第4講 商品売買取引 分記法と三分法 買掛金と売掛金 仕入諸掛と売上諸掛 値引と返品 補助簿 商品売買の基本は、商品を売って儲けを得ることで成り立っている。商品の仕入 は安く仕入れ、高く売ることが基本である。 生産者 小売店 利益 利益 費用 (原価) 消費者 費用 (原価) 売値 売値 商品の 値段 商品売買の記帳方法には、大きく分けて三つの方法がある。 三分法 分記法 総記法 三分法と分記法 1. 三分法による処理 三分法とは、商品の売買について繰越商品勘定(資産)、仕入勘定(費用)、売上 勘定(収益)の3つに分けて記入する方法である。 仕入 仕入れた 商品の原価 売上 販売した 商品の売価 繰越商品 売れ残った 商品の原価 仕入 仕入勘定科目は費用の勘定で、商品を仕入れたときにすべて原価で記入し、また値引きや返品があった 時も記入する。 売上 売上勘定科目は収益の勘定で、商品を売り渡した時にすべて売値で記入するとともに、値引きや返品が あったときも記入する。 繰越商品 繰越商品勘定は期首および期末の在庫商品の有高(ありだか)を原価で記入する。通常、決算時にだけ用 いられる。 2. 分記法 分記法とは、商品の売買について商品勘定(資産)と商品売買益勘定(収益)の2 つを用いて記帳する方法である。 商品 販売した 仕入れた 商品の原価 商品の原価 売れ残った 商品の原価 商品売買益 商品の売買益 1) 商品を仕入れたとき 商品を仕入れたときは、その商品の原価(仕入原価)を商品勘定(資産)の借方に記入する。値引きや 返品があった時は、商品勘定の貸方に記入する。 2) 商品を販売したとき 商品を販売したときは、その商品の原価(売上原価)を商品勘定(資産)の貸方に記入する とともに、そ の商品の売価と原価との差額を商品売買益勘定(収益)の貸方に記入する。 買掛金と売掛金 掛けによる売買とは、商品売買などで、商品の代金を後日支払う約束をする売買 があるが、この取引を掛売買という。 掛けによる売買が行われると、取引先との間に商品の代金をあとで支払う義務と受 け取る権利が生じる。こうした債務と債権は、買掛金勘定(負債)と売掛金勘定(資産) で処理する。 買掛金 売掛金 支払高 掛仕入高 掛売上高 回収高 (減少) (増加) (増加) (減少) 1) 商品を掛けで仕入れたとき (仕 入) × × × 2) 買掛金を支払ったとき (買掛金) × × × (買掛金) ××× (現 金) ××× 3) 商品を掛けで販売したとき (売掛金) × × × (売 上) × × × 4) 売掛金を回収したとき (現 金) × × × (売掛金) × × × 仕入諸掛と売上諸掛 商品の仕入に付随する費用・諸費用を、仕入諸掛という。商品の販売に付随する 費用・諸費用を、売上諸掛という。商品を仕入れるまた商品を販売されるときに必ず発 生する費用のことである。 1.仕入諸掛 当方負担 仕入諸掛 仕入勘定 1) 仕入諸掛りを支払ったとき(当方負担) 取得原価=仕入原価+仕入諸掛り(付随費用) (仕 入) ××× (買掛金) ××× (現 金) ××× 先方負担 立替金勘定または 買掛金勘定に含める 2) 仕入諸掛りを支払ったとき(先方負担) (仕 入) (立替金) ××× ××× (買掛金) (現 金) ××× ××× 2.売上諸掛 当方負担 売上諸掛 発送費勘定または 支払運賃勘定 先方負担 立替金勘定または 売掛金勘定に含める 1) 売上諸掛りを支払ったとき(当方負担) (売掛金) × × × (売 上) × × × (発送費) × × × (現 金) × × × 2) 売上諸掛りを支払ったとき(先方負担) (売掛金) × × × (売 上) × × × (立替金) × × × (現 金) × × × 返品と値引 1. 返品 返品というのは、一度発送された商品を、品違い、汚れ、破損などの理由で、送り 返したり、送り返されることである。いったん仕入れた商品を送り返すことを仕入戻し、 いったん販売した商品が送り返されることを売上戻しという。 1) 仕入戻し (買掛金) × × × (仕 入) ××× 2) 売上戻し (売 上) × × × (売掛金) × × × 2. 値引き 値引きとは、商品が不良、汚損や傷物などの理由で商品価値が減少した場合、相 手にクレームを申し出て、商品の一部を値下げしてもらうことである。商品の値段をま けてもらうことを仕入値引、また商品の値段をまけることを売上値引という。 1) 仕入値引 (買掛金) × × × (仕 入) ××× 2) 売上値引 (売 上) × × × (売掛金) × × × 補助簿 補助簿は、主要簿を補うため、ある限られた内容について明細を記録する帳簿で ある。また、補助簿は、取引の発生順にその内容を記録していく補助記入帳と、 勘定 科目を相手先や内容によって区別して記録していく補助元帳に分けることができる。 1.仕入帳と売上帳 1) 仕入帳 仕入帳とは、仕入れに関する取引を発生順に記録していく帳簿である。 これまで仕入取引は、仕入勘定に記入していました。しかし、仕入勘定からは、日 付・仕入金額は読み取ることができますが、仕入先、商品名、 数量、単価などの情報 を知ることができませんでした。 仕入帳を作成することにより、「いつ・誰から・どんな商品を・いくら仕入れたのか」と いう、仕入に関する詳しい内容を知ることができる。 ① 摘要欄 ・摘要欄には、仕入れ取引の内容を記入する。 最初の行に、取引先名と代金の支払方法を記入する。 次の行に、商品名・数量・単価を記入する。 ② 内訳欄 ・複数の種類の商品を仕入れた場合、商品の種類ごとに合計した金額を記入する。 ③ 金額欄 ・金額欄は、摘要欄の商品の数量と単価をかけた金額になる。 内訳欄に金額が記入されている場合は、内訳欄の合計金額になる。 ④ 返品や値引があった場合、その取引の日付・摘要・金額を朱記する。 ⑤ 総仕入高 ・仕入れ金額の合計を記入する。 ⑥ 仕入値引・戻し高 ・値引や返品の合計金額を記入する。 ⑦純仕入高 ・総仕入高から仕入値引・戻し高を引いた金額になる。 純仕入高 = 総仕入高 - 仕入値引・戻し高 2)売上帳 売上帳とは、売上取引に関する詳しい内容を取引の発生順に記録していく帳簿で ある。全ての売上に関して、得意先ごとに記録していく。 ①~④までは、仕入帳と同じ記入方法です。 ⑤ 総売上高 ・売上金額の合計を記入します。 ⑥ 売上値引・戻り高 ・値引や返品の合計金額を記入します。 ⑦ 純売上高 ・総売上高から売上値引・戻し高を引いた金額になります。 純売上高 = 総売上高 - 売上値引・ 戻し高 2.商品有高帳 商品有高帳とは、商品の種類別に在庫を明らかにする帳簿である。商品を仕入れ たとき(受入)や売上げたとき(払出)、その都度、その商品の種類ごとに数量、単価、 金額を記入していく。 商品有高帳を記入する時には、商品有高帳では、 原価を記入するということであ る。 受入欄は、 商品を仕入れた時に記入する欄である。払出欄は、商品を販売した時 に記入する欄である。 1)先入先出法 ① 受入欄 ・受入欄は、商品を仕入れた時に記入する。 ② 払出欄 ・商品を販売した時に記入する。※払出単価は、原価を記入する。 ③ 残高欄 ・在庫を記入する。 ④ 単価の違う商品を仕入れた場合は、それぞれの商品を2行に分けて記入する。 ・古い商品順に記入する。 ⑤ 17日は、商品を15個、販売したので古い商品から順に記入していく。 最初は、@110の商品を記入し、次に@140の商品を記入する。 ⑥ 次月繰越 ・次月繰越の場合は、月末の日付を記入し、払出欄に月末の残高(在庫)を記入 する。 ⑦ 受入欄と払出欄の合計を記入し、一致する事を確認する。 ⑧ 前月繰越 ・翌月の1日の受入欄に次月繰越と同じ内容を記入する。 2)移動平均法 残高金額+受入金額 =平均単価 残高数量+受入数量 ① 受入欄 ・受入欄は、商品を仕入れた時に記入する。 ② 払出欄 ・商品を販売した時に記入する。※払出単価は、原価を記入する。 ③ 残高欄 ・在庫を記入する。 ④ 単価の違う商品を仕入れた場合は、平均単価を計算し直し、残高単価に記 入する。 7/6の仕入れ 7/24の仕入れ ⑤ 商品を販売する時は、仕入れの際に求めた平均単価を払出単価に記入する。 ⑥ 次月繰越 ・次月繰越の場合は、月末の日付を記入し、払出欄に月末の残高(在庫)を 記入する。 ⑦ 受入欄と払出欄の合計を記入し、一致する事を確認する。 ⑧ 前月繰越 ・翌月の1日の受入欄に次月繰越と同じ内容を記入する。
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