統計学分野の教育課程編成上の参照基準

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統計学分野の教育課程編成上の
参照基準の改訂
成蹊大学
中央大学
岩崎 学
田栗正章
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経緯と現状
大学教育の質保証の取組の一環として,大学における統計教育
の標準的な内容を提示するため,統計関連学会連合では,「統計
学分野の教育課程編成上の参照基準」を2010年8月に公表した.
この参照基準の公表は,多くの学問分野に先駆けるものであり,
各大学はもちろん,文部科学省を始めとする各省庁や産業界など
に広く配布され,それなりの影響力を各方面に与えたものであった.
上記の公表から3年が経過し,統計学に対する期待感もますます
高まってきているとの認識の下,統計関連学会連合では,2012年
度から始まった統計教育大学間連携ネットワークの質保証委員会
と協力し,学会連合傘下の6学会および連携ネットワーク参加大学
から選出された委員の協力の下,参照基準の改訂作業を行なっ
ている.
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検討メンバー
田栗正章(応用統計:中央大),福井武弘(応用統計:総
務省統計研),水田正弘(計算機統計:北大),松山 裕
(計量生物:東大),植野真臣(行動計量:電通大),浜田
知久馬(計量生物:東京理科大),三中信宏(計量生物:
農環研),岸野洋久(計量生物:東大),岩崎 学(統計:
成蹊大),竹内光悦(分類:実践女子大),椿 広計(統
計:統数研),櫻井尚子(統計:東京情報大),和泉志津
恵(統計:大分大)
駒木文保(東大),竹内惠行(阪大),三分一史和(総研
大),荒木万寿夫(青学大),大森拓哉(多摩大),小野寺
剛(立大),西郷 浩(早大),鄭 躍軍(同志社大)
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参照基準第1版
(学会連合HPよりDL可)
1. 「統計学分野の教育課程編成上の参照基準」策定に際しての
基本的考え方
2.統計学の様々な分野における参照基準の基礎となる“統計学の
考え方・ポイント”
3.統計学の各分野における教育課程編成上の参照基準について
「大学基礎課程」,「心理学・教育学」,「経済学」,「社会学」,「経
営学」「数理科学」,「工学」,「医学・薬学」の8分野
それぞれの分野では,その内容が,『理念』,『到達目標』,『教育
内容・評価方法』の各項目に分けられている.
A4に2ページずつというコンパクトで読みやすい形にまとめられて
いる.
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第1節の内容
(1) 策定の基本的考え方
・ 21世紀の知識創造社会では、統計学は必須の学問
(複雑・大規模データ,非線形・ダイナミックな現象)
・ 諸外国では、研究者育成/リテラシー教育が整備
・ 日本の統計教育システムは脆弱だが、新学習指導要領では改善
→ 高等教育での統計教育の整備が必要
⇒
「統計学分野の教育課程編成上の参照基準」 の策定
各大学の教育課程編成に当たって、学生に求める価値観・
倫理観や基本的な素養(知識・能力・スキル)を教育目標として
定め、そのために必要な学習内容・学習方法を具体的に検討
する際に参照されるべき基準
《統計に関連する具体的な職業生活を想定して》
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なぜ改訂
• 統計学への期待の増大
• 統計学が最強の学問
• 各種週刊誌での特集
• NHK「クローズアップ現代」
• 一般書の出版
• 小・中・高での統計教育の拡充
• 次回学習指導要領の改訂に向けて
• 学術会議での取り組み
• 分野ごとの記述の整合性
• 分野の拡充
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改訂の方向性
統計学は,ほとんどすべての大学および学問分野で
必要とされるとの認識の下,各大学に設置されてい
る学部を網羅
「大学基礎課程」,「人文科学」,「法学・政治学」,
「経済学」,「社会学」,「経営学・商学」,「数理科学」,
「情報科学」,「総合理工学」,「生命科学」,「医歯薬
学」,「生活・健康科学」の12分野とする予定
各分野における分量および構成は,基本的に第1版
を踏襲
内容を基礎部分と発展部分に分け,各大学の実情
に即した利用ができるよう工夫
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大学基礎課程
• 理念
• 全学問分野に共通に、実験や調査によるデータ収集のための計画を立案し、データから
有用な情報を過不足なく抽出した上で、現状把握と同時に新知見獲得の契機を見出すと
いう統計的思考力の育成が重要である。
• 到達目標
統計学の役割と公的データの活用能力,記述的統計解析スキル,推測的統計解析スキル,
統計解析の結果判断能力と分析スキル
• 教育内容
• 基礎的内容
① 統計学の役割と活用事例
② データの要約とグラフ化(記述統計的手法)
③ 研究の種類とデータ収集法
④ 確率と確率分布
⑤ 統計的推測
⑥ コンピュータの利用
• 発展的内容
基本的に、上記の基礎的な内容をさらに深化させ、実際のデータの分析を行うなどして、
統計分析に対する理解を深める。
さらに、統計的データ解析法の実践として、少人数のグループによる討議を行い、
データに基づく議論の機会を設けることが望ましい。
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今後のスケジュール
2013年中の公表を目指している
現時点:各分野の参照基準の第2版を確定作業中
各分野の参照基準案を取りまとめ,パブコメ収集
今後1:参照基準に準拠した形でのテキストの作成
今後2:教育実践に資する補助教材の開発
今後3:将来的には:統計学のコースの認定
学会員諸氏の協力を是非ともお願いしたい
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岩崎個人としては
• 原則と方法論
• すべての統計手法には数学的な裏付けがある(数学的な議論は必須)
• 教育の現状は踏まえつつも,過度に迎合しない
• Global Standard の視点(2020東京オリンピックもあるし)
• 「現状把握」と「予測・提言」
• データ = 数値 + 背景情報
• データ = 構造 + 偶然変動
• 自分でやれないものとはしない
• お茶の水女子大での半期の授業(テキスト:統計検定2級本)
• 成蹊大での1年分の授業(テキスト:100ページ強の薄い本)
• 2013年度後期での取り組み:
Harvard 大学での Statistics100 (2011-2012) の再現
• 学生がどのくらい対応できるか,教員の負担はどの程度か
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Harvard University - Statistics 100
• Lectures: Mon, Wed. Fri 10:00 – 11:00 (15 weeks)
• Sections: One-hour sections, twice a week by TF
• Homework: 8 times (Extensive use of R)
• Course Project: Presenting a poster to other students and staffs
• Exams: Two in-class hour exams, Final exam (3 hours)
• Textbook: Moore, McCabe & Craig (2009). Introduction to the
Practice of Statistics, 7th ed.
• Outline of topics: Introduction (1), Describing data (2), Basic
probability and random variables (5), Binomial and normal random
variables, central limit theorem (5), Study design: surveys,
experiments, observational studies (3), Elementary statistical
inference from one sample (4), Statistical inference from two
samples (4), Analysis of variance (ANOVA) (3), Inference for
categorical data (2), Simple and multiple linear regression, Intro to
logistic regression (8)
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改訂の方向性(再掲)
統計学は,ほとんどすべての大学および学問分野で
必要とされるとの認識の下,各大学に設置されてい
る学部を網羅
「大学基礎課程」,「人文科学」,「法学・政治学」,
「経済学」,「社会学」,「経営学・商学」,「数理科学」,
「情報科学」,「総合理工学」,「生命科学」,「医歯薬
学」,「生活・健康科学」の12分野とする予定
各分野における分量および構成は,基本的に第1版
を踏襲
内容を基礎部分と発展部分に分け,各大学の実情
に即した利用ができるよう工夫