落葉層の厚さと実生サイズの違いが 実生の発生・定着に及ぼす影響 北畠 琢郎 北半球の冷温帯域には、 針葉樹と広葉樹が混交する森林が見られ る。 ブナとトドマツの混交林 → あまり見られない ミズナラとトドマツの混交林 → よく見られる ミズナラとエゾマツの混交林→ あまり見られない ウダイカンバ二次林 → 針葉樹の侵入が遅い 種子、実生のサイズは 定着適地の立地環境と対応関係がある 落葉層は発芽、実生の定着を制限する 上層木に規定される林床の落葉層が、 群落の組成構造の違いに影響している? この論文を選んだ理由 天然更新に興味がある 北海道の森林が対象であるため理解しやすい 方法 樹種:ブナ・ミズナラ・トドマツ・エゾマツ 実験地:北海道富野市(東京大学北海道演習林 山部苗畑) 1999年11月に播種 2000年7月下旬に定着した実生個体数を数える 実験終了時に4樹種の実生苗を無処理区から5 個体採集し、地上部の長さを計測 方法 16分割した1m×1mの実験区画を7区画設定 各実験区画に地表処理 1m ①ブナ落葉300g/㎡ ②ミズナラ落葉300g/㎡ ③ウダイカンバ落葉300g/㎡ ④ブナ150g/㎡ ⑤ミズナラ150g/㎡ ⑥ウダイカンバ落葉150g/㎡ ⑦無処理 1m *落葉は同年秋に採取したものを風乾させたものを用いる 各小区画にそれぞれブナ、ミズナラは20粒、 トドマツ、エゾマツは30粒播種 結果(10月における実生サイズ) 最も大きな種子を持つミズナラが最大 針葉樹2種は広葉樹2種に比較して遥かに小型 ミズナラ:12.4±1.7cm ブナ:9.4±1.3cm トドマツ:3.6±0.5 エゾマツ:2.1±0.5 (平均値±標準偏差、n=5) 結果(異なる処理区における各種実生の定着率) ブナとミズナラの実生は全ての処理区において定着率が極 めて高い トドマツ実生はミズナラ落葉処理区では落葉量の増加に 伴って定着率が減少するが、ブナとウダイカンバ落葉処理 区では差がない エゾマツ実生は全ての樹種の落葉処理区で、落葉量の増加 にともなって定着率が減少する 結果(トドマツ、エゾマツ実生の定着率) トドマツ実生も、エゾマツ実生も、落 葉3種の違いによる定着率に統計的 な有為差は見られない トドマツ実生の定着率は無処理と2 処理区の間に有為さが見られるが、 150g/㎡処理区と300g/㎡の間では 差が見られない エゾマツ実生の定着率はそれぞれ 有為さが見られ、特に300g/㎡処理 区での落ち込みが大きい 300g/㎡処理区におけるトドマツ実 生とエゾマツ実生の定着率には約6 倍の差がある 考察 ブナとミズナラは実生定着の過程で落葉の影響を 受けていない ブナ、ミズナラ、ウダイカンバ落葉の樹種別におけ る実生の定着阻害効果に差はない 針葉樹の小さな実生はその定着過程で落葉層の 影響を大きく受ける トドマツ実生はエゾマツ実生よりも落葉層から発 生定着する能力が大きい→実生サイズの差 エゾマツは落葉層が厚くなると定着できない 考察 ミズナラとトドマツの混交林→相互置換的な更新 様式を支持 エゾマツの実生のセーフサイトが倒木上などであ ること ブナとトドマツの排他性は説明できない ウダイカンバの二次林における針葉樹の侵入阻 害を落葉層だけでは説明できない
© Copyright 2024 ExpyDoc