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会社法1
第2回
本日のテーマ
• 設立手続(確認)
• 払込みの仮装
• 発起人の地位と権限
千葉大学2016
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設立の意義
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社団の設立
I. 社団の三要素



定款
社員
機関
II. 社団設立の三要件
① 定款の作成
② 社員の確定
③ 機関の具備
※成立は①~③に順次(あるいは一時に)行われる
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社団の類型ごとの設立手続の比較
株式会社
手続き
発起設立
定款の
作成
発起人による定款の作成
合名会社
募集設立
一般社団法人
設立時社員による 設立時社員による
定款の作成
定款の作成
発起人による
株式引受 定
発起人による
社員の
定款への社員
株式引受 設立時株主
款 定款への社員
確定
の氏名の記載
の氏名の記載
の募集 の
作
成
出資の履行
定款で機関構成を定める
機関の
具備 設立時役員
の決定
創立総会
定款作成後に多くの手続き
定款記載の社員
設立時理事の決定
が自動的に機関
定款作成で社団が完成
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株式会社の設立手続き
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設立手続きの概要
社員の確定
定款の作成
発起設立
定
款
作
成
・
署
名
定
款
認
証
募集設立
発
起
株人
式引
数受
決
定
発
起
人
引
受
株
式
数
決
定
機関の具備
設
立
時
役
員
選等
任
出
資
履
行
設立時募集株式募集
発
行
事
項
決
定
募
申
込
集
み
割
当
て
(
引
受
け
)
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出
創
招
資
立
設
立
事
履
項
報
行
集
告
設
立
時
役
員
等
選
任
設
立
手
続
調
査
設
立
時
株発
式行
数可
決能
定
総
会
設
設
立
時
発
株行
式可
数能
決
定
立
手
続
調
査
設
立
登
記
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設立手続きの選択
I. 発起設立

設立時に発行する株式のすべてを発起人が引受け

発起人のみが株主となり、会社成立の時点でその他の
者が株主になることはない
手続きはやや簡易

II. 募集設立

発起人のほかに、設立時株式の引受人を募集

会社成立時には発起人と設立時募集株式引受人がと
もに株主となる
「創立総会」が開催される
引受人保護のために手続きはやや複雑


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発起設立
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定款の作成
I. 定款の作成
1. 定款の作成者
 発起人が定款を作成して署名
※法律上は、定款に署名した者を発起人とする(形式主義)
2. 定款の意義
 定款=会社の根本事項を定める自治的規則
 定款は会社・株主・経営陣に対して法的拘束力を有す
る(商事自治法。会26により法源性が与えられる)
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3. 定款の記載事項
i.
絶対的記載事項
①
②
③
④
⑤
ii.
事業目的
商号
本店所在地
最低出資金額
発起人の氏名・住所
相対的記載事項


変態設立事項
成立後の会社における相対的定款記載事項
〔例〕監査役の設置、譲渡制限の定め等々
iii. 任意的記載事項


発起人ごとの引受株式数
設立時役員
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II. 定款の認証と備置き
1. 定款の認証
 定款は公証人の認証が効力要件(会30Ⅰ)
→定款の改変の防止
 認証を受けた定款は原則として変更不可(同Ⅱ)
2. 定款の備置き等
i.
定款の備置き(会31Ⅰ)
•
•
設立中は発起人が定めた場所
会社成立後は本店および視点
ii. 定款の閲覧・謄写(同ⅡⅢ)

設立中は、発起人はいつでも定款の閲覧・謄写請求可

成立後は株主および会社債権者に閲覧・謄写請求権。また親
会社社員は裁判所の許可を得て閲覧・謄写請求可
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III. 変態設立事項
1. 意義
 設立に際しての特別な定めであり、利害関係人保護の
ために定款への記載その他の手続規制が定められて
いる行為(会28→会33)
2. 変態設立事項
i.
現物出資(会28①)


出資を金銭以外の財産(現物)で行うこと
現物出資財産の価額が不適切に評価される可能性がある
※設立時の現物出資は発起人のみが行うことができ、募集設立に
おける設立時募集株式引受人は金銭出資しかできない
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ii. 財産引受け(同②)

会社成立後に財産を譲り受ける約束(売買契約)

一種の開業準備行為であり純粋な取引行為だが、現物出資
規制の潜脱に用いられるおそれがあることから規制

財産引受けの譲渡人は発起人でなくてよい(成立後の会社の
株主である必要もない)
iii. 発起人の報酬・特別受益(同③)

発起人が受ける報酬(発起人としての職務執行の対価)また
は特別な受益(発起人の功労に対して(通常は会社成立後に
継続的に)与えられる対価)に対する規制

設立事務を執行する発起人と設立中の会社あるいは成立後
の会社の利益相反関係の調整
iv. 設立費用(同④)


設立に際して支出された費用のうち成立後の会社の負担に帰
せしめるべきもの
発起人による費用の過大請求の防止
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社員の確定(出資)
I. 株式発行事項の決定(会32)
1. 決定事項
① 発起人が割当てを受ける設立時株式の数
② 発起人が出資する金銭の額
③ 成立後の会社の資本金・資本準備金
※払込金額の最低1/2は資本金、残額は資本準備金
2. 決定手続き
 発起人全員の同意
※実務上は定款に(附則として)これらの事項を記載することが多
い(定款には全発起人の署名があるので全員の同意があること
になる)
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II. 変態設立事項の調査
1. 意義
 変態設立事項が適切かどうか調査
 本則は検査役による調査だが、現物出資・財産引受に
ついては専門家による証明で代替可
2. 検査役による調査(会33Ⅰ~Ⅸ)
①
②
③
④
⑤
発起人による裁判所に対する検査役選任の申立て(同Ⅰ)
裁判所による検査役の選任(同Ⅱ)
検査役の調査と報告(同Ⅳ)
裁判所が不当と判断すれば定款変更の決定(同Ⅶ)
④の場合、発起人は以下の対応のいずれかを選択
a. 決定に従う(または抗告して争う)
b. 株式引受けを取り消す(同Ⅷ)
c.
変更対象の定款規定自体を廃止する(同Ⅸ。発起人全員
の同意が必要)
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3. 専門家の証明(会33Ⅹ)
i.
証明の対象

現物出資および財産引受の対象財産の価額
ii. 証明による代替が許される場合
①
現物出資等財産の価額が500万円以下
②
現物出資等財産が市場価格のある有価証券であり、市場価
格以下の価額で定款に記載されている
③
弁護士、公認会計士、税理士の価額証明がある(不動産の場
合には不動産鑑定士の鑑定評価も必要)
iii. 専門家による証明の意義

検査役の調査が費用・時間の面で過大な負担となっており、
現物出資・財産引受を阻害していたため、簡易な価額調査方
法を導入(当時の有限会社の手続きを流用)

専門家の証明を受けた場合については、検査役の調査が行
われたとは見なさない(会52Ⅱ①参照)
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III. 発起人による出資の履行
1. 出資の履行期
 発起人は引受後遅滞なく払込金全額を払い込み、給付
財産の全部を給付(会34Ⅰ)
2. 出資の履行場所
 金銭出資の場合には、発起人が指定する銀行に払込
み(会34Ⅱ)
3. 履行期の徒過と失権手続き
 払込業務を執行する発起人は、履行期を徒過した払込
未了の発起人に対し、2週間以上の期間を定めて催告
 当該期間内に払込みがなければ失権
※他の払込みの場面では履行期の徒過で当然に失権
※引受株式が0の発起人が生じた場合(会25Ⅱ参照)、あるいは最
低出資額(会27④)を下回った場合には設立できない
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4. 株式引受人としての発起人の権利の制限
① 権利株の譲渡は成立後の会社に対抗できない(会
35,50Ⅱ)
※35条は払込前、50条2項は払込後の規定
② 引受けの取消し・無効主張の制限(会51)


会社成立前は、心裡留保(民93)、通謀虚偽表示(民94)の主
張不可
会社成立後は、加えて錯誤(民95)、詐欺・脅迫(民96)の主張
も不可
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IV. 払込みの仮装
1. 預合いと見せ金
i.
預合い
 発起人と払込取扱銀行が通謀
 払込取扱銀行が設立時の出資金相当額を発起人に貸付
け(たことにして)、発起人は直ちに同額を出資として払込
取扱銀行に払い込む(ことにする)
 発起人と払込取扱銀行の間には、払い込まれた(ことに
なっている)出資金を成立後の会社が引き出さない約定が
存在する
※「預合い」という語は設立部分では用いられておらず、わず
かに罰則(会965)に見られるだけであり、定義もない
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払込取扱銀行
返
還
請
求
発起人
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ii. 見せ金
 預合い規制の潜脱として横行
 預合いとは異なり、発起人と払込取扱銀行に通謀はなく、
実際に金銭の移動が存在する
 そのため、個々の行為には違法性はなく、出資を「見せ金」
と評価すべきか否かは事案による
※判例には、①会社成立後、借入金を返済するまでの期
間の長短、②払込金が会社資金として運用された事実
の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす
影響の有無、を考慮すると述べるものもあるが(最判
S38.12.6)、これは例示であり、諸事情を総合考慮して判
断すると考えるべき
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払込取扱銀行
貸付等で返金
貸付
預金払出し
出資払い込み
発起人
見せ金かどうかは総合判断(最判S38.12.6)
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2. 仮装の払込みの効力

預合い・見せ金いずれについても払込みが「仮装」であ
れば払込みとしては無効(明文規定はないが追加払込
義務の法定で明らか)

仮装の払込みを行った引受人は、仮装部分について引
き続き払込義務を負う(会52の2Ⅰ, 102の2, 213の2)。
また、株式発行に関与した取締役等も、引受人と連帯し
て払込み義務を負う(会52の2Ⅱ, 213の3等)。引受人の
払込義務は総株主の同意がなければ免除できない(会
55, 212の2Ⅱ等)。
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3. 払込仮装の場合の株式発行の効力

払込みが仮装であっても株式発行は有効

株式は引受人が取得するが、払込み、給付完了までは
一切の権利行使不可(会52の2Ⅳ, 209Ⅱ)

当該株式が譲渡された場合、譲受人が善意・無重過失
で取得すれば、株主権行使は可能になる(善意取得に
類似するが株券不発行会社も同様)(会52の2Ⅴ,
209Ⅲ)
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機関の具備・設立手続きの調査
I. 設立時役員の選任
1. 設立時役員の意義
 会社成立後に役員(取締役、監査役等)・会計監査人と
なる者
 設立時取締役・設立時監査役は設立手続きにも関与
(監督機関として活動)
2. 選任の時期
 出資の履行完了後遅滞なく選任(会38ⅠⅢ)
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3. 選任手続き
i.
発起人の総議決権の過半数による選任(会40Ⅰ)
 引受株式1株につき1議決権(資本多数決の採用)(同Ⅱ)
ii. 定款の定めによる選任(会38Ⅳ)

定款で設立時役員を定めた場合には、出資の履行完了時に
選任されたものとみなされる
4. 解任手続き
 取締役については発起人の総議決権の過半数で解任
 監査役、監査等委員である取締役については、発起人
の総議決権の2/3以上で解任
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II. 設立手続きの調査(会46)
 設立時取締役、設立時監査役が監督機関として手続き
を調査
※会社設立中の業務執行は発起人が行い、取締役は意思決定、
業務執行は行わない
※他の設立時役員等については、会社成立前の職務なし
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株式会社の成立
I. 株式会社の成立要件
① 法定の設立手続きの履践
※ただし、ある程度の瑕疵については設立をいったん有効とし、
設立無効の訴えで処理
② 設立登記(会49)
※設立登記は設立事務だが代表取締役が行うと解されている
II. 株式会社の成立の効果
① 発起人はその地位を失い株主に
② 設立時役員等はそれぞれの地位に
③ 発起人(設立中の会社)に帰属していた権利義務が自
動的に会社に移行
④ 法人格の獲得
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発起人
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発起人の意義と権限
I. 発起人の意義
a. 設立事務を執行する者(実質説)
b. 定款に署名した者(形式説)
⇒判例・通説は形式説
II. 発起人組合


発起人が複数いる場合、発起人間の関係は組合契約
(民667以下)
複数発起人による会社の設立は一種の合同行為
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III. 発起人の権限
1. 「発起人の権限」の意義

発起人の行為のうち、その法律効果が成立後の会社に
自動的に帰属するものの範囲
2. 発起人が行う行為
① 株式会社の設立行為

定款作成、検査役選任申立て、創立総会招集等
② 設立に必要な行為

設立事務所賃借、株式募集事項印刷
③ 開業準備行為
⇒発起人の行う開業準備行為が成立後の会社に帰属する
かどうかで見解が分かれる
※①は問題なく帰属。②も通説は成立後の会社に帰属すると考える
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IV. 発起人の行為と成立後の会社
1. 議論のスタート地点

発起人は成立後の会社の機関ではないから(会社はま
だ成立していない)、当然に発起人の行為が成立後の
会社に帰属することはない
⇒しかし、たとえば発起人による募集株式の割当てや払込
みの受領が会社に帰属しないとすると、会社の設立は困
難(出資金は発起人の個人財産になってしまう)
2. 発起人と成立後の会社の関係についての学説
個人法説
同一性説
擬制説
実質説
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a. 個人法説

「設立中の会社」を観念せず、発起人の行為の効果は
すべて発起人個人に帰属する。会社法に定められた行
為については、法定の効果としてその法律効果が成立
後の会社に自動的に帰属する
b. 同一性説(通説)

株式会社の設立に際しては、まず「設立中の会社」とい
う権利能力なき社団が形成され、その後に設立登記を
経ることによって、成立後の会社に移行する。設立中の
会社と成立後の会社は実質的に同一

「設立中の会社」が形成されると、発起人は設立中の会
社の機関として活動し、発起人の行為の効果は設立中
の会社に実質的に帰属

その後、設立中の会社が成立後の会社となることに
よって、発起人の行為の効果が成立後の会社に帰属
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a. 個人法説(宮島)
法定の効果
会社法が定める発起人の行為
成立後の会社
会社法に定めのない設立のための行為
発起人
開業準備行為
 設立に関する行為はすべて発起人が個人の資格で行ってお
り、会社の成立時には会社法に法定されている行為について
のみ、法定の効果により会社に帰属する
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b. 同一性説(擬制説)
(判例?・江頭)
設立中の会社
成立後の会社
実質的同一
会社法が定める発起人の行為
会社法に定めのない設立のための行為
発起人
開業準備行為
 発起人は設立中の会社の機関であり、発起人の設立行為および設
立に必要な行為の効果は設立中の会社に実質的に帰属する。設立
中の会社と成立後の会社は実質的に同一であり、効果はそのまま承
継される。ただし設立中の会社は法律関係の承継を説明するための
概念的存在であり、開業準備行為は目的としない。
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c. 同一性説(実質説)
(弥永)
設立中の会社
成立後の会社
実質的同一
会社法が定める発起人の行為
会社法に定めのない設立のための行為
発起人
開業準備行為
 発起人は設立中の会社の機関であり、発起人が行う業務執行の効
果は設立中の会社に実質的に帰属する。設立中の会社と成立後の
会社は実質的に同一であり、効果はそのまま承継される。設立中の
会社は成立後の会社の前駆体であり、開業準備行為も目的に含ま
れる。
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具体的な問題点
I. 定款に定めのない財産引受けの効力
1. 財産引受け

会社の成立後に財産を譲り受けることを発起人が第
三者との間で約束すること
※「譲受け」であるから、たとえば会社成立後に財産を賃借する
ことの約束は「財産引受」ではない

現物出資とは異なり、純粋な取引行為であるととも
に、成立後の会社における事業の開業準備行為

財産引受は定款に記載し、検査役の調査(またはこ
れに代わる専門家の証明)が必要
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2. 定款に定めのない財産引受け
a.
個人法説

発起人の行為のうち成立後の会社に効果が帰属するのは、法
定の事項に限られるので、発起人が行う開業準備行為の効果
が成立後の会社に帰属する余地はなく(絶対無効)、成立後の
会社による追認も許されない

定款に記載された財産引受は、会社法28条の効果により、特
別に成立後の会社に効果が帰属する
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b.
同一性説(擬制説)



発起人は設立中の会社の機関として活動するが、設立中の会
社は設立行為の効果帰属の説明概念であって、開業準備行
為は設立中の会社の目的の範囲外の行為である
法人の権利能力が定款所定の目的に限定される(民34)のと
同様に、設立中の社の実質的権利能力もその目的の範囲な
いに制限されるから、発起人の行う開業準備行為の効果が設
立中の会社に帰属する余地はなく(絶対無効)、成立後の会社
による追認も許されない
定款記載の財産引受は、会28により設立中の会社の実質的
権利能力の範囲内の行為であり、その効果が設立中の会社に
帰属し、成立後の会社に承継される
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c.
同一性説(実質説)

発起人は設立中の会社の機関として活動するが、設立中の会
社は成立後の会社の前駆体であり、開業準備行為も設立中の
会社の目的の範囲内の行為であって、財産引受は設立中の
会社の実質的権利能力の範囲内の行為である

しかし、財産引受は成立後の会社にとって危険な行為であるこ
とから、会社法28条は一定の手続きを要求することとしている。
この手続きの要求は、発起人の権限(代理権)の制限にほか
ならない。

よって、定款に定めのない財産引受は、設立中の会社からみ
れば無権代理行為の一種であり、設立中の会社と実質的に同
一の存在である成立後の会社による追認が許される
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発起人の権限・設立中の会社概念
と定款に定めのない財産引受の効果
設立中の会社
発起人の地位
の性質
学説
論者
個人法説
宮島
認めない
擬制説
江頭
説明の道具
実質説
弥永
実体ある社団
同
一
性
説
発起人の権限
の根拠
開業準備行為
法定の地位
法定の権限
行えない
設立中の会社
の機関
設立中の会社
の機関
行えない
行える
財産引受(=開業準備行為)
学説
個人法説
同
一
性
説
法的性質
定款の定めを欠く場合
効果
理由付け
権限の創設
絶対無効
法定の権限外
擬制説 権限の創設
絶対無効
権利能力の範囲外
実質説 特別な制限
無権代理無効
発起人の代理権
の範囲外
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II. 設立費用の負担
1. 設立費用

設立に要した費用(開業準備費用を除く)のうち、成立
後の会社が負担すべきもの
例:①定款作成費用(認証費用含む)、②株式申込書・目論見書作
成費用、③株主募集の広告費、④設立事務所賃借料、⑤設立
事務員の給与など
※発起人の報酬は別立て
2. 設立費用の計上手続き

定款に設立費用を記載し(会28)、検査役の調査(会
33Ⅰ)
※定款認証費用や登録免許税など金額が定型的に定まり会社財産
を害するおそれがないもの(会規5)は定款記載・調査不要
※この手続きを経ない費用については、発起人個人の負担
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3. 定款記載額を上回る設立に関する費用
i.
問題の所在
 定款所定の設立費用を上回る経費について、設立債権者が支
払を請求できる宛先
ii. 学説
a.
定款記載額の範囲内では会社に帰属し、超過部分は発起人個
人に帰属する(判例:大判S2.7.4百7)
b.
未払い部分は全額成立後の会社に帰属し、定款記載超過分は
会社が発起人に求償
c.
未払い部分は全額発起人に帰属し、定款記載部分は発起人が
会社に求償
相手方は会社、発起人を選択して請求可
d.
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