日本物理学会 秋季大会 大阪市立大学杉本キャンパス 2005.9.12 オルソポジトロニウムの寿命測定 による束縛系QEDの実験的検証 東大素粒子センター(ICEPP) 片岡洋介 浅井祥仁、小林富雄 イントロダクション • 束縛系 – 高次輻射補正の扱いが難しく、未だ一般的な計算手 法が確立せず – 実験的な検証が必要 • オルソポジトロニウムの寿命測定 – 寿命が長く(約142ns)、直接測定が可能 – ハドロンのような強い力に伴う不定性がない – O(α2)の計算が実際に行われている term • 本実験の目的 – O(α2)の検証 tree level A (α/π) correction(ppm) 0.0 -23893.9 B α2ln(1/α) -87.3 C (α/π)2 240.2 現在の状況 (α2) • 東大、ミシガン大等により精密測定が 行われている • 90年代にオルソポジトロニウムの寿命 問題が解決 (o-Psの熱化過程に伴うsystematicなエラー) • 現在の実験精度は約200ppm – O(α)の補正(約2%)は十分に検証さ れた – O(α2)の補正(約240ppm)を検証する さらに精密な測定が必要 Tokyo groupのアプローチ • 物質との相互作用による対消滅(pick-off)の正確な取り扱いがカギ – 3γ崩壊 (λ3γ) e+線源 – Pick-off (λ(t)) ターゲット (ガス、シリカ) o-Ps生成 Δt o-Ps 物質(ターゲット) – 観測される崩壊率 γ γ γ γ γ 1. Ge検出器を用いてγ線のエネルギースペクトラムを測定し、 2. 3γの連続分布と511keVのピーク(pick-off)の比からλpick(t)/λ3γを測定 熱化過程を考慮した正確な測定が可能 (詳細は後述) この実験手法に基づく、さらに高精度な測定を行っている 今回の実験のセットアップ • 前回のセットアップの限界~統計誤差170ppm • 統計を増やすため抜本的な改善が必要(詳細は後述) – 線源を変更 – トリガーシステムを変更 – シンチレータを変更 統計10倍化を達成 真空容器 線源 トリガー用プラシン シリカエアロジェル YAPシンチレータ 3台 Ge検出器(同軸型) 3台 線源周り • β+線源 – 68Ge (Eβmax1.9MeV) 0.4μCi – 前回(22Na)はプラシン中で大部分が対消滅 ½インチPMT 1インチPMT • トリガー – プラシン(200μm厚) – アルミナイズドマイラーのコーンで光収集 ライトガイド プラシン (200μm) • シリカエアロジェル – 0.03g/cm3 – 前回はシリカパウダー プラシン (1mm) • アンチトリガーを導入 – 円筒形プラシン(1mm厚) 68Ge 105mm e+ シリカエアロジェル – e+がシリカを抜けるイベント(約半数)を suppressし、DAQレートを有効に使う 65mm YAPシンチレータ 高統計な測定に適したYAP(YAlO3)シンチレータを導入 • 減衰時間約30nsのシャープな波形 (前回:NaI~230ns) pile up が大幅に減少 • 優れた時間分解能(~400ps) 400ps @511keV • 安定な物性 – 潮解性がなく、非常に硬い結晶 • その他 – 光量 40% (NaI比) – Z=39 今回使用したYAPの結晶 50mm×50mm×33mm データ収集の状況 • 8月末よりデータ収集開始 – 3kHzでデータ収集 – 現在2週間で4×109イベント(β+) – 統計エラーにして約300ppm 今回のセットアップの統計10倍化を確認 • 約半年のランで100ppm以下 次に、ここ2週間のデータをみる(解析の詳細) time walkの補正 • YAPの補正 – 速い立ち上がり – γ線のエネルギーで補正 約400psのtime resolution Walk エネルギー • Geの補正 – 遅い立ち上がり(~200ns) – 立ち上がりの時間で補正 約3~5nsのtime resolution Walk 立ち上がり時間 3γspectrumのnormalization Energy spectrum Ge time spectrum prompt 2γ(511keV) data decay curve accidental 3γ • simulation(Geant4)による3γスペクトラムを dataの3γ連続分布でnormalize pick offの割合を求める (n2γ/n3γ) • 崩壊時間毎にslice pick-offの割合の時間依存性が分かる simulation pick-off rate • 測定されたpick-off rate – o-Psの熱化を反映した カーブが観測される – 数百nsで収束、約2% • pick-off rateをlife time fittingに取り込むことで 正確に崩壊率が求まる time spectrum fitting YAP time spectrum Fitting 関数 prompt 3γ decay curve Free parameter: λ3γ,N0,C accidental o-Ps life time λ3γ=7.0393±0.0020(stat)μs-1 – 統計エラー280ppm • 前回(2001)の測定 – SiO2 powderを使用 – 約一年間のデータ収集 λ3γ=7.0396±0.0012(stat) ±0.0011(sys)μs-1 • 束縛系QEDの計算値(α2) λ3γ=7.0399μs-1 とコンシステントな結果を得た 束縛系QED (α2) まとめ • オルソポジトロニウムの寿命測定のセットアップを構築 – 高統計、高精度な測定が可能になった • 2週間で統計エラーにして280ppmのデータを収集 – 前回(2001)の測定とコンシステントな結果が得られた • 今後、約半年のランで統計エラーを100ppm以下に抑える • systematicエラーのstudyを始める
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