X(t) - Indico

電子回路
放射線計測エレクトロニクスの信号処理の為の
アナログ電子回路の基礎
第九回
村上浩之
Aug. 30. 2010
目次(7)
• 放射線計測回路の構成
– 検出器
– 前置増幅器
– 雑音
• 雑音の数学的な取り扱い
• 雑音源
• 等価雑音電荷
–
–
–
–
–
–
–
波形整形増幅器
パルス波高弁別器
マルチレベルパルス波高弁別器
シングルチャネルパルス波高分析器
マルチチャネルパルス波高分析器
電源
出力装置
Aug. 30. 2010

検出器の等価回路
検出器の静電容量
電流源
i(t)
Q(t) 
Q(t)
v(t) 
Cd
Cd
t
 i(u)du

0
Aug. 30. 2010
出力電圧

電流発生過程を含めた検出器の等価回路
伝達関数が電離電荷移動による
誘導電荷の変化に依って生じる
電流となる四端子回路網
電離電荷発生源
正、負の電荷が
同時に発生する
電流パルス源
(デルタ関数)
i(t)
  i(t)
 i(t)
I(s)

Aug. 30. 2010
前置増幅器
• 入力信号は検出器からの電流パルス
– 電流パルスの積分値(電荷)が検出器でのエネルギー損失に比例している。
– 電流波形や電流発生時刻に様々の情報が含まれている場合がある。
• 前置増幅器の役割
– 電流信号を電圧信号に変換する。
• 電流ー電圧変換
– 検出器の静電容量で積分して生じた電圧信号を電圧信号に変換する。
– 検出器の電流信号を電荷有感増幅器で積分して電圧信号に変換する。
Aug. 30. 2010
等価雑音電荷
• 放射線計測で放射線のエネルギーの決定は重要な課題と
なっている。
• 計測されたエネルギーの揺らぎの度合い、即ちエネルギー
分解能を決定している要素は
– 放射線が検出器で失うエネルギーの揺らぎ
– 放射線の失ったエネルギーによって生じた電離電荷の揺らぎ
– 計測器系全てで生じた雑音電圧を前置増幅器の入力端に換算した
電圧又は電荷の量
• 検出器で失ったエネルギーは電離電荷と等価なので計測器系の雑音電圧は入力
端に換算した電荷で比較する。
– 前置増幅器の入力端に計測器系の出力の雑音電圧の二乗の2倍と
なる電荷を与えた時その電荷を等価雑音電荷 ( ENC )という。
Aug. 30. 2010

等価雑音電荷
入力端に接続
されている素子
の二乗平均雑
音電荷
ENC p
電荷有感前置増幅器の
二乗平均雑音電圧
ENC
e nout 

Cf
2
ENCs
Aug. 30. 2010

e nout  v nin  K


電荷有感前置
増幅器の入力
端に換算された
増幅器系の等
価雑音電荷
2
ENC p  ENC s
Cf
電荷有感前置増幅器の雑音電圧と
波形整形増幅器内部の雑音電圧の
二乗平均電圧
2
2
波形整形増幅器の入
力端に換算された波
形整形増幅器の二乗
平均雑音電圧
v nin

enout  v nin
ならば
ENC
v nrms 
K
Cf
雑音信号の数学的取り扱い
定常不規則過程でその自己相関関数が
s におけるデルタ関数であれば
X(t)X(t  s)  A(s)

X(t)X(t  s) が
となり、その雑音は白色雑音と呼ばれている。
雑音現象のもとを白色雑音源とおくと雑音源は互いに独立で

不規則に生ずる現象の集合として取り扱うことが出来る。
Aug. 30. 2010

雑音信号の数学的取り扱い
ウィーナ ー ヒンチンの定理
X(t) が定常不規則過程を示すものとする。時間 0≦t≦T に対する X(t) の
フーリエ解析を行うと

X t    an exp  j n t 
n
n  2n /T(n  0 1,2,L )
と書く事が出来る。ここで
an 

、そして

1
T

T
0
X(t)exp( j n t)dt
Sx ( f )  lim 2T an a*n
X(t) のスペクトル強度Sx ( f ) は
と定義される
T 
この Sx ( f ) は自己相関関数のフーリエ変換となり、次の様に書かれる。

Sx ( f )  lim 2Ta a  2  X(t)X(t  s)exp( js)ds  4  X(t)X(t  s)cossds

0
T 


*
n n


逆に、定常不規則過程のスペクトル強度
Sx ( f ) のフーリエ逆変換は
定常不規則過程の自己相関関数となり X(t)X(t  s) 


0
Sx  f cossdf
のように書ける事が証明されていてウィーナ ー ヒンチンの定理と呼ばれる。

Aug. 30. 2010

雑音信号の数学的取り扱い
キャンベルの定理
t=ti に発生する事象要素が特定の系にあるレスポンス F(t-ti) を
与えるとする。
事象が平均頻度 λ で不規則に発生するとすると、全レスポンス
Y(t) は平均頻度 λ で不規則に発生する多数の独立レスポンス
F(t-ti) の和となる。
Y t    F t  t i 
0t T
i
キャンベルの定理は十分に大きな T に対して
Y    F udu



var Y    F u du
となる事を示している。
Aug. 30. 2010


2
雑音信号の数学的取り扱い
パーセバルの定理
もし、 Ψ(f) が F(t) のフーリエ変換なら



  f  df 
2



F 2 t dt
である。
   f   f df 



   f df  F texp 2jftdf
  F t dt    f exp 2jftdf
  F t  dt









Aug. 30. 2010


2

雑音信号の数学的取り扱い
カーソンの定理
もし、 Ψ(f) が F(t) のフーリエ変換であり、 Y(t) がキャンベルの
定理と同様に頻度 λ で発生する独立レスポンス F(t-ti) の和であると
すると
2
Sy  f   2  f 
である。
キャンベルの定理にパーセバルの定理を代入すると
1
varY    F u du      f  df 


2


2
2



Sy  f  df
伝達レスポンス g f  のフィルターをこの後に置いてフィルターの
出力を Z とすると
var Z      f   g f 


2


この式は
Aug. 30. 2010
2
2
Sy  f   2  f 
1
df 
2



Sy  f  g f  df
のときだけ成り立つ。
2
雑音信号の数学的取り扱い
自己相関関数 X t X t  s が s>>τ のときに X t X t  s  0
になるな様な時定数 τ をもつすると、 ωτ<<1 の時は X t X t  s
がゼロでない s の全範囲について関数 exp  js  1 である。

 S  f  の低周波値 Sx 0 は、
それゆえ、
x

Sx 0  2  X t X t  sds




となる。白色雑音源という特別な場合は X t X t  s  A s 。

どの様な白色雑音源 X t  に対しても Sx 0  2A

白色雑音源の場合は
S=0 以外では自己相関関数はゼロとなるので

X t  
2



0
1
Sx f df 
2




Sx  f df
二乗平均値は定常不規則信号のスペクトル強度 Sx  f  の積分で得られる。

Aug. 30. 2010

雑音信号の数学的取り扱い
ある定常不規則信号 X t  が、伝達関数 g f を持つ任意の線形系の
入力点へ加えられ Y t  をその系の出力信号とする。もし、 Sx  f  と Sy  f 
がそれぞれのスペクトル強度、また、 xn と yn がそれらのフーリエ係数

なら y n  x n g f  、したがって


これから、
Sy  f   Sx  f  g( f )



2
1

2
Y t  
2

0
Sx  f  g f  df 

2



Sx  f  g f  df
2
g f  が F t  のフーリエ変換であれば

X t  が白色雑音源で

Y t   Sx 0  g f 
 0



2
2
 A  g f  df  A  F t  dt

2

Aug. 30. 2010

2

2
1
df  Sx 0  g f  df

2

負帰還増幅器の雑音
vn2
v n1
雑音の無い
理想増幅器
vi
vo

G



F


G v i

G v n1
vn 2
vo 

  
  
 
1 F G 1 F G 1 F G
Aug. 30. 2010

Gが非常に大きければ
負帰還により出力電圧は

v v 
vn 2
i
n1

v o  


 
 
 
F F  1 F G
出力側で生じた雑音電圧は負帰還により
1/(1+FG)となるが入力側で生じた雑
音電圧は入力信号と同じになる
増幅器の内部雑音
• 増幅器内部で生じた雑音信号は全て入力端に換算して入力
信号と比較する。この時雑音信号と入力信号の次元は同じ
で無ければ比較出来ない。
• 入力端と出力端の雑音源が同じ原理で雑音を生じるとする
と増幅素子の出力側の雑音源を入力側に換算すると雑音は
1/利得となるので出力側の雑音源は無視出来るので増幅器
の初段素子による雑音源だけを考えればよい。
• 雑音源は一様なスペクトル強度(白色雑音)を持つ不規則定
常信号源を指す。
Aug. 30. 2010
雑音源
• 抵抗の熱雑音
– 抵抗の内部独立した電子の熱運動エネルギーによる熱雑音電圧及
び熱雑音電流
• ショット雑音
– 電位障壁を互いに独立に不規則に通過する電子の数の揺らぎによ
る雑音電流
• 1/f 雑音
– 周波数に逆比例した雑音電力スペクトル密度を有する雑音で真空管
のフリッカー雑音、半導体の表面現象による過剰雑音、誘電体の誘
電損失による雑音
• 低雑音の接合型FETは表面現象による過剰雑音は非常に小さい、フリッカー雑音
は構造上存在しない。
• MOS型FETは半導体の表面を利用した素子なので過剰雑音は大きい。
Aug. 30. 2010
抵抗の熱雑音
• 温度T °K の抵抗の内部で互いに独立に熱運動している電
子の周波数幅 Δf 内の有能熱雑音電力はナイクィストの定理
によって、次の様になる事が知られている。
1 en2 1 2
Pav  kTf 
 in R
4 R 4
e  4kTRf
熱雑音電圧のスペクトル密度
1
i  4kT f
R
熱雑音電流のスペクトル密度
2
n

2
n

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有能熱雑音電力
ショット雑音
• P-n接合電流の雑音は電位障壁を越えるキャリアの移動で
表す事が出来、キャリアの一連の独立で不規則な事象を構
成するので完全なショット雑音になる。
• ショット雑音電流の単位周波数 Δf 内の有能雑音電力
スペクトル密度は
in2  Si  f f  2qId f
で与えられる。

Aug. 30. 2010
1/f 雑音
• フリッカー雑音と半導体表面の過剰雑音は通常無視出来る
程度に小さいので誘電損失による雑音だけを考える。
• コンデンサーの誘電正接(tan δ 、 D )は次の様に表される。
tan   D 
1
G

Cd Rd Cd
コンデンサーの損失コンダクタンスGに依る熱雑音電流は
 i 2    4kTG f  4kTDC    f
n
d
となる。

Aug. 30. 2010
直列雑音電圧源
• 放射線計測システム内で生じる雑音は前置増幅器の初段
素子で生じる雑音が主となり初段以後で生じた雑音の寄与
は小さい。
–
–
初段素子の雑音は素子の電流の揺らぎで生じる。
揺らぎの原因は素子の動作原理でそれぞれ異なっている。
•
•
•
–
FETではチャネルの抵抗が熱雑音変調されて生じるで白色電流雑音である。
Trではエミッター電流のショット雑音である。
真空管ではカソード飛び出す熱電子のショット雑音である。
初段素子の出力電流の揺らぎは素子の相互コンダクタンス( gm )を
介して入力端の電圧に変換され、入力端の白色雑音電圧(熱雑音)
となるので入力に直列に接続された抵抗( K/gm )の熱雑音電圧源
として取り扱う。
K
en2  4kT f  4kTRs f
gm
Kは素子で定まった定数。 FET : 2/3 , Tr : 0.5 真空管 : 2.5
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
並列雑音電流源
• 初段素子の入力端に並列に接続された並列雑音電流源
– 検出器及び初段素子入力端子の漏洩電流によるショット雑音電流
ins2  2qe Io f
– 入力端に並列に接続された抵抗の熱雑音電流

2
inp
 4kT
1
f
Rp
– 入力端に並列に接続された静電容量の誘電体の誘電損失電流

2
ind
 4kT  DCd   f
– 半導体表面で生じる過剰雑音電流

Aug. 30. 2010
inf2  A f
等価雑音電荷の雑音源
Cf
Rs
規格化
波形整形
レスポンス
関数
ens
W(t)
ins
id
Rp
inp
Cd

検出器
Dcd



誘電損失1/f
熱雑音電流
ショット
雑音電流
並列熱
雑音電流
Aug. 30. 2010
inD
直列熱
雑音電圧
等価雑音電荷(ENC)
• 検出器の出力信号は電荷パルスなので放射線計測システ
ムの入力端に換算した雑音電荷で比較する。
• 直列等価雑音電圧
– 初段入力端に生じた雑音電圧は白色雑音なので電荷に換算するに
は入力の静電容量に電荷インパルス(δ関数)に続けて逆相で同じ値
の電荷インパルスが生じれば(微分したδ関数)良い。
– 電流パルスを時間積分すれば電荷パルスとなる。
• 並列等価雑音電流
– 入力端に接続された雑音電流は白色雑音電流なので電流インパル
スで時間積分すると電荷パルスとなる
Aug. 30. 2010
等価雑音電荷
• 直列等価雑音電荷
2
2
1
1
2 
2 
ENC  Ss 0Cd  g f  df  Ss 0Cd  f t  dt


2
2
2
s
• 並列等価雑音電荷

2


2
1
1
ENC  S p 0  g f  df  Ss 0  f t  dt


2
2
2
p
• 全等価雑音電荷

 Aug. 30. 2010
ENC2  ENCs2  ENCp2
等価雑音電荷
直列等価雑音電荷
2
1 2 2 
ENC  ensCd  wt  dt

2
2
s
並列等価雑音電荷


1 2
2
ENCp  inp  ins2
2



wt  dt
2
全等価雑音電荷

2
1  
ENC  2kTRsC  w t  dt  
qe I0  2kT R 
 wt  dt

p 

1 
2
 2kTRsCd I1  
qe I0  2kT R 
I2

p 
2

Aug. 30. 2010
2
d

2
規格化インパルス応答関数
1
t4
t1

t2
t3
t5
t6
b
I1 
1
1
1
1
 0   b2  0  b2
t1
t3
t4
t6
I2 
t1
t
t
t
 t 2  3  b2 4  b2 t5  b2 6
3
3
3
3
V.Radeka, IEEE NS 21 (1974) 51
Aug. 30. 2010
波形が三角波の場合
1
tm
2
I1 
tm

Aug. 30. 2010
tm
2
I2  t m
3
2
2
e
C
1
ENC2  n d  in2 t m
tm
3

Aug. 30. 2010