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超対称SU(5)大統一理論の再検討
永田 夏海
東京大学・名古屋大学
2013年8月8日
基研研究会 PPP2013
J. Hisano, D. Kobayashi, N. Nagata, Phys. Lett. B716 (2012) 406.
J. Hisano, T. Kuwahara, N. Nagata, Phys. Lett. B723 (2013) 324.
J. Hisano, D. Kobayashi, T. Kuwahara, N. Nagata, JHEP 1307 (2013) 038.
Outline
1. Introduction
1. Proton decay with extra matters
2. SUSY GUT in high-scale SUSY
1. Summary
1. Introduction
大統一理論 (GUT)
標準模型ゲージ群 SU(3)C × SU(2)L × U(1)Y をある単純群に埋め込む。
例) H. Georgi and S. L. Glashow (1974) … SU(5) GUT
特徴
 ゲージ相互作用の統一
 クォークとレプトンの統一
 電荷の量子化
超対称大統一理論 (SUSY GUT)
大統一理論は,電弱スケール (〜102 GeV) とGUTスケール(〜1016 GeV)
の2つのスケールでゲージ対称性の自発的破れが起こることを要請する。
ゲージ階層性問題
超対称性を大統一理論に導入
超対称大統一理論 (SUSY GUT)
ゲージ結合定数の統一
N. Sakai (1981)
S. Dimopoulos and H. Georgi (1981)
S. P. Martin, arXiv: 9709356
LHCとSUSY GUT
 SUSY粒子直接探索
超対称性粒子,特にグルイーノ・スクォークの質量に対して
厳しい制限が課されている。
 ヒッグス粒子質量 (〜126 GeV)
最小超対称標準模型 (MSSM) + 電弱スケールの超対称性
というシナリオに強い制限を与える。
 ヒッグス機構と自発的対称性の破れ
大統一理論はこれらの枠組みに基づく
このような現状の下,SUSY GUTを再考したい。
126 GeV ヒッグスと超対称標準模型
以下では,次の2つのシナリオを議論する。
1. 新たな超対称多重項が存在する場合
超対称スケールが TeV付近であっても,126 GeVのヒッグス
粒子を実現しうる。
T. Moroi and Y. Okada (1992)
M. Asano et.al., M. Endo et. al. (2011)
2. 超対称スケールが比較的高い場合
スカラー粒子がO(10(2-3)) TeVの質量を持つとき,126 GeVの
ヒッグス粒子を実現しうる。
G. F. Giudice and A. Strumia (2012)
M. Ibe, S. Matsumoto, T. T. Yanagida (2012)
LHCにおけるSUSY探索の結果や,フレーバー/CP精密測定の
結果とも無矛盾。
Minimal SUSY SU(5) GUT
MSSMの物質場は,
MSSMのヒッグス場は
S. Dimopoulos and H. Georgi (1981)
N. Sakai (1981)
表現に埋め込まれる。
表現に埋め込まれる。
カラー三重項ヒッグス
バリオン数を破る相互作用
をもたらす。
MSSMヒッグス超場
(MHC : カラー三重項ヒッグスの質量)
Minimal SUSY SU(5) GUT
ゲージ超場
Xボソン (質量: MX)
MSSMゲージ超場
バリオン数を破る相互作用を誘導する
随伴表現のヒッグス超場 SU(5) → SU(3)C × SU(2)L × U(1)Y
SMシングレット
随伴表現ヒッグス(質量: MΣ)
Xボソンの縦波成分になる
2. Proton decay with extra matters
新たな超対称多重項
 126 GeV ヒッグス質量
 ゲージ媒介機構 (GMSB)
 大きな統一群に含まれる多重項 (E6, …)
新たに加わった超対称多重項がSU(5)の多重項をなす場合,
ゲージ結合定数の統一は保たれる。
ゲージ結合定数の1-loopくりこみ群方程式
(a = 1,2,3)
n5: 5+5の数,n10: 10+10の数
各ゲージ結合定数のβ関数の係数を同じ値だけ増やす。
新たな超対称多重項
GUTスケールでのゲージ
結合定数の値が大きくなる
S. P. Martin, Phys. Rev. D81, 035004 (2010)
陽子崩壊 (次元6)
大統一群のゲージ結合定数の値が大きくなると,ゲージ相互作用
による陽子崩壊の寿命が短くなる。
陽子崩壊の寿命
Super-Kamiokande: 1203.4030
J. Hisano, D. Kobayashi, N. Nagata, Phys. Lett B716 (2012) 406.
くりこみ因子(次元6の演算子)
前述のダイアグラムの寄与は,次元6有効演算子で表される:
ケーラー・ポテンシャル型の演算子
くりこみを受ける
大統一スケールとハドロン・スケールとの間に大きなスケール差
が
あることから,くりこみ因子が重要になる。
1-loopのくりこみ因子
C. Munoz (1986)
閑話休題
有効ケーラー・ポテンシャルの方法
一般のケーラー・ポテンシャルに対する1-loopの補正
A. Brignole (2000)
この結果を用いることで,任意の有効演算子に関して1-loopの
くりこみ群方程式を導出することができる。
ケーラー・ポテンシャル型の演算子は,一般に次の形をしている:
反カイラル部
カイラル部
ゲージ変換
ゲージ不変条件
このとき,
など
以上の結果を用いると,任意のケーラー・ポテンシャル型有効演算
子について異常次元の一般公式を導出することができる:
[C(i): 演算子中の各場に関する2次のカシミア]
ケーラー・ポテンシャルに対する2−ループの補正も計算されている
S. Nibbelink Groot and T. S. Nyawelo (2006)
同様の手法で,陽子崩壊をもたらす次元6の演算子に対するくりこみ
の効果を,2−ループ・レベルで求めることができる。
[小林大輝君(名大)のポスター参照]
J. Hisano, D. Kobayashi, Y. Muramatsu, and N. Nagata, Phys. Lett. B724 (2013) 283.
3. SUSY GUT in high-scale SUSY
特徴
超対称性のスケールが高い場合の超対称標準模型も現象論的に
魅力的な性質を持っている.
 126 GeVのヒッグス粒子質量が説明できる
(重いstopによる輻射補正の効果)
 CP・フレーバー問題を回避できる
(超対称性粒子の質量で抑制される)
 グラビティーノ問題を回避できる
(グラビティーノが重いため)
 暗黒物質候補を含む
w/ 軽い超対称フェルミオン
(カイラル対称性)
柳田さん,白井さんのトーク
質量スペクトル
一般的なケーラー・ポテンシャルと,超対称性を破る場が何らかの
対称性の下で量子数を持つことを仮定
10(2-3) TeV
(ループ因子の分軽くなる)
アノマリー媒介機構
L. Randall and R. Sundrum (1998)
G.F. Giudice, M.A. Luty, H. Murayama, R. Rattazzi (1998)
SUSY GUT in high-scale SUSY
TeVスケールの超対称性を伴う超対称大統一理論の魅力
の一つに,ゲージ結合定数の統一が高い精度で実現され
ることがあった。
超対称スケールが10(2-3) TeVの
場合はどうなっているだろうか?
S. P. Martin, arXiv: 9709356
大統一スケールにおける敷居補正の効果も
考慮にいれて調べてみる。
くりこみ群の方法
大統一理論に含まれる重い粒子は,ゲージ結合定数に対し
大統一スケール(μGUT)で敷居補正をもたらす。
αi-1(μGUT) = αG-1(μGUT) + 敷居補正の効果
統一されたゲージ結合定数
GUTスケールの粒子の
質量に依存
くりこみ群方程式を用いて求めることができる。
この関係式を用いて,大統一スケールの粒子の質量を
間接的に評価することができる。
J. Hisano, H. Murayama, T. Yanagida (1992).
GUTスケールでの敷居補正
敷居補正 (1-loop in DR scheme)
この時,次の2つの関係式を得る:
大統一スケール
これらの関係式を用いて,MHC および MGUT を評価する。
1-ループの解析
定性的な振る舞いを見るため,
 ゲージ結合定数に対する1-ループのくりこみ群方程式
 1-ループの敷居補正
を用いて関係式を求める。
結果
特徴
(MS : スカラー質量, μH = MS)
 MHC は,MS が大きくなるにつれて増加する
 GUTスケールはゲージーノ質量の増加に伴い低くなる
MHC vs. 超対称スケール
μH = MS
誤差は強い相互作用の
結合定数に由来
超対称スケールが低い場合
MS : スフェルミオン質量 (TeV)
•
MHC はMS が大きくなるにつれ増大し,またM3/M2 の比が大きく
なるにつれ減少する
•
超対称性のスケールが高い場合,MHC は1016 GeV 程度の質量を
とりうる
J. Hisano, T. Kuwahara, N. Nagata, Phys. Lett. B723 (2013) 324.
ゲージ結合定数の統一
超対称スケールが高い場合,MHC がGUTスケールの値を取りうる。
ゲージ結合定数の統一に必要な敷居補正の量が少なくて良い。
ゲージ結合定数の統一がさらに良くなりうる
High-scale SUSY
U(1)
SU(2)
Low-scale SUSY
SU(3)
Zoom
MGUT vs. グルイーノ質量
μH = MS
超対称スケールが低い場合
誤差
大統一スケールMGUT は,ゲージーノ質量が増加する
につれ緩やかに減少する。
Xボソン交換による陽子崩壊率が増大する傾向
J. Hisano, T. Kuwahara, N. Nagata, Phys. Lett. B723 (2013) 324.
おまけ 次元5演算子による陽子崩壊
カラー三重項ヒッグス粒子交換により次元5の演算子が誘導される
T. Goto and T. Nihei (1999)
V. Lucas and S. Raby (1997)
演算子の次元が低いことから陽子崩壊の寿命が短くなりすぎてしまい,
実験制限に抵触すると考えられてきた。
H. Murayama and A. Pierce (2002)
Super-Kamiokande: 1109.3262
超対称スケールが高い場合にこの制限を逃れうる
くりこみ因子
おまけ 次元5演算子による陽子崩壊
実験制限
超対称スケールが高い場合実験制限を逃れうる
[桑原拓巳君(名大)のポスター参照]
J. Hisano, D. Kobayashi, T. Kuwahara, N. Nagata JHEP 1307 (2013) 038.
5. Summary
Summary
•
現在の状況,特に126 GeV ヒッグス粒子を踏まえて,
超対称大統一理論を再考した
•
中間スケールに新たな粒子が加えられる場合,大統一
群のゲージ結合定数が大きくなることから,次元6の
陽子崩壊による制限が重要となりうる
•
超対称スケールが高い場合,ゲージ結合定数の統一が
単に保たれるばかりでなく,改善しうる
•
次元5の演算子による陽子崩壊についても,超対称粒
子が重い場合,余分な機構を考えることなく実験制限
を避ける事ができる
Backup
Superheavy masses
Superpotential of Higgs sector
VEV of adjoint Higgs
Doublet-triplet mass splitting
mH is fine-tuned as
Superheavy masses
Dim-5 proton decay via Planck suppressed operators
M. Dine, P. Draper, W. Shepherd, arXiv: 1308.0274.