地方活性化へのアプローチ

発表の概要
1. 「地方が疲弊している」原因とは何なのか
2. どのようなアプローチがなされるべきなのか
3. 2.から考えられる地域活性化の切り口と実際の例
4. 地方活性化のために(私の考える方法→提言)
5. 論点
6. 参考資料の紹介
その原因として挙げられること
地方分権(など)・市町村合併の推進などによって市町村に求められる役割が増大
(これまで中央行政が先導していた地域課題を市町村・民間中心に行うことに)
1. 地域産業の衰退/国際競争にさらされた伝統産業の衰退
経済のグローバル化
→地方産業でも国際競争力を意識せざるを得ない
→雇用が地方からよりコストのかからない国外に
2.少子高齢化/人口減少
→首都圏や大阪・名古屋といった都市圏への人口流出
3. 人材の流出
→優秀な人材は経済的に豊かな都市部へと流れる
→上記の地域課題を解決する人材がその地域から失われる
アプローチの方法
1. 経済のグローバル化という根本的な原因を直接取り除くのは難しい
→国際競争力の強化(国外向け/国内向け)の方向性をコストから品質へ
→もしくは新たな産業を地域産業に組み込む
2. 人口流出を防ぐためにその地域に残るインセンティブを与える
3. Iターン/Uターンのサポートによる人材の新たな獲得/奪回?
地域活性化の切り口
①既存の産業のアピールもしくは新たな産業の取り込み
②人口・人材を確保する
それぞれの例
①→熊本県の「くまモン」(とスザンヌ)を用いたプロモーション活動
②→鳥取県の「子育て王国とっとり建国活動」
また①と②の目的を同時に果たすことができる→「グリーン・ツーリズム」
くまモンと熊本県
1. くまモンの誕生
2011年の九州新幹線の開通に際して、熊本県をPRするキャンペーン(くまもと
サプライズ・・・「おくりびと」の脚本家である小山薫堂さんが提唱)キャラクターと
して2010年3月に誕生
2. 関西圏への進出
①九州新幹線による人口流出が懸念される・交流が期待できる関西圏へのPR
を計画→②2010年7月から甲子園球場の看板・交通広告・新聞広告などでじ
わじわ露出を増やす(あくまでも熊本県のPR第一ではなく、「何だあの熊は!」
というキャラクター自体への親近感を持たせることを意識)→③認知度の向上
⇒④そこから熊本のキャラクターだということをアピール
3. そこから全国へ
関西での市民権を得た後で、2011年のゆるキャラグランプリで優勝
⇒一気に全国区のキャラクターへと成長
くまモンと関連事業
1. くまモンを用いた宣伝方法
*スザンヌ・知事とのコラボ:
熊本県の名所・特産品を紹介する「くまモン営業部長vsスザンヌ宣伝部長 くまもと よかとこ
自慢 チーム対決!@読売新聞(首都圏版)」
⇒くまモン・スザンヌ・県それぞれに相乗効果
*各企業とのコラボ
県産品と有名商品を組み合わせる
e.g. )UHA味覚糖:ぷっちょ晩白柚, カゴメ:野菜生活100デコポンミックス
⇒企画の一部始終を逐一新聞やSNS(Twitterのフォロワー数は88185人 11/11 現在)で
くまモンサイドが報告⇒商品の宣伝にもなる
*熊本県・熊本市・熊本大学との連携
これら三者が設立した熊本県上海事務所はくまモンを積極的に打ち出す
(熊本県は産業交流、市は観光客誘致、大学は留学生の獲得を目的としている)
⇒くまモンを通じて三様の目的の達成を目指す
2. くまモンの経済効果
関西でのPR効果(2010年)…約6億5000万円
くまモングッズの売り上げ(2011年)…約25億5600万円
子育て王国と鳥取県①
子育て王国とっとり建国運動
福祉保健部に創設された子育て王国推進局が中心となって行っている取り組み
1. まずは婚活から(県が業界と結婚を考えている独身の方とを仲介)
とっとり婚活サポート事業
とっとり婚活サポーターを募りイベントを開催
なお、平成23年度には107回のイベントが開催
→3,240人が参加し227組のプル(主催者報告)が成立
2. 不妊治療費の助成(県が中心)
人工授精に要した費用の1/2を最高10万円まで助成。
2年間まで助成される。
子育て王国と鳥取県②
3. とっとり子育てパスポート事業
県が協賛店舗を募り、子どものいる家庭に協賛店舗でサービス
が受けられる特典のあるパスポートを交付するもの。
→家庭側の生活費の負担軽減とそれによる子育てへの前向き
な意識を養っている
↑ただ協賛店舗へのメリットが十分でなく、
パスポートも申請を受け付ける形であるため、
サービスが全員に平等に行き届いているかは疑問。
4, とっとりイクメンプロジェクト
男性の育児休業促進助成金を中心に男性の育児休業取得を
積極的に進めている
グリーン・ツーリズム①
1. グリーン・ツーリズムとは
都市住民などが「緑豊かな農村漁村地域において、その自然、文化、人々との
交流を楽しむ滞在型の余暇活動」のこと。1992年に農林水産省によって提唱。
地域にある様々な資源を地域住民の生活の延長線上で受け入れるもの
→旅行会社が主体となって行うものではなく、地域ぐるみで行うものであるため、
厳密には観光事業とは少し異なる。
2. 具体的な内容
農林水産業分野の体験活動(田植え体験、炭焼き体験、いちご狩り体験など)を
はじめ、農家での暮らし体験(伝統的な夏祭りの体験、星空の観察、昆虫探しなど)
なども含まれる。
グリーン・ツーリズム②
3. グリーン・ツーリズムを導入した時のメリット
*郷土料理・郷土芸能・祭りなど、少子高齢化によって失われつつあった
地域文化の再生が期待できる
*訪れた人々の地域内での消費活動による経済効果
*農林漁業体験や産地直売活動によって、農林水産業の高付加価値化が期待できる
*地域の廃屋・廃校・荒廃した農地の有効活用がなされる
*巨大なアミューズメント施設など大きな観光資源が必要になるわけではないので、
観光施設の建設と比べて財政的な負担がずっと少ない
*消費者の声を直接聞くことができるため、栽培や販売方法を見直す機会になる
⇒開かれた地域づくりと総合的な地域の活性化が見込めるのではないか
グリーン・ツーリズム③
4. グリーン・ツーリズムに参加する人々
都市部在住の自然に触れたいと考える人々
→一時的に滞在(週末のみなど)
→リピーターとして複数回来訪
→地域への理解が深まる
→二域居住(地域にセカンドハウスを設ける、長期滞在型の市民農園に参加)
→地域に定着し、地域住民となってくれる(Iターン・Uターン)
⇒兵庫県八千代町(現・多可町)では、
*平成2年から12年までの10年間の間に300人近くの人々が移住し、31万人もの
人々が参加。
*直接消費による利益は7.7億円(波及効果は12億円超)
これら「地域活性化のための取り組み」
の例に見られる共通点—考察①
1. 行政・企業・個人やNPOが協力して取り組むことで、サービス・商業・個人
の意見反映のバランスがまとまる→成功することが多い
(鳥取の場合は県と企業が主な組み合わせであり、個人やNPO団体側のメ
リットが薄いと言えるかもしれない)
⇒実際に企画の運営を担ったり盛り上げたりするのは市民なので、市民や
NPOが中心となって発案してから行政側と協力、企業も加わるというのが一
番効率の良い方法なのではないか。
2. ターゲットを絞った上で取り組みを進めていく必要性
くまモン:主要ターゲット層である関西圏から徐々に知名度を上げる
→熊本県民に外から知らせる
子育て王国とっとり:まずは県内の若者をターゲットに
→県外との連携を進めていく
(グリーン・ツーリズムはこのターゲットそのものが曖昧、もしくは効果的に獲
得できていないために、知名度がいまいちなのではないか)
地域活性化のために何が必要か—考察②
地域活性化のための切り口として、以下の2点が必要になると考えられる。
1. 熊本県のように観光業に力を入れる必要性
*観光業に力を入れるということは農業・林業・水産業など各地域産業をまんべ
んなく宣伝するということ→各方面からの協力が得やすい
*また民間・企業との連携が取りやすいため、連携が求められる様々な政策の
起点に位置していると考えられる
2. 鳥取県の子育て支援など、Iターン・Uターンを意識した政策
*Iターン・Uターンを促進するためにまず何が求められているか
*都会との差別化はもちろんのこと、他の同規模地域との違いをアピールする
必要があるのではないか
提言①
グリーンツーリズムを活性化させるために
1. まず市町村内・県内での知名度を上げる
(↑肝心の市民が知らなかったり、協力的でなければグリーン・ツーリズムの魅力である
オープンな農村づくりという部分が欠けてしまう)
⇒市民が一体となって訪問客を歓迎する姿勢をとることで、アットホームな田舎の良さを
アピールすることができる。
2. 地元の農協や、NPO、または学校や大学との連携を密にしていく
⇒公社が経営するホテルであったり、宣伝に長けている・地元の農業従事者に顔が利く
団体、また貴重な労働力と宣伝効果を兼ね備えた地元(もしくは都心部)の若者が
加わることで、お互いの得意分野を活かした経営ができる
⇒息の長い、サービスの行き届いたグリーン・ツーリズムを提供できる
提言②地方での拡大型街コンの実施(補足)
都市部での街コン
①商店街の一部の飲食店の利益にとどまっている
→産業全体の活性化につながるわけではない
②カップルが成立しても都市部での定住が進む→地方の状態は変わらない
→そこで「地方での拡大型街コン」を!
①市ごとではなく、地方の県全体、また地方の複数県にまたがっての大規模な街コン
②現在のランチ・ディナーに加えて、各地域の特産品と触れ合うアクティビティを設ける
(農業が盛んな県であれば特産品の収穫、自然を活かしたアウトドアなど
⇒グリーン・ツーリズムの活路にもなる)
メリット
a. 他の市町村・都道府県との交流によって地方自治体同士のコミュニティが形成される
b. 組み合わせによって各市町村・都道府県に見られる男女の人数バランスを調整すること
が可能
c. お互いの市町村・都道府県の宣伝効果も期待できる
論点
1. 新しい産業をその地域に根付かせるためには、どのような工夫が効果的か。
またそもそもこれからの地域産業は流行り廃れに沿った流動的なものである
べきか。
2. あなたが将来Iターン/Uターンしたいと思えるような魅力ある地方とは何か。
そうした地方を創りだすためには官・民・産のどの役割が中心となって計画さ
れるべきか。(官はどのような計画であっても少なからず必要になると思うの
で、発案の中心として捉えていただきたいです)
3. グリーン・ツーリズムの認知度を高めるには規模の拡大やその地域独自の
工夫が求められるが、それは観光業化につながりグリーン・ツーリズムの良
さが失われてしまうのではないか。そういったジレンマを解消するにはどう
いった方法がとられるべきか。
参考文献/URL
「地域ぐるみグリーン・ツーリズム運営のてびき」
(財)都市農山漁村交流活性化機構 編・農文協・2002年
「自治体の観光政策と地域活性化」
中尾清 著・イマジン出版・2008年
「都市経済再生のまちづくり」
小長谷一之 著・古今書院・2005年
毎日新聞
読売新聞
鳥取県HP「とりネット」 :http://www.pref.tottori.lg.jp/
農林水産省HP :http://www.maff.go.jp/