5つの健康習慣 (禁煙、体重管理、飲酒、運動、食事)は 回復性睡眠と関連する:横断観察研究 A combination of healthy lifestyle is associated with restorative sleep: a population-based, cross-sectional study in Japan 若杉 三奈子1)2)、風間 順一郎2)、成田 一衛2)3)、井関 邦敏3)、藤元 昭一3)、守山 敏樹3) 山縣 邦弘3)、今田 恒夫3)、鶴屋 和彦3)、近藤 正英3)、旭 浩一3)、木村 健二郎3)、渡辺 毅3) 1)新潟大学 臓器連関研究センター、2)新潟大学 腎・膠原病内科学、 3)厚生労働科学研究費補助金「特定健康診査による個人リスク評価に基づく、 保健指導と連結した効果的な慢性腎臓病(CKD)地域医療連携システムの制度設計」 日本腎臓学会 COI 開示 筆頭発表者名: 若杉 三奈子 開示すべきCOI はありません。 5つの健康習慣は さまざまな疾患の発症を予防する 5つの健康習慣 冠動脈 疾患 ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 (NEJM 2000, Circulation 2006) 2型糖尿病 癌 (NEJM 2001) 脳卒中 突然死 (Arch Intern Med 2006) (JAMA 2011) (Cancer Causes Control 2000, Arch Intern Med 2009, Prev Med 2012) 蛋白尿 (Hypertens Res 2013) 全死亡 (BMJ 2008) 不適切な睡眠は、さまざまな疾患との関連がある 生活習慣病対策には、睡眠も重要 肥満 (Sleep. 2008, Am J Epidemiol. 2006, Sleep. 2005, Sleep. 2004) 不適切な睡眠 睡眠時間 CKD (Am J Kidney Dis. 2012) 睡眠の質 冠動脈 疾患 (Arch Intern Med. 2003) 2型糖尿病 (Sleep. 2007, Diabetes Care. 2003) 脂質異常症 高血圧 (Sleep. 2008) (Hypertension. 2006) うつ病 5つの健康習慣は 不適切な睡眠をも予防する? 5つの健康習慣 冠動脈 疾患 ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 (NEJM 2000, Circulation 2006) 2型糖尿病 癌 (NEJM 2001) 脳卒中 突然死 (Arch Intern Med 2006) (JAMA 2011) (Cancer Causes Control 2000, Arch Intern Med 2009, Prev Med 2012) 不適切な 睡眠 蛋白尿 (Hypertens Res 2013) 全死亡 (BMJ 2008) 【特定健診の標準的問診票】 睡眠で休養が十分とれている はい 回復性 睡眠 or いいえ 非回復性 睡眠 5つの健康習慣は 非回復性睡眠をも予防するのではないか? 5つの健康習慣 冠動脈 疾患 ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 (NEJM 2000, Circulation 2006) 2型糖尿病 癌 (NEJM 2001) 脳卒中 突然死 (Arch Intern Med 2006) (JAMA 2011) (Cancer Causes Control 2000, Arch Intern Med 2009, Prev Med 2012) 非回復性 睡眠 蛋白尿 (Hypertens Res 2013) 全死亡 (BMJ 2008) 本研究のリサーチクエスチョン Participants:全国の特定健診受診者で、 Exposure:5つの健康習慣の遵守数が少ない人は、 Comparison:多い人に比べて、 Outcome:非回復性睡眠の割合が高いのか? Design:横断観察研究 デザイン:横断観察研究 2008年の特定健診 5つの健康習慣スコアを計算 0点 (最も不健康)から 5点 (最も健康的)まで 40-74歳の受診者 主要アウトカム: 5つの健康習慣 ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 非回復性 睡眠 (睡眠で休養が十分とれていない) ロジスティック回帰分析 5つの健康習慣スコアの計算方法 先行研究に準じて、それぞれの習慣について、2値変数を作成 禁煙 BMI 節酒 身体活動 食習慣 望ましい健康習慣には1点を、 そうでない場合には0点とした。 5つの健康習慣スコア 望ましい健康習慣の定義は、 研究開始前に行い、 先行研究やガイドライン、および、 一般住民が実施可能なレベルとした。 5つの健康習慣スコアの計算方法 あなたの 5つの健康習慣スコアを 計算してみましょう! 研究開始前に定義した望ましい健康習慣 タバコを吸っていない 禁煙 BMI 節酒 身体活動 食習慣 1点 研究開始前に定義した望ましい健康習慣 BMIが25未満である 禁煙 BMI 節酒 身体活動 食習慣 1点 BMI<25 @Minako Wakasugi, MD, MPH, PhD 研究開始前に定義した望ましい健康習慣 1日あたり平均アルコール摂取量が20g未満 禁煙 BMI 節酒 身体活動 食習慣 アルコール 20gの目安 ビール 中ビン1本 (500ml) 日本酒1合 (180ml) 焼酎25度 半合強 (100ml) ワイン グラス2杯 ウイスキー ダブル (200ml) (60ml) 研究開始前に定義した望ましい健康習慣 下記2つの質問に「はい」と答えた場合を1点とした 禁煙 BMI 節酒 身体活動 食習慣 「1回30分以上の軽く汗をかく運動 を週2日以上、1年以上実施」 「日常生活において歩行または 同等の身体活動を1日1時間以上 実施」 厚生労働省。エクササイズガイド2006 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf 研究開始前に定義した望ましい健康習慣 下記2つの質問に「いいえ」と答えた場合を1点とした 禁煙 BMI 節酒 身体活動 食習慣 「朝食を抜くことが週に3回以上ある」 「夕食後に間食(3食以外の夜食)を とることが週に3回以上ある」 朝食 昼食 夕食 夜食 5つの健康習慣スコアの計算方法 先行研究に準じ、合計したものを5つの健康習慣スコアとした 禁煙 BMI 節酒 最も望ましい健康習慣は5点 最も望ましくない健康習慣は0点 5つの健康習慣スコア 身体活動 食習慣 あなたは何点? 解析対象者の選択 厚労科研 渡辺班 2008年受診者 (N= 667,218) 血清クレアチニン未測定 (N= 112,540) データ欠損のため除外; 本研究の解析対象者 (N= 243,767) 性別 (N = 517), 年齢 (N = 2), 回復性睡眠の有無 (N = 108,366), 5つの生活習慣の情報 (N = 26,983), 血圧値 (N = 61,173), 内服の情報 (N = 232), 空腹時血糖値 (N = 98,765), HbA1c (N = 11,359), 脂質データ (N = 75), 尿所見 (N = 829), 既往歴 (N = 2,515), 肝機能検査データ (N = 95). 男性19.2%、女性26.3%が非回復性睡眠と回答 非回復性睡眠(%) 40% 男性、P for trend < 0.0001 女性、P for trend < 0.0001 30% 20% 10% 0% 年齢(歳) 人数 (男性/女性) 非回復性睡眠の有無別 属性(男性) 非回復性睡眠 P値 なし あり 年齢 (歳) 64.4 (8.2) 61.7 (9.5) <0.0001 ①喫煙あり 25.8 23.6 (2.9) 27.5 23.7 (3.2) <0.0001 68.8 73.0 <0.0001 軽く汗をかく運動 49.8 37.6 <0.0001 歩行と同等の身体活動 57.7 46.6 <0.0001 夕食後の間食 11.2 17.3 <0.0001 朝食を抜く 10.0 17.4 <0.0001 ②BMI (kg/m2) ③節酒 0.05 ④身体活動 ⑤食習慣 連続変数は平均値(標準偏差)で表示した。 非回復性睡眠の有無別 属性(男性) 非回復性睡眠 既往歴 (%) 脳卒中 心臓病 慢性腎不全 併存疾患(%) 高血圧症 糖尿病 高コレステロール血症 慢性腎臓病 P値 なし あり 5.1 8.0 0.5 5.0 9.0 0.7 0.59 <0.0001 0.002 51.5 15.3 34.3 23.6 46.7 14.1 34.2 21.9 <0.0001 <0.0001 0.74 <0.0001 非回復性睡眠の有無別 属性(女性) 非回復性睡眠 P値 なし 64.2 (7.7) あり 62.6 (8.5) <0.0001 6.2 8.1 <0.0001 22.7 (3.3) 22.6 (3.5) <0.0001 97.1 96.5 <0.0001 軽く汗をかく運動 42.9 32.5 <0.0001 歩行と同等の身体活動 54.1 45.5 <0.0001 夕食後の間食 12.6 17.5 <0.0001 朝食を抜く 6.9 11.3 <0.0001 年齢 (歳) ①喫煙あり ②BMI (kg/m2) ③節酒 ④身体活動 ⑤食習慣 連続変数は平均値(標準偏差)で表示した。 非回復性睡眠の有無別 属性(女性) 非回復性睡眠 既往歴 (%) 脳卒中 心臓病 慢性腎不全 併存疾患(%) 高血圧症 糖尿病 高コレステロール血症 慢性腎臓病 P値 なし あり 2.6 4.9 0.4 2.8 6.1 0.5 0.02 <0.0001 0.007 43.3 8.0 51.5 14.9 39.5 7.8 48.5 14.6 <0.0001 <0.0001 <0.0001 <0.0001 5つの健康習慣スコアが高いほど 非回復性睡眠の割合が低かった 非回復性睡眠 男性、P for trend < 0.0001 女性、P for trend < 0.0001 50% 40% 30% 20% 10% 0% 5つの健康習慣スコア 0 1 2 3 4 5 年齢、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、CKDで 補正後も同様 エラーバーは95%信頼区間を示す 5つの健康習慣スコア 0 男性 1 2 3 4 5 女性 0 1 2 3 4 5 0.5 回復性睡眠 1 2 非回復性睡眠 4 8 オッズ比 サブグループ解析でも同様 年齢、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、CKDの有無で補正 5つの健康習慣スコア 年齢 40-49 歳 0-1 2 3 4 5 男性 女性 N = 8,978 N = 10,912 50-59 歳 0-1 2 3 4 5 N = 14,627 N = 24,390 60-69 歳 0-1 2 3 4 5 N = 44,562 N = 72,793 0-1 2 3 4 5 N = 28,895 N = 38,610 0-1 2 3 4 5 N = 59,928 N = 91,234 0 1 2 3 4 N = 68,236 N = 114,328 N = 28,826 N = 32,377 N = 97,062 N = 146,705 70-74 歳 内服薬なし BMI < 25 BMI ≥ 25 全体 0 1 2 3 4 0 1 2 3 4 5 0.5 1 2 4 Adjusted odds ratio for non-restorative sleep 0.5 1 2 4 8 Adjusted odds ratio for non-restorative sleep 5つの健康習慣は 非回復性睡眠とも関連する 5つの健康習慣 冠動脈 疾患 ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 (NEJM 2000, Circulation 2006) 2型糖尿病 癌 (NEJM 2001) 脳卒中 突然死 (Arch Intern Med 2006) (JAMA 2011) (Cancer Causes Control 2000, Arch Intern Med 2009, Prev Med 2012) 非回復性 睡眠 蛋白尿 (Hypertens Res 2013) 全死亡 (BMJ 2008) 若い頃から、5つの健康習慣は重要 若い頃*の 5つの健康習慣 強く関連 (Circulation 2012) ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 中年期の危険因子を防ぐ ・心血管病がない ・脂質異常症がない ・高血圧がない ・糖尿病がない ・禁煙 強く関連 *登録時18~30歳を 20年間フォローアップ 老年期 ・健康長寿 (JAMA 1999) ・高いQOL (生活の質) (Arch Intern Med 2003) ・医療費が少ない (NEJM 1998, Arch Intern Med 2005) 男女とも、若い人ほど、 非回復性睡眠の割合が高い 非回復性睡眠(%) 40% 特に若い人では、 将来、病気になるからと 言われるよりも、 回復性睡眠を得られる ことの方が、生活習慣 改善のモチベーション になるかもしれない。 人数 (男性/女性) 男性、P for trend < 0.0001 女性、P for trend < 0.0001 30% 20% 10% 0% 年齢(歳) 5つの健康習慣は 非回復性睡眠とも関連する 5つの健康習慣 冠動脈 疾患 ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 (NEJM 2000, Circulation 2006) 2型糖尿病 癌 (NEJM 2001) 脳卒中 突然死 (Arch Intern Med 2006) (JAMA 2011) (Cancer Causes Control 2000, Arch Intern Med 2009, Prev Med 2012) 非回復性 睡眠 蛋白尿 (Hypertens Res 2013) 全死亡 (BMJ 2008) 問診票の睡眠にも注目! 睡眠で休養が十分とれている 5つの健康習慣 はい or ①禁煙 ②体重管理(BMI<25 kg/m2) ③節酒 ④活発な身体活動 ⑤健康的な食事 いいえ 非回復性 睡眠 結 論 ✓5つの健康習慣を用いた保健指導は、様々な 疾患予防に加え、回復性睡眠に繋がり、QOLの 上昇に直結する可能性がある。 ✓5つの健康習慣による個人リスク評価は、包括 的で効果的な保健指導となりうる。 謝辞 本研究は平成24~26年度厚生労働科学研究費補助金「特定健康診査による個人リスク 評価に基づく、保健指導と連結した効果的な慢性腎臓病(CKD)地域医療連携システムの 制度設計」の援助を受けました。関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
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