Advanced Topics in Economics I

エコノメトリックス
第1回
2011年前期
中村さやか
今日やること
• イントロダクション
– シラバスの確認と補足説明
• Ch. 1 The Nature of Econometrics and
Economic Data
授業でやること
• 計量経済学:データを使って世の中を分析
– 狭い意味の経済学には限定されない(社会学・疫学との
共通点が多い 「ヤバい経済学」参照)
– 社会科学の特徴: 実験ができない
• 古典的回帰分析(最小二乗法):一番シンプルでよく
使われる推定方法
– クロスセクションデータ: 1つの観測対象(人、企業、地
域等)につき1回きりのデータ
学習到達目標
1.最小二乗法の推定結果の解釈ができるようになる
→推定は統計パッケージを使えば一瞬でできるので、
アウトプットを理解することが大切
2.最小二乗法の推定を行う前提条件を理解する
→最小二乗法を使ってよいのはどういうときか?
3.最小二乗法を用いた実証研究を批判的に理解でき
るようになる
→推定結果から結論を導き出すにあたって他の可能
性はないか?
教科書
• Wooldridge, Introductory Econometrics: A
Modern Approach, 4th Edition, South-Western,
2008.
• 大学生協で特別価格で購入できる
• 実践重視、最新の知見
成績評価
• 期末試験(80%)・レポート(20%)
• 期末試験の追試は学則に則って実施、小テストの
追試は行いません
• 出席は取りませんが、単位取得のためには毎回の
出席に加えて週3時間ほどの予習・復習が必要です
• 文科省のルールに従い、成績認定はシラバス通り
に行います。
– 不可の学生を救済するために追加で課題を提出させるこ
とは認められていません。
– 病気は単位認定の理由にはなりません。
Contact Info
• E-mail: [email protected]
• Office: 206号室
• Office Hours: 授業終了後、それ以外の時間はアポ
イントメントが必要
1.1 What is Econometrics?
• 社会科学の特徴: 実験ができない
• 実験の例:
– 新薬の臨床試験: 新薬を飲ませるグループと偽薬を飲
ませるグループをランダムに選び、薬を飲む前と後での
変化を比較
– 医療保険の自己負担率が受診行動に与える影響を検証
するため、自己負担率をランダムに割り振り受診行動と
負担率の関係を分析 (米国ランド研究所 1970年代)
• 実験は不可能なことが多く、可能であっても非常に
費用が嵩む
• 非倫理的
1.2 Steps in Empirical Economic Analysis
1. 計量モデル(econometric model)を作る
• かっちりとした理論モデルにもとづいて計量モデルを作ること
もあるが、より直観的なモデルが使われることが多い
例) 犯罪=β0+β1賃金+β2所得+β3逮捕率+β4起訴率
+β5平均刑期+u
• u: 誤差項(error term)、攪乱項(disturbance term)
• 誤差項uは観察できない要因(犯罪による利益、倫理観等)と
変数の測定誤差を含んでいる
1.2 Steps in Empirical Economic Analysis
2.計量モデルに基づいて仮説を立てる
仮説の例:
犯罪=β0+β1賃金+β2所得+β3逮捕率+β4起訴率
+β5平均刑期+u
β1=0 ⇔ 賃金は犯罪に影響を与えない
3.データを用いてモデルのパラメータ(ここではβ0,
β1,・・・β5)の値を推定し、仮説が支持されるかどう
かを検証する
1.3 The Structure of Economic Data
横断面データ (cross-sectional data)
 1つの観測対象(人、世帯、企業、地域等)につき1時点だけ
で集めたデータ
無作為抽出(random sampling)
 横断面データでは無作為抽出を仮定することが多い
 無作為抽出の例:
 診療レセプトから保険証番号の末尾が2の人を抽出
 無作為抽出ではない例:
 電話調査(1936年米大統領選挙)・ウェブ調査
 回収率の低いアンケート調査 (忙しさ、価値観等を反映)
 回答率の低い項目 (高所得者ほど所得を答えない等)
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1.3 The Structure of Economic Data
時系列データ (time-series data)
 1つの観測対象につき複数の時点で集めたデータ
 観測対象が一つだけのこともあれば複数のこともある
 マクロ経済学で特に重要 (GDP, 物価指数,株価,等)
 時間の経過に伴う変化が重要
 ある時点での影響がその後も残る→各時点の観測値は互い
に独立ではない
 この講義では扱わない
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1.3 The Structure of Economic Data
経時横断面データ (pooled cross sections)
 複数時点で無作為抽出を繰り返したデータ
 一時点の横断面データとほぼ同じ方法で分析可能
パネルデータ (panel data) / 縦断的データ (longitudinal data)
 同じ観察対象に対して複数時点で集めたデータ
 例)21世紀出生児縦断調査: 2001年に生まれた子を無作
為抽出し,毎年追跡調査
 データ収集にコストがかかるが、クロスセクションよりもはる
かに説得力のある分析ができることが多い
 この授業では扱わない
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1.4 Causality and the Notion of Ceteris
Paribus in Econometric Analysis
• AとBに関連がある(Aが高い人ほどBも高い傾向がある等)
ことはAを高くすればBが高くなるというAからBへの因果関係
(causal effect)を必ずしも意味しない
例)
• 肥料をたくさん使った畑ほど収穫量が多い
– 肥料の量はランダムに決まっているか?
– 肥料が多く使われた畑とそうでない畑では肥料の量以外にも違いが
あるのでは?
教育水準の高い人ほど給料が高い
– 教育水準はランダムに決まっているか?
– 教育水準の高い人とそうでない人では教育水準以外にも違いがある
のでは?
1.4 Causality and the Notion of Ceteris
Paribus in Econometric Analysis
• どうすればAからBへの因果関係を明らかにできるか?
• AとB以外の(関連した)要因を全て一定にして(ceteris
paribus)Aだけを変化させたらBがどうなるかを知りたい
• 無作為抽出でAを増やすグループとそうでないグループに分
けて実験できれば理想的だが、現実には難しい
– 教育水準をランダムに割りふる?
• 実験ができない中で因果関係を立証する方法を考えるのが
計量経済学
1.4 Causality and the Notion of Ceteris
Paribus in Econometric Analysis
名古屋大学新任教員研修:
• 「宿題を出している授業と出していない授業で学生の満足度
を比較すると統計的には差はありません。つまり、宿題を出
しても学生の満足度が下がるわけではないので、みなさん宿
題を出しましょう。」
→宿題を出すグループと出さないグループをランダムに選んで
いても同じ結果になっていたか?
• 教員と学生に熱意があるほど宿題が出される傾向があった
ために宿題が課された講義で不満が出なかっただけではな
いか?
1.4 Causality and the Notion of Ceteris
Paribus in Econometric Analysis
因果関係が両方向に働いているケース
⇒両方が同時決定されている(simultaneously determined)
• 所得と健康
• 警官の人数と治安
• 病院の手術件数と手術の成功率
片方がもう片方に与える影響を測定したい
⇒この講義ではなく後期のエコノメトリックスIIで扱う予定
因果関係が両方向に働いているケースの例
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
こだまでしょうか。
いいえ、誰でも。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
金子みすゞ
「こだまでしょうか」
そうしてあとで
さみしくなって、
次週
Appendix B. Fundamentals of Probability
以下の章末問題(p. 745-746)を各自で解いてくること
B.2.(i) (ii), B.3.(i), B.4, B.5(i), B.7, B.8, B.9,
B.10(i)(ii)