新潟地方気象台の3か月予報に基づく農作物等の管理対策(第4報) 平成28年7月4日 新潟県農林水産部 新潟地方気象台から6月24日に発表された「北陸地方 3か月予報」によると、7 月の気温は平年並み又は高い確率ともに40%、降水量は平年並み又は多い確率ともに 40%で、平年と同様に曇りや雨の日が多い見込みです。 ついては、下記の管理対策を参考として今後の農作物等の管理に注意してください。 記 1 水稲 (1)コシヒカリの出穂期は平年より2日程度早く、こしいぶきは4日程度早まると予想 され、今後の高温によってはさらに早まる可能性がある。 (2)こしいぶきは平年に比べ生育が進んでいるので、幼穂確認を早めに行い、穂肥施用 が遅れないよう注意する。1回目の穂肥施用の時期・量は、地域ごとの技術対策を参 考にする。また、こしいぶきの穂肥の過剰施用は品質低下を招くので注意する。 (3)コシヒカリの中干しは、遅くとも出穂の1か月前をめどに終了し、終了後は発根促 進や根の健全化を図るため、浅水の間断かん水を実施し、徐々に飽水管理に移行する。 中干し終了直後は浅水の間断かん水を行い、徐々に飽水管理へ移行して、土壌水分 を維持する。 幼穂形成期及び出穂期が早まることが予想されるため、穂肥の施用が遅れないよう 幼穂長の確認を行い、適期に適量な穂肥を確実に施用する。 (4)フェーン現象により異常高温が予想される場合は、稲体の急激な蒸散による光合成 能力の低下や白穂の発生等を防止するため、速やかに湛水する。 (5)有機質肥料は肥効が遅くなる場合があることから適期を逃さず遅れずに施用する。 (6)異常高温時等の急激な葉色低下等、生育変動に伴う緊急対応が必要になる場合があ るので、県や地域の指導機関が発信する情報に十分留意する。 (7)わたぼうし等、いもち病に対する抵抗性が弱い品種や大豆跡等のほ場、及び新潟次 郎等の多収穫栽培で葉いもちの予防粒剤を施用していない場合は、随時ほ場を観察し、 葉いもちの発病が認められたら直ちに茎葉散布剤で防除する。また、予防粒剤を施用 したほ場においても葉いもちの発病が多い場合は、病害虫防除所又は農業普及指導セ ンターへ連絡して対応を相談する。 (8)わたぼうしの穂いもち防除は、葉いもち発生状況に応じて1~2回を必ず実施する。 その他の品種についても、地域の葉いもち発生状況及び予察情報を注視し、必要に応 じて穂いもち防除を行う。 (9)6月29日に病害虫防除所から斑点米カメムシ類の注意報が発表されている。農道・畦 畔の草刈り、水田内雑草防除を徹底し、品種毎の適期に薬剤防除を実施する。飼料用 米の斑点米カメムシ類防除については、主食用米への影響を考慮し、畦畔の草刈りを 徹底するとともに、地域の防除方針に基づいて実施する。 (10)7月は平年と同様に曇りや雨の日が多いと予想されている。大雨時は稲体が冠水し ないよう速やかな排水に努める。ただし、河川への影響を考慮し、水尻は完全に落と さず、一定水位を保った上で排水を行う。 (11)山間・高冷地で7月中下旬に異常低温が予想される場合は、不稔粒の発生を防止す るため、一時的に深水管理を行い、幼穂を低温から保護する。 2 大豆 (1)最終の中耕・培土は遅くとも開花始めまでに行う。実施時期が遅れると断根や作業 機との接触等により、生育抑制、落花、成熟ムラ等を招く。なお、開花期は6月2日 播種(播種盛期)のエンレイで平年並の7月22日頃の見込みである。 (2)降雨が続き、中耕・培土が計画どおり実施できない場合は、生育期処理除草剤を適 正に使用し、雑草害を防止する。 (3)中耕・培土後は畦間を周囲明きょに接続して停滞水の発生を防止するとともに、大 雨に備え、排水経路(明きょ→排水口→排水路)の点検・補修を適宜行う。また、梅 雨明けまでは暗きょ栓を開放して排水の徹底を図る。 (4)湿害による葉の黄化や生育不良の症状が見られたら、排水を促した後、速効性肥料 を窒素成分で10a当たり1~3kg追肥する。 (5)梅雨明け後、地下水位が60~70㎝以下に低下する排水の良いほ場では、暗きょ栓を 閉めて土壌水分保持に努め、干ばつ害軽 減 を 図 る 。但 し 、降雨等により地下水位が急 激に上昇した場合は暗きょ栓を開放し、地下水位が低下したら再び閉める。一方、排 水不良で常に地下水位の高いほ場では、湿害軽減のため梅雨明け後も暗きょ栓は原則 開放したままとする。 (6)降雨が少なくほ場の乾燥が進む場合、1日以内に地表水を排水できるほ場ではかん 水を行う。かん水開始の目安は地下水位が60~70㎝以下に低下した場合である。区画 の大きいほ場では水口側が長時間滞水すると湿害を生じるため、ほ場全体を数日かけ てかん水する。 (7)地下水位の確認方法は、市販のラセン式穴掘り器の柄を延長して、ほ場に約1mの 深さの細い縦穴を掘ることで常時確認できる。縦穴を維持するため、側面に穴を開け た塩化ビニル管を埋設し、測定は縦穴に竹尺等などを差し入れて行う。ラセン式穴掘 り器の改造方法や設置方法等については、最寄りの農業普及指導センターへ問い合わ せる。 なお、ほ場の暗きょ管は60~80㎝程度に埋設されており、暗きょからの排水が見ら れない場合は、地下水位が暗きょ管の埋設位置より下がったと見なす。 (8)アブラムシ類は吸汁害を起こすとともに、ウイルス病(褐斑粒)を媒介するので、 発生初期に薬剤で防除する。また、ウイルス病株(モザイク株)は症状が分かり易い 開花期頃までに見つけ次第抜き取る。 (9)ウコンノメイガによる加害(葉巻の発生)は7月中旬から始まり、7月下旬から8 月中旬にかけて急増する。葉の巻き始める加害始めを見逃さないよう注意し、被害拡 大が懸念される場合は直ちに防除薬剤を散布する。 3 園芸作物共通 園芸作物は、梅雨の長雨や豪雨等により根腐れ等の生理障害が発生しやすくなるため、 排水対策を適切に行い、被害の予防・軽減に努める。また、多湿状態では病害が発生し やすくなるため、予防的防除を行う。 (1)大雨時の表面水を速やかに排水させるため、事前にほ場及びハウス周辺の排水路等 を点検・整備する。 (2)豪雨等により停滞水が発生した場合は、明きょやを活用して速やかに排水し、風通 しを良くして土壌の乾燥を促進する。 4 野菜 (1)収穫盛期~後期にあたるきゅうり、トマト等施設栽培では、草勢を維持するために、 かん水や追肥を適切に実施する。また、降雨で日照不足が続いた後の急激な日射で日 焼け等の高温障害を生じやすいので、遮光や換気等適切な温度・湿度管理に努める。 また、栽培終了後には、根部の病害虫発生状況を確認し、次作に向けて防除対策を実 施する。 (2)アスパラガスは株の衰弱を招かないよう追肥を行い、降雨による停滞水の排出、土 壌乾燥時のかん水等を適切に実施する。また、1季どりにおいて前年の早期枯れ上が りで株が衰弱している場合は早めに立茎を開始するとともに、若芽には茎枯病菌が感 染しやすいため防除を徹底する。 (3)えだまめ(茶豆)は、開花期に入っており、開花期の追肥は葉色を見ながら、開花 最盛期を目安に実施する。また、茎が細く倒伏しやすい草姿が多いため、支柱等によ る倒伏対策は早めに実施する。収穫前追肥は、莢の完成期に遅れないよう実施する。 (4)ねぎは、今後の降雨と気温の上昇により軟腐病の発生が懸念されるため、排水対策 (畦割り等)を徹底する。また、さび病やべと病の発生が見られるので、病勢が拡大 しないように防除する。 (5)すいかの密閉トンネル作型は、梅雨期の降雨により、炭疽病等の発生が懸念される ため、降雨の合間の晴天時に防除を徹底する。また、草勢が弱い場合は、多着果に注 意し、草勢に合わせて摘果を行い着果数を制限する。 (6)いちごの親床は、仮植苗の確保のため生育量にあわせてかん水量を増加させる。ま た、うどんこ病の防除を徹底する。 (7)さといもの土寄せを実施する栽培は、生育量を確認し土寄せを7月初旬までに実施 する。転作畑は雨水が排除されるよう排水路を点検・整備する。 (8)加工トマトは、近年、梅雨期に細菌性病害による茎枯れが多発するため、枝分け作 業時の茎折れに注意するとともに、殺菌剤の定期的な散布を行う。また、速やかなほ 場排水のため、明きょ等の排水対策を徹底する。 (9)害虫被害では、えだまめのフタスジヒメハムシ、ツメクサガの幼虫、野菜全般にダ ニ類、アブラムシ類が増加してくるため、被害が拡大しないよう適宜防除する。 5 果樹 (1)梅雨時期は日照不足の影響で果実間や茎葉との養分競合が起こりやすい。仕上げ摘 果や補正摘果等の結実管理、新梢の誘引や間引き等の新梢管理を徹底し、果実の肥大 促進と受光態勢を改善する。 ただし、かきでは生理落果が懸念されるので、仕上げ摘果は7月中下旬頃に実施す る。 (2)少雨により園地が乾燥する場合は、スプリンクラーやホース等によるかん水を定期 的に行うとともに、敷きわら等により土壌水分の急激な変化を抑える。 (3)ハウスぶどうは着色期を迎えることから、順調な着色を促し盆前出荷率を高めるた め、大房、多着房とならないように着房数・着粒数を確認する。また、高温や日射量 不足により着色不良とならないよう、ビニールの除覆や摘心、副梢管理等を徹底する。 (4)露地ぶどうの摘房、摘粒は早急に完了させ、かさかけ等を早めに実施する。 (5)ももの着色管理は、硬核期や開花後60日間の積算気温等から収穫期を予想し、除袋 や反射マルチの敷設を適期に実施する。日照時間が不足する場合は、通常より早めに 実施する。 (6)これまでアブラムシ等の害虫の発生が目立っている。引き続き主要病害虫に対する 防除を適切に実施するとともに、病害虫にり病した葉や果実の園外への持ち出しなど の耕種的防除もあわせて実施する。 (7)セイヨウナシ褐色斑点病の発生防止に向け、降雨前散布を心掛け散布ムラがないよ うに薬液を十分に散布する。 6 花き (1)チューリップ等の球根は、収穫後、湿度が高いと球根腐敗病や青かび病等の発生が 多くなるので、送風等により初期乾燥を徹底し、できるだけ風通しの良い場所で本乾 燥する。 (2)露地の切り花類では、根の活力低下等による品質低下を防ぐため、降雨時のほ場の 排水対策や、土壌乾燥時のかん水を実施する。 (3)施設切り花・鉢花は、長雨・日照不足による茎葉の軟弱化や病害の発生を防止する ため、換気・送風等により施設内の湿度上昇を防ぐ。また、降雨等で日照不足が続い た後の急激な日射で葉焼け(チップバーン)等の生理障害を生じやすいので、遮光や 換気等で適切な温度・湿度管理に努める。 7 畜産 (1)家畜の管理 ア 急激な気温上昇に伴う家畜の生産性の低下、熱射病等を防止するため、換気・送 風・寒冷紗等の暑熱対策を実施し、家畜の体感温度の低下に努める。 特に、梅雨明け後の急激な気温上昇に備え暑熱対策を徹底する。 イ 家畜の観察に注意を払うとともに、餌槽や飲水設備を清掃・点検し、良質な飼料 やミネラルを給与し、新鮮な水を十分飲めるようにする。 (2)飼料の管理 ア 気温の上昇に伴いサイレージの二次発酵(好気的変敗)が起こりやすくなるため、 ロールベールサイレージは開封後できるだけ早めに給与する。 イ サイロの場合、取り出し後はビニールで被覆し、空気を遮断するなどして二次発 酵を防止する。なお、サイロの作業では酸欠等の事故防止には特に注意する。 ウ 飼料は風通しの良い日陰に保管し、カビの発生、変敗に注意する。カビの発生や 変敗等が見られる飼料は給与しない。 (3)飼料作物 ア 排水が不良なほ場は、明きょによる排水対策を行う。 イ 永年性牧草は夏枯れ防止のため、梅雨期~盛夏にかけては刈り高を10㎝前後とし、 牧草の貯蔵養分の消耗を少なくする。 ウ 高温時の窒素追肥は牧草の生育に障害を起こす恐れがあるので、窒素成分で10a 当たり2~3㎏を上限に草勢を見ながら加減する。
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