オートファジーはTGF-β1に誘導されるⅠ型コラーゲンを分解する

THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 287, NO. 15, pp. 11677–11688, April 6, 2012
Autophagy Promotes Intracellular Degradation of Type1
Collagen Induced by Transforming GrowthFactor(TGF)β1
オートファジーはTGF-β1に誘導されるⅠ型コラーゲンを分解する
2015.01.19 ゼミ
M1 中山千華
腎線維症
ー慢性腎臓病の進行に伴う症状であり、腎臓における不可逆的な細胞外基質の蓄積
透析・臓器移植以外に現在有効な治療法はない
TGF-β1(Transforming Growth Factor-β1)
ー多様な働きを持つサイトカイン
・増殖や腫瘍形成に関わる
Bierie, B., and Moses, H. L. (2006) Nat. Rev. Cancer 6
・コラーゲンの合成を促進する
Schmierer, B., and Hill, C. S. (2007)Nat. Rev. Molecular Cell Biology, 8
・オートファジーを誘導する
Ding, Y., et al.(2010)J. Biol. Chem. 285
Gregor M.Bran. et al. (2010)Anticancer Research
細胞内におけるタンパク質の分解
①ユビキチンープロテアソーム経路
ユビキチン分子が複数結合した標的タンパク質をプロテアソームが認識して分解する
②オートファジー経路
Singh, R. (2011). Aging (Albany NY), 3(10), 934.
本実験の背景と目的
●TGF-β1がコラーゲン産生を促進し、腎線維症を引き起こす
Sharma,K.,andZiyadeh,F.N.(1995)Diabetes44
●分子シャペロン欠損細胞ではⅠ型コラーゲンの立体構造の形成が不完全となり、
オートファジー経路を介した細胞内分解の標的となる
Ishida, Y., et al.(2009)Mol.Biol.Cell20
●TGF-β1がオートファジーを誘導する
Ding, Y., et al.(2010) J. Biol. Chem. 285
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筆者らは、腎線維症の治療法解明のためにⅠ型コラーゲン蓄積量の調節における
オートファジーの役割を検証した。
Fig①beclin 1 +/-マウスではコラーゲンが蓄積される
腎臓組織切片を
A マッソントリクローム法で染色
(筋線維=赤、コラーゲン=青、核=紫)
B ウエスタンブロット
100 µm
100 µm
Fig②培養細胞での確認
A MMCをTGF-β1(2 ng/mL)で刺激(0~24h)→ウエスタンブロット
B siRNAによりノックダウン→TGF-β1(2 ng/mL)で刺激→ウエスタンブロット
Fig③オートファジー経路の阻害によりコラーゲンの分解が抑制される
TGF-β1(2 ng/mL), Baf A1(10 nM), MG132(10 µM)
↓24h
A ウエスタンブロット
B PCR
BafA1(bafilomycin A1):オートリソソーム形成阻害剤
MG132:ユビキチン‐プロテアソーム経路阻害剤
GFP-LC3トランスジェニックマウス由来MMCを播種
↓24h
TGF-β1(2 ng/mL), Baf A1(10 nM), MG132(10 µM)
↓24h
蛍光免疫染色
Fig④TGF-β1に誘導されるⅠ型コラーゲンはオートファジーの活性化によって減少する
*TFP処理の条件検討
TFP 処理→A・Bウエスタンブロット
TFP(20 μM) or/and TGF-β1(2 ng/mL) 24h処理→C 蛍光顕微鏡によりGFP-LC3を観察
TFP:オートファジー活性剤
Fig④TGF-β1に誘導されるⅠ型コラーゲンはオートファジーの活性化によって減少する
*TFP処理により誘導されるオートファジーはⅠ型コラーゲンの分解を促進するか検討した
TFP(20 μM) or/and TGF-β1(2 ng/mL) 24h処理→D:ウエスタンブロット、E :PCR
Fig⑤COはオートファジーを誘導する
ウエスタンブロット
A 大気 or CO(1・3d)に曝したマウスから単離した腎臓組織
B 大気 or CO(0 – 24h)に曝したMMC
Fig⑥COに誘導されたオートファジーがⅠ型コラーゲンの蓄積に与える影響
ウエスタンブロット
A CORM-2(0~20 µM) 24h処理
B CORM-2(10 µM)、TGF-β1(2 ng/mL) 24h処理
C CORM-2(10 µM)、BafA1 (10 nM) 24h処理
Fig⑦TGF-β1はTAK1-MKK3シグナル経路を介してオートファジーを誘導する
A TGF-β1(2 ng/mL) 0-24 h処理→ウエスタンブロット
B MKK3発現ベクター / TGF-β1(2 ng/mL) 24h処理→ウエスタンブロット
C TGF-β1(2 ng/mL) 24 h処理→蛍光顕微鏡によりGFP-LC3を観察
Fig⑧オートファジーは凝集したコラーゲンを分解する
A 野生型のマウス由来MMCをウエスタンブロット with or without DTT(100 mM)
B ベクリン1欠損/野生型マウス由来MMCからタンパク質を抽出
→沈殿と上清に分けてウエスタンブロット
総括
➣TGF-β1は相反する二つの性質をもつ
①Col-1合成促進
②Col-1分解を誘導するオートファジー促進
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・オートファジー阻害によるCol-1蓄積
(ベクリン1発現の抑制
/ Baf A1処理)
・mRNA発現量に変化はない
⇩
・オートファジー促進によるCol-1蓄積
( TFP処理 / CO曝露)
▶TGF-βに誘導されるオートファジーのCol-1分解促進作用は、
腎線維症の治療に利用できる可能性がある