2 「場」による集団の特性

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1序論
理論と現実のずれのあり方が問題
ヨーロッパを主な対象とした研究
からえられた理論・モデルを使用
し、それによって日本の諸現象を
整理し、説明しようとするもの
日本にしか見られないと思われる
諸現象を特色的にとり出して、こ
れらを論ずることによって、日本
人、日本の社会・文化をつかもう
とするもの
西欧をモデルとする
理論(model)と現実(reality)のずれ
「センチ尺」では和服のできは不完全
和服の作成にセンチ尺を使用
→和服の基準寸法が端数を伴う
和服の作成に鯨尺を使用
→合理的な寸法であり、おかしな端数が出ない
日本人の考え方、人間関係のあり方がすべて西欧
に近づくとは限らない
日本の社会構造を最も適切にはかりうるモノサシを提出
(和服における鯨尺)
一定の社会を、一定の方法論に基づいた実態調査による
データを解釈、綜合することによって、その社会の基本
的と思われる原理を抽出し、理論化し、
「社会構造」の探求
(social structure)
そのレベルにおいて他の社会との比較を行う
社会人類学の研究は「社会構造の研究学」
2「場」による集団の特性
社会集団の構成要因
資格
場
一定の枠によって一定の個人が集団を構
成する状態
社会的個人の一定の属性
・資格と場の機能は、その社会の人々の社会認識における価値観に
密接な相関関係を持つ
(例:日本の社会構造←→インド・カースト)
場
資格
日本人が外に向かって自分を社会的に位置づける場合
資格より場を優先する
業種よりも会社とか大学とか枠を重視
自分の属する職場、会社、学校
相手の属する職場、会社、学校
「ウチの」
「オタクの」
会社は契約関係にある企業体ではなく、我々の会社である
(主体化された認識)
↓
「イエ」(家)の概念に代表される
「イエ」(家)とは……居住、そして経営体という枠で構成される社会集団。
家集団内における人間関係は他より優先する
枠による社会集団は資格を異にするものを内包する
・資格が異なる人々によって構成される集団
→集団内結束力を導き出す何らかの方法の必要性
理論的、経験的2つの方法
(1)枠内の成員に一体感を持たせる働きかけ
(2)集団内の個々人を結ぶ内部組織の生成、強化
※(1)は、集団維持のため、個人の行動のみならず、思想、考え方まで集団の力が入り込んでくる
→社会生活と私生活の区別がつかなくなる(例:家族ぐるみの雇用関係)
枠の強化-大企業を社会集団としてみた場合
終身雇用制、社宅生活、従業員家族慰安会など
「丸抱え」…仕事ではなく人を抱える
集団の孤立化
他の枠の同一資格者間に溝、同枠の異資格者に親近感
→「ウチの者」「ヨソ者」の差別意識の表出
「ウチの者」以外は人間にあらず
日本人による「ウチ」の認識の概念は、「ヨソ者」なしに「ウチの者」だけで何でもやっていける、
というきわめて自己中心的な、自己完結的な見方にたっている(ワンセット主義)
ヨソ者どうしの非社交性
集団従属による社会的安定=社交の機能的存在価値の欠如
→「田舎っぺ」(ローカルな)傾向へ
人間関係のローカル性は直接接触的であることに結びつく
・集団意識の情的高揚→接触を長期間、激しく保つ必要性
「去る者は日々に疎し」の人間関係の形成
・海外のコミュニティ…インテリ集団にもかかわらず、日本農村のような日本的特殊性
→海外で浮き上がっている…日本人は構造的に異質
・異質性の原因…日本の社会集団は個人に全面参加を要求する
2つ以上の集団に同様のウエイトを持つことは不可能
(西欧人や中国人は複線所属的保身術、日本人は単線潔癖主義)
なぜ単線的なのか?
―場によって個人が所属する場合、
現実的に個人は1つの集団にしか所属できない
資格によって個人が所属する場合、
いくつかの資格によって、いろい
ろな集団に交錯して所属できる
「単一社会」
個人の集団帰属、個人と個人を結ぶ関係、全社会での集団のあり方や相互関係が、
いずれも一方的である