Shared Questionnaire System2.0の開発 アンケート調査プロセスを 共有・再利用し、 「社会調査2.0」を拓く 久保 裕也 [email protected] 千葉商科大学 政策情報学部 専任講師 / 慶應義塾大学 SFC研究所 上席研究員 http://sqs-xml.sourceforge.jp/ 1 自己紹介____ なまえ: くぼひろや しごと: オープンソースプログラマ 兼 大学教員 千葉商科大学 政策情報学部 専任講師 慶應義塾大学SFC研究所 上席研究員 ブログ: http://sqs.cmr.sfc.keio.ac.jp/tdiary/ 2 社会 技術 3 PDCA Cycle Plan Act Do 継続的に事業内容を 改善してゆくための、 一連の活動の指針 Plan Do Check Action Plan Check Action Do Check とりわけ「Check:評価(調査)」が重要 「誰が」「何を」「いつ」「どのように」評価するのか? そのための費用負担は? 評価の結果が次のステップで改善に活かされなければ意味がない! 4 突然ですが、質問です: 問1:「子供の学力低下が心配である」 ⇒はい/いいえ 問2:「学校週5日制は、良い制度だと思う」 ⇒はい/いいえ 問3: 「子どもたちは何をして休日を過ごして いますか?」 5 実際の統計データ:朝食と学力の相関 •必ず朝食を取る: • 514.8点 •全く、または、ほとんどとらない: • 456.5点 ※高3生、H16.1 「国語I」 8 問題状況の「客観的な改善」に向けた 仮説検証型マーケティング 1. クラスの中で、 「朝ご飯を食べてこない子どもの割合」と 「テストの成績」を調査 2. 「朝ご飯を食べよう!」キャンペーン • 教員・児童生徒・保護者それぞれが 自発的に改善の取組みを計画・実施することを支援 3. クラスの中で、 「朝ご飯を食べてこない子どもの割合」と 「テストの成績」を調査 4. 改善のために…次は何をする? 9 調査票の共有・再利用 過去の優れた調査票の共有・再利用を進める 調査票の共有・再利用は、調査技術の向上や 調査結果の有効化に大きく貢献することになる 2種類の共有 「時間軸上での共有」 • 調査対象の経年変化を追うことができる 「空間を超えての共有」 • 異なる地域や組織で横断的に利用することで、 調査対象間での比較や対照を行うことができる 10 これまでは、 「アドホック」で「ワンオフ」な 調査が多すぎた。 その反省に立ち、社会の中で調査プロセスが 共有され再利用されるためのソフトウェアを 開発し、オープンソースで公開した。 実社会の広範なユーザからの支持を獲得。 学校教育分野を中心に、すでに利用者多数。 11 調査1.0 「Closedな調査」 調査プロセス情報の非公開化 / 他者との差別化 / 調査結果の私物化・死蔵 調査2.0 「Openな調査」 調査プロセス情報の公開化 / 顧客からの信頼 / 調査結果の共有財化・多角的活用 12 「学校行政」とは 文部科学省 都道府県教育委員会 高等学校 5,385校 47都道府県 市町村教育委員会 約3300市町村 教職員24万人 中学校 1万992校 教職員24万人 小学校 2万2878校 教職員41万人 全国6万校・132万人の教職員がマネジメント対象 (大学・各種学校等を含めた数・本務教員の数) ※文部科学省:平成18年5月学校基本調査より 14 「学校評価」の義務化 平成14年 学校設置基準の改定 各教育委員会・文部科学省によるガイドラインの策定 「学校関係者へのアンケート調査とその分析」 設置者・教育委員会 管理職教員 一般教員・職員 児童生徒・保護者 地域住民など •自己評価 •第三者評価 情報公開 (支援者・将来の顧客) 客観的な評価基準を用いた、 PDCAでの学校改善をめざす 16 当面の課題 しかし… 質問紙方式での調査・集計業務が 学校現場の多大な負担となっている!! 学校評価の形骸化。 PDCA導入などは、到底無理…? ※Webアンケートを利用できる場合は非常に限定的 ※いわゆるマークシート方式は機器・用紙コストが高く、 回答者にも負担がある 18 閑話休題: 大学教員として、 LaTeXで、試験問題+回答欄を レイアウトしていて、思った。 「スタイルつくるの、面倒くさい」 「このシステム、俺以外に 使える人いるの?」 「どうせならOCR/マーク認識 まで、自動化したい」 19 SQS: Shared Questionnaire System SQS SourceEditor 調査票の雛形(調査手法)の選択 調査票の論理的構造のデザイン 調査票の具体的メディアに対応した 調査票表現の生成 SQS MarkReader マークシート式調査メディアを利用 集計処理の分散化・自動化 簡易的な分析機能の提供 20 ①アンケート「ひな形」の 蓄積・公開 教育委員会 SQS Repository ②アンケート「ひな形」の ダウンロード ⑦学校レポート 作成 学校 SQS SourceEditor ③アンケートの作成・ 編集・印刷 インターネット ⑧アンケート分析 ⑨学校レポートの 蓄積・公開 ④アンケートの 配布・回収・ スキャン ⑥アンケート 集計・分析 SQS MarkReader ⑤アンケート回答 アンケート 教員・児童生徒・ 保護者・地域住民など 21 27 28 29 30 31 SQS MarkReaderからの出力 択一選択設問 →円グラフ(自動生成) 複数選択設問 →棒グラフ(自動生成) 33 SQS MarkReaderからの出力 自由記述式設問 ⇒画像ファイル として切り出し (自動) ⇒文字データに 打ち込み直し (手作業) 34 課題発見型調査票の例 「重要度」 X4段階 「満足度」 X4段階 +わからな い 「課題」の名前 35 集計結果出力の例:課題発見型 満足度・平均 満足度・高 「重要度・満足度調査」 2003年9月実施 東京都足立区 五反野小学校 こどもが地域の人々 によって支えられて いると実感できること 友達や知り合いに こどもが自分から 元気に挨拶をする こと 重要度・高 満足度・低 重要度・高 重要度・平均 36 2種類の「共有」の導入 Shared Questionnaire System 1.「アンケートシステム」の共有化 オープンソース・ソフトウェアとしてのSQS × 2.「調査票の共有」のシステム オープンな調査コンテンツの処理系としてのSQS 37 「アンケートシステム」の共有化 オープンソースソフトウェアとしての開発提供 要求:学校現場によるボトムアップな「カイゼン」 学校ごとの目標設定 校長を中心とした現場マネジメント 地域の特色を活かした学校づくり → 現場組織の自律性・主体性を活かした学校カイゼン 解決方針:JavaWebStart(リッチクライアント)でのバイナリ配布 サーバ側での処理内容の軽減 クライアント側での利用内容の「リッチ」化 オープンソース実装のリッチクライアント化 → 「いつでも・どこでも・だれでも使える」システム 実施内容:開発コスト・再配布コスト削減 Apache License Version 2の採用 38 「調査票の共有」のシステム オープンな調査コンテンツ処理系 要求:調査コンテンツの社会的共有の促進 → 末端の現場組織のタコツボ化を防ぐ オープンなカイゼン知識の共有 • 教育委員会などによる調査票の雛形配布、調査項目の一部共通 化 • 学校の説明責任としての調査票データ(調査プロセス)の公開 解決方針:調査コンテンツを記述するスキーマのオープン性の実現 → プロプライエタリではない、標準スキーマ・語彙の採用 – XHTML, XForms, XSL-FO, SVGなどのXML標準 • 内部的仕様を公開することで、コンテンツと処理系それぞれの部品化・ 再利用を促進 実施内容:処理系のオープンソース実装の開発と提供 → コンセプト実証・参照用実装として利用 39 共有:流通・再利用 ネットワーク経由で取得した「調査票の本文」 を、コピー・貼り付けしたり、一部を書き換えた りすることで、簡単に新しい「調査票」を作れ るようになる。 社会的に調査ニーズの高い・品質の高い調 査票が、繰り返し使われることで、より洗練さ れるとともに、その調査結果が蓄積し、客観 的な評価のための比較に用いることができる ようになる。 40 教育委員会・学校へのSQS普及 県教委の指導による学校での公的導入 宮城県教育委員会 • 宮城県内の全公立高校への導入を実現: – 2003年: 10校 – 2004年: 29校 – 2005年-現在: 87校すべて 岩手県教育委員会 • 10高校を指定し導入推進中 • 小中学校への導入を開始 群馬県教育委員会 • 小中学校・高等学校で80の実験学校を指定し導入推進中 学校内担当者・教育研修センター担当者らによる自発的導入 千葉、東京、神奈川、岐阜、京都、大阪、鳥取…. 全国の個別の担当者による自発的な利用→ボトムアップな普及 ….日本教育新聞、教育委員会月報・専門書などでの報道・引用多数。 44 文部科学省行政への反映 2005年9月:中央教育審議会・義務教育特別部会(第33,34回) 「科学的な手法」であるというコメントを受ける。 2006年4月:「学校の第三者評価等に関する研究計画に関 わる事業案の公募」 文部科学省からのヒアリングを受け、募集内容に影響を与える。 • 「事業成果物はフリーソフトウェアとすること」との文言が盛り込まれる。 2006年8月:「学校評価ガイドラインに基づく評価実践研究推 進地域及び協力校の指定」・「コンピュータ等を有効に活用し た効果的な処理方法の研究」部門 岩手県奥州市における「学校評価の事務的負担を軽減する「学校評 価支援システム(SQS)」の有効な活用と普及・拡大」が採択される。 45
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