ポーター(1998)は競争戦略を、①コスト·リ ーダーシップ②差別化戦略③集中戦略の3つの 種類を分けている。 コスト·リーダーシップ戦略は、同一製品·サ ービスを競争企業に比較して低コストで生産 し、コスト面で優位性を確保することである。 競争優位をコスト面で発揮している企業は、 その業界の価格メカニズムを支配し、対抗で きない限界的な企業を最終的には業界から追 い出すことができる。しかし、低コスト企業 と最低価格で販売している企業は全く異なる ものであり、競合相手とコスト構造が同じで あるにもかかわらず、最低価格で販売を続け ることは、長期的に競争の優位性を確立でき る戦略ではない。 製品の差別化という企業戦略においても、業 務の効率性と競争力のあるコスト構造が必要 である。また、製品の差別化を効率良く実施 していくためには、コスト構造の効率性の追 求と合わせて、差別化した製品やサービスを 提供できる行動(集合)システムが必要であ る。そのためには、企業戦略を目的に応じて 明確にし、エネルギーや資源を効率的に(集 中)投資していく意思決定が必要である2)。 ポーターの集中戦略は市場を細分化して、特 定のセグメントに対して、資源を集中する戦 略である。特定のセグメントとして、特定の 製品、市場、顧客などが選択される。 Barney(1991)は、競争優位について、「その 企業の行動が業界や市場で経済の価値を創出 し、かつ同様の行動を取っている企業がほと んど存在しない場合に、その企業がおかれる ポジションである」としている。また、「特 定の企業が持つ競争に関するセオリーがその 業界や市場に適合していて、他の企業はまっ たくそのセオリーを知らないか、もしくはそ のセオリーに基づいて完全に行動することが できない場合、その企業は競争優位にある」 と定義している。 また、産業の組織は産業の競争優位に影響を 与え、産業の組織の構造を研究し、競争優位 の構築要素を導き出していると提唱している 3)。Nonaka & Takeuchi (1995)は知識の創造を 組織に拡散·共有し、製品とサービスおよびシ ステムとして形状化するプロセスとして定義 することで、知識創造が企業の競争優位を決 定する要素であると主張した。 野村総合研究所(2007)は「日本の強みは素材 ・材料分野で、新たに求められた多様な技術 を持つ企業、独自の技術を持つ企業が多数存 在することである。また、競争力の強化は顧 客のニーズの本質をつかみ、そのソリューシ ョンの広がりを競合企業に先んじてどこまで 拡大、あるいは進化させられるかが極めて重 要なポイントとなってきている。顧客の業務 をより深く広く理解し、全く異業種と提携す ることにより、ソリューションサービスを展 開するなど、事業構想力の強化が求められて いる」と述べていた。 山田太郎(2007)は「日本の製造業の弱点は世界の 変化に気づいていないことである」と指摘した。 また、山田太郎(2007)は「日本企業は人材、技術、 設備、資金力をもっていたとしても、世界の顧客 のニーズの変化と傾向を把握できないなら、勝ち 抜くことはできない。そのため、製品はグローバ ル化になった。海外進出を進める日系企業に対し て、グローバル顧客と材料調達において、個々の 企業では、事業の集中と選択を積極的に展開して いる。製品の設計拠点、部品調達元、製造拠点、 販売ルートなどを組み立て、言わばグローバル製 品のネットワークを整備することが必要になる」 と提唱した。 劉仁傑(2008)は「台湾の企業は、特に伝統的 な工業(例えば繊維産業、自転車産業、機械 産業など)が先進国の技術を模倣し、自己自 身のイノベーションを導入すると、製品の付 加価値が生じ、顧客の価値を拡大するために、 知識の創造を通じて、企業の核心能力を強化 するとともに、企業の競争優位を構築し蓄積 ができる」と述べていた。
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