国際水産開発学 文理融合で海洋について考えるとはどういうことか? 共有と合意形成 衡平性・人道性・科学性 大規模な遠洋漁業は経済的合理性に基づいている. 儲からなければいずれやめる.取り尽くすことはない. うまいものが食べられないのは,残念だが我慢できないこともない. イルカが可愛いか,有害生物かは,立場によって見方が違う. どちらにしても,大騒ぎするほどのことではない. 漁業でどんなことが起きてきたのか日本の歴史を見てみよう 漁業制度史 701 大宝律令・雑令 山川藪沢の利は公私これをともにす。 1724 江戸幕府「磯猟派地附根附次第、沖は入会。」と定める。 (慣行漁業権の発祥) 1875 太政官布告 海面官有宣言、海面借区制 (内務省と大蔵省の対立) 1876 太政官布告取り消し、大蔵省の勝利 (海面は公有、漁業権は私権) 1885 漁業組合準則、 漁村集落等の入会団体を漁業組合として公認した。 1901 漁業法制定 1910 漁業法改正(明治漁業法)現在の漁業制度の基本的な骨格 1921 公用水面埋立法 1948 水産漁業協同組合法制定 1949 戦後漁業法制定 漁協と漁業関管理団体(漁業会)が 並立した時代がある 4/21 技術・紛争史 17世紀 1677 19世紀 1875 1878 1886 1888 1892 1900 1902 1903 1904 1908 1909 1910 1928 1935 九十九里浜の地引網漁,本格化。 太地で網捕り式捕鯨が考案される。 ノルウェーで捕鯨砲考案 日高亀市、ブリ廻置刺し網考案 太地の網捕り漁業遭難・壊滅 国友則重,縦網編網機の特許取得 アメリカ式の巾着網のイワシ漁へ使用(岩手)。 日高亀市・英三郎親子,ブリ大敷網完成 改良イワシ揚操網(あぐりあみ)漁業が起こる 九十九里浜で地引網業者とイワシ揚操網業者の間で紛争。 燧灘で網漁業者と一本釣り漁業者が乱闘 トロール船(帆船)海光丸試運転 トロール船海光丸焼き打ちに遭う 倉場富三郎、トロール漁業操業(鋼鉄汽船深紅丸) トロール漁業排斥期成同盟会結成 汽船トロール漁業取締規則が制定され 日高式ブリ大謀網考案 東京湾でイギリス船が排出した油によりノリ被害 東京湾で漁業者と遊漁者との間で紛争 5/21 漁業の拡大と国際展開 1875 野波小次郎,オーストラリア木曜島で真珠貝採取 1895 朝鮮半島で日本漁民が襲撃されて5名が死亡 1900 日本遠洋漁業株式会社、大韓帝国から朝鮮近海捕鯨の特許公文を受ける 朝鮮海通漁組合連合会設立 1901 済州島で日韓漁民が乱闘 1904 朝鮮海域での操業権取得 日本漁船アラスカで操業 1907 日露漁業協定調印 堤清六,カムチャッカ半島ウスカム川を目指し新潟港出港 1908 日韓漁業協定調印 1912 シンガポール日本人漁業嚆矢(坂本惣次郎) 1924 原耕、南洋カツオ漁場開拓 1926 蟹工船秩父丸カムチャッカで遭難。 1927 日ソ漁業条約調印 1930 丹下福太郎、アラフラ海真珠貝漁業開始 1933 共同漁業、南氷洋捕鯨に初出漁 1935 共同漁業トロール船、メキシコ出漁、合弁事業カリフォルニア湾でエビ漁獲 1936 林兼商店の南氷洋捕鯨経営国産捕鯨船日新丸浸水 共同漁業株式会社のトロール船、アルゼンチン沖操業、現地共同事業 1938 南方マグロ漁行われる 6/21 1945 マッカーサーライン設定。日本漁船による遠洋操業を禁止 日本漁船による南氷洋捕鯨許可 「世界の漁場は、あらゆる種類の魚類で満ちている。」(FAO総会) 1951 大洋漁業アラビア海で操業(インドへの技術協力) 日米加三国漁業協定仮調印 「世界の漁獲量は資源に何らの害を与えないで2倍に増加できる。」 (FAO総会) 1952 日本の遠洋漁業解禁 明神丸、明神礁を発見 韓国李承晩ライン設定 1954 第5福竜丸ビキニ環礁で被爆 三菱商事、サモアを基地としてマグロ漁を行う 1956 水産庁調査船東光丸中南米の漁場調査に向かう 児島湾〆切堰堤完成 1956 八郎潟干拓工事着工 1958 大洋漁業、西アフリカ海域にトロール漁業で進出 第一次国連海洋法会議 1960 第二次国連海洋法会議 1962 東京都内湾漁業権を放棄 1963 極洋捕鯨オーストラリア北部でエビ漁を行う 7/21 1967 「未開発の有力魚種で、あと20年残るものはほとんどない。」(FAO) 1972 ローマクラブ「成長の限界」 国連人間環境会議、「人間環境宣言」「環境国際行動計画」採択 捕鯨モラトリアムの勧告 1974 第三次国連海洋法会議。200海里経済水域を含む非公式単一交渉案が配布。 1976 米国・ソ連を含む多くの国が200海里経済水域(EEZ)を設定 1978 FAO、EEZプログラム開始 1979 移動性野生動物の種の保存に関する条約(通称ボン条約)締結 1982 国連海洋法条約採択 IWC第34回年次総会、1986年からの商業捕鯨モラトリアムjを決定 1983 COFI公海水産資源について論議 1988 米国の北太平洋外国漁獲枠がゼロになる。 1989 国連総会、公海における大模流し網の使用禁止採択 1990 米国海産哺乳動物保護法(MMPA)により、メキシコからキハダマグロの輸入禁止 1992 全海域における公海大規模流し網漁業モラトリアム 責任ある漁業のための国際会議(カンクン会議)。カンクン宣言採択 リオ宣言・アジェンダ21 1993 「公海上の漁船による国際的な保存管理措置の遵守を促進するための協定」 (通称フラッギング協定)採択 8/21 歴史の取りまとめ 1. 資源変動の不確実性の克服 2. 海面利用の多様性・利用者間の軋轢 3. 資源の配分を巡る紛争は 技術の進歩に伴って起きている 4. 日本の漁業制度の独自性 (漁業をどのように位置づけるか) 5. 拡大の歴史(~1970) 6. 拡大の限界(1970~) 世界規模での合意形成 9/21 日本的システムが機能した理由 漁場の拡大によって利害対立が解消できた 地域産業の発展がシステムの健全性を支えた 拡大が可能であれば 民間主導でも対立は激化しない 行政の役割は部分的な利害調整で十分 日本的なシステムが優れていたと考えるのは 夜郎自大 しかし、良く考えると 互い様 漁業に限ったことでもない 11/21 変動し、予測が難しい 資源またはその利益・不利益を どのように配分するのか どのように合意が形成されるのか 21世紀のほとんどの問題はこれに尽きる 知らなければならないこと 資源の成り立ち・関係性・構造 自然科学 制度の成り立ち(法・文化・歴史) 社会学・法律(国際)・歴史 実際の利益配分の現実と仕組み 経済学 11/21 海洋基本計画策定に向けての水産学会からの提言(2007年12月)で例示した水産学の貢献 不確実性の中での衡平性確保と合意形成の手法として MSY(maximum sustainable yield): 再生資源利用におけるSustainabilityという考え方を提示した。 順応的管理(adaptive management): 資源変動の不確実性・予見困難性をあらかじめ読み込んだ管理方式 譲渡可能個別漁獲割当(Individual transferrable quota): CO2取引の原型:資源・環境管理に経済的システムを導入 海洋保護区(Marie protect area; MPA) 栄養段階カスケード(trophic cascade) 捕食関係をめぐる生態系の重要概念 漁業専管水域 EEZの原型 14/22 従来の水産学 資源学・漁業学 加工利用・流通 加工利用流通 (水産化学) 増養殖学 資源学・漁業学と社会 資源管理は個体群生態学だけでできるか? 資源が枯渇するから、漁業者が貧困化するのか 漁業者が貧困化したから、資源が枯渇したのか 資源評価が正しいから、TACを守るべきなのか? 社会合意を守るべきなのでは? 漁業の経済合理性 経済学の弱点 (馬鹿野郎の存在)なぜ漁獲するのか 資源の変動とコストパフォーマンス 漁獲の効率化と経営の効率化は違う 取引手数料収入で良いのか 日本の漁業制度 漁協の特権はこれからも受け入れられるか IQは生産カルテルか? 地域産業としての漁業ありかた 養殖と社会 先行の利益 利益率の低下 環境収容力と生産調整 漁場をどのように配分するか(漁場の評価と配分) 会社化(孫のために漁場を死守するのはよいのか?) 市場を見た養殖 加工流通技術と社会 付加価値を作る。(新しいニーズ) 流通で価値を作る(漁業は取ることよりも売ること) ブランド化には限界がある。 積載率を上げるには アフリカで魚肉ソーセージは作れないか? 資源変動と稼働率 国際社会と漁業 漁業は国際問題 国際相互理解をどのようにするか? 科学(自然科学)は絶対ではない。 国際社会ではしばしば科学が無視されている 資源学的議論をそのものを否定するのは、結局、長い 目で見れば批判される 国際漁業紛争は政争の具 国際環境保護団体も資金獲得の口実に利用 現代の水産学 社会・経済・政策 資源・漁業 利用加工 増養殖 社会合意の基礎としての科学(水産学)
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