THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 289, 2014 Low Molecular Weight Hyaluronan Activates Cytosolic Phospholipase A2α and Eicosanoid Production in Monocytes and Macrophages Milena Sokolowska, Li-Yuan Chen, Michael Eberlein, Asuncion MartinezAnton, Yueqin Liu, Sara Alsaaty, Hai-Yan Qi, Carolea Logun, Maureen Horton and James H. Shelhamer 低分子量ヒアルロン酸は単球とマクロファージにおける細胞質型ホスホリパーゼ A2αとエイコサノイドの産生を活性化する 2015/10/26 M1 柴田真衣 背景と目的 HAの構造 ヒアルロン酸(HA)は軟骨や皮膚の 細胞外マトリックスに多く存在する。 (グルクロン酸+N-アセチルグルコサミン) 通常時は数千kDaの高分子構造をとる が、骨関節炎やリウマチ性関節炎 などの病理的状態の場合、数kDa~ 数百kDaへの低分子化が認められる1)。 ヒアルロン酸は分子量によって機能性が異なることが知られている。低分子のも のは、マクロファージのToll-likeレセプターなどと結合して炎症性サイトカイン の産生を誘導し、炎症を促進すると考えられている2) 。 低分子のHAと同様にエイコサノイドも炎症に関わるが、エイコサノイドの代謝 とヒアルロン酸の関係性についてはまだよくわかっていない。 →アラキドン酸(AA)に着目して、低分子のヒアルロン酸が単球やマクロ ファージの脂質代謝に与える影響について検討した。 1)Yang, C et al., J. Biol. Chem., 2012 2)Campo, G, M et al., Biochem. Oharmacol., 2010 LMW HAのサイズ分析 A:アガロースゲル中で電気泳動(No.3~5がヒアルロン酸) B:SEC-MALS(n=4) →今回用いる”低分子HA(LMW HA)”の分子量は80%が1.0×106以下で 平均分子量は200 kDaである (今後”HA”=LMW HAとして、このヒアルロン酸を指す) HAの純粋性の確認 エンドトキシンが混入していな いことの確認 Polymixin B(PMB):抗生物質、 エントドキシン活性を抑制する RAW264.7細胞をトリチウムラ ベルしたAAを含む培地で一晩培 養後、 ・HA(100 µg/mL) ・LPS(10 ng/mL) ・PMB(10 µg/mL) で6 h処理し、AA放出量を測定 →HAのAA放出促進効果はPMB によってキャンセルされなかっ た が、今後もHAにPMBを混合 して使用する ヒアルロン酸はサイズ特異的にAA放出を促進する RAW264.7細胞を HA(平均200 kDa) Oligo-HA(平均4 kDa) HMW HA(平均2500 kDa) いずれかで6 h処理後 AA放出量を測定 →HAに特異的に AA放出量の増加が 認められた。 この作用は他サイ ズのHAの添加によ りキャンセルされ なかった。 ヒアルロン酸はサイズ特異的にAA放出を促進する E:・HA 100µg/mLまたは分解酵素処理したHA 100µg/mL を用いて処理後、AA定量 F:分解酵素処理したHA を電気泳動 →HA分解処理によりAA放出促進効果が減少した この作用はHAのサイズに特異的と考えられる。 HA処理条件の検討 以下の条件で HA処理とAA定量 を行った。 A:処理時間6 h C:処理時間1 h B,D:HA 100 µg/mL 6 100 →AA放出促進効果 が認められた。 内の濃度、 時間を今後用いる 100 1 HAはcPLA2α依存的にAA放出を促進する cPLA2α:細胞質型ホスホリパーゼ2α 各細胞を、cPLA2αインヒビターで30分処理し、HAで(E)6 h (F)1 h 処理 → cPLA2αの阻害は、HAによるAA放出増加をキャンセルした。 HAは単球やマクロファージにおいてcPLA2αを介してAAの放出を促進す ることが示唆された。 HAはcPLA2αのリン酸化を誘導する HA 100 µg/mL で 各時間処理後、ウエスタン ブロット (“control”=未処理0 h) →HA処理後15,30分で cPLA2αのリン酸化の 増加が認められた。 HAは各種MAPKのリン酸化を誘導する 15~30 minでリン酸化のピークに達した。 Aktのリン酸化については変化なし(data not shown) HAは各種MAPKのリン酸化を誘導する RAW 264.7細胞と同様に15~30 minでリン酸化のピークに達した。 HAは各種MAPKを介してAA放出を促進する 各種インヒビターで 2 h処理後、HA処理、 AA定量 U0126:ERK1/2 SB202190:p38 SP600125:JNK の阻害剤 →各インヒビターに よりAA放出量が有意 に減少した →HAはERK1/2, p38, JNKを介してcPLA2αのリン酸化を促進 することで、AA放出を促進すると考えられた。 HAはTLR4とMYD88を介してcPLA2αを活性化する A:各種siRNAで前処理後48 hでHA処理 B:siRNA処理後48 hでRT-PCR →TLR4, MYD88のノックダウンでHAによるAA放出増加が抑制された HAはTLR4とMYD88を介してcPLA2αを活性化する →ヒト由来単球細胞においてもTLR4のノックダウンにより HAによるAA放出増加が有意に抑制された HAはTLR4とMYD88を介してcPLA2αを活性化する HA 100 µg/mL で 2 h処理 →ヒト単球由来マクロファージのSTAB2のノックダウンによっては HAによるAA放出の増加は抑制されなかった HAはTLR4を介してcPLA2αを活性化する siRNAで48 h前処理し、30 min HA処理、ウエスタンブロット →TLR4のノックダウンによってcPLA2αのリン酸化の増加が 抑制された/抑制される傾向があった siRNAで48 h前処理し、 30 min HA処理、ウエ スタンブロット →TLR4のノックダウン によってMAPKsのリン 酸化の増加が抑制され た/抑制される傾向が あった HAによるcPLA2αと MAPKsの活性化には、 TLR4/MYD88が関与 していると考えられた。 HAはcPLA2αを介してPGE2の産生を促進する cPLA2αインヒビターで30 min 処理、 HAで8 h処理後、ELISAでPGE2定量 → cPLA2αの阻害によってHAによる PGE2産生増加が有意に抑制された。 HAはTLR4/MYD88を介してPGE2の産生を促進する A,B:ノックアウトマウス由来の BMDMを8 h HA処理後、ELISA C:siRNA処理48 h後、 8 h HA処理、 ELISA →TLR4,MYD88のノックアウト、 ノックダウンによりHAのPGE2産生 促進作用がキャンセルされた。 HAはTLR4を介してCOX2の発現を誘導する A:HAで各時間処理後、ウエスタンブロット B:siRNA処理後、6 h HA処理、ウエスタンブロット →HAによってCOX2の発現量が増加し、この作用はTLR4のノックダウンに よってキャンセルされた。 HAはTLR4/MYD88を介してCOX2の発現を誘導する ノックアウトマウス由来のBMDMをHAで6 h処理後ウエスタンブロット →HAによってCOX2の発現量が増加し、この作用はTLR4またはMYD88の ノックアウトによってキャンセルされた。 HAはマクロファージにM1様の性質を与える ヒト単球由来マクロファージ(M0)を 20 ng/mL IFN-γと100 ng/mL LPSで18 h処理→M1マクロファージ 20 ng/mL IL-4で18 h処理→M2マクロファージ に分化させた後、HAで6 h処理し、RT-PCR →どのマクロファージでもM1のマーカー遺伝子の発現量が増加した。 M1のマーカー遺伝子(IL-12A,IL-12B):増加 M2のマーカー遺伝子(CCL18,P2Y12):CCL18は変化なし、P2Y12は減少 IL-23A:増加 IL-10:M0とM2において増加 →HAはM0,M2マクロファージの表現型をM1様にすると考えられた。 HAはマクロファージのアラキドン酸カスケードに影響する →HAはcPLA2αとCOX2の発現を誘導し、COX1,ALOX15,ALOX5,LT4AH の発現を抑制した。 HAはマクロファージの遺伝子発現をM1様にするが、炎症性サイトカイ ン産生能だけでなく、AA代謝の変化にも影響を与える。 総括 jnk ひ これらの知見は、炎症性疾患や脂質代謝に対するヒアルロン酸の新たな 役割を提示する。 http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1b07.pdf
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