微生物学1 感染と微生物 世界死因別死亡率(2011年,WHO) 死因 1.悪性新生物 2.虚血性心疾患 3.感染症 下気道感染症 下痢症 HIV/AIDS 4.脳梗塞 5.不慮の事故 6.COPD(慢性閉塞性肺疾患) 7.糖尿病 死亡者数(万人) 787 702 685 320 189 159 625 360 297 139 死亡率(%) 14.4 12.9 12.6 5.9 3.5 2.9 11.4 6.6 5.4 2.6 感染症の基礎 感染 感染・・・病原体が生体(宿主)に侵入し,定着すること コンタミネーション(contamination)・・・物品の微生物汚染 発症(発病)・・・感染の結果,宿主が病的症状を呈すること 潜伏期間・・・感染してから発症するまでの期間 病原体が定着し,増殖病巣を形成するまでの期間 感染症・・・感染により引き起こされる疾病 伝染病・・・伝染しやすい感染症 感染形式 急性感染・・・発症から治癒(死亡)までの期間が短期間(~数か月)の感染 慢性感染・・・病原体が長期間(1年~)にわたって徐々に病状を進展させる感染 持続感染・・・宿主の生体防御機構を避けて長期間にわたって持続する感染 (発症の有無に拘わらない) 不顕在感染・・・感染が起こっても発症に至らない場合 潜伏感染・・・感染症が治癒して病状が消失した後も, 病原体が宿主内に留まり,感染を続けること (潜伏期間とは異なる) 再帰感染(再燃)・・・潜伏感染している病原体が再活性化し,発病すること 病原微生物と宿主 病原性・・・微生物が感染症を引き起こす能力 ビルレンス(毒力)virulence・・・病原性の強さ 易感染性宿主・・・感染を受けやすい状態の宿主 生体防御システムが未熟または機能的に障害されている場合 医療の進歩 → 重篤な基礎疾患患者の生存 → 易感染性宿主 日和見感染・・・健常な個体には無害な微生物が易感染性宿主に感染し,発病すること 宿主-寄生体関係 感染症は病原体のビルレンスと宿主の生体防御能力の力関係により成立する 外因性感染・・・外来病原体による感染 内因性感染・・・健常時に体内に生息している微生物の異常増殖,異所増殖 感染症の流行 流行(epidemic)・・・特定の感染症が多発すること 汎発性流行(pandemic)・・・世界的大規模流行 地域的流行(endemic)・・・限定された地域での流行 散発的発生(sporadic)・・・患者数は少ないが,継続的に発生がみられる場合 アウトブレイク(outbreak)・・・公衆衛生上問題になるほどの集団発生(大発生) 疫学・・・人間集団を対象として,病気の原因や本態を究明する医学の一分野 元来は感染症の原因や動向を調べる学問であった サーベイランス・・・感染症等の疫学的な発生動向調査・分析 罹患率・・・単位人口(10万人)あたりの特定疾患の患者数 感染危険集団(risk group)・・・疫学的に感染危険率の高い特定集団 輸入感染症・・・海外から持ち込まれる可能性のある感染症 常在微生物叢 常在微生物と感染 常在微生物叢(常在微生物フローラ)・・・皮膚や粘膜などに定着している微生物 常在細菌叢(正常細菌叢) ← 常在微生物叢は細菌が主体 体表面,体腔表面(口腔,上気道,消化管,膣など)に分布 腸内細菌・・・腸内に生息する常在細菌(大部分が偏性嫌気性菌) 菌交代症 抗菌薬の長期投与により常在菌が死滅 → 抗菌薬抵抗性微生物が増殖 → 発症 異所性感染・・・常在菌が本来の定着部位以外に侵入・増殖 大腸菌による尿路感染症など 内因性感染・・・常在微生物の異常増殖,異所増殖 ← 生体防御力低下 常在菌 皮膚 表皮ブドウ球菌,アクネ菌 鼻腔 表皮ブドウ球菌,レンサ球菌 咽喉 レンサ球菌,肺炎球菌,インフルエンザ菌,マイコプラズマ 口腔 レンサ球菌 Streptococcus mutans(歯垢) → 虫歯 大腸 Bacteroides,Bifidobacterium,Eubacterium 膣 乳酸桿菌 → 酸性環境 腸内細菌の役割 大部分は偏性嫌気性菌 Bacteroides,Eubacterium,Bifidobacterium,Peptostreptococcusなど 大腸菌などの通性嫌気性菌は1%未満 1.食物繊維の分解 食物繊維 → 酪酸,プロピオン酸 2.病原菌からの感染防御 消化管壁面を覆うことにより侵入した病原菌や有害菌の増殖を防ぐ 3.免疫系の調節 腸管免疫系の組織や機能の発達,過剰な免疫応答の抑制 4.ビタミン類の合成 ビタミンK,ビオチン,ビタミンB群の生産供給 5.ビリルビンの代謝 ヘム分解物ビリルビン → ウロビリノーゲン → 再吸収 → 尿排泄 感染の成立 感染源 感染源・・・病原体を含むもしくは病原体に汚染されたもの 患者 感染源となりうるが,感染防御は比較的容易 保菌者(carrier)・・・病原体が感染していても病的な症状を呈していない者 潜伏期間保菌者・・・発病までの潜伏期間に菌を排出 病後保菌者・・・発病して回復した後も菌を排出 保菌者は感染源として認知されにくいため,ときに重大な感染源となる 病原体保有動物(保菌動物) 人獣共通感染症(ヒトと動物の両方に感染する感染症)の感染源 媒介動物(vector)・・・病原体感染を媒介する動物 カ → 日本脳炎,マラリア ノミ → ペスト シラミ → 回帰熱 ハエ → アフリカ睡眠病 ダニ → ライム病,紅斑熱 環境感染源 汚染土壌 → 破傷風菌,ガス壊疽菌,ボツリヌス菌,炭疽菌 汚染水系 → コレラ菌,腸管出血性大腸菌,クリプトスポリジウム原虫 感染経路 感染経路・・・病原体が感染源から宿主に侵入する経路 直接感染・・・ヒトまたは動物から病原体が直接伝播する 接触感染・・・病巣部に直接触れることにより感染が成立 性感染,血液感染,咬傷感染 飛沫感染・・・気道分泌物の飛沫を吸入することにより感染が成立 感染距離は1 m以内 間接感染・・・病原体が排出された後,媒介物または媒介動物を介して感染 飛沫核感染(空気感染) 飛沫の乾燥 → 飛沫核(5 mm以下) 乾燥や紫外線に耐性の病原体・・・結核,麻疹,水痘 食物媒介感染・・・病原体で汚染された食品を介した感染 水系感染・・・病原体に汚染された水道,井戸,河川,プールなどの水由来 器物・衣類による感染・・・患者が使用した食器,衣類,寝具からの感染 感染経路 侵入門戸別の感染経路 経気道感染・・・飛沫感染,飛沫核感染 経口感染・・・食物媒介感染,水系感染 経皮感染・・・創傷感染,節足動物媒介感染 経粘膜感染・・・性感染,泌尿器系接触感染 水平伝播と垂直伝播 水平伝播・・・同世代の個体間に起こる感染 垂直伝播(垂直感染)・・・母子間で起こる感染 経胎盤感染・・・妊娠中の母体から胎盤を経由して胎児に感染 産道感染・・・出産時の産道通過時に新生児に感染 経母乳感染・・・出産後に母乳を介して乳児に感染 感染と生体防御 病原微生物の侵入門戸 侵入門戸・・・微生物の侵入部位 創傷 ← 常在性ブドウ球菌,レンサ球菌 健康な皮膚 ← レプトスピラ,野兎病菌 粘膜 病原体の侵入を受けやすい 呼吸器粘膜 ← インフルエンザウイルス,肺炎球菌 消化器粘膜 ← ピロリ菌,腸管出血性大腸菌 性器粘膜 ← トラコーマ・クラミジア,ヒトパピローマウイルス 血液(医療行為媒介) ← B型・C型肝炎ウイルス,HIV 皮膚(節足動物媒介) ← 日本脳炎ウイルス,発疹チフスリケッチア 宿主側の感染防御因子 自然免疫・・・非特異的生体防御機構 食細胞による微生物の貪食,消化 単球,マクロファージ,顆粒球 液性防御因子 リゾチーム(細胞壁分解酵素),補体(膜傷害タンパク質) 獲得免疫・・・特異的免疫系 食細胞による炎症反応と抗原提示 B細胞 → 形質細胞・・・抗体産生 T細胞 → 活性化T細胞・・・感染細胞傷害 非特異的生体防御機構 生理的障壁 物理的障壁 皮膚,粘膜 → 損傷による感染 病原体の排出 消化管の蠕動運動,気管の繊毛,排尿,皮膚の角質化と脱落 常在細菌による病原微生物増殖の阻止 液性防御因子 リゾチーム(ペプチドグリカン加水分解酵素) ← 涙,唾液 塩酸(胃酸) ← 胃液 脂肪酸 ← 脂腺,汗腺 補体・・・LPS,細胞壁多糖による活性化 ~ 別経路 血管透過性亢進 → 食細胞の遊走促進 サイトカイン産生 炎症性サイトカイン(IL-1,TNF-α,IL-6) → 炎症反応の惹起 インターフェロン(IFN-α,IFN-β) → 抗ウイルス作用 非特異的生体防御機構 細胞性防御因子 食細胞・・・好中球(顆粒球),単球(血管 → 組織中)マクロファージ 食作用・・・微生物を貪食・消化 食胞(ファゴソーム)+リソソーム → ファゴリソソーム 活性酸素による殺菌 ・O2-(スーパーオキシドイオン),H2O2,・OH(ヒドロキシラジカル) 特殊顆粒 NADPHオキシダーゼ(・O2-産生),ラクトフェリン(鉄イオンの枯渇) リゾチーム(細胞壁消化) アズール顆粒 ミエロペルオキシダーゼ(H2O2 → HOCl) 好中球顆粒 デフェンシン(細菌細胞質膜の孔形成) Toll様受容体とサイトカイン産生 Toll様受容体(TLR)・・・微生物成分を認識 細胞膜上 TLR1/TLR2・・・ペプチドグリカン → 炎症性サイトカイン TLR4・・・LPS → 炎症性サイトカイン エンドソーム上 TLR3・・・dsRNA → インターフェロンβ TLR7・・・ssRNA → インターフェロンα/β 感染防御免疫 病原体侵入局所におけるマクロファージの活性化 ↓ 食作用,サイトカイン・ケモカイン産生 血管透過性の亢進,好中球の集積 ↓ 食作用,炎症性サイトカイン産生 炎症反応・・・発赤,熱感,腫脹,疼痛,機能障害 : (感染成立) 免疫応答 ↓ マクロファージ,樹状細胞からの抗原提示 ヘルパーT細胞活性化 ↓ 抗体産生B細胞,細胞傷害性T細胞の活性化 形質細胞 → 抗体産生(液性免疫) 活性化細胞傷害性T細胞 → 感染細胞の除去(細胞性免疫) 細菌に対する感染防御 初期免疫応答・・・IgM抗体産生 ↓ 抗原抗体複合体 ← 補体C3b オプソニン ↓ 好中球,単球,マクロファージの食作用亢進(オプソニン作用) ↓ 補体の結合と活性化(古典経路) 膜傷害性複合体(MAC) → 溶菌 IgG・・・菌体外毒素の中和 分泌型IgA → 粘膜表面の感染防御 結核菌,チフス菌,リステリア マクロファージ食胞内で増殖・・・抗体や補体(液性因子)は無効 サイトカイン(IL-1,TNF-α,GM-CSFなど)によるマクロファージ活性化 INF-γによる一酸化窒素生成 → 結核菌,リステリアの殺菌 ウイルスに対する感染防御 感染初期 NK細胞によるウイルス感染細胞の除去 インターフェロン(IFN-α,IFN-β)による抗ウイルス作用 免疫応答成立後 中和抗体(接着分子に対する抗体)による感染阻止 抗体/補体によるエンベロープ消化 分泌型IgAによる粘膜表面の感染防御 細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)による感染細胞除去 ウイルス感染細胞の破壊機序 K細胞 TC細胞 抗ウイルス抗体 補体 MHCクラス ⅠまたはⅡ抗原 ウイルス抗原 ウイルス感染細胞 抗ウイルス抗体 ウイルス抗原 ウイルス感染細胞 ウイルス感染細胞 真菌,寄生虫に対する感染防御 真菌に対する感染防御 細菌感染とほぼ同様 病原性弱い 慢性疾患 → マクロファージの役割大きい 寄生虫に対する感染防御 原虫・・・抗原変異の頻度高い 慢性感染 → T細胞主体の免疫防御機構 蠕虫感染・・・虫体成分の好酸球遊走活性 病原体側の因子 定着因子・・・細菌が粘膜表面に定着するための因子 感染の成立 ← 細胞表面への付着と定着 線毛・・・毒素原性大腸菌の腸管感染など 表層タンパク質・・・淋菌の尿路感染 鞭毛・・・運動による宿主細胞到達 増殖因子 加水分解酵素による組織分解・・・栄養源,侵襲 シデロフォアによる鉄獲得 生体防御に対する抵抗因子 補体や食作用に対する抵抗因子 白血球障害性毒素 ロイコシジン(黄色ブドウ球菌,緑膿菌)など 莢膜・・・殺菌物質や食作用に抵抗 肺炎球菌,肺炎桿菌,インフルエンザ菌,髄膜炎菌など バイオフィルム形成 ← 宿主粘膜表面 緑膿菌・・・autoinducerによる菌体密度感知機構 生体防御に対する抵抗因子 細胞内寄生性と殺菌抵抗性 通性細胞内寄生性菌 リステリア・・・ファゴソーム膜を毒素で溶解 結核菌,レジオネラ・・・ファゴソーム/リソソーム融合の阻害 偏性細胞内寄生性菌 リケッチア・・・細胞質内で増殖 クラミジア・・・エンドソーム内で増殖 相変異と抗原変異 相変異・・・感染の過程で病原体表面の構造物発現のon/offを切替 サルモネラ鞭毛抗原の相変異 抗原変異・・・発現する抗原タンパク質のアミノ酸配列を変異 回帰熱ボレリアの表層タンパク質 トリパノソーマ原虫の表層糖タンパク質 淋菌の線毛抗原 細菌毒 外毒素と内毒素 外毒素(exotoxin) 内毒素(endotoxin) 熱感受性 作用 菌体内で生産され, 菌体外に分泌 タンパク質 酵素が多い 一般に易熱性 神経毒,腸管毒など 毒性 ng~mg グラム陰性菌の外膜, 溶菌で菌体から脱離 リポ多糖(LPS) 活性本体はリピドA 耐熱性 発熱,エンドトキシンショック, 播種性血管内凝固症候群(DIC) mg~mg 存在部位 分子 外毒素の分子生物学 外毒素遺伝子 多くは染色体上 溶原性ファージ・・・ボツリヌス毒素C&D,ジフテリア毒素 プラスミド・・・毒素原性大腸菌易熱性腸管毒素(LT) 単純毒素・・・単一のペプチドからなる 複合毒素・・・異なる複数のペプチドからなる A-B成分毒素 A:毒性発揮,B:受容体に結合 外毒素受容体 ガングリオシド GM1・・・コレラ毒素,毒素原性大腸菌LT Gb3・・・Vero毒素(志賀毒素) GD1b,GT1b・・・破傷風毒素,ボツリヌス毒素 タンパク質 毒素原性大腸菌ST,ジフテリア毒素 外毒素の作用機序 孔形成毒素 黄色ブドウ球菌のα毒素 → 溶血 リステリアのリステリオリジンO → ファゴソーム膜障害 リステリアのマクロファージ寄生因子 化膿レンサ球菌のストレプトリジンO → 赤血球,心筋細胞 ウエルシュ菌のパーフリンゴリジンO スーパー抗原 黄色ブドウ球菌TSST-1 T細胞活性化 → サイトカイン過剰産生 → ショック 外毒素の作用機序 リパーゼ活性毒素・・・細胞膜脂質を分解 ガス壊疽菌α毒素・・・ホスホリパーゼC,スフィンゴミエリナーゼ 黄色ブドウ球菌β毒素・・・スフィンゴミエリナーゼ タンパク質合成阻害毒素 ADPリボシル化毒素 ジフテリア毒素・・・EF2をADPリボシル化 → タンパク質合成阻害 N-グリコシダーゼ毒素 Vero毒素(志賀毒素)・・・28S rRNAのアデニン遊離 → タンパク質合成阻害 細胞内シグナル伝達系を障害する毒素 コレラ毒素・・・GSをADPリボシル化 → cAMP上昇 → Cl-チャンネル活性化 亜鉛依存性プロテアーゼ 破傷風毒素・・・シナプス小胞シナプトブレビンを分解 → GABA放出抑制 ボツリヌス毒素・・・シナプス小胞タンパク質を分解 → アセチルコリン放出抑制 神経毒(neurotoxin) 破傷風毒素(テタノスパスミン)・・・破傷風菌(Clostridium tetani) 抑制性シナプス遮断 ← 亜鉛メタロプロテアーゼ 痙性麻痺,強直性痙攣 → 呼吸筋麻痺 ボツリヌス毒素・・・ボツリヌス菌(Clostridium botulinum) アセチルコリン放出抑制 ← 亜鉛メタロプロテアーゼ 弛緩性麻痺 → 呼吸筋麻痺 腸管毒(enterotoxin) コレラ毒素・・・コレラ菌(Vibrio cholerae) 易熱性エンテロトキシン・・・毒素原性大腸菌(Escherichia coli) ADPリボシル化酵素 → 腸管上皮細胞透過性昂進 → 激しい下痢 ブドウ球菌エンテロトキシン・・・黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 耐熱性・耐酸性,延髄中枢刺激 → 嘔吐 ウェルシュ菌β毒素・・・ウェルシュ菌(Clostridium perfringens) 組織破壊作用による壊死性腸炎 Vero毒素・・・腸管出血性大腸菌(Escherichia coli O157:H7,O111:H-など) VT1は赤痢菌の志賀毒素と同一 N-グリコシダーゼ → 28S rRNAのアデニンを遊離 → タンパク質合成阻害 腸管上皮細胞破壊 → 下痢(水様便,鮮血便) 腎毛細血管内皮細胞破壊 →溶血性尿毒症 VT2・・・VT1と相同性55% 細胞毒(cytotoxin) 百日咳毒素(pertussis toxin)・・・百日咳菌(Bordetella pertussis) GTP結合タンパク質をADPリボシル化 気管繊毛上皮細胞を破壊 → 激しい咳 ジフテリア毒素・・・ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae) タンパク質合成系の伸長因子2(EF2)をADPリボシル化 心筋障害,神経麻痺 腸炎ビブリオ毒素・・・腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus) 耐熱性溶血毒 → 赤血球破壊,心筋麻痺 ウェルシュ菌α毒素・・・ウェルシュ菌(Clostridium perfringens) 組織破壊作用によるガス壊疽 感染症の診断 検体の採取と検査 検体の採取・・・病原体を含む組織や排泄物を無菌的に採取 光学顕微鏡による検査 グラム染色・・・(グラム陽性・陰性)細菌の判別 抗酸性染色・・・抗酸菌の判別 異染顆粒染色・・・ジフテリア菌の同定 芽胞染色・・・芽胞形成菌の判別 分離培養検査 普通寒天培地,選択培地 純培養とその保存 分離培養 → 単一のコロニー(集落) → 同定 保存・・・スラント(斜面培地),超低温(-80℃ or 液体窒素中) 細菌の同定 コロニーの性状 大きさ,形,色,発育条件(好気~嫌気) 菌の形態 大きさ,形,配列,鞭毛・芽胞・莢膜形成の有無 生化学的性状 栄養要求性,糖・アミノ酸の分解能,酵素産生能 毒素産生性 動物や培養細胞に対する毒性 遺伝学的性状 GC含率,DNA相同性,PCR → 16S rRNA配列 免疫学的性状 分離菌の抗原性 生化学的・生理学的試験による細菌の同定 酸素の利用性 好気性菌 or 嫌気性菌 OF試験 溶血性 α(不完全溶血)β(完全溶血)γ(非溶血) ← 血液寒天培地 色素産生性 コロニー色素,可溶性色素 ← 固形培地 運動性 半流動高層培地,懸滴標本の顕微鏡観察 糖分解性 糖 → 酸(指示薬)・ガスの産生 硝酸塩還元性 硝酸カリウム → 亜硝酸(α-ナフチルアミンによる赤色沈殿) 生化学的・生理学的試験による細菌の同定 メチルレッド試験 グルコース → 酸 (メチルレッド:黄 → 赤) Voges-Proskauer試験(V-P試験) グルコース → アセトイン (α-ナフトール/アルカリで赤色) タンパク質,アミノ酸の分解性: ゼラチン液化,アミノ酸脱炭酸,アミノ酸脱アミノ,インドール産生 フェニルアラニン → フェニルピルビン酸 トリプトファン → インドールピルビン酸 トリプトファン → インドール クエン酸利用性 クエン酸消費 → 培地のアルカリ化 (BTB指示薬:緑 → 青) IMViCテスト・・・腸内細菌の同定 インドール産生,メチルレッド試験,Voges-Proskauer試験,クエン酸利用性 生化学的・生理学的試験による細菌の同定 硫化水素産生 硫酸第1鉄 → 硫化鉄(黒) 尿素分解能 尿素 → アンモニア → アルカリ化 (フェノールレッド指示薬:黄 → 赤) カタラーゼ試験 過酸化水素 → 酸素の泡 オキシダーゼ試験 インドフェノールオキシダーゼ(ナイセリア) シトクロムcオキシダーゼ(緑膿菌やビブリオ) 毒素産生能 細胞または動物に対する毒性 ← 特異抗体による中和 免疫学的手法による細菌の同定 莢膜膨化試験・・・肺炎球菌,インフルエンザ菌,髄膜炎菌 莢膜の膨張 ← 特異的抗血清 スライド凝集試験・・・赤痢菌,サルモネラなど 浮遊菌の凝集 ← 特異的抗血清 ラテックス凝集試験・・・大腸菌など 浮遊菌の凝集 ← 特異抗体結合ラテックス 免疫磁気ビーズ法 抗原保有菌の濃縮 ← 特異的抗体結合磁性ビーズ 血清型(serovar)分類も同様の手法で行われる 血清診断 患者血清中の病原体特異抗体の検出 抗原(菌体タンパク質など)を固定化し,免疫学的検出を行う 酵素標識抗体免疫測定法(ELISA) ペルオキシダーゼ標識二次抗体 → ベンチジン発色 蛍光抗体法(IFA) 蛍光色素標識二次抗体で検出 ウエスタンブロット法 タンパク質を電気泳動後,抗体 → 標識二次抗体で検出 受身(間接)凝集反応 抗原結合ラテックスの凝集により検出 補体結合反応 抗原-抗体結合物による補体消費を溶血抑制で検出 病原体遺伝子,病原体抗原の検出 遺伝子増幅法 病原体特異的遺伝子のPCRによる増幅 ノロウイルス遺伝子 腸管出血性大腸菌のVero毒素遺伝子 抗原検出法 イムノクロマト法・・・インフルエンザウイルス,ピロリ菌など 標識抗体(反応抗体)-抗原 ↓ 試験紙上を移動 捕捉抗体で濃縮 → 色付きのライン
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