ー発達臨床・法心理学的観点からー 2015年6月19日(土) 脇中 洋(大谷大学) 本当に司法制度改革なのか? ー司法と福祉の連携ー • 法曹養成(法科大学院)←心理学、社会福祉は学ばない。 • 取調べの可視化・適正化・高度化→入口支援 • 裁判員制度 ←職業裁判官が障害理解に乏しい • 矯正施設における更生プログラム (再犯防止) ←特別なプログラム、更生の基盤整備がない。 • 出所後の地域生活定着支援→出口支援 (司法福祉領域)←受け入れ先、地域社会の理解 日本の被疑者取調べ ー国連人権規約委員会から改善勧告を受け続けているー ・長期にわたる被疑者勾留(72時間+1事案×20日) 「えっ…うらやましい」 • 組織的見込み捜査(証拠なき確信)反証可能性に閉ざされている • 糾問的な取り調べ「自白するまで取調べ室から出るな」 • 取調べの場で反省悔悟を求める反省・土下座文化! • 取調べ場面が全面可視化されていない(密室での取調べ) • 供述調書は独白文で書かれる「はい」→「私がやりました」に変換 • 捏造すらある「秘密の暴露」供述厚労省・村木・元局長事件 →起訴後有罪率99.4%(精密司法?) 検察が起訴権を握り、裁判官は主に量刑判断。証拠開示の問題。 →容易に虚偽の自白が生じ、公判で虚偽であることを示すのが 難しい。足利事件、大阪府警東署事件、パソコン遠隔操作事件など 取調べの諸外国との違い 犯罪に巻き込まれやすい +誤解されやすい発達障害者 • 被害者として …身を守るすべに長けていない。 • 冤罪被害者として …不利な状況に陥りやすい(訴訟能力の弱さ)。 • 加害者として …他の生き方を選択できない。 (就労先、結婚相手、身元保証人、帰住先無し)。 …助けを求められない。 (友人無し、福祉的支援の申請できず)。 …仲間関係の影響(従犯、薬物犯)。 …被害者からの反転(自分がやられたようにやることしか 思いつかない)。 被害者支援の多様な方向性 ~公判まで・公判後~ 被害者 A.実際には 犯罪なし B.犯罪はあったが、 被告人は無実 C.犯罪はあり、 被告人は真犯人 虚偽供述の 指摘と修正 + 「被害者」支援 被告人 冤罪被害者支援 被害者支援 + 冤罪被害者支援 虚偽供述の修正 被害者支援 (有罪立証およ びトラウマ予防) →加害者更生 支援へ (過去の被害者 支援を含む) 2010年新規受刑者のIQ (男24873人・女2206人) 男 女 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 - 4 9 以 下 5 0 ~ 5 9 6 0 ~ 6 9 7 0 ~ 7 9 8 0 ~ 8 9 9 0 ~ 9 9 1 0 0 ~ 1 0 9 1 1 0 ~ 1 1 9 1 2 0 以 上 テ ス ト 不 能 「知的障害」と「発達障害」 *本来、「知的障害」も「発達障害」の一種 知的障害 アスペルガー症候群 *法務省は並置的扱い 自閉症スペクトラム障害 「自閉圏とAD/HD圏に分けて対応する」医療少年院長 *発達障害=犯罪率が高いわけではない。 但し、動機が了解しにくいことがある。 豊川事件「人を殺す経験がしてみたかった」 虐待・育児放棄・非行・いじめ ~発達障害と虐待による症状の類似~ ※文科省調査(2012年12月) 「公立小中学生の6.5%(61万人余)に発達障害(疑い)」 LD4.5%、ADHD3.1%、PDD(高機能自閉)1.1% 小一9.8%、小四7.8%、中一4.8%、中三3.2%と、発達に伴う減少??? • 学習環境の剥奪 →知的障害や学習障害に類似 • 解離症状による共感性の欠如 →自閉症スペクトラム障害に類似 • 解離症状による不注意や衝動性 →注意欠陥/多動性障害AD/HDに類似 =明らかに環境による影響(重複も)→環境整備の重要性 「最初は被害者だった。」 発達障害は虐待を引き起こしやすい 虐待は発達障害的症状を引き起こす 虐待 発達 叱責 障害(的) いじめ 懲罰 触法 自己肯定感 の低下 行為 無気力 自暴自棄 反社会性 司法と福祉の連携 • 社会復帰促進センター(全国4か所) 民間導入刑務所「改善指導」 ←これまでは刑務官ですべてを担っていた。 • 地域生活定着支援センター(各都道府県一つ以上) ←これまで仮出所者に対して保護観察所(保護観察官と保護司)が担当。 懲罰ではなく、更生(生き直し) ・福祉的支援から外れてきた知的障害者の再犯防止と地域へ の定着(特別調整) →受け入れ施設の拡充 ・施設入所を前提とした刑の一部執行猶予 →それでも支援を拒む人! 発達障害者が安心して暮らすために 司法制度上、何が必要なのか • • • • 法曹養成…人権教育、心理学、社会福祉学の必修化 取調べ…反証可能性の確保、反省文化の見直し 裁判員制度…職業裁判官の障害理解、偏見の是正 矯正施設における更生プログラムの充実 … 「真の反省プロセス」を知る。応報刑から教育刑へ。 ※『反省させると犯罪者になります』(岡本茂樹2013) • 出所後の地域生活定着支援 …受け入れ先、地域社会の理解の促進 …そして事件を起こさないような家族支援や地域社会への啓発
© Copyright 2024 ExpyDoc