16.独占的競争

16.独占的競争
不完全競争
不完全競争とは、完全競争と独占の間に納
まる市場構造のことを指す。
不完全競争市場のタイプ
- 独占的競争
» 多くの企業が同質ではないがよく似ている製品を売る
» 市場は、競争の側面と独占の側面を併せ持つ
- 寡占
» 少数の売り手が、それぞれよく似ているもしくは同質の
製品を売る
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図16-1 四つのタイプの市場構造
企業数
多くの
企業
産品のタイプ
1企業
いくつかの
企業
差別化された
産品
独占的競争
同一の
産品
完全競争
独占
(15章)
寡占
(17章)
(16章)
(14章)
• 水道水
• ケーブルTV
• テニスボール
• 原油
• 小説
• 映画
• 小麦
• 牛乳
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独占的競争
独占的競争の性質
- 多数の売り手
- 製品差別化
- 参入と退出の自由
多数の売り手
- 同じ顧客の集団を相手に競争する多数の企業が
ある
» こうした性質をもつ製品には、書籍、CD、映画、コンピ
ュータ・ゲーム、レストラン、ピアノのレッスン、家具など
がある。
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独占的競争
製品差別化(Product Differentiation)
- 個々の企業は、他の企業の製品と少なくともわずかに異
なる製品を生産する。
- 各企業は価格受容者ではなく、右下がりの需要曲線に直
面する。
参入と退出の自由
企業は制限なく市場に参入もしくは退出できる。
市場における企業数は、経済学上の利潤がゼロに
なるまで調整される。
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差別化された製品の競争
短期における独占的競争企業
- 短期的な経済学上の利潤により、新しい企業が
市場に参入する気になる。このことは、
» 提供される製品の数を増やし、
» すでに市場にいる企業が直面する需要を減らし、
» 既存企業の需要曲線は左方にシフトさせ、
» 既存企業の製品に対する需要は低下し、利潤も低下
する。
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図16-2 短期における独占的競争企業
(a) 利潤を得る企業
価格
MC
ATC
価格
平均
総費用
需要
利潤
MR
0
利潤
最大化
生産量
生産量
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差別化された製品の競争
短期における独占的競争企業
- 短期的な経済学上の損失は、企業が市場から退
出させるようにしむける。このことは、
» 提供される製品の数を減少させ、
» 残存する企業が直面する需要を増加させ、
» 残存する企業の需要曲線を右方にシフトさせ、
» 残存する企業の利潤を増加させる。
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図16-2 短期における独占的競争企業
(b) 損失を被る企業
価格
MC
ATC
損失
平均
総費用
価格
MR
0
損失
最小化
生産量
需要
生産量
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図16-3 長期における独占的競争企業
価格
MC
ATC
P = ATC
需要
MR
0
利潤最大化
生産量
生産量
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長期均衡
二つの特徴
- 独占市場と同じように、価格は限界費用を上回る
» 利潤最大化のためには、限界収入と限界費用が等しくなることが
必要になる。
» 右下がりの需要曲線があることによって、限界収入は価格よりも
小さくなる。
- 競争市場と同じように、価格は平均総費用と等しい。
» 参入と退出の自由から経済学上の利潤がゼロとなるためである
。
企業は参入と退出のプロセスを繰り返し、市場にい
る企業の経済学上の利潤がちょうどゼロになるまで
続く。
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独占的競争と完全競争
独占的競争と完全競争の間には、過剰生産力とマ
ークアップという二つの注目すべき違いがある。
過剰生産力
- 長期において、完全競争には過剰生産力は存在しない。
- 自由参入の結果、競争企業は平均総費用が最小化され
た点、すなわち企業の効率的規模において生産を行う。
- 長期において、独占的競争には過剰生産力が存在する。
- 独占的競争において、産出は完全競争の効率的規模よ
りも小さい。
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図16-4 独占的競争と完全競争
(a) 独占的競争企業
(b) 完全競争企業
価格
価格
MC
MC
ATC
ATC
P
P = MC
MR
0
生産量
効率的
規模
P = MR
(需要
曲線)
需要
生産量
0
生産量 =
効率的規模
生産量
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独占的競争と完全競争
限界費用を超えるマークアップ
- 競争企業にとって、価格は限界費用と等しい。
- 独占的競争企業にとっては、価格は限界費用を
上回る。
- 価格が限界費用を上回るので、いまの価格でもう
一単位を売ることは、独占的競争企業にとって利
潤の増加を意味する。
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図16-4 独占的競争と完全競争
(a) 独占的競争企業
(b) 完全競争企業
価格
価格
MC
MC
ATC
ATC
マークアップ
P
P = MC
P = MR
(需要
曲線)
限界費用
MR
0
生産量
需要
生産量
0
生産量=効率的規模
生産量
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図16-4 独占的競争と完全競争
(a) 独占的競争企業
(b) 完全競争企業
価格
Price
MC
MC
ATC
ATC
マークアップ
P
P = MC
P = MR
(需要
曲線)
限界費用
MR
0
生産量
効率的
規模
需要
生産量
0
生産量 = 効率的規模
生産量
過剰生産力
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独占的競争と社会的厚生
独占的競争は、完全競争がもつ全ての望ま
しい特徴をもっていない。
価格が限界費用を上回るマークアップにより
独占的競争には独占価格による死荷重が発
生する。
しかし、差別化された製品を生産する全ての
企業の価格付けを規制すると、その管理負
担は大変なものになるだろう。
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独占的競争と社会的厚生
独占的競争が社会的に非効率となるかもし
れないもう一つの点は、市場における企業数
が「理想的」でないかもしれないことである。
すなわち、参入が過剰または過少になるかも
しれない。
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独占的競争と社会的厚生
参入は二つの外部効果を持つ
- 製品多様化の外部性
- ビジネス収奪の外部性
製品多様化の外部性:
- 消費者が新製品の導入によって何らかの消費者余剰を
得るので、新たな企業の参入は消費者に対して正の外部
性をもたらす。
ビジネス収奪の外部性:
- 新たな競争企業の参入によって他の企業が顧客と利潤を
失うので、新たな企業の参入は既存企業に対して負の外
部性をもたらす。
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広告
企業が差別化された製品を販売し、限界費用を上
回る価格をつけるとき、各企業は自社の製品により
多くの買い手をひきつけるために広告を行うインセ
ンティブをもつ。
非常に差別化された消費財を売る企業は典型的に
収入の10%から20%を広告に支出する。
アメリカ経済全体でみると、広告支出は企業収入の
総額の約2%を占め、その額はおよそ2000億ドル
になる。
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広告
広告を批判する人たちは、企業が広告を使っ
て人々の嗜好を操作していると主張する。
広告を批判する人たちは、広告はしばしば消
費者に対して、製品が実物よりもよいもので
あることを暗示することで、競争を妨げると主
張する。
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広告
広告を支持する人たちは、企業が広告を用い
て顧客に情報を提供すると主張する。
広告を支持する人たちはまた、広告により顧
客は市場にある多様な製品とその価格を知
ることができるため、競争を促進していると主
張する。
広告の為の支出を行おうとする企業の意思
は、提供される製品の性質を消費者に伝える
シグナルともなる。
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ブランド名
ブランド名を批判する人々は、ブランド名は消
費者に本当は存在しない違いを認識させると
主張する。
経済学者は、ブランド名は消費者に対して購
入する財が高品質であることを保証する有益
な方法とであると主張してきた。
- 品質に関する情報を提供する
- 企業に高品質を維持するインセンティブを与える
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要約
独占的競争市場は、数多くの企業、差別化さ
れた製品、参入の自由という三つの性質によ
って特徴づけられる。
独占的競争市場の均衡は、完全競争市場の
均衡と二つの点で異なる。第一に、独占的競
争企業は過剰生産能力を持ち、第二に、独
占的競争企業は限界費用を上回る価格をつ
ける。
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要約
独占的競争は完全競争の望ましい性質をす
べてもっているわけではない。
限界費用を上回る価格のマークアップにより
引き起こされる独占に通常みられる死荷重が
ある。
企業の数は多すぎることも少なすぎることも
ある。
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要約
独占的競争に内在する製品の差別化は、広
告とブランド名の使用につながる。
- 広告とブランド名を批判する人々は、企業は広告
やブランド名を通じて消費者の非合理性を利用し
、競争を弱めると主張する。
- 広告とブランド名を支持する人々は、企業はそれ
らを用いて消費者に情報を伝え、価格と製品の
品質についてより活発に競争すると主張する。
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