学術研究の充実 各界で活躍する若手研究者 早稲田大学リサーチアワード 独創的研究の推進と国際的な情報発信力の 強化を目的として、2014年度より設けられた制度 近年、早稲田の若手の研究者たちの優れた研究成果が、国内外の学術賞を受賞 です。大規模な研究を主導的に推進している研 するケースが増えています。若手研究者の育成に力を注いできた本学の取り組みが 究者、国際発信力の高い研究業績を挙げている 着実に実を結び、世界へと広がっています。 若手研究者を表彰します。 その他の若手研究者向け支援 ● 研 究力強 化 本 部では、英 語 論 文や出 版、国際共同研究の推進をテーマとしたセ ミナーを開催して若手研究者を応援してい ます。 ●産学官研究推進センター、 インキュベー ション推進室、理工リエゾンオフィス、理工 学術院統合事務・技術センター、環境保全 センター、男女共同参画推進室などが、女 性研究者や若手研究者に対して、研究成 果の地域や企業への発信、起業を志す人 などの支援を行っています。 優れた若手研究者を顕彰・支援する 「日本 結び付いています。 学術振興会賞」 を先進理工学研究科の新倉 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の客員研 弘倫准教授が受賞しました (平成24年度)。 究員も務める高等研究所の滝沢研二准教授 新倉氏の研究は究極的な時間分解能(アト は 「米国機械学会応用力学部門若手研究者 秒) と微小な空間領域 (サブオングストローム) 賞」 において、最年少かつ外国人として初めて における、原子や分子の波動関数の変化に 受賞しました。流体構造連生という数値解析 関する測定技術を構築するものです。新倉氏 技術を用いた滝沢氏の研究は、 バイオテクノロ はアト秒科学において世界をリードしており、 ジー、 エネルギー・サイエンス、宇宙工学といっ 今後さらなる活躍が期待されています。 た主要技術エリアの発展に寄与するものと 科学技術に関する研究開発、理解増進等 なっています。 に顕著な成果を収めた人に贈られる 「科学技 ○○○○○○○○○○○○○○○○○ 術分野の文部科学大臣表彰」において、平 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 成24年度には先進理工学研究科の井村考 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 平教授、片岡淳教授が、平成26年度には高 等研究所の田邊優貴子助教が「若手科学 者賞」 を受賞しています。井村氏は 「動的光イ メージングによるナノ物質の波動関数と光特 ●「日本学術振興会特別研究員DC採用 性の研究」、 片岡氏は 「高エネルギー宇宙と先 者支援奨学金制度」 を設置して、若手研究 端医療を結ぶ放射線応用物理学の研究」、 者を経済的な面から支援しています (詳細 田邊氏は 「南極湖沼生態系の環境応答と遷 は000ページ参照) 。 移過程に関する研究」 が評価されて、受賞に Graduate Students Interview 金融や年金、生体・医学など、様々な分野に応用できる 時系列解析の新しい手法を確立したい ノンパラメトリック手法を用いた時系列解析を研究 中国の北京出身で、父親の仕事の都合で中学生のときに日本に来ま した。小さい頃から数学が好きで、規則性のあることを覚えるのが得意でし た。日本語も規則性を見つけることで覚え、 日本の高校から一般入試で早 稲田大学の基幹理工学部に入り、応用数理学科に進んで、飛び級制度 で大学院に進学しました。 専門は理論統計学の時系列解析の分野についての研究です。時系列 解析とは、過去、現在、未来の系列が互いに影響しあっている状況での統 計解析のことで、時間の変動によるデータの変化を解析します。修士論文 ではノンパラメトリック(非母数)手法を使った時系列解析をテーマにしまし た。研究においては、 これまで多く使われてきた正規分布を仮定した解析を 行うのではなく、非母数モデルなどを使うことで、解析をより正確なものにす ることを目指しています。博士後期課程では修士でのテーマをさらに発展さ せ、時系列データに対する頑健的手法などを加味して、博士論文にまとめ ました。 時系列解析の応用の範囲はかなり広く、金融や年金、生体・医学などの 広範な分野のデータに適用可能で、 その基盤となる最適推測理論の構築 を目指しています。また、将来的には応用する分野の方でも正規分布では なく、 それぞれの事象に最適なモデルを使って解析を行うようになると考え ており、私は金融工学への応用についても研究しています。 先生の熱心な指導、仲間との会話から広がるアイデア 私が研究指導を受けている谷口正信先生は、 とても熱心な方です。いつ も難しい課題を出されますが、 それに答え続けたいという思いがありました。 研究室は、教員と学生、学生同士の距離が近いのが特徴で、声を掛け合 いながら夜遅くまで研究に取り組んでいます。海外での学会に参加する機 会も数多くあり、私はスイスとドイツの学会に参加しました。理論研究は行き 詰ると孤独になりがちですが、 同じ志を持った仲間がいることは心強く、 最後まで 頑張ろうという気持ちになりますし、会話の中から色々なインスピレーションが 出てくることもあります。 私は日本学術振興会の特別研究員に採用されており、奨学金と合わせ て経済的に自立できています。将来は大学か研究機関で研究を続けたい と思っています。特に博士後期課程では研究が中心の生活になり、 その 成果を上げることは簡単ではありません。だからこそ、好きなことを見つけ、 最後まで研究をやりきるという強い気持ちを持って、チャレンジしてくださ い。早稲田大学には、 なにより素晴らしい先生と仲間が待っています。 基幹理工学研究科数学応用数理専攻 博士後期課程2年 日本学術振興会特別研究員(DC2) 劉言 Yan Liu Profile:2008年早稲田大学基幹 理工学部入学。11年同応用数理 学科を飛び級で卒業し、同研究科 修士課程数学応用数理専攻に 進学。13年同研究科博士後期課 程に進学。非母数手法による時 系列解析をさらに発展させた博士 論文「ノンレギュラーな関数と自己 基準化法を用いた時系列解析に 対する漸近理論」 を執筆。 WASEDA UNIVERSITY Graduate school 2016 9
© Copyright 2024 ExpyDoc