環境省研究総合推進費【1-1405】 平成26年度第1回アドバイザリーボード会合 衛星リモートセンシングによる 広域スケール生物多様性モニタリング 及び予測手法の開発 日時:平成26年7月28日(月)14:00-17:00 場所:東京情報大学千葉ステーションキャンパス 1 目次 1.研究の概要 2.背景 生物多様性 COP10以降 国家戦略2012-20 行政ニーズ 3.研究目的 生物多様性とリモートセンシング MODISの優位性 4.研究スキーム(模式図) 解析手法 工程 5.期待される効果 2 研究の背景1 2008年 生物多様性基本法 2010年 生物多様性総合評価 2010年 CBD COP10 名古屋議定書 愛知目標 2012年 生物多様性国家戦略2012-2020 愛知目標を達成するロードマップ 3 研究の背景2 生物多様性の保全 → 地域ごとの生物多様性の迅速かつ的確な モニタリング・評価 生物多様性を反映した地図作成(植生図や土地 利用・土地被覆図) → 生物保全における主な目標の一つ (Myers et al., 2000) 4 研究の背景3 生物多様性総合評価 (JBO) (2010) 生物多様性評価地図(2012) 使用データ: ・第2,3回自然環境保全基礎調査(1979-1986) ・第5回自然環境保全基礎調査(1994 -1998) 未完了:第6,7回自然環境保全基礎調査(1999-) 植生:陸上生態系の基本構造を規定 5 自然環境保全基礎調査 植生図データの整備状況 環境省自然環境保全基礎調査 ・1979ー1998年 5万分の1植生図を全国整備 ・第6回(1999ー2004年),第7回(2005年ー) 2万5千分の1植生図 平成24年度末 整備状況 約64% 6 第6,7回自然環境保全基礎調査 植生図GISデータ整備状況 7 研究の背景4 環境省自然環境基礎調査(植生図)を補完する 全国レベルでの植生概況と変動の把握 → リモートセンシング技術の適用 RSSJ 公開ワークショップ 「生物多様性とリモートセンシング技術」 2010年6月25日 GEO-BON, J-BON, AP-BON, etc. 8 公開ワークショップ「生物多様性とリモートセンシング技術」 25th June 2010 生物多様性とリモートセンシング技術 グローバルからローカルまでのスケール 地球(世界) 国(日本) 都道府県 区域 それぞれのスケールにおける展開 9 公開ワークショップ「生物多様性とリモートセンシング技術」 25th June 2010 リモートセンシング技術の寄与1 1) 生物多様性を育む環境に関する情報 2) 生物多様性そのものの情報 3) 生物多様性に影響を与えているもの・ことの情報 1) 生物のハビタット評価 2) 生物(植物)の多様性評価 3) 精確なLU/LCの現状・変化の把握 + 生物多様性総合評価指標 10 研究の背景5 • 衛星リモートセンシング:広域かつ迅速に土 地被覆動態の抽出が可能 • NOAA/AVHRRによる地球規模の植生分布, 植生変動に関する研究(Loveland et al. 1991,1997,2000; 小林・建石2007) • 日本全土を対象とする広域的モニタリング →Terra/MODIS (2000-) →Suomi NPP/VIIRS (2012-) • 東アジアの土地被覆に関する成果は極め て限られている 11 研究の目的 ① Terra/MODIS及びSuomi NPP/VIIRSを用いた全国 スケールの土地被覆分類図(全国植生現況図)作成 ② 植生現況図を3~5年周期で更新する手法を確立 ③ シナリオ分析による将来予測に基づいて土地被覆 変化を予測 → 全国スケールにおける生物多様性保全施策立案 に資すること 12 研究のスキーム • • • • • サブテーマ2:浅沼・朴・原田(東京情報大学) 衛星データセットの作成手法と解析方法の開発 サブテーマ1:原(慶)・富田(東京情報大学) 土地被覆解析結果の検証とシナリオ分析による 将来予測 サブテーマ3:原(正)(千葉県立中央博物館) 代表的植生域における現地検証 サブテーマ4:平吹(東北学院大学) 震災被災地における現地検証 サブテーマ5:藤原(兵庫県立大学) 2.5万分の1植生図との検証 13 衛星リモートセンシングによる広域スケール生物多様性モニタリング及び予測手法の開発 MODIS・VIIRSデータの受信 処理及びシステムの維持管理 サブテーマ2(浅沼・朴) 雲を除去した月別のコンポジットデータ作成 サブテーマ2(朴・原田) 高精度化 高精度化 多時期のコンポジットデータを用いた 全国スケールの土地被覆分類図作成 サブテーマ2(原田・朴) 現地調査 現地調査 2.5万分の1 植生図との検証 サブテーマ5(藤原) 代表的植生域に おける現地検証 土地被覆解析結果の検証 サブテーマ3(原正) 震災被災地に おける現地検証 サブテーマ4(平吹) サブテーマ1(原・富田) サブテーマ1(原・富田) シナリオ分析による将来予測 14 1.データセット作成・LU/LC解析 • サブテーマ2 • データセットの作成(浅沼・朴・原田) • コンポジットデータの作成(朴・原田) • 土地利用/土地被覆解析(朴・原田) 15 東京情報大学におけるMODIS・ VIIRSの受信体制 北海道 網走 東京農業大学オホーツクキャンパス サイマルキャスト・ダウン ストリーム・サーバー @東京情報大学 サイマルキャスト・ ダウンストリーム・ サーバー @NASA 沖縄 宮古島 東京農業大学宮古亜熱帯農場 サイマルキャスト出力画像例 (日中の観測データを連続表示) 千葉 東京情報大学 利用者 16 本学キャンパスの地上局(千葉市),東京農業大学オホーツクキャンパスと宮古亜熱帯農場の地上局を通じてMODISデータを毎日受信 科学的・技術的意義 ・ NASAに次いでサイマルキャスト・ダウンストリーム・サーバーを 東京情報大学に設置(NASA技術移転1号) ・西部ベーリング海から南シナ海,カムチャッカ半島からベトナムま での地域のTerra・Aqua/MODISデータを毎日受信 ・日本全域の土地被覆動態の解析・モニタリングを実施 17 MODISデータがカバーする対象地域 MODIS月コンポジット画像(2009年10月) サブテーマ(2) 土地利用・被覆図作成のフローチャート TUISのTerra/MOD09, MOD03(MOD02hkm) センサ天頂角が40度 以下のデータを抽出 非階層的クラスタリングのISODATA法に より植生域と非植生域をそれぞれ30, 20 クラスの土地被覆に分類 White Index法(朴ほか 2009)による雲除去 2.5万分の1植生図(環境省)の植生区分 を参照して相観レベルに統合 雲を除去した月別コン ポジットデータ作成 月間合成と多時期合成による土地利用・ 土地被覆図作成 夏季のNDVI閾値より植生域と 非植生域の月間合成画像作成 2.5万分の1植生図,5万分の1植生図 (環境省)を用いて精度検証 18 サブテーマ(2) 月間合成と多時期合成による土地利用 ・土地被覆図の作成 7月(July) 8月(Aug.) 9月(Sep.) 10月(Oct.) 11月(Nov.) Terra/MODISの月別コンポジットデータ(2001年7, 8, 9, 10, 11月) 19 サブテーマ(2) 月間合成と多時期合成による土地利用・土地被覆図の作成 2001年(夏期・秋期・冬期)のTerra/MODISデータ(解像度500m) から土地被覆分類図を作成 20 2.解析結果の検証 • サブテーマ1,3,4,5 • • • • 解析結果の検証(原(慶)・富田) 代表的植生域での検証(原(正)) 震災被災地での検証(平吹) 2万5千分の1植生図との検証(藤原) • 3-5年ごとの解析結果(含期間の検討) • 変化しない土地 →同じ分類クラス • 変化した土地 →的確に抽出 • 適切な分類クラス(凡例)の設定 21 サブテーマ(3) 代表的植生域における現地検証 針広混交林:トドマツ・ミ ズナラ林(北海道北部) 亜寒帯:常緑針葉樹林 (北海道東部) 冷温帯:ブナ林 (白神山地) 暖温帯:常緑広葉樹林 (宮崎県綾町) 22 サブテーマ(4) 震災被災地における現地検証 2011年2月 東日本大震災前 2011年4月 2012年4月 Terra/MODISの1か月コンポジット画像 東日本大震災後 23 サブテーマ(4) 仙台湾沿岸における各年度のRapidEye画像 2010年4月14日 (RGB=赤:緑:青) 2011年4月13日 2012年4月10日 2013年3月15日 © 2011 RapidEye AG, Germany. 24 サブテーマ(5) 2.5万分の1植生図との検証 第6,7回自然環境保全 基礎調査の植生区分 ・大区分のコード(58種類)からMODISデータから 作成した植生図の凡例(高山植生,常緑針葉樹, 落葉広葉樹,常緑広葉樹,混交樹,農地,都市, 水域)に再分類 植生区分 高山帯自然植生 域 コケモモ-トウヒク ラス域自然植生 コケモモ-トウヒク ラス域代償植生 ブナクラス域自然 植生 植 生 域 非 植 生 域 1. 高山植生:01, 02, 03, 07, 09, 10 2. 常緑針葉樹:04, 05, 14, 15, 23, 28, 29, 38, 42, 54 3. 落葉広葉樹:06, 08, 11, 13, 16, 17, 18, 19, 20, 22, 24, 30, 31, 32, 33, 41, 44 4. 常緑広葉樹:27, 34, 35, 36, 37, 39, 40, 43, 55 5. 混交林:12(道南) 6. 畑地・水田・草地:21, 25, 26, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 56, 57, 7. 都市域:58 8. 水域: 中区分の開放水域 ブナクラス域代償 植生 ヤブツバキクラス 域自然植生 ヤブツバキクラス 域代償植生 河辺・湿原・塩沼 地・砂丘植生 植林地・耕作地植 生 その他 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 大区分 高山低木群落 高山ハイデ及び風衝草原 雪田草原 亜高山帯針葉樹林(北海道) 亜高山帯針葉樹林 亜高山帯広葉樹林 高茎草原及び風衝草原 亜高山帯二次林 二次草原 伐採跡地群落 落葉広葉樹林(日本海型) 下部針広混交林 落葉広葉樹林(太平洋型) 冷温帯針葉樹林 岩角地針葉樹林 渓畔林 沼沢林 河辺林 岩角地・風衝地低木群落 なだれ地自然低木群落 自然草原 落葉広葉樹二次林 常緑針葉樹二次林 落葉広葉低木群落 二次草原 伐採跡地群落 常緑広葉樹林 暖温帯針葉樹林 岩角地・海岸断崖地針葉樹林 落葉広葉樹林 沼沢林 河辺林 自然低木群落 海岸風衝低木群落 亜熱帯常緑広葉樹林 亜熱帯常緑広葉樹林(隆起石灰岩上) 亜熱帯湿生林(マングローブ林) 亜熱帯常緑針葉樹林 亜熱帯低木群落 常緑広葉樹二次林 落葉広葉樹二次林 常緑針葉樹二次林 タケ・ササ群落 低木群落 二次草原 伐採跡地群落 湿原・河川・池沼植生 塩沼地植生 砂丘植生 海岸断崖地植生 岩角地・石灰岩地・蛇紋岩地植生 火山荒原植生・硫気孔原植生 隆起珊瑚礁植生 植林地 竹林 牧草地・ゴルフ場・芝地 耕作地 市街地等 25 3.将来予測・シナリオ分析 • サブテーマ1(原・富田) 生物多様性 • 第1の危機(開発等による影響) • 第2の危機(耕作放棄地) • 第4の危機(地球温暖化) • MODISの空間スケールで解析可能な事象 • 今期はどの現象を把握できるかの検討 26 サブテーマ(1) 土地被覆解析結果の検証とシナリオ 分析による将来予測 気温上昇 植生予測図 気温上昇+降水量低下 説明変数(気温・降水量など) 現在の植生 27 サブテーマ(1) 土地被覆解析結果の検証とシナリオ 分析による将来予測 景観変遷系列(Landscape Transformation Sere: LTS)(Hara et al. 2010) による各気候帯ごとの変遷系列のモデル化 28 研究計画(平成26年度) ・コンポジット期間(雲の除去)や土地被覆分類手法 の検討 ・MODIS(空間分解能500m)を用いた土地被覆分類 図の作成手法確立 ・植生現況図に相応しい土地被覆分類クラスの検討 全国レベルの土地被覆分類図を作成 地域ごとの分類可能階層クラスの検証 29 研究計画(平成27年度) ・精度検証用にSPOT/HRG-2(空間分解能10m)や Landsat/ETM+(空間分解能30m)を用いた土地被 覆分類図作成 (自然環境基礎調査植生データ→山岳地が未整備) ・震災被災地を対象とし,時間・空間分解能の異なる 衛星データを用いた土地被覆図作成 全国レベルの土地被覆分類図の精度検証 30 研究計画(平成28年度) ・既存の植生学的知見に基づきGISデータを用いて 衛星データによる分類結果を補完する手法開発 ・植生概況図作成手法の確立 ・社会・自然環境状況を示す情報を基にシナリオ分 析を行い,将来の土地被覆変化を予測 全国植生概況図の完成・公開 生物多様性に影響を与える土地被覆変動予測 31 この研究における達成目標 ・環境省の自然環境保全調査の補完として,MODISを用いて全国 レベルの土地被覆分類図(全国植生現況図)を作成し3~5年周期 で定期的に更新(サブテーマ1, 2) ・国内の代表的な植生域にテストサイトを設け,衛星データの解析 結果と現地データとを照合し,解析結果の高精度化を図る (サブテーマ1, 5) ・環境変動が大きい箇所として2011年の東日本大震災の被災地を 対象地として,震災前後,及びその後の土地被覆動態を詳細に解 析し,解析手法にフィードバックするとともに,シナリオ分析によって 土地被覆の将来予測をする際の裏付けとする(サブテーマ4, 1) 生物多様性保全施策立案に有用なデータ・知見を提示 32 行政ニーズへの適合性 【重点課題14】生物多様性の確保 【重点課題15】国土・水・自然資源の持続的な保全と利用 行政ニーズ(1-2) 生物多様性に関する広域モニタリング技術及び将来シナリオに基 づいた予測手法の開発 ・ポスト2010年目標にある生物多様性の確保および自然共生型社 会の実現に向けての貢献 1. 環境省で推進してきた自然環境保全基礎調査データを補完する 全国レベルの土地被覆分類図(全国植生現況図)を作成、3~5 年単位で定期的に更新し提供が可能 2. 同一基準で国土全体の植生の現況を迅速に把握しモニタリング することが可能 →効果的な保全施策を展開させることに資する 3. 全国スケールの土地被覆動態の将来予測の基礎データとしても 33 活用 →今後の環境政策に有用な知見を提示 関連研究業績 ・原慶太郎, 趙憶, 原田一平, 下嶋聖, 関山絢子, 田中健太,生物多様性保全を目的とし た衛星データによる千葉県の自然環境解析に関する研究, 千葉県生物多様性セン ター研究報告, 2014, 7, 106-118. ・原慶太郎, 樋口広芳:“東日本大震災が生態系に及ぼした影響”, 地球環境, 2013, 18(1) 23-33. ・谷垣悠介, 原田一平, 関山絢子, 原慶太郎:“ALOS/AVNIR-2を用いたマダケ林とモ ウソウチク林および常緑樹林の分光反射特性と季節変動解析”, 写真測量とリモートセ ンシング, 2012, 50, 361-366. ・Zhao, Y., Harada, I., Tomita, M., Hara, K.: “Multi-scale effect on landscape pattern analysis using satellite data with a range of spatial resolutions”, Journal of Landscape, Ecology, 2011, 4, 62-72. ・原田一平, 松村朋子, 原慶太郎, 近藤昭彦:“近代化の過程における日本の森林変遷 に関する空間解析”,景観生態学, 2011, 16(1), 17-32. ・Fujihara, M. & Hara, K.: “Changes in landscape structure in a rural area of Boso Peninsula, central Japan”, 2011, Journal of Landscape, Ecology, 4, 28-37. 34 関連研究業績 ・Hara, K., Harada, I., Tomita, M., Short, K.M., Park, J., Simojima, H., Fujihara, M., Hirabuki, Y., Hara, M., Kondoh, A.:“Landscape transformation sere: in which directions will our landscape move and how can we monitor these changes”, Landscape ecology -methods, applications and interdisciplinary approach, 2010, 165-172. ・Hara, M.: “Climatic and historical factors controlling horizontal and vertical distribution patterns of two sympatric beech species, Fagus crenata Blume and Fagus japonica Maxim., in eastern Japan”, Flora, 2010, 205, 161-170. ・Park, J.,Saito, M.,Hara, K.,Asanuma, I.,Yasuda, Y.,Nunohiro, E., Mackin, K.J., Matsushita, K.,Yanagisawa, Y.,Igarashi, M.: “Effective Band Combination for Landcover Classification Accuracy using MODIS Data”, Journal of International Information Institute,2010, 13(3A), 709-717. ・朴鐘杰, 建石健太郎, 布広永示:“時系列NOAA/AVHRRデータを用いた土地被覆変 化傾向抽出”, 写真測量とリモートセンシング, 2010, 49(6), 387-399. ・Susaki, J., Yasuoka, Y., Kajiwara, K., Honda, Y. and Hara, K.: “Validation of MODIS albedo products of paddy fields in Japan”, IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, 2007, 45(1), 206-217. 35 愛知目標 生物多様性の主流化 36
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