問題文中に出てくる生物は全て 2 倍体です。解答用紙に の付いた問題

2016 遺伝学
プレテスト
解答
問題文中に出てくる生物は全て 2 倍体です。解答用紙に☆の付いた問題は、答えを導き出すための
過程も説明すること。組換え価など確率を答えるときは分数のまま答えてよい。問題文中におかし
なところがあると思った場合は、答案のわかるところに明記してください。
問題 1 次の文章を読み、問 1~問 63 に答えよ。←問数のタイプミス (組換え)
或る自殖性作物の、組換え価 k で連鎖するマーカー遺伝子座 M1 と M2 の遺伝を考える。両遺伝子座の、品種 A および品種 B 型の
対立遺伝子をそれぞれ A と B としたとき、F2 世代の M1 座と M2 座の分離を考える。まず品種Aと品種Bを交雑した F1 個体が減数
分裂して生ずる配偶子の、M1 座と M2 座の組換え組合せⅠ~Ⅳとその期待頻度(表 1)を考える。次に自殖 F2 世代のマーカー遺伝子型
組み合わせ(1)~(9)の期待頻度①~⑨を、Ⅰ~Ⅳの期待頻度から計算する(表 2)。①~⑨は k の関数で表せる。それぞれの遺伝子型組
合せが観察値 a~i となる確率は、k を変数とする確率関数
P(k ) =
N!
① a ②b ③ c ④ d ⑤ e⑥ f ⑦ g ⑧ h ⑨i
a!b!c!d !e! f ! g!h!i!
…
式1
で表せる。観察値から k を推定する場合、確率 P(k)がもっとも高くなる k を選べばよく、そのときの k は最尤推定量になる。
問 1 表 1 のア、イ、ウ、エを k の関数で示しなさい。また、ア+イ+ウ+エを答えなさい。
ア (1- k )/2 イ k/2 ウ k/2 エ (1- k)/2
2 点×4
ア+イ+ウ+エ = 1
4 点×1
問 2 表 2 の①~⑨を答えなさい。
① (1-k)2/4 ②k(1-k)/2 ③ k2/4 ④k(1-k)/2 ⑤(1-k)2/2+k2/2 ⑥k(1-k)/2 ⑦ k2/4 ⑧k(1-k)/2 ⑨(1-k)2/4
2 点×9
問3
☆マークなので、式のみ or ほぼ説明ないものは×0.5 とし、説明が怪しいか不足の場合は×0.8
式1を、期待頻度①~⑨の重複性を利用して、より簡単に表記しなさい。
問 2 より①=⑨、②=④=⑥=⑧、③=⑦、なので、 P ( m)
10 点
=
N!
① a +i ② b + d + f + h ③ c + g ⑤ e
a!b!c!d !e! f ! g!h!i!
となる。
説明がないか少なすぎる場合×0.8
問題 2 次の文章を読み、問 1~問 4 に答えよ。(確率の問題)
新生児の平均 1000 人に 1 人程度は 21 番トリソミーになる。21 番トリソミーは、
(非常に稀な例外を除き)
(1)
遺伝性でなく偶然の染色体不分離が原因である。人口の 500 人に 1 人は(重度)自閉症で、先天的な脳機能障
害と考えられており、およそ 3 歳までに症状がみられ生涯にわたって続く。全ての自閉症を説明できる明瞭な
遺伝要因は分かっていないが、
(2)X 染色体にある FMR1 遺伝子内の SSR 変異で説明できる脆弱 X 症候群は自閉症
と診断されている場合が多いようである。統合失調症は、先天的な脳機能障害だけでなく後天的に引き起こさ
れる精神の病気で、思春期から 20 代前半に発症しやすく(3)有病率は 100 人に 1 人といわれている。
問 1 下線(1)について、2 人兄弟が 21 番トリソミーになる確率を答えよ。
下線(1)より、子供は 1/1000 の確率で 21 番トリソミーになる。2 人ともが 21 番トリソミーになる確率は
1/1000×1/1000 となる。 8 点 2 人兄弟のどちらか 1 人以上が 21 番トリソミーとなる確率は、どちら
もそうでない確率を1から引いた 1-(1-1/1000)2 である
問 2 下線(2)について、脆弱 X 症候群の父と甥をもつ男性が病気の遺伝子を持つ確率を答えよ。
下線(2)より、X染色体は父親から息子には遺伝しないため、この男性が病気の遺伝子を持つ確率は 0 であ
る。 8 点 理由がなければ 1 点
問 3 下線(2)で、FMR1 遺伝子は、CCG の繰り返しが 5~44 のとき正常で、200 以上の場合に明瞭な脆弱 X
症候群を示すという。この病気を遺伝子診断するにはどうすればよいか、簡単に述べよ。
(CCG の繰り返しを挟み込むプライマーでこの遺伝子を増幅し、)電気泳動などで断片長の多型を検出す
ればよい
8 点 電気泳動に言及できていれば+8、遺伝子増幅への言及は+4
問 4 下線(3)は、21 番トリソミーになる確率や自閉症になる確率と独立であるとするとき、どれにも該
当しない確率を答えよ。
21 番トリソミーにならない確率は(1-1/1000)、自閉症にならない確率は(1-1/500)、統合失調症にならない
確率は(1-1/100)なので、独立な 3 つの事象が同時に起こらない確率は、(999/1000×499/500×99/100)であ
る。(計算すると 0.987)
8 点 独立な事象の同時確率はそれぞれの積である
問題 3
次の文章を読み、問 1~問 4 に答えよ。(組換え、マーカー)
DNA マーカーとは,DNA 塩基配列断片の長さの違い等に基づき、遺伝子型を判別するバイオテク
ノロジー技術である。図 1 は電気泳動法による DNA マーカーによる遺伝子型の判別例として、典
型的なバンドパターンを示している。つまり、バンドの位置は塩基の長短に対応し(図 1 で、対
立遺伝子 A のバンドが長く a は短い)、バンドのパターンⅠ、Ⅱ、Ⅲの区別はそれぞれ AA ホモ接
合体、aa ホモ接合体、Aa ヘテロ接合体のマーカー遺伝子型に対応する。イネの戻し交雑集団(BC1F1)
24 個体を用い、同一染色体にある 4 種類の DNA マーカーA~D の遺伝子型を調べたところ、図 2 の
ような結果になった。
図 2 BC1F1 個体 1~24 の、マーカーA,B,C,D のバンドパターン
問1
図 2 の各マーカーのバンドパターンから遺伝子型を推定します。各マーカーのホモ接合体を a、ヘテロ接合体を H とし、各
個体の遺伝子型を答案用紙の表に記しなさい(個体1と2は解答用紙に記入済み)。
8点
問2
問 1 の表から各マーカー対の遺伝子型組合せ、a/a, a/H, H/a, H/H を数え、答案用紙の表
にまとめなさい。
右表のとおり
8点
問3
各マーカー間の組換え価を計算し表に書きなさい(小数点以下 3 桁までを有効数字、それ
以下は四捨五入)。
右表のとおり
問4
と。
8点
マーカーA~D の相対位置を示す連鎖地図を描きなさい。図には各マーカー間の組換え価も示すこ
右図のとおり
8点
問題 4
次の文章を読み、問いに答えよ。
(教科書 6 章)
右図のように 2 種類の染色体(Ⅰ, Ⅱ)を持つ1つの生殖細胞が減数分裂して生じる 4 個の配偶子について考える。染色体Ⅰに座乗す
る A 遺伝子座の父親由来対立遺伝子を A1 とし母親由来対立遺伝子を A2 とする。また染色体Ⅱに座乗する B 遺伝子座の父親由来対立
遺伝子を B 1 とし母親由来対立遺伝子を B2 とするとき、生じうる配偶子の A および B 遺伝子座対立遺伝子の組み合わせを割合ととも
に述べよ。
A 遺伝子座と B 遺伝子座は異なる染色体に座乗し独立に遺伝するため、A1 と B1、A1 と
B2、A2 と B1、A2 と B2 の 4 種類の配偶子が 1:1:1:1 の比で生じうる。
8 点 4 種類の組み合わせは等確率で起きることを示していればよい。
問題 5
次の文章を読み、問 1~問 3 に答えよ。(教科書 7 章)
右はヒトの家系図例で、四角形が男性、丸形が女性、黒塗りは発病個体を示す。この病気の原因遺伝子は、非
常に稀な確率でヒト集団中に存在し、常染色体に座乗することがわかっているとする。
問1
この遺伝子座は優性または劣性のどちらといえるか、理由とともに答えよ。
常染色体に座乗する遺伝子座で、発病していない両親の子の発病個体の割合が 4 割と高く、
両親の兄弟や親で発病がみられないため、劣性遺伝と考えられる。8 点
問2
非常に稀な病気が、(a)の 5 人きょうだい中 2 人も見られた原因は何か、簡潔に述べなさい。
問3
成人前に死亡するヒトの重篤な病気の遺伝子の多くは劣性である。その理由を遺伝学的に考察しなさい。
(a)の両親はいとこ婚で、彼ら共通の祖父母(右図の家系図の一番上)のどちらかが持ってい
た病気の遺伝子を(a)の両親が供に受け継いでいた(確率は 1/2×1/2)ため。8 点 近親婚が原因であること
を示している。両親が原因遺伝子を持っているだけの指摘は家系図の情報が汲めていないので 4 点
成人前に死亡するほどの病気遺伝子が優性だと、子に継承できる可能性は非常に低く、遺伝子は集団から
迅速に排除される。一方、劣性の遺伝子はホモ接合体にならなければ病気が発症せず、病気が重篤であっ
ても集団から排除されにくい。そのため、発現すると子孫を残しにくくなるような遺伝子の多くは劣性に
なりやすい。8 点 その他、理由が説明できていれば部分点。優性でも頻度の少ない対立遺伝子もある。
問題 6
サンガー法に関する次の文章を読み,設問に答えよ。
(教科書 8 章)
或る DNA 配列 5’-・・・・・・・・・GACT-3’の・で示す 9 つの不明塩基の解読を考える。サンガー
法では 3’側の 4 塩基に相補な 5’-AGTC-3’をプライマー(複製起点)とし相補鎖を合成する。その際、
合成酵素が dATP, dCTP, dGTP, dTTP を取り込んだ場合は、相補鎖の合成が 3’側に進む。しかし、
ddATP, ddCTP, ddGTP, ddTTP を取り込むと鎖の伸長がそこで止まる。ddATP, ddCTP, ddGTP, ddTTP は蛍
光標識で 4 種を区別できるため、相補鎖の生成断片の最後に取り込まれた塩基は種類が分かる。相補鎖の
合成を繰り返してできた多数の相補差の生成断片を長さの順に並べると、不明塩基を明らかにできる。
生成断片長が右表のようになったとき、鋳型鎖の不明塩基を答えなさい。
生成断片長を昇順にならべ、
(蛍光標識された)3’末端の塩基を順に読むと、5'AGTCGTTAGCACGG となる(黒字は既知の塩基配列)。よって、対応する鋳型鎖の不明塩基は、5’-CCGTGCTAAC と
なる。
10 点 表の ddTTP の生成断片長に記載ミスあり、指摘は+5 点
次の文章を読み、問 1~問 2 に答えよ。(教科書 7 章)
ウサギの毛色を支配する遺伝子座のうち 4 種類の対立遺伝子 C、cch、ch、c の遺伝を考える。C は他の 3 つに対して優性で、濃い灰色
の毛色になる。c は cch 以外の全てに劣性でアルビノになる(白色)。cch はチンチラ様(青灰色)だが、ch や c とのヘテロ接合体は薄い
灰色になる。ch が発現すると先端のみ着色になる。
問1
野生の濃い灰色の個体とアルビノ個体との間にできた子供が野生親と同じ毛色で、その個体とチンチラ様個体との子供に生
ずる毛色と割合を答えなさい。
問題 7
野生の濃い灰色個体 C-×アルビノ cc の子で、濃い灰色個体の遺伝子型は Cc のみ。よって Cc×チン
チラ様(cchcch)の子は、Ccch (濃い灰色の)と cchc(薄い灰色)が1:1の割合で生ずる。 8 点
問2
チンチラ様個体と薄い灰色個体を交配した子供の毛色はどのようになると考えられるか、生じうる全ての場合について期待
頻度とともに答えよ。
チンチラ様(cchcch)×薄い灰色(cchc または cchch)の子供は、チンチラ様(cchcch):薄い灰色(cchc または
cchch) が 1:1 の期待頻度で生ずる。
8点
問題 8
メセルソンとスタールが行った実験についての次の文章を読み、問 1~問 3 に答えよ。(教科書 8 章)
メセルソンとスタールは、複製元の DNA 鎖と、複製された DNA 鎖を区別するため、重窒素(15N)という一般的な窒素(14N)よりも密度が大きく稀な非放
射性同位体を標識として用いる実験を行った。彼らはまず、(1)15N を窒素源として何世代も培養した大腸菌(全ての DNA が重い=高密度)と 14N を窒素源と
して何世代も培養した大腸菌(全ての DNA が軽い=低密度)を用い、2 つの大腸菌群からの抽出物を混ぜて遠心分離すると、密度の異なる 2 本の DNA バン
ドが見られることを確かめておいた。次に、15N で培養してきた大腸菌を 14N 培地で培養し、培養(2)0 分後、20 分後、40 分後、24 時間後のサンプルから
DNA を抽出して密度を測定したところ、それぞれ全て高密度、全て中密度(高密度と低密度の中間)、中密度と低密度の 2 種類が同じ濃さ、中密度少し
と低密度がほとんど、になった。これらの結果は、DNA の複製形式が半保存的であることを証明していた。
問 1 下線(1)は何を示すために行う必要があったか、答えなさい。
異なる密度の DNA 試料を遠心分離で区別できることを示すために行った。
5点
問 2 下線(2)で培養 0 分(つまり培養前)のサンプルを測定する理由は何か、答えなさい。
(世代が進むと増えてくる)より低密度のものと比較するための基準になる高密度の試料として測定した。5 点
問 3 下線(2)で培養 20 分後と 40 分後で DNA の密度が変わる結果になったことは、大腸菌の持つどんな性質を示すと考えられるか、答えなさい。
20 分後と 40 分後の 20 分の間で密度が変わったことにより、大腸菌は 20 分ごとに DNA 複製をする(つまり分裂す
る)ことが予測できる。5 点
問題 9 下図はフレデリック・グリフィスが肺炎球菌を用いて行った実験の方法と結果を示している。問 1~問 3 に答えよ。教科書 8 章
問1 この実験内容について日本語で簡潔に、答えなさい。異なる密度の DNA 試料を遠心分離で区別できること
S 型肺炎球菌は病原性で、これを注射するとマウスは死に、心臓からは生きた S 型菌がみつかる。R 型肺
炎球菌は非病原性で、駐車してもマウスは健康なままで、心臓からは肺炎球菌は見つからない。加熱して
殺した S 型菌を注射してもマウスは健康なままで、心臓からは肺炎球菌は見つからない。S 型菌を殺して
生きた R 型菌と混ぜたものを注射すると、マウスは死に、その心臓からは生きた S 型菌が見つかる。5 点
問2 この実験で明らかになった現象の名前を答えなさい。
形質転換
5点
問3 問 2 の現象を DNA が引き起こしていることを証明するためにはどんな工夫をするとよいか、答えなさい。
S 型肺炎球菌の死骸のうち DNA だけを抽出して R 型肺炎球菌を S 型に形質転換できることを調べる。と同
時に、死骸を DNA 分解酵素で処理して DNA のみを除去すると形質転換が起こらないことを示す。5 点
問題 10
次の文章を読み、問 1~問 3 に答えよ。20 点、教科書 7 章及び、クローニングのための
イネのふ先色という質的形質は、染色体 1 に座乗する遺伝子座 A と染色体6に座乗する遺伝子座 C によって表現型(着色型または無色型)が決まり
ます。対立遺伝子 C は c に対して優性(着色型)で、対立遺伝子 A は a に対して優性(着色型)ですが、A 座と C 座には補足作用があり、両座が着色型で
ないと表現型は着色型になりません。
(1)
A 座および C 座の遺伝子型が aacc の品種を母親とし、遺伝子型 AACC を花粉親とする自殖 F2 集団の表現型を調べたとき、その期待頻度と観察値
とのズレは、以下の式 1 で判定できます(カイ 2 乗適合度検定という)
。
m
(Ei − Oi )2
i =1
Ei
χ O2 = ∑
(式 1)
ここで、Ei と Oi は i 番目のカテゴリーの期待頻度(理論値)と観察度数をそれぞれ意味し、m はカテゴリー数です。例えば、表現型が優性: 劣性 =
3:1 の理論比で分離する形質の場合、m = 2 のχo2 値を計算します。実際に 96 個体の F2 で優性形質が 66 個、劣性形質が 30 個観察されたとき、その
理論値は 3:1 つまり 72 個と 24 個になるので、
χ O2 =
(72 − 66)2 + (24 − 30)2
72
24
= 2.0 と計算します。
問 1 下線(1)について、期待頻度を答えなさい。
F1 の遺伝子型は AaCc で、自殖 F2 集団の期待頻度は、パネットの方形を用
いると右のようになる。着色個体の遺伝子型は A 座と C 座が供に優性の
もの(下線)で、無色型との分離比は 9:7 となる。10 点
問 2 遺伝子型 AACC を母親とし、aacc を花粉親とする場合の自殖 F2 集団のふ先色の表現型の分離の期待頻度は
どうなるか、答えなさい。
A 座と C 座は核ゲノムにある(染色体1と 6 に座乗)ので、F2 の期待頻度は問 1 と同じになる。10 点
問 3 理論値と観察値とのズレが大きくなるほどχo2 は大きな値をとり、理論値とのズレの程度が偶然による確率
的なバラツキの範囲内であるときχo2 の値は自由度 m -1 のχ2 分布に従うと考えます。χo2 の値が、自由度 1
のときはχo2 が 3.841 よりも大きいとき、有意確率 5%で観察値は理論値に適合しないと考え、理論比の計算に
用いた仮定が不適切であると判断します。下線(1)の F2 集団 96 の観察値が着色 51、無色 45 であったとき、χ
o2 を計算し、期待頻度とのズレを論じなさい。
χ O2 =
(54 − 51)2 + (42 − 45)2
54
値だけなら 5 点)
42
=
1 3
+
< 3.841 よって、観察値は理論値に適合しないとはいえない(適合する)。10 点(数
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