薬理学PBL 本態性高血圧症の治療薬について 生田由佳子、古賀明日香、為定由佳理、番匠里紗 本態性高血圧症 高血圧症とは収縮期血圧が140mmHg以上、または拡 張期血圧が90mmHg以上に保たれた状態。この状態が 続くと動脈硬化を起こし、脳血管障害、冠動脈疾患 のリスクが高まる。自覚症状が少ない。 なかでも本態性高血圧症とは遺伝的もしくは環 境的因子が強く原因を特定できないものをいう。こ れは高血圧症の約95%を占める。 高血圧治療の指針 生活習慣の改善 ●減量(肥満解消) ●食塩制限 ●規則的な運動 ●節酒 ●禁煙 効果不十 分な場合 ライフスタイルの修正を継続 初期選択薬;カルシウム拮抗薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、α遮断薬、β遮断薬 効果不十 分な場合 増量または多剤に変更または第二薬、第三薬追加 高血圧治療薬の降圧作用部位 中枢性交感神経抑制薬 - 血管拡張薬 ☆ACE阻害薬 ☆AT1受容体遮断薬 ☆Ca拮抗薬 ☆α1受容体遮断薬 脳 交感神経興奮 + +収縮 β1受容体 - β受容体遮断薬 拡張 + 収縮 心臓 - 平滑筋Ca2+チャネル AT1受容体 α受容体 + レニン→AGⅠ→AGⅡ →アルドステロン + 腎臓 - Na+貯留 利尿薬 Na+排泄 + 末梢血管 降圧薬治療① 合併症のない若年、中年者の場合 • ノルバスク錠(カルシウム拮抗薬) • ディオバン錠(ARB:アンジオテンシンⅡ受容 体拮抗薬) • ナトリックス錠(利尿薬) • テノーミン錠(β遮断薬) ノルバスク錠 (アムロジピンamlodipine、ジヒドロピリジン系DHP) ・作用:Ca拮抗薬。 心筋や平滑筋の細胞膜に 存在する膜電位依存型 L型Ca2+チャネルに結合し、 その機能を阻害。 末梢動脈血管の平滑筋を 弛緩させ、血管抵抗を下げる。 ・ゆっくりと持続的に作用する。 ・安全性が高い。 ノルバスク錠(アムロジピン amlodipine、ジヒドロピリジン系DHP) • 副作用:重篤なものは殆どない。急速な降圧 作用による交感神経系の賦活作用。ほてり、 めまい、ふらつきなど。但し、緩除に降圧作用 を発現させるアムロジピンは上記の副作用は 出にくい) • 禁忌:妊婦、妊娠している可能性のある婦人、 過敏症 ディオバン錠(バルサルタンvalsartan) • 作用:選択的AT1受容体ブロッカー(ARB)。AT1受容体を阻 害することでAGⅡを阻害し、血管拡張を引き起こす。ACE阻 害薬に比べより直接的な効果があり、またキニンの蓄積によ る空咳が起こらない。 ディオバン錠(バルサルタンvalsartan) • 副作用:だるさ、めまい、頭痛、稀に高カリウ ム血症など。 • 禁忌:妊婦、妊娠している可能性のある婦人、 過敏症、両側腎動脈狭窄 ナトリックス錠(インダパミドindapamide) • 作用:持続型非サイアザイド系降圧剤(非サイアザ イド系利尿薬)。遠位尿細管のNaイオン、Clイオン 共輸送体を阻害し、Naイオンの再吸収を抑制しNa イオン、水の排泄を増加させる。またKイオン、Clイ オンの排泄も促進させる。サイアザイド系に近い利 尿薬であり、作用機序もほぼ同じであるが、低カリ ウム血症の副作用が少ないとされる。 • 利尿薬投与時には、レニン・アンギオテンシン・アル ドステロン系(RAA系)が活性化しているので、RAA 系阻害薬との併用が有用である 。 サイアザイド系利尿薬 • 遠位尿細管近位部でのNa+/Cl-共輸送体を阻害→Na+再吸収 抑制 (Na+/Cl-共輸送体は、ループ利尿薬に感受性がない) • RAA系が活性化している状態では、多くのNa+が遠位尿細管 に到達し、K+との交換を刺激→遠位尿細管においてK+の排 泄を増加する • ループ利尿薬との相違点 ①作用時間が長い ②作用点が違う ③低濃度で利尿効果が高い(low-ceiling) ④腎不全時に、より反応性が弱い ナトリックス錠(インダパミドindapamide) • 適応:インダパミドは高血圧のみに適用がある(ほかのサイ アザイド系またはサイアザイド類似利尿薬は、浮腫にも適応 がある) • 副作用:低ナトリウム血症、低カリウム血症、皮膚粘膜眼症 候群、めまいなど • 禁忌:腎不全、過敏症、痛風、高尿酸、血症体液中のカリウ ム減少、体液中のナトリウム減少など テノーミン錠(アテノロールatenolol) • 作用:心臓選択性β遮断薬。 β1選択的β遮断薬である。内因性カテコールアミンによりβ受 容体刺激を阻害することで、心臓の収縮力低下、心拍数低 下により、心拍出量低下がおこり、収縮期血圧が下がる。降 圧作用を発揮する。また、腎臓におけるレニンの遊離も阻害 する。また労作性狭心症にも有効とされている。ISA(内因性 の交感神経刺激作用)が少なく、心拍出量の低下が継続し て降圧効果を示す。 • 非選択的β遮断薬に比して喘息患者に対してより安全である。 また、非選択的β遮断薬と異なり、insulin使用時の低血糖を 増強しない 。 テノーミン錠(アテノロールatenolol) • 副作用:起立性低血圧、呼吸困難、異型狭心症、気 管支喘息、末梢循環障害、低血糖が生じた場合の 徴候(頻脈など)をマスク(β1選択性のものはまし) • 禁忌:褐色細胞腫、過敏症、気管支喘息や慢性閉 塞性肺疾患を合併する患者、急性心不全の患者 本態性高血圧症 ②心不全を合併する場合 ラシックス錠 アルダクトンA錠 レニベース錠 ディオバン錠 ノルバスク錠 ラシックス錠(フロセミド) • 一般名:フロセミド(ループ利尿薬) • 作用機序 ヘンレのループでNa,K,Cl共輸送の再吸収 抑制し、血中Na,K,Cl濃度を下げる (循環血液量が低下することにより、血圧が 低下し、前負荷も減少する) ラシックス錠(フロセミド) • 禁忌 痛風、高尿酸血症、体液中のナトリウム・カリ ウムが明らかに減少している人など • 副作用 低カリウム血症、聴覚障害、ショック症状、 発熱、不整脈 アルダクトンA錠(スピロノラクトン) • 一般名:スピロノラクトン(K保持性利尿薬) • 作用機序 アルドステロン受容体拮抗作用により、集合管の Naと水の排泄を促進、K排泄を抑制 (血中Naは下がり、Kは上がる) アルダクトンA錠(スピロノラクトン) • 禁忌 痛風、高尿酸血症、高カリウム血症 • 副作用 高カリウム血症、女性化乳房、急性腎不全 レニベース錠(エナラプリルマレイン酸塩) • 一般名:エナラプリルマレイン酸塩( ACE阻害薬) • 作用機序 ACE阻害により、AngⅡの産生が阻害され、血管収 縮を抑制する。そして、血圧が低下し、後負荷も減 少する ブラジキニン分解を抑制することにより、ブラジキニ ンによる血管拡張作用が起こり、血圧低下し、後負 荷も減少する レニベース錠(エナラプリルマレイン酸塩) • 禁忌 妊娠、高カリウム血症、血管浮腫 • 副作用 急性腎不全、高カリウム血症、空咳(ブラジキニン蓄積によ るもの) ディオバン錠(バルサルタン) • 一般名:バルサルタン( AngⅡ受容体拮抗薬) • 作用機序 AngⅡ産生阻害により、血管収縮を抑制し、血圧が低下し、 後負荷も減少する • 禁忌 妊娠、高カリウム血症 • 副作用 血管浮腫、腎不全、高カリウム血症 ノルバスク錠(バルサルタン) • 一般名:アムロジピンベシル酸塩( Ca拮抗薬(DHP系)) • 作用機序 細胞内Ca濃度が下がることにより、 ①血管平滑筋が弛緩し、血圧低下し、後負荷が減 少 ②心筋収縮力が低下する • 禁忌 妊娠、房室ブロック • 副作用 肝機能障害、黄疸 ③糖尿病を合併する場合 糖尿病 糖尿病 • インスリンの量と作用の不足によっておこる糖質代謝異常. • 高血糖、糖尿、多飲、多尿、ケトーシス、アシドーシスなどの症 状を示す. Ⅰ型糖尿病 • 膵β細胞の破壊のため血中インスリンが絶対的に欠乏. • 自己免疫による膵島障害が主因で、発症は若年者に多い. • インスリン投与が有効. Ⅱ型糖尿病 • インスリン分泌低下(グルコース刺激に対する分泌障害)とイン スリン抵抗性(全身組織のインスリン感受性が低下)が主因 • 治療には経口血糖下降薬が用いられる 糖尿病合併高血圧 ガイドライン • 糖尿病合併高血圧の降圧 目標は130/80mmHg未満 とする。 • 糖尿病合併高血圧患者に おける降圧薬選択に際して は、糖・脂質代謝への影響 と合併症予防効果の両面 より,ACE阻害薬、ARBが第 一選択薬として推奨され、 血圧管理にCa拮抗薬、少 量のサイアザイド系利尿薬 が併用される。 日本高血圧学会高血圧治療GL作成委員会ガイドライン 注意の必要な降圧薬 • 利尿薬 • K+欠乏のためインスリンの分泌が低下 • 末梢での糖の代謝が低下 →耐糖能が悪くなる • β遮断薬 • 低血糖から回復する際のβ2受容体を介したグリコーゲン 分解を抑制 • 低血糖の症状である頻脈の発現がβ1受容体遮断でマス クされ、重症化をまねくおそれ どのような降圧薬が適切か • ACE阻害薬 – タナトリル錠 • アンギオテンシン受容体拮抗薬 – プロプレス錠 • 長時間持続型Caチャネル拮抗薬 – ヒポカカプセル、ムノバール錠 • α1受容体遮断薬 – カルデナリン錠 タナトリル錠(塩酸イミダプリル) • ACE阻害薬 • AngⅠからAngⅡへの変換酵素(ACE)を阻害 • 糖尿病合併高血圧における第一選択薬 • 糸球体高血圧を軽減するため、糖尿病性腎症の進 展を遅らせる。 糖尿病性腎症ではAngⅡがAT1受容体に作用し、輸出再 動脈を収縮させ、糸球体高血圧の状態である。ACE阻害 薬はこの作用を阻害し、輸出細動脈を拡張させて糸球体 高血圧を軽減する。 タナトリル錠(塩酸イミダプリル) • 副作用 空咳、血管浮腫、発疹、腎機能低下、高カリウム血症 • 禁忌 • • • • 両側性腎動脈狭窄のある患者 ACE阻害剤で血管神経性浮腫の既往歴がある者 妊婦および妊娠の可能性のあるとき コレステロール吸着療法(LDLアフェレーシス)を受け ている人 • AN69膜を用いた透析 プロプレス錠(カンデサルタン シレキセチル) • アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬 • AT1受容体を阻害することでAngⅡを阻害 • 糖尿病合併高血圧における第一選択薬 • ACE阻害薬と類似点が多い。しかし、キニンの蓄積 作用がないので咳の副作用は少ない。 • 糸球体高血圧を軽減するため、糖尿病性腎症の進 展を遅らせる。 プロプレス錠(カンデサルタン シレキセチル) • 副作用 • 血管浮腫、発疹、腎機能低下、高カリウム血症、肝機能 障害、横紋筋融解症 • ACE阻害薬にみられるキニンの蓄積作用がないので咳 の副作用は少ない。 • 禁忌 • 本剤過敏症既往歴がある者 • 妊婦または妊娠している可能性がある者 ヒポカカプセル(バルニジピン) ムノバール錠(フェロジピン) • 長時間持続型Ca拮抗薬 末梢動脈血管の平滑筋を弛緩させ、血管抵抗を下げ る。ゆっくりと持続的に作用する。 • 血糖、尿酸、脂質などに影響せず、年齢を問わ ず広く用いることができる。合併症の多い高齢 の人に適している。 • 主としてCYP3A4で代謝されるので、薬物相互 作用に注意。 ヒポカカプセル(バルニジピン) ムノバール錠(フェロジピン) • 副作用 頭痛、赤ら顔、動悸、歯肉肥厚、浮腫、心伝達障害、 熱感、除脈など • 禁忌 妊婦またはその可能性がある者 • 併用注意 CYP3A4を阻害するマクロライド系抗生物質、アゾール系抗 真菌薬、グレープフルーツジュース、フェニトイン、リファンピ シン、シメチジン、HIVプロテアーゼ阻害剤、ジゴキシン カルデナリン錠(メシル酸ドキサゾシン) • α1受容体遮断薬 末梢血管平滑筋のα1受容体を選択的に遮断すること により、末梢血管を拡張させて全末梢血管抵抗を減 少させ、血圧を下げる。 • 脂質や糖の代謝にもよい影響を与えるため、糖代 謝や脂質代謝異常のある場合に適している。 • 副作用 起立性低血圧、失神、意識消失、不整脈、脳血管障害 • 禁忌 • 本剤過敏症の患者
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