モデル的に輸出に取り組む茶園エリアを選定する検討会を開催した。
図3 耕作放棄茶園の活用
(図3)
○推進方向3 「 抹茶、粉末茶用荒茶の生産支援 」
1.抹茶、粉末茶に関する基礎知識を習得する研修会や取引茶商との連携
を強化する検討会を開催した。
2.実際に生産している茶工場を視察し、粉末茶の製造体験を行った。
3.研修会や製造体験を通して学んだ成果を活かし、2番茶を使って
試験製造を行い、煎茶と比較調査を実施した。(図4)
図4 抹茶、粉末茶原料
具体的な成果
○推進方向1 輸出茶、抹茶・粉末茶に向けた振興方向に決定
図5 地帯別茶業振興施策の検討
図6 収穫時期別の生産計画
1.茶業振興方向の概要
(1)収穫が遅く相場の影響を受ける愛鷹山麓を地帯別に振興施策を取りまとめた。(図5)
(2)価格が低下する茶期後半の煎茶生産を、輸出茶や抹茶・粉末茶の生産に仕向ける。(図6)
(3)国内向け煎茶は、取引茶商と強く連携を図るとともに、小売販売に力を入れる。
(4)富士山や美しい茶園などの地域資源を活用した販売戦略を構築する。
○ 推進方向2 輸出茶(荒茶)4トンを生産し、輸出茶生産向けに耕作放棄園の活用を促進
1.若手の茶生産者13人で輸出茶生産に取り組んだ。
2.輸出用の生葉を1工場に集約して製造し、輸出用煎茶4トンを生産した。
現在、仕上げ加工中。
3.耕作放棄地再生交付金を活用し、輸出向け茶園を50a整備中。
4.さらに輸出茶生産を増やすために、意欲ある生産者15人とともに、耕作
放棄園を活用した取組方針を決めた。
輸出向け取組エリア選定→ 耕作者、地権者の同意→ 再生整備
5.農薬の飛散が少ない林に囲まれた輸出茶生産にふさわしい取組エリア
を20ヶ所選定した(図7)。現在、耕作者、地権者をリスト化し、説明会を
開催するよう準備中。
図7 輸出向け取組エリア
○ 推進方向3 粉末茶用荒茶の収益性を確認、本格生産を開始
1.二番茶において、加工用粉末茶の試験製造を行ったところ、煎茶に比
べて10aあたりの収穫量は約2倍と多く、単価が4倍と高かったため、
10aあたりの収益性は5倍と大きいことがわかった。
2.秋冬番茶においても、本格的に500kgの粉末茶用荒茶を生産した。煎
茶を生産するよりも、収益性が2倍高かった。
3.この結果、生産者の関心や取組意欲が高くなった。
図8 粉末茶用荒茶の取引の様子
今後の方向
1.輸出茶、抹茶・粉末茶生産及び国内向け煎茶の販売強化を機軸にした新しい茶業振興方向を地域に
定着させる。
2.農地中間管理機構を活用した茶園集積や、耕作放棄園を活用した輸出茶の生産拡大を支援する。
3.沼津市では、抹茶用荒茶であるてん茶の試験生産を実施し、本格的な抹茶の生産計画を樹立する。
4.茶生産者や地域の企業、住民の協力のもとに、富士山や美しい茶園などの地域資源を活用した国内
向け煎茶の販売戦略を検討する。