分子輝線観測に基づく南天の棒状渦巻銀河

分子輝線観測に基づく
南天の棒状渦巻銀河NGC986における
星間ガスの研究
飯坂敦子
濤崎智佳(上越教育大学)
河野孝太郎(東京大学天文センター)
本 研 究 の 目 的
NGC986分子ガス雲をCO(1-0)輝線を用いて観測することにより分子ガスの性質を調べ,星形成について研究する.
観 測 ・ 解 析
NGC986
位置
観測は国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m
電波望遠鏡と25BEARSを用いて行われた.観測範
囲はFig.1の黄色で囲んだ範囲である.この観測の
空間分解能は16″(=1.8kpc),作成したデータの速
度分解能は10kms-1である.観測日時は2007年12
月から2008年1月までの4日間で,トータルの観測
時間(積分時間)は約10時間である.観測方法は,
天体に対し望遠鏡を連続的に動かすOn-the-Fly法
を用いている.また25BEARS (25Beam Array
Receiver System)を使用している.解析には,国立
天文台が提供している解析ツールnostarとnewstar
を使用している.
赤経 2h33m34.35s
赤緯 -39°02′42″.2
距離
23.2Mpc(=7560万光年)
銀河の分類
SBb型
Fig.1
可視光によるNGC986
のイメージ(NEDより)
Kohno et al. (2008)によるNGC986の研究では,CO(3-2)輝線の観
測が行われ,CO(3-2)が反映する高密度分子ガスの分布とHαで
描かれた大質量星形成に空間一致がみられた.
☆CO(1-0)で示された centar,bar,arm の位置が Kohno et
al.(2008) のCO(3-2)total map とほぼ一致
→ CO(1-0) と CO(3-2) は同じような分布をしている.
☆どちらも滑らかなバー構造をもつ.
Fig.2 CO(1-0) channel map
Fig.3 CO(1-0) total map
Fig.4 CO(3-2) total map
Fig.6 bar end
Fig.7 center
Fig.8 bar
☆中心の強度が強 → 分子ガスは中心に多く分布
☆CO(1-0)とCO(3-2)のピーク速度が同じ
→ ほぼ同じ場所から放射
☆centerとbar,bar endの
強度比CO(3-2)/CO(1-0)が異なる
強度比CO(3-2)/CO(1-0)は
~0.51
~1.06
CO(1-0)
CO(3-2)
~0.58
Fig.5 spectrum map
★
★
★
★center
★ bar end ~0.51
★ center
★ bar
分子ガスの温度55K以上 密度104㎝-3
~1.1
~0.58
★bar ★bar end
分子ガスの温度に制限を与えることができない
密度は103~104㎝-3
Fig.9 LVG calculation (Muraoka et al. 2007)
ま と め
今 後 の 展 望
・CO(3-2)/CO(1-0)分布の作成
南天の棒状渦巻銀河NGC986に対し、45m電波望遠鏡を用いて
CO(1-0) マッピング観測を行った。分布はCO(3-2)と似ているが、
銀河中心でのCO(3-2)/CO(1-0比は〜1と bar/bar end 〜0.5 より
高くなっており、より高密度であることが示唆された。
・LVG計算の結果と比較し各点での分子ガスの温度や密度等の性質の検討
・星形成のトレーサー(Hα,IR)との比較
参
考
文
献
Aalto, S., et al. 1991,A&A, 249, 323;Aalto, S., et al. 1995,A&A, 300, 369;Buta, R. 1995, ApJS, 96, 39;Dale, D. A., et al. 2000, AJ, 120, 583;Elfhag, T., et al. 1996, A&AS, 115, 439;F¨orster Schreiber, N. M., et al. 2004, A&A, 419,
501;Hameed, S., & Devereux, N. 1999, AJ, 118, 730;Kohno, K. ,et al.2008,PASJ,60,;Koopmann, R. A., & Kenney, J. D. P. 2006, ApJS, 162, 9;Sanders, D. B., et al. 2003, AJ, 126, 1607;V´eron-Cetty, M.-P., & V´eron, P. 1986,
A&AS, 66, 335 ,Muraoka et al.2007