長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 3D-CAD/CAEの基礎 概 要 材料に外から力が作用すると応力が発生し、それに見合った変形が生じる。 変形が発生すると、材料に内力が発生し、内力は外力と釣り合い変形が 止まる。 この応力と変形(歪)の関係を本講座では復習する。 学習の内容 1.応力と歪 2.真っ直ぐな軸に外力が軸方向に作用する場合 3.真っ直ぐな梁の曲げ 4.軸のねじり 5.有限要素法の中身 6.塑性変形の開始 1 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 第1章 1:釣り合いの状態 力の釣り合いとモーメントの釣り合いを満たすことによる 1.力の分解と釣り合い 釣り合うとはその方向の力の合計がゼロ。 (力が働いていないのと同じ) 水平、垂直の両方とも釣り合う事により 水平にも、垂直にも動けない。 棒に方向が反対で、大きさが同じ力が作用してい る。(偶力によるモーメント) 力は釣り合っている。→位置(重心)は動かない。 モーメントは釣り合っていない。→まわる。 2 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 2.モーメントの釣り合い(O点回りに回転させようとする力の成分) O点回りのモーメント M rF 大きさ: (ベクトル) r ( F sin ) (r sin ) F 偶力モーメントが働く場合 O点回り Mo pf ( p c) f cf p O c=a+b b a f A C C点回り B f Mc af bf cf A点、B点でも同一の値。つまり剛体全体に同 一のモーメントを発生させる。 どの点も cf のモーメントで自転しようとする。 釣り合うためにはこれと反対のモーメントが必要。 3 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 3.外力と内力 棒を長手方向に左右に外力を作用させる。 すると左から作用させた力と右から作用させ た力で釣り合う。 仮に材料の仮想面で考えると、力は棒の内 部では同じ面の右向きの面には右向きの、左 向きで考えれば左向きの力が作用している。 このように面と直角に作用する力を軸力。 材料をはさみで切る時のような、仮想面 に面と平行な力が作用する力のかけ方 がある。このような力を剪断力という。 4 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 4.応力とひずみ ここから、考え方だけでなく、数値が導入されます。 4-1.垂直応力 σ(N/m2) 垂直応力:応力とは P/ A 面積当たりの力を示す。 つまり、単位面積当たりどの程度の力が作用するかで考える。 面に直角に作用し、正(負)のほうを向いた面に正(負)の力が加わると、 正の応力、 あるいは引張力を正の応力とする。 正(負)のほうを向いた面に負(正)の力が加わると、 負の応力、あるいは圧縮力を負の応力とする。 演習1: 60Kg の人が 1cm2の鉄の棒にぶら下がった。応力は? 1Kgf=9.8N. 5 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 4-2. 垂直歪 軸力を作用させると内力が発生し材料は伸 びる。(圧縮なら縮む) もとの長さが倍なら力が同一でも倍伸びる。 従って伸びの長さではなく、伸び量が元の長 さの何パーセントかで歪を表す。 垂直歪 x x 歪は軸力を倍にするとバネと同じく、倍伸びる。外力が倍でも断面積が倍な ら応力は同じ。 垂直応力を倍作用させると垂直歪も倍になる。つまり比例する。 その比例定数を E で示しヤング率(縦弾性係数)と言う。 これをフックの法則と言う。 F x E E A x 応力と歪で考えることにより、長さ(形 状)とか断面積(太さ)を考えることなく、 材料の種類だけ考慮すればよい。 6 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 4-3. ポアソン比 軸方向に引張力を作用させる。 軸方向は伸び、それと直角方向は縮む。 両歪の比をポアソン比と呼び 軸方向の歪(数値は正) l l0 x l0 直径方向の歪(数値負) y d d0 d0 y x 通常ポアソン比は、横歪の少ないガラスなどの0.2位から 体積変化しないゴムなどの0.5位であり、鉄などは約0.3程度である。 圧縮力の時も歪の符号が変わるだけで上の式は成立する。 7 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 4-4. 剪断応力と剪断歪 l 離れた面積 A に剪断力 P が作用している。 すると単位面積当たりの剪断力(剪断応力)は P A この力が働くことにより、四角であった 断面は λ だけ菱形に変形する。この 変形量 λ を l で割り単位長さ当たりの 変形量(剪断歪)を求める。 l ここで、変形量は小さいので と思って構わない。 tan l 今、γ と τ は比例し、その比例定数を 横弾性係数 G とする。 G EとGとνの間には以下の関係があることが後で分かる。 G E 2(1 ) 8 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 4-5. 応力歪線図 軟鋼と硬鋼を軸方向に引っ張った時の 応力歪線図を示す。 σP : 比例限界、σS : 降伏応力(軟鋼特有)、 σB : 引っ張り強さ、 σY : 0.2%耐力(0.2%の永久 歪が残る応力) E : ヤング率 降伏応力:σS または 引っ張り強さ:σB 0.2%耐力σY (MPa) (MPa) ヤング率:E (GPa) ポアソン比:ν (%) 軟鋼 200~210 0.3 200~240 350~450 硬鋼 200~210 0.3 260~380 450~550 Al合金 70~75 0.3~0.33 110~130 140~160 耐力より大きい応力が作用する場合、材料に塑性変形発生。 それを通常“壊れた”と言う。 9 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 4-6.許容応力と安全率 機械の設計を行うとき、変形や破壊は具材にどのような応力が働くかによる。 材料欠陥、応力集中、繰り返し荷重等により作用させうる荷重が決まる。 この荷重を許容応力と呼ぶ。これに対して設計基準強度(例えば引っ張り強度、 降伏応力、あるいは疲労限度など)が何倍になっているかを安全率Sで表す。 S=(たとえば引っ張り強さ)/(設計上材料に作用する最大応力) 演習2. E=210GPa, F=5000N, L=200mm, 直径10mm. 応力、歪、伸びλ を求めよ。 答え: σ=63.7MPa, ε=0.000303, λ=0.0606mm 10 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 5.応力と変形の取り扱い 左の様な外形のものに外力が作用する。 材料はAlで E=70GPa。 長さ全体の伸びを求める。 A1 D12 / 4 添字1での断面積は よって応力、歪、伸びは P 4P , 2 A1 D1 1 P 4P , 2 A2 D2 2 1 1 E 4P ED12 4Pl1 , 1 1l1 , 2 2l 2 ED12 同様、添字2の部分では 2 2 E 4P ED2 2 4Pl 2 ED2 2 よって、全体の伸びは 4P l1 l 2 4 6 10 3 1 2 2 2 E D1 D2 70 10 9 0.1 0.2 109 10 6 (m) 0.03 2 0.015 2 11 サンブナンの原理 上記計算では、サンブナンの原理が成立すると仮定して計算されている。 サンブナンの原理とは円形の断面は円形のままで、かつワーピング(平らだった面 が平らでなくなること)しない事を言う。 これは、太い部分と細い部分の結合部の様な所では。太い部分の中央部のみ が右に引っ張られ外周部より変位が大きく、厳密には平らではない。しかしこのよ うな現象は、結合部から少し左の部分では、面全体に同一の応力が作用し面の平 らが保たれる。と考えるのである。 これを、角のような応力が集中する、細かい 部分まで計算しようとした場合 有限要素法のようなものが有効。 12 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 積分を用い、慣れる。 長さ l 、断面 A の棒の下に質量 Mが吊るされている。 棒のヤング率 E, 密度 ρ, 重力加速度 g, として、棒に生じる 最大応力、および棒全体の伸びを求めよ。自重は無視で きない。 図のように座標 x をとる。xまでの棒の質量は ρAx. xにおける荷重と応力は P( x) ( M Ax ) g , ( x) P( x) M x g A A よって最大応力はxが最大の l で生じ、 M l g A max また、xにおいて、σ(x)の応力が作用し、dxの長さに対しdλだけ伸びるとする と、xでの歪は ( x) d , dx d ( x)dx ( x) E dx g M x dx E A 13 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 積分実行 この伸びをx=0からx=l まで足し合わせる。(積分する) g M gl M 1 d x dx l 0 0E A E A 2 l l と全体の伸びが求められる。 14 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 6.棒の伸びに関する不静定問題 既に示した左の問題を考える。 添字1,2両方の部分の応力と歪( l をか けると伸び)を求める。 A1 D12 / 4 添字1での断面積は よって応力、歪、伸びは 1 P 4P , A1 D12 P 4P , 同様、添字2の部分では 2 A2 2 D2 1 1 E 2 よって、全体の伸びは 1 2 4P E 4P ED12 2 E 1 1l1 , 4P ED2 2 l1 l2 D12 D 2 2 , 4Pl1 ED12 2 2l 2 4Pl 2 ED2 2 と各部の力の釣り合いから応力と歪が決まる。これを静定問題と言う。 15 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 これに対し、以下に示すような問題を不静定問題と言う。 左のような3本の棒でできていて、一本がヤング率が 異なる。これをらをまとめて荷重 P で引っ張る。各棒の 応力と伸びを求めよ。 今、棒を上から1,2,3と呼ぶ。各棒に作用する力を P1,P2,P3. P P1 P2 P3 外力と内力の釣り合い 内力を応力で 応力と歪の関係、 フックの法則 1 P1 ( D 2) 2 1 E1 , 4 P1 D 2 2 , 4P2 3 4 P3 D 2 -(2) 3 E1 1 -(3) D 2 2 E 2 , , -(1) ここで歪は3本の棒全てで同じという条件が適応されている。 このように力の釣り合いだけではその位置(この場合、棒)の力(応力)が決め られず、歪(曲げなら傾き角)などの条件を必要とする問題=不静定問題 歪が同じなら P1 D 2 4 E1 , P2 D 2 4 E 2 , P3 D 2 4 E1 P1 -(4) 16 長岡モノづくりアカデミー 3D-CAD/CAE コース ’15.9 これなら(1)式に入れ歪が求められる。 P D 2 4 (2 E1 E 2) , 歪が分かれば(4)式より軸力が分かる。 E1 P1 P3 P, 2 E1 E 2 応力は 断面積で割り 全体の伸びは 歪より 1 3 l 4P D 2 (2 E1 E 2) P2 4 E1P , 2 D (2 E1 E 2) -(5) E2 P 2 E1 E 2 2 4E 2 P D 2 (2 E1 E 2) 4 Pl D 2 (2 E1 E 2) と求められる。 17
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