ブラックホール時空構造の新決定法 ~落下ガスの直接撮像データを用いて 森山小太郎 (京都大学 D1) 嶺重慎(京都大学) 目次 1. 目的: ブラックホール時空の測定 2. 今までの研究: 「BHへの落下ガスの光度変動を用いた新スピン測定法」 3. 落下ガス雲の直接撮像による時空構造の測定 4. VLBI模擬観測による観測への示唆 目次 1. 目的: ブラックホール時空の測定 2. 今までの研究: 「BHへの落下ガスの光度変動を用いた新スピン測定法」 3. 落下ガス雲の直接撮像による時空構造の測定 4. VLBI模擬観測による観測への示唆 目標と背景 NASA/Wikimedia Commons 目標: ブラックホールの事象の地平面の証明等のために、 時空構造を観測的に解明すること M, a を観測的に決定したい M :伴星運動の観測などにより測定されている a: 測定は容易でない ↑ ブラックホール近傍での相対論的効果が重要になる 従来の方法も不定性をもつ (色補正、連続成分と輝線成分の分離など) →従来とは相補的なスピン決定法を考える 従来のスピン測定法 (McClintock et al. 2011, Steiner et al. 2011, Kato et al. 2008, etc) ・それぞれ、系統誤差やモデル不定性を持つ (スペクトルハーデニングファクター、 輝線成分の連続成分からの分離、 etc) ・各方法でスピンの値は異なる → 全く独立なスピン測定法を提唱した 注目点 →ブラックホール周りの非周期的な 変動現象に注目する ”非周期変動”の例; Cyg X-1のX線ショット Yamada et al.(2013) 目次 1. 目的: ブラックホール時空の測定 2. 今までの研究: 「BHへの落下ガスの光度変動を用いた新スピン測定法」 3. 落下ガス雲の直接撮像による時空構造の測定 4. VLBI模擬観測による観測への示唆 ブラックホールに落下するガスブロブ a=0, i=60deg リングモデル ブロブが潮汐力でリング状になっていると想定 ガスブロブ ガスリング BH リングからの光の時間発展からスピンを決定 光円軌道半径での集光効果 a=0.9, i=90deg かつ、レンズ効果、ビーミング効果が支配的となる位相において、 リングからの多方向への放射は、同じ方向に束ねられる → からは、多くの光子が観測者に到達する 観測ライトカーブ i ↖: rph ↖ 集 光 効 果 a ↗: 落下時間↘+ rph 集光効果↗ 光子の青(赤)方偏移成分 color bar : log10(photon number, N, normalized by maximum one) 性質: ・青(赤)方偏移成分では光子数が極大 ・それぞれ時間変動する a/M=0 i=85[deg] スピンを測定するための量 フラックス変動のタイムスケール 青方偏移振動数の時間平均 A, Cの (a, i) 依存性 A: フラックス変動の タイムスケール C: 青方偏移振動数 の時間平均 曲線はほぼ水平 → A の測定から C を用いることなく a を測定できる 目次 1. 目的: ブラックホール時空の測定 2. 今までの研究: 「BHへの落下ガスの光度変動を用いた新スピン測定法」 3. 落下ガス雲の直接撮像による時空構造の測定 4. VLBI模擬観測による観測への示唆 問題 • 今までは、BHに落下するガス雲のタイムス ケールのみからスピンを求めた • 撮像の空間成分とあわせて、時空構造を制 限できないか? 1/4リングを考える ¼リングの空間成分の時間変動 原点からのフラックス中心の時間変動 a/M=0, i=40 deg a/M=0.9 , i=40 deg x/M x/M t/M t/M a ↗: 落下時間↘+ 空間サイズ↘+ 振動数↗ 空間成分もスピン依存性を持つ 空間成分と時間成分から独立にそれぞれスピンを測定する Kerr BHであれば、両者の値は一致する Kerr 時空と異なる場合はずれるのではないか? 偽ブラックホール計量 metric 偽BH: 時空の引きずりがB(r)でさらに強くなったBH このBHとKerr BHを比較する (例)rh=2~2.1Mの時空 B(r)=a/2r r/M a/M 事象の地平面がスピン依存性をほとんど持たない時空 +時空の引きずりが強く、各半径がKerrに比べ、大きい ¼リングを考える a/M=0.9, i=40deg B(r)=a/2r 見た目はBH(低スピン)と変わらない y 偽BH O x Kerr BHと偽BHの違い 偽BH Kerr BH F a/M=0.9 i=40deg F ライトカーブ 赤:包絡線 フラックス中心 の空間変動 x/M x/M t/M t/M Kerr→偽BHは、スピン↘とおなじこと? フラックス変動タイムスケール↗ ガスの軌道サイズ↗ どうすれば見分けられる? 注目する4つの物理量 フラックス中心のxの時間平均 フラックス中心のyの時間平均 xt x/M y/M フラックス変動のタイムスケール Ft フラックスのピーク間隔 Δt/M Flux Flux t/M a/M=0 i=40deg t/M 4つの量の具体的な定義 空間成分 時間成分 0. 2. 1. 3. 偽BHの判別方法 ①i=constにおいて、Kerr BH、偽BHで4つの量をそれぞれ求める ②Kerr の量を基準とした時の偽BHの量からスピンaestを見積もる ③4つの量からそれぞれ求められたaest を比較し、違いを検証する 偽BHスピンは空間成分と時間成分で違う i=constでKerr BHと偽BHの結果を比較し、偽BHのスピンを求めた B(r)=a/2r, i=40deg 空間成分 aest/M 時間成分 areal/M 0.9 f=0 : <x/M> 1 : <y/M> 2 : tvar 3: Δt <>は時間平均を表す 0.6 0.2 0 f: function number 空間スピンは時間スピンより小さい : 見た目の大きさは大きいが、フラックスは短い時間で変動 →異なるスピンを予言→偽BHを判別できる 時空の引きずりを強くした場合 B(r)=7a/10r, i=40deg aest/M 空間成分 時間成分 areal/M 0.9 0.6 f=0 : <x/M> 1 : <y/M> <>は時間平均を表す 0 0.2 f: function number 時間スピンと空間スピンの差はより強くなる (例)areal/M=0.9で (時間スピン,空間スピン)~(0.4,0.2) 2 : tvar 3: Δt スピン軸傾斜角が異なる場合 B(r)=7a/10r aest/M i=20deg 空間成分 小 i=40deg 時間成分 areal/M 大 0.9 0.6 時間成分 空間成分 大 小 0 0.2 f: function number f: function number iを変えた場合でも(空間スピン)<(時間スピン) →スピンの違いから偽ブラックホールを識別できる 目次 1. 目的: ブラックホール時空の測定 2. 今までの研究: 「BHへの落下ガスの光度変動を用いた新スピン測定法」 3. 落下ガス雲の直接撮像による時空構造の測定 4. VLBI模擬観測による観測への示唆 模擬観測による検証 理想 a/M=0.2, i=40° VLBI地上観測を想定 天体名:M87 RA = 187 deg Dec = 12.4deg M = 6.2×109M☉ D=16.7×106 pc 観測振動数=229×109 [Hz] 振動数バンド=4.1×109 [Hz] y/M x/M VLBI電波望遠鏡は2015-6年を想定した8台+2017年以降 SMTO, CARMA, JCTM, LMT, ALMA,PV, PdBI, SPT +GLT 模擬観測結果 a/M=0.2, i=40° 理論計算 模擬観測 1/4リングがブラックホールの周りを回転しているのが見える →先ほどの手法を検証する 偽ブラックホールは識別可能 aest/M 空間成分 時間成分 areal/M 0.9 B(r)=a/2r, i=40deg f=0 : <x/M> 1 : <y/M> 2 : tvar 3: Δt <>は時間平均を表す 0.6 f: function number 空間スピンは時間スピンより小さい 模擬観測でもスピンの違いを識別できる →偽BHを判別できる まとめと課題 • 空間スケールと時間スケールからそれぞれスピ ンを測定すれば、偽BHかどうか判断できる 課題: (i) 現在の望遠鏡の数で模擬観測した場合はどうか (ii) リングはどのような状況で形成されるか (iii) 潮汐力、磁場粘性によるリング形状の時間発展 • ALMA 1/13 国立天文台 ->cycle 4での戦略会議 – (AGNジェット) – 86GHzの振動数は目玉 • GR 12/? 京大
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