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知らなかったではすまされない
65歳までの雇用延長制度
~改正高年齢者雇用安定法Q&A
平成23年1月19日
弁護士法人よつば総合法律事務所
講師 大澤一郎
65歳までの雇用延長制度トラブル例
・定年を延長する法律ができたと聞いたが,特別誰にも何もいわれないので,何も対策
はとっていなかった。60歳で定年ということで定年間近の従業員に話したところ,従業員
がインターネットで調べた法律の規定を持ち出してきた。しかも,従業員が労働組合に加
入し,団体交渉の申し入れがあった・・・。65歳までの賃金の支払いを求める訴訟も起こ
された・・・。
・ 65歳までの定年延長の法律ができた。とりあえず,60歳定年になっていた就業規則
の規定を削除すれば手続き上問題ないと聞いたので,就業規則の60歳定年制の部分
を削除してみたところ,60歳を過ぎた従業員がだれもやめなくなった。
2
定年制についての整理
1 定年制→労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了する制度
2 定年制の種類について
・定年退職→定年に達した時に当然に労働契約が終了するもの
・定年解雇→定年に達した時に解雇の意思表示をし,それによって契約を終了させるも
の
→定年解雇の場合には労働法の解雇規制が適用となるので注意が必要。就業規則の
定めが定年解雇制になっている,明確な規定がない等の場合には定年退職制を導入し
ておくべき。
3 定年制の沿革
(1)かつては55歳定年制が主流
(2)1970年代半ばから60歳定年制が主流
(3)平成6年改正高年齢者雇用安定法は60歳定年制を定年に関する強行規定(施行
平成10年4月1日)
(4)平成16年改正高年齢者雇用安定法で60歳を超える規定(施行平成18年4月1日)
3
平成16年改正高年齢者雇用安定法
1 平成16年6月5日成立の改正高年齢者雇用安定法
雇用延長部分は平成18年4月1日から施行
2 定年制に関する部分
(1)定年制については60歳を下回ることができない。(第8条)
(2)(定年が65歳未満の時は)65歳までの安定した雇用確保措置を講じる義務(第9条
第1項)
(ア)定年の引上げ
(イ)継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその
定年後も引き続き雇用する制度。)←全員対象
(ウ)定年の定めの廃止
(3)継続雇用制度については労使協議で対象となる高年齢者の基準・制度を定めた時
は継続雇用制度を講じたものとみなす。(第9条第2項)←対象は一部でもOK
3 雇用延長を行わなかった場合
(1)罰則なし
(2)必要な指導・助言がなされる可能性あり(第10条第1項)
(3)勧告がされる可能性あり(第10条第2項
(4)社名の公表制度なし
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改正法に対応した制度設計方法
1 定年の65歳までの引き上げ
→規定は簡単。企業が60歳以上の雇用を希望しない従業員まで雇用する義務が生
じ,企業の負担大。お勧めしない。
2 定年制の廃止
→規定は簡単。しかし,全くお勧めできない。従業員本人の同意がない限り,従業員
を退職させることができない。
3 継続雇用制度
→望ましい。規定方法・運用について社会保険労務士の先生が関与の必要あり。
参考 厚生労働省のパンフレット
「65歳までの定年の引き上げ等の速やかな実施を!!」
「継続雇用制度については,原則は希望者全員を対象とする制度の導入が求められま
すが,各企業の実情に応じ,労使の工夫による柔軟な対応がとれるよう,事業主が労使
協定により,継続雇用制度の対象となる高年齢者に関する基準を定め,当該基準に基
づく制度を導入したときは継続雇用制度の措置を講じたものとみなされます。」
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高年齢者雇用安定法最新論点(強行法規制)
(事案)
60歳定年制のままの規定でいたところ60歳で定年を迎えた従業員が,65歳まで働く権
利がある,65歳までの賃金を支払う義務があるとして会社を訴えた事案(東日本電信電
話株式会社事件・平成21年11月16日東京地方裁判所判決)
(結論)
・高年齢者雇用安定法を原因として65歳まで就労する権利は従業員にはない。
・会社は65歳までの賃金を支払う義務はない。
・規定を作成しなかった,労使協議を行わなかったことのみをもって損害賠償請求が認
められるものではない。
→規定を作成しなかった場合でも,従業員との関係では改正高年齢者雇用安定法は大
きな問題とはなりにくい。
・ただし,65歳定年制が将来一般化した場合には,60歳定年制の規定が無効となり定
年制のない企業となる可能性あり(参考判例アールエフラジオ事件東京地方裁判所平
成12年7月13日判決)
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高年齢者雇用安定法最新論点(雇い止め)
(事案)
60歳の定年後に1年契約で再雇用されたが,1年のみの雇用で契約が再更新されな
かった従業員が会社に対して従業員の地位確認を求めた事案。就業規則には一定の
条件を満たした場合には再雇用する旨の規定があった。(京都地方裁判所平成22年1
1月26日判決)(新聞資料及び判決文参考資料にあり)
(結論)
雇い止めにも解雇権濫用法理が類推適用される。従業員の地位確認が認められた。
(添付資料参照)
(対策)
・一度60歳定年の際に再雇用してしまうと,1年単位の雇用契約を締結したとしても,実
質的には65歳までの契約になってしまう可能性が大きい。
→再雇用の歳に厳格な基準を設ける必要あり。
・60歳の定年後,再雇用する場合には65歳までの5年間の雇用となってしまう可能性。
→会社の実情に併せて給与額を低めに設定することが相当。(会社が提案した賃金が
低額と考え,従業員が60歳定年後の再雇用契約を締結しないということもありえる。)
*年金,雇用保険の高年齢者雇用継続給付,給与をうまく組み合わせた最適給与の仕
組み作りを会社に提案する方法で顧問先の信頼アップ。
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高年齢者雇用安定法最新論点(更新拒否の可否の判断基準)
1 更新拒否を無条件で会社ができる場合かできない場合か
(1)契約が期間の定めがない契約と実質的に異ならない状態にあると認められるか。
(2)上記(1)に当たらないとしても,契約において雇用継続への合理的な期待が認めら
れるか否か。
(3)(2)の判断要素としては,(ア)当該雇用の臨時性・常用性(イ)通算期間(ウ)当該雇
用された社員及び他の期間雇用社員における契約更新の経緯・回数(エ)期間雇用社
員と正社員との業務内容・労働条件の異同(オ)雇用継続の期待を持たせる使用者側の
言動・制度の有無(カ)契約書の有無・内容(キ)雇用契約締結時の状況(ク)有期契約と
した当事者の事情,(ケ)期間満了時の新契約の手続内容と時期(コ)他の同種労働者と
の比較等を考慮。
2 更新拒否を無条件でできない場合の判断基準
一般の解雇権濫用法理と同様。ただし,雇い止めの必要性,期間雇用に関する事情も
考慮した個別具体的な判断をしている。
3 改正高年齢者雇用安定法と雇い止め
→従前の最高裁判例及び改正法が施行されているという状況からすると,雇用継続へ
の合理的な期待はあると判断される可能性大。解雇権濫用法理類推適用と考えた方が
無難。
参考判例
東芝柳町工場臨時工事件(昭和49年7月22日最高裁判決)
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日立メディコ柏工場臨時工事件(昭和61年12月4日最高裁判所判決)
高年齢者雇用安定法最新論点(給与の減額について)
(事案)
60歳までは月額30万円の給与。60歳の定年後,1年契約の雇用契約で給与は月額1
8万円。仕事内容は従前と同様。従業員が会社に対して,月額の差額の12万円の支払
を求める訴訟を提起した。(架空の事例)
(結論)
差額の支払えという判決が出る可能性あり。(ただし,可能性は極めて低いというのが私
見)
(参考判例)
丸子警報機事件(長野地方裁判所上田支部平成8年3月15日判決)
正社員と臨時社員の仕事内容は同一。給与額は100対60の場合に,差額の40%の
請求を臨時社員が求めた事案。20%分の請求が認められた。(男性は全て正社員。女
性のうち未婚は正社員,既婚は臨時社員として採用した事案)
(対策)
・トラブルになりそうな従業員の60歳前からの把握
・雇用契約書の作成,誓約書の作成等の書類の作成
・業務内容を60歳までと60歳後で異なる業務にすること
・60歳以降は残業しない等勤務時間についても60歳前後で異なる条件にすること
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高年齢者雇用安定法最新論点(団体交渉義務)
(事案)
60歳の定年直前の従業員が労働組合に加入し,自らの60歳以降の継続雇用等を交
渉議題として団体交渉申し入れをなした。会社側は,労働組合には少数組合なので継
続雇用協定の締結資格がないとして団体交渉を拒否した。労働組合が不当労働行為に
当たる旨の申し立てをなした。(東京地方裁判所平成22年2月10日判決)
(結論)
・満60歳の定年を迎える組合員の定年後の継続雇用という組合員の「労働条件その他
労働者の待遇に関する基準」に当たるため団体交渉に応じる義務が会社にはある。
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労使協定に基づく継続雇用制度の具体的内容・手続き
1 労使協定の締結
根拠条文:高年齢者雇用安定法第9条第2項
上記労使協定は労働基準監督署への届出は不要
2 1の労使協定に基づいた就業規則の変更,届出義務
根拠条文:労働基準法第89条第3項,第89条柱書
3 1の労使協定,2の就業規則の作成に基づいた個別の雇用契約書の作成
参考:60歳以降の社員の名称について(2003年厚生労働省調査)
正社員17.4%,契約社員14.9%,嘱託社員61.7%,パート・アルバイト21.1%,
その他3.8%
→名称は嘱託社員が無難。
*元々60歳未満のパート社員等の有期雇用契約者の場合は60歳以上65歳までの定
年延長は不要という見解が多い。
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労使協定のポイント
1 労使協定の締結のポイント
(1)条件をなるべく多く入れること
→条件の最後に「会社が必要と認めたもの」と入れておけば,会社側からすれば,どの
ような従業員も対象にすることができる。
→働く意思・意欲,勤務態度,健康,能力・経験,技能伝承その他等
(2)厚生労働省パンフレットで明確に禁止されている条件をいれないこと
・「会社が必要と認めたもの」のみ再雇用する規定(具体性・客観性を欠く)
・「上司の推薦があるもの」のみ再雇用する規定(具体性・客観性を欠く)
・「男性(女性)」のみ再雇用する規定
・「年金(定額部分)の支給を受けていないもの」のみ再雇用する規定
・「組合活動に従事していないもの」のみ再雇用する規定
*参考 「継続雇用制度の対象者に係る基準事例集」(厚生労働省パンフレット)
(3)労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には労働組合との間での協定の
締結をすること
(4)労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には,労働者の過半数を代表する
ものとの間での協定の締結をすること
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労使協定に基づいた就業規則の改正のポイント
2 就業規則の改正のポイント
(1)就業規則自体の改訂
参考条文例(改正前)
第●条 定年は満60歳に達した日の属する月の末日とする。
参考条文例(改正後)
第●条 定年は満60歳に達した日の属する月の末日とする。ただし,本人が定年後の
再雇用を希望する場合には,別に定める「定年後再雇用規程」により,最大限65歳に達
した日の属する月の末日まで雇用する。
(2)定年後再雇用規程のポイント
・勤務時間は概ね決めておき,個別の労働者との労働契約で具体的な内容を定める。
・有休休暇の承継について(昭和63年3月14日基発第150号)
・健康診断の受診義務と更新拒否
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個別の雇用契約のポイント
3 雇用契約のポイント
(1)雇用契約書の作成は必須
→作成しないと定年前と同額の給与を請求される可能性あり。
(2)個別の人ごとの雇用契約書は異なっても構わない。
→会社にとってどのくらい必要な社員かということによって,賃金額等の条件が異なるの
はむしろ当然。
(3)確認の意味も含めて別途誓約書を作成することもよい。
→60歳までとは条件が異なるということを法律上明確にすると共に,従業員にも60歳ま
でとは異なる賃金であるということをしっかりと理解してもらう。
(4)有休休暇買取を前提とした60歳での退職。早期退職優遇の条件を付けた60歳で
の退職に本人が同意すれば,本人の意思だということで60歳定年制も事実上可能。
(5)高年齢雇用継続給付金,高年齢再就職給付金,継続雇用定着促進助成金等各種
助成金の受給を検討
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最近の主要なセミナー実績
○2009年10月22日 千葉県税理士会松戸支部主催
「そんなとき,顧問先の問い合わせに即対応できる税理士が知っておきたい倒
産・廃業時の実務」
○2010年3月28日 船井総合研究所主催「独立開業セミナー」
「弁護士のための独立開業セミナー」において,パネルディスカッションを担当し
ました。
○2010年12月7日 千葉県税理士会柏支部主催
「税理士が知っておきたい労務問題・法律問題」
○2011年1月22日 船井総合研究所主催
「法律事務所の時流と経営」(福岡)ゲスト講師(予定)
○2011年2月5日 法律事務所経営研究会
「法律事務所の時流と経営」(大阪)ゲスト講師(予定)
○2011年4月21日 柏法人会主催
「中小企業のためのサービス残業代対策」(予定)
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顧問契約のメリット
(1)すぐに弁護士事務所に相談できる
(2)業務内容や内情の理解が得られる
(3)迅速な対応が期待できる
(4)よりよい契約交渉や紛争解決が期待できる
(5)信頼関係を構築しやすい
(6)法務コストの削減
特に,以下のような会社には顧問契約がお勧めです。
(1)売掛金の未回収が多い会社(少額・多数の売掛金の未回収が発生する可能性がある会社等)
(2)従業員と紛争になる可能性が高い会社(労働組合が強い会社等)
(3)株主間での調整が必要な会社(少数株主から訴訟を起こされる可能性がある会社等)
(4)継続的に法律問題(訴訟等)が発生している会社
(5)建物明渡訴訟・交渉が多い会社(不動産管理会社等)
→事業を行っていない個人の方の場合には,顧問契約ではなく,個別に弁護士にご依頼された
方がよいかとおもいます。他方,会社の場合や,事業を行っている個人の場合には,弁護士への
相談は,大きなトラブルになる前に早めに信頼できる気心の知れた弁護士に相談するのが一番
です。月額
顧問契約の費用は月額31,500円~です。
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講師略歴
大澤一郎 弁護士法人よつば総合法律事務所 代表社員弁護士
千葉県柏市柏1丁目5番10号 水戸屋壱番館ビル4階
電話番号 04-7168-2300
FAX番号 04-7168-2301
メールアドレス
[email protected]
ホームページアドレス
柏・松戸中小企業法律相談http://www.yotsubasougou.jp/
平成8年 千葉県立東葛飾高校卒業
平成13年 東京大学法学部卒業
平成13年 司法研修所入所 司法研修所55期
平成14年 弁護士登録
千葉県弁護士会所属(登録番号29869)
平成20年度弁護士会松戸支部幹事,同支部法律相談運営センター委員,千葉県弁
護士会新人弁護士等支援委員会委員
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