トヨタを中心に

日本の自動車産業の現状と課題
–トヨタを中心に野村ゼミ
奥村史哉
鎌家大輔
清水大輝
水口裕太
概要と動機
 トヨタ最高益のニュースを見て経済に
どのような影響を与えているのか興味
を持った。
 近年のイベント、国内、国外との比較
を通して今後のトヨタについて発表し
ていく。
もくじ
1.
2.
3.
4.
5.
近年のイベント、その影響
国内3トップ比較
トヨタとフォルクスワーゲン比較
トヨタの利益を上げるための活動と今後
まとめ
近年のイベント、その影響
トヨタ 近年のイベント
リーマンショック


2008年9月15日に、アメリカ合衆国の投資銀行である
リーマン・ブラザーズが破綻したことに端を発して、続
発的に世界的金融危機が発生した事象を総括的に呼ぶも
の。
リーマンショックを受けて、世界の景気が急激に悪化し
たため、世界中で自動車の販売台数が急激に落ち込んだ。
また、急速な円高が進んだため、トヨタ自動車の想定
レートを大きく上回っていたことも、赤字転落の大きな
理由。
-
参照:トヨタ株式会社ホームページ
北米でのトヨタ・バッシング



2009年から2010年にかけてトヨタ自動車により北米
や日本などで行われた大規模なリコール発端とする。
トヨタはビラー弁護士の訴訟をはじめ、138件の集団
訴訟、事故の遺族など96件の民事訴訟の他に、カリ
フォルニア州オレンジ郡検事局からも起訴され、トヨ
タ社は米国議会での公聴会での情報提供を要請された。
事故の原因調査はアメリカ合衆国運輸省が主導した。
このような一連の騒動は、「トヨタ戦争」とも呼ばれ
た。
東日本大震災
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖
地震とそれに伴って発生した津波、およびその
後の余震により引き起こされた大規模地震災害
である。
 震災後、サプライチェーンの分断により自動車
メーカーの国内工場は軒並み操業停止に追い込
まれた。
 その結果、3月の国内生産台数は、トヨタで前
年同月比62・7%減と金融危機を上回る落ち
込みとなった。
6年ぶり最高益
 2014年3月期には6年ぶりの最高益に
なっているが原因は・・・?
 2012年のアベノミクスによる円安が
影響か?
円安は関係なし?


確かに2012年3月期~のトヨタの営業利益
は上がっているがこれは同社のコスト削減
策によるものである。
アベノミクスによる円安だけに支えられた
ものではない
国内トップ3比較
(トヨタ・日産・ホンダ)
新車販売台数(2014年)
登録車
軽自動車
参照:日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会
軽自動車シェア
スズキ
ダイハツ
ホンダ
日産
三菱
マツダ
スバル
トヨタ
その他
参照:全国軽自動車協会連合会
2014年登録車台数から割り出
した各企業のシェア
トヨタ(44.9%)
ホンダ(13.6%)
0.10%
0.30%
1.30%
日産(13%)
1.30%
マツダ(5.1%)
1.70% 1.40%
8.80%
2.30%
スバル(3.8%)
スズキ(2.4%)
2.40%
44.90%
3.80%
いすゞ(2.3%)
日野(1.7%)
5.10%
三菱(1.4%)
レクサス(1.3%)
三菱ふそう(1.3%)
13.00%
13.60%
UDトラックス(0.3%)
ダイハツ(0.1%)
その他(10.6%)
参照:MARKLINES 自動車産業ポータル
2014年新車乗用車販売ランキング
順
位
車種名
ブランド
順
位
車種名
ブラン
ド
1
アクア
トヨタ
16
デミオ
マツダ
2
フィット
ホンダ
17
インプレッサ
スバル
3
プリウス
トヨタ
18
ステップワゴン
ホンダ
4
カローラ
トヨタ
19
アクセラ
マツダ
5
ヴォクシー
トヨタ
20
スイフト
スズキ
6
ノート
日産
21
スペイド
トヨタ
7
ヴェゼル
ホンダ
22
ヴェルファイア
トヨタ
8
ヴィッツ
トヨタ
23
ソリオ
スズキ
9
セレナ
日産
24
オデッセイ
ホンダ
10
ノア
トヨタ
25
レヴォーグ
スバル
11
ハリアー
トヨタ
26
CX-5
マツダ
12
フリード
ホンダ
27
ポルテ
トヨタ
13
エクストレイル
日産
28
フォレスター
スバル
14
パッソ
トヨタ
29
アルファード
トヨタ
15
クラウン
トヨタ
30
エスティマ
トヨタ
参照:日本自動車販売協会連合会
トヨタ製自動車は30位以内に14車
がランクイン!
トヨタ14車、スズキ2車、スバル3車、
ホンダ5車、マツダ3車、日産3車
と約半数がトヨタ製
3社の売上高と営業利益(平成26
年3月決算)
売上高
営業利益
単位:十億円
単位:十億円
30000
3000
27235
2750
25000
2500
20000
2000
15000
11375
9723
10000
1500
1000
589
5000
500
231
0
0
トヨタ
日産
ホンダ
トヨタ
日産
ホンダ
参照:トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト,Hondaホームページ,日産自動車ホームページ
さらに営業利益の比率をみてみると・・・
日産約5%、ホンダ約2%
に対して
トヨタは約10%となっている
なぜ利益率の差が大きくでているかは後に
説明する
19
国内・世界販売台数(2014年度)
単位:万台
250
国内販売台数
単位:万台
1000
215
200
800
150
600
世界販売台数
897
531
436
100
62
76
400
50
200
0
0
トヨタ
日産
ホンダ
トヨタ
日産
ホンダ
参照:トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト,Hondaホームページ,日産自動車ホームページ
地域別販売構成(2014年度)
トヨタ
日産
ホンダ
0%
10%
20%
30%
日本
40%
北米
50%
アジア
60%
70%
ヨーロッパ
80%
90%
100%
その他
参照:トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト,Hondaホームページ,日産自動車ホームページ
シェア、売上高、販売台数な
ど、国内自動車企業の中で
も、トヨタが群を抜いてい
る。
トヨタ自動車・
フォルクスワーゲン比較
世界自動車販売台数
単位:万台
2014/4~2015/3
1018
1017
トヨタ
VW
自動車販売台数比較

2014年4月~2015年3月の世界自動車販売台数は、ト
ヨタが1016万8000台、VWは1018万4000台でVW
がトヨタを僅差でかわし、初のトップに立った。

しかし2015年1~9月の世界販売台数はトヨタが743
万台とVWの715万台を28万台上回った

後程説明するVWによる「自滅」により、トヨタが4
年連続で世界トップの座を維持する可能性が高まった
地域別販売台数
単位:万台
450
394.5
400
367.5
350
300
250
258.6
231.9
トヨタ
VW
200
150
103.5
50
79.5
83.9 89.3
100
51.7
10.4
0
日本
北米
欧州
中国
中南米
参照:http://ikikuru.com/car-life/carworldshare2014/
地域別販売台数
 トヨタとVWでは、それぞれが数を稼ぐ地域は
大きく異なる。
 右のグラフを見ると、どちらかが得意とする地
域は、もう一方は不得意とする関係にあること
がうかがえる。
地域別販売台数構成
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
トヨタ
VW
10%
5%
0%
参照:http://ikikuru.com/car-life/carworldshare2014/
地域別販売台数構成
 両社の世界自動車販売台数の内訳を見ると、ト
ヨタは日本・東南アジア・北米が多く、一方
VWは、欧州と中国だけで全体の7割以上を占め
ている。正面からぶつかり合う市場がないこと
がわかる。
売上高・営業利益
単位:千億
円
単位:千億円
売上高
284.19
300
30
266.85
25.51
250
25
200
20
150
15
100
10
50
5
0
0
トヨタ
営業利益
VW
17.823
トヨタ
VW
参照:http://ikikuru.com/car-life/carworldshare2014/
売上高と営業利益



トヨタはコスト削減など地道な取り組みを続けて
きた結果が高い営業利益率につながっている。
一方、VWは売上高は高いが、売上の構成の半分以
上をアウディやポルシェといった高級車が稼いで
おり、全体的に営業利益率が低くなってしまって
いる。
トヨタの2014年の営業利益は2兆5510億円と、自
社ブランドの利益率が低く生産や開発コストが重
荷になっているVWを大きく上回っている。
フォルクスワーゲンの抱える問題



販売地域の偏りによるリスクが高い。
フォルクスワーゲンは、販売台数1018万台の
うち、3分の1以上にあたる367万台を、中国
で販売している。
中国はカントリーリスク(海外投融資などを行う場
合、その国の事情によって出資金・貸付金などが
回収不能になる危険度)が大きい。
フォルクスワーゲンの不正


本来の排ガス規制基準値の40倍も排気ガスの値が
オーバーしていたにも関わらず、その違反をごま
かすために、排ガス規制検査の時だけ排気ガスを
抑えるように稼働するソフトウェアを車内に搭載
して、あたかも基準値をクリアしているように見
せていたことが判明した。
不正対象車数は1100万台にも上る。
トヨタの利益を上げるための活
動と今後
自動車産業の競争激化
2014年世界販売台数ランキング
1位
トヨタ自動車グループ(日)
1023万台
2位
フォルクスワーゲングループ(独)
1014万台
3位
GMグループ(米)
992万台
4位
ルノー・日産グループ(仏・日)
847万台
5位
現代自動車グループ(韓)
771万台
6位
フォード(米)
632万台
7位 フィアット・クライスラー・オー
トモービルズ(伊・米)
461万台
8位
本田技研工業(日)
436万台
9位
プジョーシトロエングループ(仏)
294万台
10位
スズキ(日)
288万台
※数値は各メーカーHPより
トップ3社に見る自動車産業激戦化
世界TOP3社の世界販売台数推移

トヨタ、VW、GMの3社
は差が少なく4位以下を
大きく突き放している。
単位:万台
1100
1000
900
800

GMは2004年時点ではト
ヨタに100万台以上の差
をつけて首位にいたが、
2013年にVWに抜かれ、
トヨタは2007年以降1位
を維持している。
700
600
トヨタ
500
VW
400
GM
300
200
100
0
2004 2006 2008 2010 2012 2014
参照:トヨタ自動車株式会社公式企業サイト財務データ
Volkswagen Group Investor Relations
General Motors Investors Home
コストカット




トヨタは、毎年、約3000億円規模のコストカット
をしている。
一次サプライヤーに対して、年率約1%ずつの製造
原価を下げる要請。
車体重の軽量化による、一台あたりの材料費の抑
制。
生産性の上昇、部材変更など設計変更による原価
低減の実施。
技術開発
設備投資と研究開発費
(十億円)


燃費、安全性の改善。
トヨタが主要技術を独占
するハイブリッド車。
1600
1200
1200
725
経営悪化によらず促進さ
れた研究開発。
911
900
1001
853
800
579

780
730
807
642
600
707
400
300
0
0
2010
会計年度
2011
設備投資
2012
2013
2014
研究開発費
参照:トヨタ株式会社ホームページ
トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー
(1)商品力の向上
車の骨格を変えて低フード化・低重心化を図り、視界や運動性能を
高める。パワートレインも刷新する。
(2)グルーピング開発による効率化
中長期の商品ラインナップを決め、搭載ユニットやドラポジを
「アーキテクチャー」として定める。それに基づいてグルーピング開
発を行い、部品の共用化を進めて効率をアップする。
(3)ものづくり改革
仕入先、調達部門、生産技術部門、技術部門が一体となり、シンプ
ルで作りやすいユニットを実現する。
(4)グローバル標準への取り組み
トヨタ専用規格から他メーカーも採用しているグローバル標準規格
に対応する。
(5)TNGAと連動した調達戦略
車種、地域、時間をまたぎ、複数車種のユニットをまとめてグロー
バルに発注することで競争力を確保する。
新興国での販売拡大



2014年前期の世界販売台数は、1013万台と
初の1000万台の大台に乗る。
前回最高益の2008年に比べ北米や欧州の販売
が減少しているが、アジア・中南米・オセアニ
ア・アフリカ・中近東などで販売台数を伸ばす。
アジアを重要拠点とした現地化と、コンパクト
カーの積極的な投入。
世界最大の中国市場
 世界最大の自動車市場である中国は、2013
年には年間販売台数が2198万台に達し、世
界の新車販売の4分の1を占める。
 中国の経済成長の鈍化や上海株の急落など
市場に対して大きな影響を与える問題も起
こったが巨大な市場であることには変わり
ない。
中国市場において、ドイツが外資系企業で
最もシェアが大きい。
特にVWは、全体の売上高のうち約3
6%、利益の半分超を中国市場から稼ぐな
ど、過度な中国依存を招いており、中国経済
の失速で大打撃をうけた。
一方の日本自動車企業は、販売数の落ち込
みは起こらなかったが、販売価格は下げざる
を得なかった。




トヨタの2014年の中国市場での販売台数は103万
台、シェアとしては4%と存在感は大きくない。
トヨタは、今後10年以内、2020年代前半をめど
に、中国での販売台数を現状の2倍の200万台程度
に拡大させる考えでいる。
トヨタは、HV「プリウス」を現地生産している
が、基幹部品を日本から輸出し組み立てているた
めコストが高く、販売価格の高さなどから苦戦し
ている。
HV基幹部品の現地調達を進め、5割程度まで現地
化させ、コスト削減を加速させる構え。
まとめ
結論
~トヨタを中心に自動車産業を見た結果~




自動車産業は世界的に見ても大きな産業で、その
中でも日本の企業であるトヨタ国内・国外ともに
は大きなシェアを誇る。
さまざまな問題があり、ここ数年トヨタの業績は
芳しくなかったが、コストカットなどの企業戦略
で大きく挽回した。
日本の自動車は海外でも大きな結果を上げてお
り、世界でも通用するものである。
自動車産業は中国や新興国での市場開拓や市場拡大
など、今後のさらなる活躍が期待される。
ご清聴ありがとうございました