本日の内容(11/13) • 第2回レポート課題について • ようやく準備は整ったのですが、ドキュメントが まだ未整備。改めて出題し直します。 • 音楽情報科学について(導入) • 関連文献については授業ページの「関連資料・ 文献」の bit 別冊記事などを参照。 1 音楽情報処理(音楽情報科学) • 音楽を情報として扱い、コンピュータなどによって処理す る研究の全般を言う。 • 処理の方向 • 「作る側」(音響合成、作曲、編曲、演奏) • 「聞く側」(聴取、採譜、分析、検索) • 対象とするデータ • 音響、記号表現、その他 • 処理の形態 • リアルタイム、逐次的、全参照的 • 使用できるデータ 2 *情報・処理の流れによる分類 • 「聴く側」 情動、感動 音楽情報 分析、理解、 解釈、記憶 相互関係 • 「作る側」 イメージ、解釈 楽譜情報 音楽情報 (作曲、演奏等) 3 研究事例紹介(1)(敬称略) • 片寄晴弘(関西学院大): ビデオ(約10分) 「IT が拓く音楽の世界~感性情報処理の最前線」 • 音楽情報科学・感性情報処理の全般的紹介 • (片寄研の Web ページからストリーム表示可能) 4 基礎・共通事項(研究のインフラ?) • • • • • 音楽データ表現形式 音楽記述言語 音楽データ通信プロトコル(MIDI もその一種) 音楽データベース、音楽情報検索 各種のツール、サポートシステム • 再生・録音システム • ネットワーク • 対人インタフェース • 統合型音楽システム(DTM 等) • マルチメディア対応、音楽データの可視化等 5 *「聴く側」 • 音響信号解析 ・音符同定 ・音源識別 ・声部分離 • 拍節認識 ・調性認識 • 自動採譜 ・(楽譜認識) ↑ まで 楽譜レベル • 構造分析・楽曲解釈 ・グループ化 ・旋律分析 ・和声解析 ・階層的構造 ・類似性の照合・検索 ↓ から • 感性情報処理 ・情動、 好み、 芸術性 6 *「作る側」 • 自動演奏 • 自動伴奏・合奏 • 即興演奏(ジャムセッション等) • 楽譜の有無、リアルタイム応答 • 自動作曲 • 「創造性」、ランダム生成、テンプレート(タネ) • 自動編曲 7 ( 相 互 の 関 連 ・ 依 存 性 が 高 い ) 8 *「楽譜レベル」 • 楽譜まで: 楽譜に記される情報の抽出 • 音符情報 • 調、拍節(拍、小節、拍子) • その他 • 楽譜が規範となる。 →評価が明確 *人間は「楽譜レベル」を認識しているか? • 楽譜から: より「高次」の音楽構造 • 表層では見えない: 「理論」の世界 音楽理論、認知理論、... *「行き止まり」(消費型)の認知 9 *処理の形態 • 時間的制約 • リアルタイム処理 • 逐次的(順次的)処理 • 時間制約なし • 使用できるデータ • 進行時点までのデータのみ • 一部は進行時点までのみ(演奏情報等) • すべて利用可能 10 *処理の形態(続) • リアルタイム処理 • 逐次型(順次的)処理 • 認知モデル • 局所的解析 • 楽曲分析(大域的) • 自動演奏、(自動作曲) 制 約 → • 全参照型処理(無制約) ← • 自動伴奏・合奏 • リアルタイム解析 • 他のメディアとの同期 厳 緩 *扱う対象、概念自体が変わってくる。11 *処理の形態(続) • リアルタイム処理の場合: • 一定時間内に結果を返さなければいけない。 • 平均的には速くても、最悪の場合が予測不能 な処理は使いにくい。 • どの時点で打ち切っても何らかの結果を返せ る必要がある。 12 *処理の形態(続) • 逐次型処理の場合: • 不確実・不完全な情報のもとで判断しなけれ ばならない。 • 予測的な処理が必要。 • 以前の結果を修正・変更しなければならない 場合がある。 • 可能な候補を複数保持してそこから最善のも のを選択する方式などがとられる。 13 *処理の形態(続) • 全参照型処理の場合: • 全体を見回せる分、精度の高い結果が得られ る(はず)。 • 統計的手法などが(も)使える。 • 全体を見るまで結果が出せない。 ⇒ 認知的観点からは問題 14 *「聴く側」 • 音響信号解析 ・音符同定 ・音源識別 ・声部分離 • 拍節認識 ・調性認識 • 自動採譜 ・(楽譜認識) • 構造分析・楽曲解釈 ・グループ化 ・旋律分析 ・和声解析 ・階層的構造 ・類似性の照合・検索 • 感性情報処理 ・情動、 好み、 芸術性 15 拍節認識・調性認識 • 直接的には、また採譜(楽譜作成)のためには: 音部記号 調号 小節線 拍子記号 • しかし曲の分析・理解の観点からはもっと複雑 16 原体験から • その昔、パソコン(N-88 Basic の MML?)で曲デー タの打ち込みをやっていたところ、 • 全然聞いたことがないメロディ!? 音列 グループ化(拍節・調性) 17 原体験から(2) • 音に表情(アゴーギグ・アクセント)をつけてみる。 • 原曲 - ハイドン:交響曲第94番ト長調「驚愕」 第1楽章第1主題 18 原体験から(2) • 音に表情(アゴーギグ・アクセント)をつけてみる。 • 原曲 - ハイドン:交響曲第94番ト長調「驚愕」 第1楽章第1主題 19 何が問題か • • • • • なぜ ¾ 拍子のほうに聞こえたのか なぜ「聞き覚えがない」と思ったのか なぜ表情付けにより聞こえが変わるか 最初のように聞こえなくなるのはなぜか 2つはどのように記憶されるのか、 相互に行き来は可能か • そもそも普通の状況でこのような問題があること に気づくか 20 なぜわかりにくいか • ¾ 拍子のほうが自然なグルーピング • 6/8 拍子: • アウフタクト(アップビート:強拍が中途にある) • 8分音符の4音下行を途中で切る • 調性的に不安定 • 繰り返しのパターンはどちらも同じ • 伴奏、先行する序奏の影響 21 「自然なグルーピング」 • • • 上行・跳躍進行 下行・順次進行・8分音符 同一パターンの反復 ⇒ 22 表情付けがあると: • 音の相対的な重要度が変化する? 23 調性感が不安定 • ドレミ唱法で「ミーラソファミ レーソファミレ」 • もっと簡単なケースに比べて調性感がつかみにく い。 24 *「聴く側」 • 音響信号解析 ・音符同定 ・音源識別 ・声部分離 • 拍節認識 ・調性認識 • 自動採譜 ・(楽譜認識) • 構造分析・楽曲解釈 ・グループ化 ・旋律分析 ・和声解析 ・階層的構造 ・類似性の照合・検索 • 感性情報処理 ・情動、 好み、 芸術性 25 拍節認識 • 何をするのか? • 音長の量子化 音の時間的な長さを「音価」で表す。 • 拍・小節などの区切りと階層的なまとまりの認識 ⇒ 拍節階層 cf. リズム認識:各音のリズムパターンの認識 • 時間(時間的な枠構造)の認識 26 音長の量子化 (ビートトラッキング: beat-tracking) • 実演奏では、各音は楽譜上の長さ(音価)の通り には演奏されず、微妙な長短がつけられる。 agogics: 演奏表現としての音符の伸縮 • 音長の量子化: 音長を簡単な整数比で表す。 • ビートトラッキング: 音楽を構成する拍(ビート)、 小節などの単位の認識 • cf. 後藤真孝:「拍節認識(ビートトラッキング)」、 bit 別冊「コンピュータと音楽の世界」、3.3 節 27 拍節階層の認識 • 音価情報は所与として、その上位の拍節階層の 認識 • 手がかりは? • 音長の頻度分布 (全参照型) • 音長の進行パターン • 音高の進行パターン(順次/跳躍、順行/逆行) • 各種のアクセント、アゴーギグ • グルーピング • 繰り返し、類似パターンの照合 28 29 30 拍節階層の認識(続) • やり方は? • 全参照型、逐次型、リアルタイム • 手がかりが多様(多次元的): ⇒ 協調的・競合的処理 • 何ができるか? • 簡単なものは簡単 • ..だが量子化・拍節化とも、難しい点も多い。 • 大きな問題:限定された候補からの選択。 「2等分・3等分の原理」など。 31 2等分・3等分の原理 • 時間長は、2ないし3等分(2ないし3倍)の長さで 階層的に構成される。 • 3/4 と 6/8 32 Longuet-Higgins & Lee のアルゴリズム • 音価情報だけを元に、逐次的に拍節階層を認識 していくアルゴリズム • 基本演算 • conflate • stretch • update • (longtone) 33 34 実行例 35 アルゴリズムの問題点 • 等拍リズムに対応できない。 その他、拍情報だけでは対処できないケースは 多数ある。 • 2分割優先 (conflate): 3分割は副次的にしか得 られない。 • 人間にとって「顕著な(salient)」レベルの拍構造を 特定できない。 • Agogic 付きの実演奏情報への応用が困難 36 *「聴く側」 • 音響信号解析 ・音符同定 ・音源識別 ・声部分離 • 拍節認識 ・調性認識 • 自動採譜 ・(楽譜認識) • 構造分析・楽曲解釈 ・グループ化 ・旋律分析 ・和声解析 ・階層的構造 ・類似性の照合・検索 • 感性情報処理 ・情動、 好み、 芸術性 37 *調性認識 • 何をするのか? • 調(旋法、主音等々)の決定 • 各音への調的な機能の付与 ...だけ? • 調感(調性感):音楽認知の中核的問題 • 大域調、局所調 →転調 ⇔移調 • 協和性 • 進行(プロセス)と終止 (阿部他:終止音導出) 38 調性認識 • 調性感が得にくい曲 • バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻 第24曲フーガ • 調性は曲認識にどこまで関係する? • アメリカ国歌(?) • 君が代バージョン 39 *調性認識の手がかり • • • • • • • 特定位置の音高、音程 カデンツなどの和声パターン (循環的) 音高の頻度分布 (Krumhansl: Tonal Hierarchy) (音長、拍節中の位置などによる重みづけ) 音程の頻度分布 音程のパターン (rare interval) ... 40 *調性認識の手法 • やり方、問題点などの大枠は拍節認識の 場合と同じ。 • ただしこちらのほうが多様性が高く、複雑。 • 「限定された候補からの選択」はやはり問題(長短 24の調)。 • 調の競合、曖昧性、... 41 統計的な手法 • 音高頻度分布 (Krumhansl, Knopoff & Hutchinson, Longuet-Higgins & Steedman, etc.) • 音程頻度分布・「特異音程」 (Butler & Brown) • より複雑な関係性(Connectionist Model など) • 基本は全参照型だが、曲データに順次適用して いくことで、逐次的な処理も可能。 42 Krumhansl: Tonal Hierarchy 43 Krumhansl: Tonal Hierarchy デモ 44 30 25 20 平井 槙原 桜井 長調 15 10 5 0 C C# D D# E F F# G G# A A# B 45 Tonal Pitch Space (音高関係の幾何的表現) 46 特定位置の音高 • 曲の最後の音・和音 • 最後の和音は主和音(ドミソ) • 旋律の最後の音は主音(ド)、ないし主和音の構成音 • 曲の最初の音・和音・音程 • 最初の和音は主和音 • 最初の音は主音、ないし属音(ソ)、ないし第3音(ミ) • 最初の音程が5度ならソド、... 47 *自動採譜 • 「楽譜まで」の処理の総合 • 実用的価値が高い • 楽譜(五線譜)印刷は(実用的には)完成の域に 近い • 精度を上げるには高度の音楽的知識・ 処理が必要 • 楽譜はどの程度規範になっているか 48
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