米国における大学国際化評価 ーAMERICAN COUNCIL ON EDUCATION (ACE)の取組からー 平成24年度東京国際交流館国際シンポジウム 2013年3月18日 野田文香(大学評価・学位授与機構研究開発部) 国際化に関する米国政府の主な政策動向 連邦政府 国家防衛教育法(National Defense Education Act) 1961年 高等教育法タイトル6条項・フルブライトヘイズプログラムの 設立 2000年 クリントン政権:国際教育政策に関する覚書に署名するが実現化 に至らず 2001年 ブッシュ政権:初等中等教育改革を重視し、高等教育の国際化 政策は進まず 2009年 オバマ政権(第1期):“100,000 Strong Initiative” “100,000 Strong in the Americas efforts” 留学生10万人計画で中国・南米における 国際交流の促進 2012年 オバマ政権(第2期): 連邦教育省が国際戦略 “Succeeding Globally Through International Education and Engagement” を発表 1958年 州政府 2012年時点において23の州で高等教育を中心とした国際教育推進に関する決議 が可決(NAFSA, 2012) 2 American Council on Education による大学国際化評価支援 ”Comprehensive Internationalization”を目指して 3 INTERNATIONALIZING THE CAMPUS: A USER’S GUIDE (2003) 国際化担当の大学教職員を対象にしたガイドライン: 大学国際化の戦略計画および自己点検の必要性を提唱 1990年代半ばに欧州で開発された 国際化の自己点検ツール 「IQRP(Internationalization Quality Review Process)」を参考 国際化自己点検要素 (Elements of an Internationalization Review) 1 国際化目標の明文化 国際化は、機関のミッション・目標・展望にどの程度不可欠なものと捉えられているか。 2 国際化に対応できる環境 地域社会や州、またはより大きな文脈での環境が国際化推進の現況にどのような影響を与えているか。環境 が今後の国際化の動向にどのようなインパクトを与えるのか。 3 戦略 目標達成を成し遂げる明確な戦略がどの程度あるか。 4 体制・方針・実践 機関の体制や方針、実践、資源が機関の目標にどの程度一貫しているか。どれが国際化を促進しているのか。 どの要素が国際化の妨げとなっているか。 5 カリキュラム・ 共同カリキュラム 機関の教育にとって、国際教育がどの程度不可欠であるか。カリキュラムや共同カリキュラムのどの要素が国際 教育を推進しているか。学生のタイプにより参加率は異なるのか。 6 海外留学・ 海外インターンシップ 海外留学に関する機会はどのようなものがあるか。過去5 ~10 年間における海外留学・研修プログラムの学 生参加の動向はどうか。 7 海外機関との連携 教育、研究、サービスラーニング、共同開発の分野に関して海外諸機関のキャンパスとの連携はあるか。それら はどれ程うまく機能しているか。 8 キャンパス文化 国際化がどの程度、教育機関の文化の一部になっているか。それを示す根拠はあるか。 9 個々の諸活動間の 相乗効果や相互連携 キャンパスにおける国際化の諸要素間での相乗効果はどの程度あるか。どのようなコミュニケーション手段がある のか。それはどれ程うまく機能しているのか。 10 結論と提言 現行の国際化推進活動の強みや改善点は何か。どのような機会が存在しているか。今後の国際化推進の妨 げとなるものは何か。この評価から導ける最も重要な結論は何か。 11 国際化計画 4 翌年ないし今後3~5 年以内の機関の優先事項を考えた際にこの評価過程にはどのような示唆があるか。 MAPPING INTERNATIONALIZATION ON U.S. CAMPUSES (2003) マッピング調査:大学国際化の現況を把握する マッピング調査(2001年度)の項目概要 学生調査 国際化に対する姿勢 教員調査 機関類型別 ①研究大学(144 ) ②総合大学(233 ) ③リベラルアーツ(187) ④コミュニティカレッジ(188) 機関調査 国際化に対する姿勢 機関のコミットメント(方針や体制) 国際化に対する機関の 支援体制への見解 財源 海外渡航・留学経験 海外渡航経験 海外プログラム 外国語運用能力 外国語運用能力 外国語履修の必修状況・授業の提供 国際的な授業の履修状況 学内における国際活動への 参加状況 国際的な授業の履修必修状況・授業の 提供 学内における国際活動への 参加状況 国際的な課外活動 5 MAPPING INTERNATIONALIZATION ON U.S. CAMPUSES (2008) マッピング調査(2006年度)の領域と項目例【類型別機関調査】 1 機関の支援 国際化のコミットメントの明示、組織体制、人員、外部資金 履修の必修状況、 2 プログラム、課外活動 外国語の授業の提供・履修必修状況、国際的/グローバル な授業の履修必修状況、海外研修、テクノロジーの活用、 ジョイントディグリー、キャンパス活動 3 教員に関する指針や機会 教員の機会に対する財政支援、昇進・テニュア・採用にかか わる基準 4 海外留学生 在籍数、海外留学生募集のターゲットや戦略、財政支援、 プログラムや支援サービス 6 MAPPING INTERNATIONALIZATION ON U.S. CAMPUSES (2012) マッピング調査(2011年度)の領域と項目例【類型別機関調査】 1 機関のコミットメント ミッションステイトメント、戦略計画、形式的評価機能(アクレ ディテーションとの連動等)、学習成果の設定や評価 2 組織体制や人員 体制や人員に関する報告、オフィスの配置 カリキュラム 3 共同カリキュラム 学習成果 (国際問題に関する)一般教育や外国語の履修必修状 況、共同カリキュラム活動やプログラム、学生の学習成果 4 教員に関する指針や実践 雇用指針、テニュアや昇進の指針、ファカルティ・ディベロップメ ントの機会 5 学生モビリティ 留学プログラム、海外留学生の募集や支援 6 連携やパートナーシップ ジョイントあるいはデュアル/ダブルディグリープログラム、 海外分校、 オフショアプログラム 進捗状況や動向を把握し、国際化の優先事項を確認 7 MEASURING INTERNATIONALIZATION(2005) マッピング調査結果に基づいた指標開発・機関類型別に大学の国際化を評価 国際化指標 (Internationalization Index) 内容例 1 国際化目標の明文化 大学の設立理念、中長期計画、入学案内、留学案内資料などの文書 において、国際化の目標や政策を明文化しているか。 2 教育面 (学士課程カリキュラム) 外国語を入学・卒業要件にしているか。外国語履修、国際要素を含んだ 一般教育を必修化しているか。留学、海外インターンシップを単位化して いるか。 3 組織的インフラ 人的資源(国際センター職員、国際化関連委員会などの設置)および 物的資源(設備、事務所など)が充実しているか。E メール、ニュースレ ター、ホームページ等のIT 基盤のコミュニケーションも含む。 4 外部資金 国際化推進を目的とした外部資金-1) 連邦政府資金 2) 州政府資 金 3) 民間資金(財団、民間企業、卒業生による寄付金) 4) その他 の財源―を確保しているか。 5 教員支援 教員の国際交流、カリキュラムを国際化するためのワークショップなど教員に 対する研修、ファカルティ・ディベロップメント対策があるか。 6 海外留学生と 学生プログラム 大学内外の学生向け国際活動、海外留学生の在籍数、留学生受け入 れ対策はどうか。 8 INTERNATIONALIZATION LABORATORY(2003~) -大学と連携した実践的取組― 目的:大学機関同士(ピア)でラーニングコミュニティを形成し、16~20ヶ月 にわたり戦略計画策定や成果検証に向けて相互学習・支援を行う。 参加数:68機関(2003年~) 特徴:① 専門家のコンサルテーション ② 経験共有 (年3回のピア機関の会合) ③ 国際化プロセスをカスタマイズ化 活動の流れ ①ACEスタッフによる 機関訪問支援 機関の自己評価書作成の支援。執行部や主要ステークホルダーとの面 談を通し、目標や課題を明確にする(学習成果目標の設定)。 ②機関による自己評価 各機関が学内リーダーシップチームを形成。現在の国際化の状況や活動 を評価し、戦略計画を立て、自己評価書を作成する。 ③ACEスタッフによる 定期的コンサルテーション 自己評価書作成に際し、電話やメールで機関の相談を受ける。 ④ピアレビュー訪問調査 自己評価書の完成後、ACEスタッフと外部委員による機関訪問。学 長、執行部、理事会、教職員、学生との面談。 ⑤訪問調査団(ピア)による 最終報告書作成 国際化の現況分析、今後の国際化戦略への提言。 9 A GUIDE TO INTERNATIONALIZATION FOR CHIEF ACADEMIC OFFICERS(2008) -自己点検とリーダーシップの育成チーフアカデミックオフィサー(CAO)を対象としたガイドライン 1 国際化自己点検チェックリスト 機関のコミットメント(ミッション、目標、ビジョン) 2 国際化に対する機関の環境整備 3 国際化活動に影響を及ぼす体制、方針、実践 4 期待される学習成果 5 カリキュラム・共同カリキュラム 6 海外教育(留学・フィールドワーク・インターンシップ・サービスラーニング) 7 教職員の知識・経験・関心 8 学生の知識・経験・関心 9 海外機関との連携 10 国際化評価に「学習成果」を強調するメリット 機関内の 共通意識の構築 アクレディテー ションやステーク ホルダーに対す る意義の表示 限られた資源 の有効活用 11 出典:Hill, B., & Green, M. (2008). A guide to internationalization for chief academic officers. 大学評価・学位授与機構(NIAD-UE) による国際化評価の取組 選択評価事項C「教育の国際化の状況」 平成25年度から導入 12 大学機関別選択評価 選択評価事項 C 「教育の国際化の状況」 概要 1. 目的 教育の国際化に向けた活動に焦点を絞り評価を行うことにより、国際的な教育活動の質の一層の向 上を図るとともに、教育の国際化の局面において個性・特色を発揮している大学を支援することを目的と し、実施します。 2. 評価基準・観点の構成 ○評価基準 C-1 大学の目的に照らして、教育の国際化に向けた活動が適切に行われ、成果を上げていること。 評価に当たっては、教育の国際化に向けた活動の状況を、「国際的な教育環境の構築」、「外国 人留学生の受入」、「国内学生の海外派遣」の3つの視点から以下の「基本的な観点」に基づ き分析・判断。 Cー1ー① 大学の教育の国際化の目的に照らして、目的を達成するためにふさわしい計画や具体的方針が 定められているか。また、これらの目的と計画が広く公表されているか。 Cー1ー② 計画に基づいた活動が適切に実施されているか。 Cー1ー③ 活動の実績及び学生の満足度等から判断して、活動の成果が上がっているか。 Cー1ー④ 改善のための取組が行われているか。 3. 評価結果の表示 評価報告書に以下の2つの評価結果を表示。 ① 目的の達成状況の評価(4段階) ② 3つの視点ごとの水準評価(4段階) 大学機関別選択評価についての説明サイト http://www.niad.ac.jp/n_hyouka/daigaku/1178444_1137.html ACEとNIAD-UEの国際化評価に かかわる取組の特徴 ACE NIAD-UE 組織形態 大学メンバーシップ制による非政府組織 認証評価機関および独立行政法人 国際化評価のミッション 大学の包括的国際化の戦略計画や評 価を支援 教育の国際化における大学の質向 上と個性・特色を支援 国際化評価指標の設計経緯 欧州の国際化指標の参照および全米 マッピングなど現況調査による指標開発 先行調査データの参照および全国ア ンケート調査による指標開発 国際化評価の重点対象 学士課程のラーニング (学習成果を強調) 教育(学部/研究科)の国際化に向 けた活動(質を伴った成果) 対象大学の機関類型 研究大学・総合大学・リベラルアーツ・ コミュニティカレッジ・専門(単科)大学 国際化評価の着目点 達成状況 達成状況+水準(段階判定) 評価(支援)方法 自己評価+ピアレビュー、コンサルテー ションを伴った支援機能、大学間の相互 学習・経験共有(独自にベンチマーキン グを進める大学もある) 自己評価+ピアレビュー 評価に関わるリーダーシップ戦略 学長やチーフアカデミックオフィサーなどの リーダーシップ育成 大学にとっての評価の目的と インセンティブ 自己改善・向上 + アカウンタビリティ ブランド力、国内・国際競争力 アクレディテーションとの連動 ? 自己改善・向上 + アカウンタビリティ ブランド力、国内・国際競争力 他評価へのエビデンスとして活用 ? 14
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