sociology20091117b

メディア社会学
2009年11月17日
7.職業
7.1職業の多様な次元の種別
• 業種(大きく分ければ第一次産業か第二次産業
か第三次産業か。勤め先の業種)「業種」「事業
や営業の種類」(『広辞苑』)
• 仕事の内容(勤め先の業種が製造業であっても、
事務的な仕事もあるし、営業的な仕事もある。他
方、製造業の根幹に関わる開発・技術部門や行
員として実際の製造に携わる人も多い)
• 従業上の地位(平から係長・課長・部長・役員・
社長等)
7.2日米の雇用形態・職業意識の違
い
• 就職と就社
• ジェネラリストと専門職
• 企業内組合と同業者組合
7.3日本的経営
• 終身雇用制
• 年功序列制
• 配置転換による雇用調整とジェネラリストの
養成
• 御神輿型の意志決定と人の和の強調
• 丸抱え的システム
7.3.1終身雇用制
• ・・・(中途採用の少なさ、学歴よりも学校歴重
視の理由、就職よりも就社となることの理由)
• メリット・・・首切りの少なさであり、社員の愛
社精神を強くし、仕事へのモチベーションを高
める。
• デメリット
①不採算部門に人をいつまでも残しておいたり
不景気になっても人減らしができない→日本
の企業の国際競争力を弱くする(構造改革論
者)
7.3.1終身雇用制②
②成果→好条件での転職というモチベーション
が働かない→独創性を阻む企業風土
• この終身雇用制の反対がいわば「リストラ社
会」とでもいえる。
③「会社人間」を作り出す・・・家庭を顧みない人
生・・・定年後の生き甲斐のない状態
7.3.2年功序列制①
• (就社ゆえ、社内の人脈が大切になる)
• 賃金や地位が勤続年数(=年齢・・・中途採
用が少ないので)に応じて決まる・・・横並び
の昇進・昇級→社員の間での対立や嫉妬心
が生まれにくい。社員の創意工夫を殺ぐとい
う批判もある。
• 独創性よりも調整力を重んじる(山一証券倒
産時のエピソード)。7.3.3のジェネラリスト
ゆえこのような社内の人脈を重視する人間が、
エリートとしてのさばる。
7.3.2年功序列制②
• 中途採用や、新卒でない者の採用が不利に
なる。
• 日本が学校歴社会に留まり、学歴社会になら
ない理由でもある。
• 現実にはポストは上に行けば行くほど限られ
る。・・・出向、課長「級」のようなポストの用意
• 右肩上がりの時代は、上記の問題はあまり
目立たず巧くいった。
7.3.2年功序列制③
• 住宅ローンや退職金、年金等、ライフプランそ
のものが日本では、年功序列制を前提として
いた。
• それに併せて結婚年齢、子供の生まれる年
齢その他も、人による違いが従来は少なかっ
た。
• ライフスタイルの多様化(≒属性の説明力の
減少)により、年功序列制の意義も薄らぐ
7.3.3配置転換による雇用調整と
ジェネラリストの養成①
• (就社であるがゆえに、不採算部門をレイオ
フしなくて済む)
• メリット
①首切りの少なさ・景気の変動・人気商品の変
化に対応できる
②社内の事情に通じた人物が幹部として育つ
(「幅広い」視野)
7.3.3配置転換による雇用調整と
ジェネラリストの養成②
• デメリット
• 専門職が育たない、専門的能力を評価できな
い
• 会社の外に人間関係の広がりを育もうとしな
い人が増える
7.3.4御神輿型の意志決定と人の
和の強調
• ・ボトムアップ的な意志決定
• メリット・・・末端の社員も会社の方向を左右
する重要なアイデアを出す機会があり、モ
ラール(士気)が高まる。
• デメリット
• 1.責任が曖昧になる(日本の社会は無責任
の体系が支配するということは丸山真男その
他が指摘するとおり)。
• 2.意志決定に時間がかかる。
7.3.5丸抱え的システム
• コンピュータ、英会話等、自分をスキルアップ
するための研修費用も会社持ち
• 社員食堂、社宅その他、福利厚生を会社が
面倒見る
• お茶くみ専門の一般職の女子社員を大量に
採用し、幹部候補生の男子社員の結婚相手
の候補として、それでも売れ残った人にはお
見合いの話を紹介する。
• 社員旅行、接待ゴルフ、社内の飲み会等、社
員運動会等、社員および家族の娯楽
丸抱えシステムのメリット
• 1.会社に対する愛情や忠誠心がわき、仕事が生
き甲斐になる。その結果、モラール(士気)が高ま
り、仕事上の効率は増える。
• 2.9時-5時で職業人としての意識が途絶えない
だけに、職業上の地位が、その人の役割や規範を
そのまま規定することになり、人格上の統合の矛
盾が生じにくい。
• 3.名目上の給料よりも実質上の給料は高くなる
が、それによって社員が支払うべき税金(所得税)
は、相対的に低くて済む。(民間企業よりも公務員
に関して宿舎等々についてこの利得はある)。
丸抱えシステムのデメリット①
1.娯楽、余暇活動が仕事の延長になる。カラオケ
に行っても、飲み屋に行っても上司の顔を見る
んでは、部下はストレス発散できません。結局ジ
ンメルのいうような貨幣的人間関係が構築され
ず、相対的に下の立場の人間の自由が得られ
ない状況であるといえる。
2.事実上の就業時間の延長。会社に余暇や娯楽
の面倒をみて貰うということは、逆にサービス残
業をすすんで受け入れる下地にもなる。
丸抱えシステムのデメリット②
3.地域社会への繋がりができない理由にも。
ただし会社と家族しか濃密な人間関係を築く
ネットワークができないため、会社での立場
が悪くなり、家族ともしっくりいっていないばあ
いには、逃げ場や相談相手がなくなる恐れも
ある。
• ※会社がゲゼルシャフトではなく、擬似的な
ゲマインシャフトとして機能するといわれる。
ライフサイクルと職業①
• 人生の一部の時間のみ「職業人」
• 80年のうちの22-60歳の38年
• しかも余暇が増えて、この38年のうちの何割
かのみが職業に充てる時間
• ただし22歳までは「職業」という「夢」の実現
のための投資期間ともいえる
• また生き甲斐も職業と併せて考えられている。
ライフサイクルと職業②
• とはいえ余暇時間の充実を支える
• お金と肩書きも職業が規定する。
• 自分の子どもへの教育投資も、職業を念頭に
置いている・・・その意味では社会学上の多く
の「属性」が職業を巡って、廻っている
• 職業・「再生産」(マルクス・ブルデュー的な)
をキーワードすると、人間の諸活動のほとん
どがその中あるいは周辺に関連づけられる。
ライフサイクルと職業③
• ただし普通の意味の学歴が関係する職業は、
全職業の一部だし、花形職業は学歴不問で
あったり(スポーツ・芸能・ファッション)、学歴
は要するがさらに驚異的な競争率であったり
する(マスコミ産業等)
• 「職業-学歴-再生産」の軸が社会を大きく
規定するが、それを外すと何が残るか、そこ
に自明性を越えた眼を向けたい。