Capsaicin Induces “Brite” Phenotype in Differentiating 3T3-L1 Preadipocytes Ritesh K. Baboota, Dhirendra P. Singh, Siddhartha M. Sarma, Jaspreet Kaur, Rajat Sandhir, Ravneet K. Boparai, Kanthi K. Kondepudi, Mahendra Bishnoi カプサイシンは3T3-L1前駆脂肪細胞の分化においてブライト表現型を誘導する 2015年 12月7日 U4 西尾安都佐 カプサイシンと TRPV1 について ・カプサイシンについて トウガラシの辛み成分として有名なアルカロイドであり、 バニリル基と脂肪酸から構成される。 受容体活性化チャネル TRPV1 を刺激し、灼熱感を引き起こす。 (出典 → ・ ヒトの熱産生を促進し体重の減少を促す(Yoshioka M, et al : 1998) ・ カプサイシンを摂食したラットでは内臓脂肪が減少する (Kawada T, et al : 1986) ・ 長期間摂食すると野生型では体重が減少するが、 TRPV1KOマウスでは減少しない。 (Zhang LL, et al : 2007) http://www.maff.go.jp/) ・TRPV1 について 感覚神経上に位置する一過性のイオンチャネル型受容体。 痛みを引き起こす熱や化学物質に反応し、主に Ca2+ を通す。 → ・肥満状態のモデルの内臓脂肪組織内 TRPV1 発現量は ヒト、マウスともに痩せ形より少ない。(Zhang LL, et al : 2007) ・カプサイシンや低刺激の類縁体が TRIPV1 を活性化させるか、 あるいは直接刺激することで BAT を活性化させる。 (Kawabata F, et al : 2009 / Yoneshiro T, et al : 2012) (出典 http://www.nibb.ac.jp/ 一部改変) 背景と目的 近年、世界的に肥満が流行し、肥満及びそこから引き起こされる様々な病的状態が深刻な問題と なっている。そのため、そうした病的症状について効果的な治療や対抗手段が求められている → HFD 摂食下でも体重増加が抑制されるモデルには Brite 脂肪細胞が多い (Tsukiyama-Kohara K, et al : 2001 / Romanatto T, et al : 2009) WAT の Brite 脂肪細胞化に貢献する薬理的、食事/栄養的要因の研究が求められており、 カプサイシンにも注目が集まっている。 →以下がカプサイシンによるものであるかどうかなど不明な点が多く、議論の余地がある。 ・ TRPV1 活性化作用 ・ TRPV1 やカプサイシン感受性ニューロンの感覚の減衰やブロック ・ WAT の褐色化 など 目的 カプサイシンの持つ抗脂肪生成作用および TRPV1 の持つ脂肪生成作用について in vitro, in vivo 両モデルを用いて更に細かく調査する 1. 3T3-L1 の分化への影響 1. カプサイシンを添加して培養した 3T3-L1 の生存率を MTT アッセイにより測定 2.カプサイシン、カプサゼピン、 RTX を 3T3-L1 に添加し脂肪蓄積量を測定 ・カプサイシンによる生存率の有意な減少は見られなかった ・カプサイシン、RTX は低濃度で脂肪蓄積を抑制したが、高濃度では蓄積量が増加した。 2. TRP 発現量と Ca2+ 流入量の測定 ・3T3-L1 分化過程での TRP チャネルの発現量を測定し、TRPV1 に対する Cap 添加の影響を調べた ・カプサイシン、 RTX 添加による Ca2+ 流入量を測定 → カプサゼピンで前処理したものについても カプサイシン 添加の影響を調べた。 ・低濃度のカプサイシン が TRPV1 を介して脂肪生成の阻害に関係していると考えられる ・アゴニストが大量に存在するときは TRPV1 に依存しない経路が働いているのではないか 3. PPARγ と標的遺伝子への影響 PCR でカプサイシン添加による PPARγ の発現量の変化を測定 →カプサイシン 1, 100 µM における下流の標的遺伝子の発現量についても測定 ・カプサイシンは低濃度より高濃度でより PPARγ の発現量を増加させた ・PPARγ とその標的遺伝子の発現量について関係性は確認できず → 様々な生理機能及び内生/外生要因に関わる遺伝子であるため、 カプサイシンのみによる影響が現れなかったのでは 4. 分化途中の 3T3-L1 における抗脂肪生成遺伝子の発現量 PCR で、プサイシン添加による脂肪酸合成を抑制する遺伝子の発現量の変化を測定 カプサイシン 1 µM で発現量が増加、100 µM では減少傾向が見られた → 低濃度のカプサイシンが抗脂肪生成遺伝子の発現を促す傾向にある 5. 褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子への影響 カプサイシン添加による、 褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子の 発現量の変化を測定 大半の遺伝子で、 1 µMでは増加、 100 µM では 減少傾向が見られた →低濃度のカプサイシンは 3T3-L1のブライト脂肪細胞化に 貢献する傾向にある 6. カプサイシン・カプサゼピン両投与による影響 ・カプサイシン、カプサゼピン、また両方を添加することによる PPARγ 及び脂肪生成調節遺伝子の発現量への影響を調べた ・同様にして褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子の発現への影響を調べた ・PPARγ, 脂肪生成調節遺伝子はカプサイシンに比べ両方を添加することで発現量増加傾向が見られた ・褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子は両方を添加することで発現量減少傾向が見られた 7. 炎症メディエーターの放出量の変化 カプサイシン添加による 炎症メディエーターの放出量を 測定した。 蛍光色素 fura-2 AM (10 µM) 発行波長 510 nm 冷気波長 340nm, 380 nm ・カプサイシンによる TRPV1 の 活性化、Ca2+ 流入が 影響している可能性がある ・アディポネクチンは炎症誘発・ 抑制量効果を持つため カプサイシンによる増減が 見られなかったと考えられる 8. TRPV1 のアブレーションによる体重、行動の変化 RTX 腹腔投与によりマウスの TRPV1 をアブレーション (熱性刺激で確認) →体重と運動量の変化を測定 ・高脂肪食での体重増加が抑制 ・運動量が増加 →皮下白色脂肪において カプサイシン添加による 熱産生関連遺伝子の発現量の 変化を測定 ・有意に増加 カプサイシンでも、 TRPV1 が アブレーションされるに 十分な量を投与すれば TRIPV1 に非依存的な結果が 得られるのではないか? まとめ カプサイシンには脂肪生成に関して以下の調節機能を持つと考えられる。 1. 低濃度では TRPV1 に依存した機構を介して脂肪生成を抑制し、 同時に Brite 型を誘導する 2. 高濃度では TRPV1 とは独立した機構を介した脂肪生成を促進する 今後、カプサイシンによる TRPV1 アブレーションや生体に対する影響などに関して、 更なる研究が求められる
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